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嫌がらせ少女は大志を抱けない。~めっちゃ強い少女はただ無双する事が出来れば良いなぁって思いました~  作者: せいゆ


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早め早めにすべき その8




「まずは儀式に必要な道具を用意します。

 こちらが予め必要なものになります」


 神具一式を即座に用意する。

 宝玉などが埋め込まれた儀式用の剣、神楽鈴などであった。


「儀式を始めます」


「え? ここで? 祭壇があったはずでは?」


 アグレジアンが尋ねる。

 それに返答を返したのはザルガネアであった。


「む? それはどういう事だ?」


「わたくし、眠っている間に、イメージというものでしょうか、何処でするかの夢を見せられていました。

 剣を持ち、舞う所作をずっとずっと…」


 その舞とは違う舞をミナモは始めていた。

 そして一瞬で転移し、何故かその場所へ移動していた。

 城の近く、湖に近いその場所には石造りの遺跡の様な場所があり、舞を踊る場所があった。

 草木が茂っており、しばらく使われていない事と、雨風により石材も随分削られていた。


「な!?」


 周りの驚きなど知らず存ぜぬ、ミナモは一心不乱に剣舞を舞う。

 次第に天が赤い雲に覆われ、雷鳴がとどろき始めた。

 豪雨が降り始め、その雨から守る様にアグレジアンを庇うが、ミナモはその上に透明な雨避けを魔法で生み出して雨に当たる事は無い。

 そして一筋の光が差し込み、それがその祭壇へと降り注ぐ。

 天から人型、アグレジアンの様な人型が降り立ち始める。

 しかしミナモの腕から延びた触手がその足を掴み、ゆっくりと降りて来た龍神を地面に叩きつけた。


「な!? なにを!?」


 和装を纏った青い髪の龍神、額からは鹿の様な、しかし梅の様枝の様に補足先割れた角が生えている。

 背には翼がはないが、綺麗な青と金色色を混ぜた鱗の尻尾がある。

 美しい顔立ちは誰もが振り向くほどであるが、地面に叩きつけられて台無しである。


「戦闘開始、武器はそのまま儀式剣でやります」


 くるくると舞う様に攻撃をしかけると、無表情な龍神がそれを似た剣で受ける。

 無表情のまま龍神が対応する。

 ミナモも同じ様に、しかしそれを凌駕し美しく龍神を追いやる。


「くっ、す、すごい…」


「剣圧がここまで、なんという、…そして、美しい」


 しかし常人が見れるのはここまでで、龍神がボルテージを上げると、ミナモがそれを上回り相手に迫る。

 剣劇の音が鈴の値の様に聞こえ始め、音を奏でている様であった。

 剣筋が光となり、光が舞い始める。


「な、なんと…」


「綺麗…」


 そうやって惚けて見られるのも、ミナモが戦闘の場を空間を隔離しているからだ。

 本来ならば衝撃波で見物人など死んでいる。


「限界かい?」


 次第に龍神は舞うでのはなく、ただの攻撃を繰り返す。

 本来ならばそれが当たり前だ、演武などただの余興にすぎない。

 しかしミナモは意味もない演武をただ続けて相手を圧倒していく。

 龍神の無表情だった顔も今は、ただの獣のように涎を垂れ流して怒りの顔を激しく露にしていた。


「楽になるといい」


 龍神の剣を吹き飛ばす。

 剣の腹で殴り、龍神がそのまま吹き飛び空間の壁に叩きつけられた。


「では治療をはじめましょうか?」


 ミナモの姿が変わろうとしていた。

 しかし龍神もまたその本質を露にした。

 金色に輝き、青光で空間の壁を突き破り天へと上る。

 その姿は蛇、いや龍そのものであった。


「あ、あれは!?」


「やれやれ、注射が嫌いな駄々っ子みたいだ、それとも飢餓状態が厳しいのか」


 ミナモは飛び上がり黒い衣装ではなく、本来の姿、天女の様な姿へと姿を変えた。

 本来であれば世界に影響を与える形態も、修行の末にさらに洗練された力を安定させる事が出来る様になった。

 ミナモはヘカトンケイルの腕を幾つも露にし、天を覆う巨大な龍へ拳を殴りつける。

 天を殴り、光が舞う。


「オラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」


 拳が乱れ飛ぶ、サンドバッグにされた龍はただただボコボコに殴られ地へと落下していく。

 しかし目を赤く輝かせ、口を大きく開く。

 吐き出される青い光は。


「無駄!」


 大きなガントレットにその口を塞がれそして破裂する。

 そしてその地へと叩き落とされる。

 そのままならば地震が巻き起きていたのだろう、しかし叩き落とされたのは空間の壁、衝撃波も阻まれる。

 ミナモの姿が変化し、黒衣を纏うと、半口開き目を回すその中へガントレットを突っ込む。


「何処だ?」


