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嫌がらせ少女は大志を抱けない。~めっちゃ強い少女はただ無双する事が出来れば良いなぁって思いました~  作者: せいゆ


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早め早めにするべき その6



 イベントが始まる。

 パーティーを結成し、ミナモはパーティクルと共にイベントへ参加する事になった。

 表示された参加の有無を尋ねる選択ボタンを押し、専用のイベントフィールドへ移動する。

 何もない白い空間に大理石の様な床が広がる。

 見渡せばプレイヤーが五百名ほど居て、初めて、そして一年ぶりのイベントに目を輝かせる者達が殆どであった。

 光景で言えばとても幸せな空間、しかし1人だけ気が重い。


「…現代に影響がない過去編であることを祈ろう」


「あっ、確かにそれなら大丈夫かもねぇ」


 気楽なパーティクルと、げんなりとした様子のミナモ。

 そんなミナモ達の元へ近づいて来る人影があった。


「あれ? やっぱりそうだ」


 近づいてきたのはミナモ知った人物。

 しかし相手はミナモだとは気付いていない。


「パーちゃん、やっほー」


「あ、ナガれん、やほー」


 ナガレ、ホムンクルスが封じられていた剣を握り、身体がホムンクルスに侵食されている人物。

 エルニカの姉でもある。

 ミナモは片目でナガレの状態を眺めて。


「ふ~む、結構浸食進んでるね」


「え?」


「どうも、こちらの名前では分からないでしょうけど」


 一礼して見せ、スカートの裾を上げる。

 ナガレは首を傾げながらも、自分の事情を知っている相手、そしてその背丈を見て目を丸くする。


「え、えっと、え? う、嘘、…えっと、ミナモ、さん?」


「どもども」


「パーちゃんと知り合いだったの!?」


「知り合いって言うか、前のゲームでよく遊んでた」


「えー、ナガれんとも知り合いなんだ、意外」


「ふふん、意外と交友関係が広いのだ。

 ってかコミュ障とか思ってなかった」


「おもっへはい」


 頬を引っ張りパーティクルをおじると、ナガレはその馴染みのない雰囲気に驚き目を疑っていた。

 前々からお茶らけていたが、それがあの場以外でも同じなのだから。そして他のゲーム、その知り合いがいるというのも驚きである。


「それでどうやって知り合ったの?」


「喫茶店で」


「いや、そうじゃなくて」


「喫茶店と、中二病発動の時と、後使われない喫茶店?」


「喫茶店だけじゃん」


「中二病があったやろ」


「ポコ太郎まだ中二病治ってないの?」


「最初からなってないわ、こっちが中二病だったの」


「えー、そんなの嘘だよ」


「嘘じゃないもん」


 同程度の争いに、ナガレは笑うしかなかった。


「でも結局、中二病からは誰も逃れ馴れないのさ」


「ほら、その恰好もだし、やっぱりそうじゃん」


「パーだってそのアクセとか絶対に中二交じりじゃん」


「あ、いや、…か、買った奴だし」


「他のもあるでしょ、それに乗ってた宇宙船だって」


「わー! いいじゃん、もうサ終したんだから!」


「まあまあ落ち着いて」


 完全に子供のやり取りで、ナガレは何時もクランでするように反射的に二人を宥める。


「ほら、もうそろそろ始まるみたいよ」


「ホントだ」


 カウントダウンが表示されており、その数値がゼロへと近くなっていた。


「ねえ、パーティー、組まない?」


「あー」


「んー」


 二人の反応はいまいちだ、ナガレは慌てて手を構えった。


「あっ、別に無理なら良いのよ」


「いや、…けど、……旧Lo10の話も、まあ、必要、かな?」


「あー確かに、よし、…入れちゃおう」


「え?」


 パーティー申請が届き、首を傾げなら喪一瞬躊躇したが、それを許諾した。

 一覧には二人以外にももう一人が居て、バルトハイネと書かれていた。


「というわけで、旧Lo10メンバーのナガレさんです、どうぞ」


「は?」


「えっと、ど、どうも…?」


 ナガレは事態が分からず、困惑ながら挨拶をする。

 そして声を発さないが、バルトハイネも呆けている雰囲気を二人は感じていた。


「それと現Lo10のバルトハイネさんです、さあ、どんな言葉で罵るんだい?」


「え?」


「はあ?」


「楽しいのぅ」


 パーティクルもそんな言葉を投げだすと、声なき悲鳴を二人は上げそうになった。


「あ、あの、ば、バルトハイネさんて、あ、…も、申し訳ございません!」


「あ、いえ、いえいえ、そ、そんな謝らなくてもいいです。

 すみません、そのこちらこそ、す、少し、かなり立て込んでまして、あんな放送しちゃって、色々あって、ですね」


 カウントがゼロになる。

 場所が変わり、少し赤めの空が見える森の中に三人は立っていた。

 周りには誰もいない。各々別々な場所に飛ばされた様であった。


