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おっさんバックパッカーは異世界へ行っても自由気ままに旅をする。  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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19/21

第19話 王城

「さて、昨日の商業ギルドの依頼も無事に終了っと。あとはこっちの件が終わればまた旅に出られるな」


 昨日は他の依頼者を希望した街まで運び、トルオさんを回収して王都へと帰ってきた。2日間の依頼が無事に終わり、かなりの大金を手に入れることができた。


 あとは今日の件を終えればまたしばらくは旅をする生活に戻れるわけだ。こっちの件は俺もそこそこ楽しめるのだが、いろいろと気を遣うんだよなあ。まあ、これも俺が快適な旅をするためである。


 宿を出て昨日の街並みとは異なる王都の中心地の方へ向かう。道をすれ違う人たちは立派で華やかな服装をした裕福そうな人たちで、荷馬車ではなくこちらも豪華な装飾のあしらわれた貴族用の馬車が道を進んでいく。


「金はあるところにはあるんだよなあ」


 先日まで滞在してきた村とは何もかもが違う景色だ。俺としては寂れた村の方が落ち着くな。


 すれ違う人たちは動きやすい格好をして大きなバックパックを背負った俺を見て嘲笑したりしているが、俺はそんなことは気にしない。そしてそのまま奥の方へ進んでいき、大きな城――王城の前までやってきた。


 目の前にそびえ立つ王城は、まるで空を貫くかのように壮麗だった。白銀に輝く城壁は、長い年月を経てもなお傷ひとつなく荘厳さを放っている。高いビルなんかのないこの異世界でこれほど巨大な建物は非常に目立つ。


 前世ではドイツにあるノイシュバンシュタイン城という噛みそうな城を見に行ったことはあるが、あの大きくて美しい城を軽々と超えてくるのはさすが異世界というべきか。ちなみにその城は某ランドのシンデレラ城の元になった城だ。


「おはようございます、依頼を受けておりますガクトと申します」


 正門に近づくと、巨大な鋼鉄の門が厳かにそびえ、そこにはこの国の紋章が刻まれている。門の両脇には鎧をまとった兵士が無言で立っていた。


 さすがにこの国の中心である王城を守る兵士だけあって、屈強な面構えをしている。まともに戦ったら、俺なんて秒殺されてしまうだろうな。


「ガクト様ですね、お伺いしております。このままこちらでお待ちください」


「承知しました」


 丁寧な言葉づかいで話す門番。さすが王城だけあって、俺のような怪しい者にも丁寧な対応だ。まあ何度も来ているので、顔を覚えられているのかもしれない。




「ガクト様~!」


「おっと」


 しばらく待っていると王城の門が開き、そこから小さな女の子が出てきて俺に飛びついてきた。


「この狼藉者、姫様から離れろ!」


「いや、さすがに今のは不可抗力でしょ……」


 その後ろからぞろぞろと鎧で武装した女性の騎士たちが現れる。そして先頭にいたロングソードを持った女騎士が俺の方へ剣を向けた。


「やめなさい、シヴィ! ガクト様は大丈夫だといつも言っているでしょう」


「も、申し訳ございません」


 一応瞬間転移スキルを使う準備をしていたが、シヴィさんは無事に剣を納めてくれたようだ。というか、毎度のことなのだから、一々反応しないでほしい。


「カトレア様。久しぶりとはいえ、いきなり殿方に抱き着くのははしたないことですよ」


 そしてさらに後ろからひとりだけ武装をしていないメイド服姿の女性が現れる。黒と白を基調としたシンプルなメイド服だ。


「しっ、失礼しましたガクト様! ご機嫌麗しゅう存じます」


 メイドのミレディさんに言われると、カトレア様は俺から少し離れてそのスカートの両端をつまんで頭を下げた。


 透き通るような白い肌と深いエメラルドグリーンの瞳、この異世界でも珍しい白銀色の美しい髪は月光を浴びた湖面のように淡く輝き、その長い髪から突き出ている長い耳はエルフという種族の特徴だ。


 彼女はこの国の第三王女で人族とエルフ族の間に生まれたハーフエルフだ。美しく気品のあるこの少女と俺とでは住む世界が違うことをはっきりと思わせる。……まあ、文字通り本当に世界が違うんだけれどな。


 彼女のような王族がどうして俺と知り合いなのかというと、俺が旅をしている時にたまたま彼女たちを助けたのだ。その縁もあって、今では1~2月に一度、彼女からの依頼を受けている。


「これはカトレア様、お心遣い痛み入ります。カトレア様もお元気そうで何よりでございます」


 俺も片膝をついて左手を後ろに回し、右手を左胸に添えて貴族流の挨拶で返した。


「「………………ふふっ」」


 しばらくの間沈黙が流れる。そしてそのあとお互いに笑う。


「お久しぶりですわ、ガクト様」


「ああ、久しぶりだな、カトレア」


 形式的な挨拶を終えて、笑い合う俺たち。多少は気心も知れていることもあって、王族ではあるがカトレアとは普通に話すようになった。もちろん俺は分をわきまえているのだが、彼女自身から普通に話すよう頼まれたのだ。


 彼女の護衛隊長であるシヴィさんと彼女のメイドであるミレディさんは苦い顔をするが、第三王女様からのお言葉だからな。とはいえ、王城の前で第三王女がラフな格好をしたおっさんと談笑しているのはよろしくない。


 まずはさっさと移動するとしよう。


「それでは皆さん、お互いの手を繋いでください」


「は~い!」


「姫様は私たちの間に入ってくださいね」


「けちっ……」


 俺と手を繋ごうとするカトレアの間に入ってくるシヴィさん。まあ、俺のようなおっさんから姫様を離すのは護衛としては当然の判断だな。


 命を助けたこともあるが、どうにも変に懐かれてしまったものだ。さて、今日はこのメンバーで瞬間転移スキルを使ってハイキングへ行くぞ。


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