 目を見開き、相手の姿を丸裸にしていく。

 そして腹部、龍の心臓付近でそれを見つけた。


「なるほどぉ」


 ニタリと不敵に笑みを浮かべ、幾つもの手がその周囲に展開した。

 そして手を叩く素振りをすると、一斉に飛び掛かり、その腹を突き破る。

 くぐもった悲鳴が龍から聞こえるが、そのままミナモは腕を中へを潜り込ませ。


「ヒヒ、コイツだ」


 あるものを掴み、そして引きずり出した。

 心の臓は悲鳴を上げるが、能力で一瞬で傷が治療されていき、龍に影響はあまりない。

 内部に入っていたガントレットを消し、そして取り出した『ソレ』を見て不気味に笑った。


「へぇ、寄生型の神かぁ」


 それは寄生虫にも似た白い、ただ人型をしたのっぺらとした神である。

 ミナモは杯に液体を注ぎ、倒れ伏す龍へ水を注ぎこんだ。

 龍は目を見開き、驚いた様な様子を見せて、じっとミナモを見詰める。


「んで、お前はどうする?」


 ミナモは龍に尋ねながら、儀式をしていた祭壇へと降り立つ。

 龍は光を纏い、再び龍神の姿になると、ゆっくりと祭壇へと降り立った。


「改めて聞くけど、お前、コイツどうする?」


 ミナモの視線の先には寄生型の神が居た。

 逃げようともがくが、ヘカトンケイルはそれすらもびくともせずに拘束し続ける。


「…貴方が倒した、貴方が好きにすると良い」


「だから、私が、聞いている」


 龍神は傅いた。

 少し力のこもった声、ただそれだけで格を理解してしまった。

 ひれ伏し、首を垂れて顔は上げない。

 文化の違いがあるにしろ、ただならぬ雰囲気を感じ、慌てて他の三人は膝を突き首を垂れる。


「は、排除を、願い、ます…」


「心得よう」


 ミナモは一振りの鎌を取り出した。

 デザインなどない、ただの黒い鉄の棒に大きな鎌の刃がついただけの死神の鎌。

 しかし取り出した途端に世界が静まり返る。

 ただただ異様、踏み込んで行けない領域が目の前にはあった。


「君には恨みはないけど、…おいたが過ぎたかなぁ」


 必死に藻掻くが、鎌で首を描き切る様に突き出す。

 そしてゆっくりと振り上げていく。

 寄生型の神はそれを見てただただ怯え、身体は硬直していた。


「さよなら」


 振り落とされ、世界が分かたれた。

 寄生型の神はもう既にこの世界にはいない、あるいはこの世の全てに居ない。

 ミナモは無言で降りたつと、兎の姿を取り、龍神へ近づきその肩を叩く。


「顔を上げて」


 慌てて顔を上げる。

 何をされるのか、恐怖の色が見えていたが、ミナモはその頭を優しく撫でた。


「世界が変われば神の信仰も変わる。

 時にはその在り方も変えていかないといけない」


 しばらく頭を撫でてから離れて、首を垂れる三人の前に立つ。


「じゃそう言う事で終わり、お嫁にならんからな」


「はい…」


 事実上振れた、しかし王子はただただ高揚していた。

 そして王女もまた似た様な状態になっている。

 怯え、ただ敬うのは家臣だけである。

 そしてもう一人、ひと柱というべきか。


「貴方様、貴方様貴方様」


 龍神がアグレジアンから見た様な熱い眼差しをミナモへ向けていた。


「な、なに?」


「一緒に、ご飯、…食べませんか?」


「…はい?」


 変に懐かれたミナモは、渋々と頷いた。


「まあ、いいけど」


 ミナモのイベントタイムアタックは終わった。

 ゲーム開始時間は約一時間と三分。

 儀式開始から十二分後の事であった。


 ☆☆


 ミナモにとってはエピローグでも、他の者達にとってはプロローグである。


「わ、私は異世界で通用したのに!?」


 襲い掛かるモンスターに蹂躙され、また一人プレイヤーが散った。

 そして戻されるのは森の中にある開けた拠点。拠点と言ってもタダ開けてるだけで何もない。

 一応プレイヤーがそこに居るが、森から抜け出せずに膝を抱えるだけだ。


「み、皆力を合わせよう!」


 誰かがそう呼び掛け、戻って来た者達に呼び掛ける。

 リスポーンすればまた同じ様に呼び掛け、ある程度集まれば、急いで森を駆け抜ける為に走り出す。


「集団で飛び掛かれ!」


 魔物一体に自滅覚悟で飛び掛かる。

 一番前に居た盾役が蹂躙され、風の刃を放つ魔物が次々とプレイヤーをなぎ倒して行く。


「糸使いなんでしょ! 凄いバンディットなんでしょ!」


「無理なもんは無理に決まってんだろ!」


 バンディットだろうが力を合わせなくてはならず、必死になり一体倒すのが精いっぱいであった。

 そしてやっと狩り、残ったモンスターの死体を見て。


「戻る! 戻るぞ! これで盾役を強化だ!」


 死に物狂いでモンスターを引きづり拠点へと戻る。

 難易度が異常であった。

 そして死体に刃を入れるが、入れた瞬間刃が欠ける。


「…まじ?」


「切れ味のいい、剣」