「いえ、こちらこそ、本来であれば私達がしなければならないことを貴方達押し付けて仕舞い、本当に申し訳なく――」


「こちらこそ、すみません」


 いない相手に頭を下げる二人を想像し、ミナモとパーティクルは降ろしている頭を上げさせる。


「まあ、積もる話をしていこうか」


「じゃあまあ、私はちょっと先行して調べて来るよ」


「任せたー」


 ミナモはその場から去り、一足先に街の方へと飛んで行く。

 パーティクルは内心心苦しくもあったが、黙ってこの場の空気を楽しむ事にした。


「あ、まあ、こちらの事情でも話して、当面の問題を提起しようか」


 一先ず道筋を提示する。

 事情を説明し、改めてパーティクルはナガレに尋ねた。


「という事で、こそこそ裏で動きそうな元Lo10メンバーたちを教えて欲しいなぁ」


「裏で動きそうな人達…」


 ナガレの顔つきが変わり、幾つか人の顔が浮かんだ。


「…話題になってると思うけど、最初はエンパイアのサブリーダー、マシュイ。

 指揮系統の一員を担っているくせに、リーダーに責任を負わせるためにサブをやってる奴」


 いささか恨み節が籠っており、ナガレは聞かれていない特徴も話した。


「あれは撤退も早いかもしれないけど、メルテトブルク崩壊のギリギリまで足掻く姿勢を見せてた。

 パフォーマンスかもしれないけれど、意外に執念深くもある、…かもしれない」


 ナガレも詳しい事は知らない。

 しかし警戒すべき相手という事だけは分かる。


「次に『ゴワゴワ』、Lo10の中で唯一、一般員だけど、ゴワゴワは鋭く切り込んで誘導してくる節がある。

 内部からかき乱す、そして潜り込む事が得意な奴」


 要注意すべきはその二人。

 しかしクランとして他にもある。


「内部や利用しようって言う奴はその二人。

 けど白狼も最近なりふり構わなくなっている感じがする」


「白狼って、白狼近衛騎士団、だっけ?」


「そのクラン。

 メルテトブルクを中心に活動してたけど、それも、…色々あったから、何か一つ大きな事をして纏め上げたい、地位も確保したいっていうのが本音だと思うの」


「他はどうなんだ?」


「無いわね。

 私の花鳥風月は元々探索がメイン、エンパイアは解散、サンライトも探索がメイン。

 喫茶店ポルロもどちらかと言えばしがらみを嫌っていたまったりクランね」


「まったりとか言ってる所って、全然まったりとかじゃないよねぇ」


 そんな事をポツリと呟くミナモ。

 それに同意するのはパーティクルであった。


「そうそう、ボクもそう言う所入った事あったけど、結構ガチガチでさぁ」


「すまん、今は情報が欲しいから」


「へいへい」


 バルトハイネは話題を元に戻して尋ねた。


「他の四名はどうなんだ?」


「釣り本舗は異世界で釣りとやる気、Lo10関係はもう興味は失せてるみたい。

 他の二人、一人はよく分からない、もう一人は、…子育てがどうって言う話を聞いてたから」


「た、大変っすね」


 現実の仕事が立て込んでいたり、事情でログインできない者も居る。

 今のLo10も似た様な者も居て、全員が全員本気でゲームに打ち込んでいるわけではない。


「それで最後の一人は?」


「あー、それは私から話そう」


「ミナモさん?」


「知り合いなの?」


「つうかササが連絡するちょっと前に会ってたんだよ。

 なんていうか、拗らせてるね、あれは」


 ミナモはその時の事を伝え、なんとも言えない様子をチャットから感じ取る。


「ま、あくまで私の分析だから。

 どっちにしろ力に固執して、ちょーっといけない方へ行ってるっていうのは、間違いないけどさ」


「…エルニカちゃんが話したい事あるって言ってたけど、無理そうねぇ」


「アキラメロン。

 そして君達に大悲報がある」


「はい?」


「え、まさか」


「うん、そのまさかなんだ。

 いやぁ、うん…」


「どうしたの?」


「やらかした、てへぺろ」


 ミナモはそれだけしか言えなかった。


「ま、まあ、ワンチャン惚れてないかもしれないし、別の妃を探し当て、育てる事が可能かもしれないし。

 だ、大丈夫でしょ」


 ミナモの声が震えており、他の者の態度からもナガレは何か事情があると察した。


「お、お姉さんにも教えて欲しいなぁ…、なんて」


「いやぁさ、コイツにイベントにある世界を探してきてもらってさぁ」


「まあ、見つけたんだけど、……王子ぽい人に会っちゃって」


「すまん、私に惚れたみたいで、その状態が現在のまま保存されてる」


「……はい?」


 ナガレが話を飲み込むのに十分ほど時間が必要であった。


「待って、ちょっと待って、…つまり、えっと、少し前の状態がコピーされてて、それが班分けされてるから。

 ……ミナモさんが居ない班は、どう、なっちゃうの?」


「ほら、ワンチャンあるって、私と接触前かもしれないし。

 ……エルニカさん、他のクランメンバー居る?」


「い、居るけど」


