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おっさんバックパッカーは異世界へ行っても自由気ままに旅をする。  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第21話 スターフロストの実

「姫様、まずはこちらで毒見をしますので」


「もう、いつも大丈夫だと言っているのに……」


「俺は気にしていないぞ。それにどうせ俺も一緒に食べるから先に食べるよ」


 カトレアがスターフロストの実に手を伸ばそうとしたところで、騎士団長のシヴィさんがそれを止める。


 王女という立場上それも当然だ。俺の場合は超健康スキルのおかげで毒は無効化されるし、先に俺が食べた方がいいだろう。もちろん俺は毒なんて入れていないからな。


「うん、甘くて冷たくてうまい」


 まずは俺が食べ、次に毒に多少の耐性があるという女騎士の人が食べてようやくカトレアの番だ。


「うわあ~本当に冷たいです。シャリシャリとした食感でとてもおいしくて、口の中がとっても幸せになりますね!」


「雪の降る地方で採れる果物だ。今日は暑いからよりおいしく感じるな」


 ヒンヤリとした紫色のスターフロストの実をひと粒口に入れた瞬間、プチっと皮がはじけて凍った果実のシャリシャリと食感が心地よく、溶けてじゅわっと溢れるみずみずしい果汁が口の中を満たす。


 甘さと酸味が絶妙なバランスで広がって、濃厚な甘味の中にすっとした爽やかさもある。ひと粒食べるたびに、またひと粒と止まらなくなる味だ。さすがにあの寒い場所で食べてもこれほどおいしくは感じられなかっただろう。


「これはとてもおいしいですね」


「ええ、今日は暑いから冷たくておいしいわ」


 他の女騎士のみんなもおいしそうにスターフロストの実を食べてくれていた。


「……これは冷たくてうまいな」


「ええ、これは暑い日のデザートに良さそうです」


「気に入ってくれて良かったよ」


 シヴィさんとミレディさんも気に入ってくれたようで何よりだ。


 こうやっていろんな場所で手に入れた物をみんなで一緒に食べるのは楽しいものである。さて、休憩を終えたら先へ進むとしよう。




「今日の目的地に到着したな」


 何度か休憩を挟み、極夜とオーロラの話をしていると、今回の目的地である山頂まで到着したようだ。


「うわあ~とっても綺麗ですね。あっ、下に村が見えます! それに……もしかしてあれは海ですか!?」


「ああ、ここは海から少し離れたタカラザ山だ。転移した場所は元から少し高い場所だったからな。ここまで来るといい見晴らしだろ」


 スタート地点で少し標高のある場所だったため、数時間なだらかな山を登たところで山頂まで着いた。


 周囲には一面に広がる緑色の自然、そしてその奥には雄大な青色の大海原。高い建物などないこの異世界には視界を遮る邪魔なものなど何ひとつない。


 反対側には雄大な山々、正面には青い水平線と、その横には緑の地平線がどこまでも続いている。そんなすばらしい景色を一望できるこここそが旅の中で見つけた特別な場所だ。


「あれが海ですか、初めて見ました。ミレディから聞いていた通り、あんなに大きいのですね!」


「あとで海の近くにも転移してあげるからな」


 カトレアは第三王女ということもあって、まだ海を見たことがなかったらしい。


 王都からほとんど出ることができない彼女にこの広大な異世界の海を見せてあげたかった。


 本当は海の近くで海水浴をさせてあげたり、魚市場なんかも見せてあげたかったが、さすがにそれは護衛上の理由でNGが出た。確かにこの異世界の海には凶暴な魔物もいるから、前世の海よりも危険なのである。


「……本当にすばらしい景色ですね! ガクト様、本当にありがとうございます!」


「おっと、満足するのはまだ早いぞ」


「えっ!?」


「確かにいい景色だが、本当にすばらしくなるのはこれからだからな。とはいえ、まずは腹ごしらえからだ」


 確かに今の状態でもすばらしい光景だが、この場所へ連れてきた理由はまだ他にもある。


 だけど物事には順序があるのだ。お昼も過ぎてここまでだいぶ歩いてきてだいぶお腹が減ったし、まずはお腹を満たしてからにしよう。




 女騎士の皆さんがテーブルやイスをセットして、そこにカトレアが座る。当然ながら俺以外の者も俺のバックパックと同じ魔道具を持っていた。こういった収納できる魔道具は高価だけれどとても便利だからな。


「さて、それじゃあ昼ご飯を作る間ちょっとだけ待っていてくれ。こいつが今回の分だ」


「ありがとうございます、ガクト様!」


 イスに座っているカトレアに紙の束を渡す。こいつは俺が旅をしながら書いたおすすめ記事だ。ギルドに貼っているものと同じやつだな。


 基本的にはギルドに貼りだしてもらったあとは放置しているから他にどれだけ読者がいるのかわからないが、少なくともカトレアは喜んでくれている。


 本当は一緒に料理を作るのも楽しいのだが、さすがに王女様に包丁を持たせるようなことは許可が下りなかった。まあ、こればかりは仕方がない。


「ガクト様、私も調理のお手伝いをさせてください」


「……ああ、助かるよミレディさん」


 メイド姿のミレディさんが料理の手伝いを申し出てくれた。ちなみにこの人はここまでメイド服を着ながら山を登ってきたからな。


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