「ま、待ってくれ、これは新調したばかりで、…そ、それにさっき切り込んで刃が微妙に溶けてるんだよ! や、やめ、やめろー!」


 高級な装備だろうがお構いなく、解体した刃が溶解されていく。

 革を必死に剥ぎ、内臓を抜き、肉をや骨を並べる。


「どうすんだよ」


「骨の剣に、…皮を防具、いや小手にする、受け止めた際の衝撃を吸収、そして解体時のダメージを和らげる」


 解体だけで死者が出る。

 そんな散々たる様子に全員が疲れ切っていた。


「足の健、もしくは筋肉が欲しい」


「それ、武器になるのか?」


「弓ならできるんじゃないか?」


「俺にはこれしかないんだ…」


 バンディットだろうが選択の余地はない。

 すぐさま加工をし始める。


「すまん」


「良い、…だが終わった後、出くわしたら見逃してくれよ」


「勿論だ」


 ただただ生き残るために必死になる。

 しかし降り出した雨で壊滅的な被害が巻き起きた。


「ふっ、行かなかった俺、最高に運が良い」


「あのなぁ」


 Lo10円卓で、掲示板やパーティーたちの声を聴きバルトハイネが一人頷いていた。

 傍には同じ様に悲鳴上がる声を聴き深々とため息をつく同僚たち。


「そして俺達には何もできないことも分かった」


「これなら次から参加しても良いな。

 …高難易度以外」


「流石に次からは声を反映して高難易度は選択しないようにしよう。

 流石にないですよ、これ」


「確かに」


「まあ、でも皆分かっただろうから、これ以上は高難易度望まないだろう」


「でもさ…」


 一人が少し暗い表情になり、視線の先にあるイベントの一部が目に入った。

 プレイヤーストーリー、重要度最高、難易度最高、プレイヤーレベル不適切。

 どれも異常なほど警戒の色を示す赤い項目がある。


「これ、…やらないといけない、……みたいでしょ?」


 バルトハイネが溜息をつくと、釣られて皆も吐き出した。


「い、今じゃなく、しようか」


 そんな折、バルトハイネのパーティーチャットから悲鳴が聞こえてくる。


「ぎゃー! 無理無理無理無理! 溶ける!」


「何で嵐になるのよ!」


 横なぎの嵐が巻き起き、全員死亡する。

 生き残っている者はミナモだけで、ミナモも一人龍神相手に戦っていた。


「あれ? 一つだけ進行度跳ね上がった」


「え? マジだ」


 その班はミナモが居る場所。

 シナリオ進行度というものが可視化されており、それがぐんぐんと伸びていくと、ついに99パーセントまで伸びた。


「え、嘘、誰か攻略してる!?」


「マジかよ…」


 心当たりのある出来事に、バルトハイネは悟られない様に表情を取り繕う。

 心臓がバクバクと音をたて、他の者達に聞かれない心配であった。


「攻略、完了マークついた…」


「100パーになって無くても終わるんだ…」


「攻略の身なら良いんじゃないか? それで99っていうのも結構高いとは思うけど」


「あ、でも、これで伝えると流石に加担になるよね」


「確かに」


 ストーリーの進行度が分かれば、何を見逃しているのか、何がストーリーに関係した事なのか判明してしまう為、それを他者へ伝える事は危険だ。


「じゃあどうしよう、これ…」


「後は待つだけだと思うけど、…期間三日だっけ」


「クリアしたサバ、班か、大変だろうな、何もする事無くて」


 さらに状況を確認する事が可能で、表示された説明文を眺めた。


「あれ? もう確定してるけど」


「何が?」


「いや、これ見てよ」


「えっと、…一部クリアサーバーの進行度とフラグ管理の為、そのサーバーの進行度が反映されます、って、そうなのか」


「ええ、流石に早くない?」


 クリア後に適応されると思っていたのだが、進行によっては確定するようであった。

 バルトハイネは何をしたのかミナモに聞きたいが、それを調べるのは少し後になるだろう。


「はぁ、…三日かぁ、……マジでする事無いから俺外で適当に狩りするわ」


「俺もそうするかな」


「ねぇ」


「ん?」


「この進行度も報告も定期的にしない?」


「…物は試しか」


「試験的にという事でしてみるか」


「こういうのマスクデータとして隠して欲しいんだけどなぁ」


「確かに」


 アイディアをそのまま公式掲示板で報告する。

 Lo10にしか出せないアイコンマークでの報告で、しっかりと進行度を表示されていた。

 書き込みはLo10のみで、適当に応援メッセージも追加されていた。


「じゃ、気付いたら定期的に書き込むという事で」


「あい」


「おつかれー」


 バルトハイネは通常フィールドに帰還し。


「お、お前等マジで何してんだ!?

 お前の世界クリアしてんだけど!」


 急いで事の詳細を尋ねた。

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