「別のサーバーで、街に辿り着けてる?」


「か確認してみる、他のクランメンバーにも聞いて見るから、ま、待ってて」


 しかし確認しようにも、現在の居る場所から出られないものが大半であった。


「…えっと、森の敵が強い、らしいの」


「あー」


「って言えば、言葉も通じないか」


「えー…」


「赤い雨に当たったら、ボク達駄目そうだし」


「…今考えてみると、普通に情報開示しないのは本当に悪手だろうな。

 うん、我ながら俺の判断とお前達の判断は正しかった」


 事前に情報を公開し、かき乱す事も出来るが、秘匿すれば身内だけで場所を特定して最初から動けるのはアドバンテージになる。


「俺達は良い実験をした。

 情報公開の開示は本当に良かった、良かったから。

 …死んで来い」


「ササやん、お前もこっちに来て地獄へ落ちろ」


「知らん知らん」


「お前等大変だねぇ」


「急募、ポコ太郎を地獄へ落とす方法」


「結婚させろ、アイツと」


「は? この世界滅ぼすが?」


 砕けていた神秘性が殆どなくなり、ただの子供達にしか見えなくなった。

 所変わり、視点をミナモへと移す。

 ミナモは鍛冶屋で、出された茶を啜り、一息ついた。


「お前様の剣は素晴らしい、本当に異世界の技術なのだな」


「それはどうも」


 ずずっと飲み辛いカップを持ち飲む。

 カップの構造は少し突き出した口に合わせて、細長い桶の様な形状をしていた。


「んで、あのバカ王子、まだ来てたりするの?」


「馬鹿とは…、確かにうつけ者かもしれないが、あれでもこの国の王子だ」


「はぁ、なら同族と結婚するだろうに。

 珍しいモノでも好むのかねぇ」


「そうだろうな」


「舞踏大会があるんでしょ? そこで妃探しだと思ったけど、…どうなるんやら」


「君は出ないのかい?」


「この世界には竜人しかいないんだろ? 私みたいな異世界から来た生物が招かれるわけがないでしょ」


「別に竜人だけではない。

 東の海に人魚が居る、後は西の地には沼リザードマンか」


「ほーん」


 ミナモは片目を開きその種族たちを眺める。

 人魚はマーマンという魚をモチーフにした姿の魚人と言える姿をしていた。

 人魚と言っても、人の身体と下半身が魚の生物ではない。

 リザードマンは竜人から翼を除き、口のマズルを長くしたような姿である。


「交流ってあるの?」


「勿論ある。

 あの宝石はマーマンから、あちらの鉱石はリザードマンからだ」


「…舞踏大会ってそう言う所からの交流の場とか?」


「さあ? 俺達平民は分からんよ。

 ただ他の所からも来るから、そうなんじゃないか?」


「王子なんだからしっかりとしないといけないのに…」


「……何とかなるだろ、それよりも少し教えて欲しいのだが、…良いだろうか?」


「良いよ、暇だし」


 ミナモは彼に精錬の魔法などを教える。

 この行動が繁栄に繋がるのか、その実験的な行動であった。


(しかし他国との交流となると、聊か不穏な気配を感じる。

 イベントとなった以上、平穏に終わるなんて無理難題だよなぁ)


 ナガレの話を聞いている限り、普通のプレイヤーはこの世界で行動はほぼ不可能。

 異世界に渡っている者達が活躍の鍵になるが、それも何処まで活動できるか定かではない。


(目で、…見ちゃおうかなぁ)


 調べるのは一人だけ。

 他のプレイヤーが来れれば良いが、言語の壁で躓く事は目に見えていた。


(流石にまだ時間はある、すぐにどうにかなる……事は、ないと、いいな)


 既に事件が始まっている可能性はあった。

 高難易度、プレイヤー適正レベルの不一致、そこから推測しても、迅速な行動が求められる。

 不安に思いながらもミナモはただ鍛冶の方法を教え、アドバイスを送りながら眺める。


「む、難しい、な…」


「最初から出来る奴なんて居ないよ」


「そうだな、俺も親父から随分しごかれたからな…」


「お子さんはいないのかい?」


「嫁がまずいない」


「がんばりなー」


「お前さんが竜人ならよかったんだがな」


「他の異世界で竜人と私達みたいな奴の番はいたよ。

 ま、私が嫌だけど」


「俺も嫌だ」


「はは、それが普通の反応。

 見慣れない種族の奴と結ばれるっていうのは、結構無理難題だよ」


「でも異世界には居るんだろ?」


「見慣れたならね、この世界に私達の様なのが居るなら話は別」


「見慣れれば、か。

 …確かにマーマンに嫁いだ奴もいたな」


「海の中大丈夫なの?」


「駄目だ、崖をくりぬいてそこで二人で生活しているんだったか」


「愛があれば、なんとかなるっしょ、多分」


「愛かぁ」


 二人茶を啜り、目を細めた。


「おい、店主、先の…あ!」


「うわ、また来たバカ王子」


「馬鹿言うなよ…」


 突然開け離れた扉から、この世界では美麗な容姿の王子が立っていた。

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