47話 自己紹介
恐らく3人共、アイスを食べるのは初めてなようで。その反応をじっくりと観察する。
おっさんは予想通り。最初こそビックリしていたが美味いと分かるとそこから掻き込む様に一気に食ってこめかみを抑えていた。
息子は味の分析をするように1口1口ゆっくりと味わいながら食べていた。
奥さんは美味しさに感動してなのか?ビックリしてなのか?まぁ、良く分からないが震えていた。
「どうですか?」
「おかわり」
「おっさんには聞いてねぇ」
「これは牛の乳ですか?」
「ですです」
「後、砂糖は分かりますが他は分からないですね」
「後は卵ですね」
「だけですか?」
「はい」
「へぇ、そんな簡単な材料なんですね」
「冷やすのとか、牛乳を分離させないとなのとかが面倒ですけど」
「あぁ、やっぱり色々しないとなんですね」
「でも、材料はそれだけなんで作ろうと思えば作れるかと」
「これは、えっと・・・」
「はい」
「あの・・・」
「はい」
「失礼なんですが」
「はい、何でしょう」
「お名前を伺っても・・・」
「今更かよっ」
「うっせぇ、親父は知ってんのかよっ」
「知らん」
「すいません、今更ですがミトと言います」
と、本当に今更な自己紹介となった。
おっさんはジョンと言うらしい。まぁ、おっさんで十分だな。
息子はジョーと言うそうだ。
ジョーだのジョンだのなんで親子で似たような名前を付けるのか謎だ。
そして、奥さんはマーシー。
「お前は特別にジョッコって呼んでも良いぞ」
「え?」
「仲の良いツレの間ではジョッコで通ってる」
ジョンが愛称でジョッコ・・・長くなってんじゃねぇか。
「おっさんアイスのおかわり要るか?」
「要る要る・・・って呼べよっ」
「ヤダよ・・・」
「なんでだよ!親友だろうがっ」
「親友では無い。まだ普通に知り合いだ」
「一緒に酒飲んだら親友だろうがっ」
「飲んだ次の日。俺の事覚えてなかったじゃねぇか」
「そうだっけか?まぁ、酔っぱらいの記憶力に期待すんな」
コイツは・・・まともに相手するだけ損だ。
「相手しないで下さい。放っといて大丈夫です」
息子も同じを・・・。
「脱線しましたが・・・ミトさんの故郷の氷菓子なんですか?これは」
「あー、まぁ、そんな感じですかね」
「そんな簡単にレシピを教えてしまっても良かったのですか?」
「良いんじゃないですか?むしろ広まった方がもっと美味しいのを食べれるようになって良さそう」
「ふむ」
「もしかして新しい商売として考えてます?」
「いえ。ですが、商業ギルドに売れるのでは?」
「レシピを?」
「はい」
んー、でもなぁ・・・。
気に入らないから関わりたくない。
これで手のひらドリルされても余計にムカつきそうだし。
「売るならご自由に。俺は売る気は無いです」
「いやいや、そんなっ」
「利益とかじゃなく。美味しい物は広まった方が改良されてもっと美味しい物を食べれるようになるかもしれないじゃないですか」
「確かに。技術もそうですね」
「で、おかわりはまだか?」
「あー、もううっせぇなぁ。ほれ」
「おぉ」
ついでにジョーさんとマーシーさんの分も追加で出す。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「す、すいませんっ」
「ちょっとオススメな食べ方があって。あ、でも、好き嫌い分かれるか・・・」
というか・・・。
俺が思い浮かべたのはバニラアイスにウイスキー等の洋酒を少し垂らす食べ方。
でも、これはバニラじゃない。完全プレーンのアイスクリームとブドウ風味のアイスクリーム。
そう考えるとバニラエッセンスも欲しいな。
「こうやって」
と、自分の分のアイスにブランデーを垂らしてみる。
「食べると酒の香りが良い感じになるんですよ」
「へぇ~」
「やってみます?」
「はい、お願いします」
「私も」
おっさんも無言で皿を差し出していた。
目がキラキラしてて飼い主大好きな大型犬みたいな目をしててキモかった。
犬なら可愛いけどおっさんだし。
「香りがっ」
「うんうん」
「もっと掛けてくれ」
「いや、おっさんは酒飲みたいだけだろ」
続いてブドウ風味の方にワインを掛けてみる。
ブドウ×ブドウだし不味くは無いだろう。
「ん・・・あれ?イマイチかも」
アイスの甘さとワインの渋みが喧嘩をしている。
それに、苦みが無駄に増してる気もする。
「ん」
「ん?」
「んっ」
「微妙だったけど?」
「んなもん、自分で試してみなきゃ分からんだろ」
「確かに」
再び皿を出してきたので制止したが良い感じの事を言われて納得しそうになった。
が・・・このおっさんの事だから飲みたいだけだろう・・・。
「うん、微妙だな」
「だろ?」
「たぶん、ワインが少ない」
「ん?」
「こういうのは比率が大事なんだよ」
どっちだ?マジっぽくも聞こえるし飲みたいだけにも聞こえる。
「飲みたいだけだろ」
「バレたか」
うん、このおっさんの言う事は何も信じない。




