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嫌がらせ少女は大志を抱けない。~めっちゃ強い少女はただ無双する事が出来れば良いなぁって思いました~  作者: せいゆ


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早め早めにするべき その5



 公式イベント。

 どの様な形式であれ、全員が参加可能になっている。

 今回のイベント『されど竜人は誰と踊る?』は開催期間を三日。

 参加者を幾つかのグループに分け、全員が同じ世界、しかしパラレルワールドに放り込まれる。

 問題を解決し、よりよい結果を出したグループに報酬が与えられる。さらに個人成績も関係していたり、個人の活躍も評価される事になる。


「目玉は、このイベントの良い方の結果が世界に反映、ねぇ」


 ミナモは公式サイトのイベント説明を眺める。

 パーティクルはその下側に書かれた、今回のストーリー導入部を眺めて首をかしげていた。


「竜人による舞踏大会、今夜のお相手は、ってあるけど、踊るの?」


「さあ? 竜人なりの舞踏大会とか言う感じなんだろうけど、戦うんじゃない?」


「NPCと?」


「かもねぇ」


 その竜人の王子は姫を求める。

 舞踏大会が近づいてきている、色めき立つ者達が後を絶たない。

 君はその舞踏大会に参加することを決め、そこで巻き起こる事に巻き込まれていくことになるだろう。

 辿り着くのは破局か、それとも…。


「ま、誰かの子守りでもしろっていう話かもしれんし、気楽にやりなよ」


「ポコは参加せんの?」


「しねぇ」


「えー、一緒にやろうよ~」


「どうせササからやって感想聞かせろって言われるだろうけど、やらん」


 ミナモが参加しては意味がない。

 必ず一人で解決するのが見えている。


「なにせ私は神だから、何でも一人でやっちゃうよ~ん」


「ははは、ないない」


「ま、冗談はさておき、…ちときな臭い動きがあるから、そっちを見たいかな」


「きな臭い?」


「最近聖獣の話多いだろ?」


「あっ、確かに多いね」


「そっちがちと気になってね。

 誰もイベント参加だ何だと湧き合ってるだろうし、隙ができるならその機会かなって」


「おー、確かに、けど、…イベント捨てる選択にならなくない?」


「……だよねぇ」


 どちらも大きなイベントとなる。

 特にミナモは高難易度というのも気になっていた。

 参加したい、しかし聖獣関連も捨てられない。


「じゃあコイントスで決めようよ」


「俺、パーのそう言う所好きだよ」


 決めあぐねたなら、運を天に任せる事もまた一つだ。


「人の顔が表面、そっちならイベント」


 ミナモはコインを取り出し、それを弾き手に取る。

 既に結果は分かっており、一息つきテーブルにコインを置いた。


「表、か」


「どうせ誰か見てるでしょ」


「だと良いけどね」


 イベントに参加することを決めた。

 そんな事をしていると、バルトハイネが戻ってくる。

 とても疲れた様子で、ミナモ達は軽く手を振り労う。


「おつおつ、んで、会議はどうだったよ?」


「たいしたことはしてない。

 当日どうなるか構えて、一部は参加して報告するそうだ」


「他は?」


「叫んでギャン泣きしたりと、欲望がにじみ出てたよ」


「後はすり寄ってくる奴等の問題か」


「すり寄る? 寄ってくるか?」


「図太いからね、ある意味馬鹿ではあるが、一部頭良い奴もいて、思考誘導して特定のイベントをさせようとか」


「…いない、とも言いきれんか」


 バルトハイネには問題はないが、他がどうなのか定かではない。


「後はどの様にしてイベントをさせるか、だな」


「公式サイト使った投票とかできないの?」


「今回のイベント見てからだな。

 そうじゃなきゃイベント選択不可能になりそうなやつから処理していかないと」


「確かに、けど他にも重要なのとかあるんでしょ?」


「ああ、幾つかな。

 重要なのは重要って項目が追加されてたみたいだし、…まあ、もう選択できないけど」


「それはご愁傷様」


 これまでの事を振り返れば、イベントが起きなければ、自らその場所に行き解決する必要があると判断した。

 イベントはあくまでLo10による強制移動させて無理矢理解決させる手口だ。イベント関係なく行動して解決も可能だろう。


「竜人って居るのかな?」


「居るけど」


「居るのか?」


「居るね、プレイヤーも居るし」


 最近連絡がないシャルロッテもその竜人に該当するプレイヤーである。


「じゃあその世界に行けばイベントの下見も出来るって事?」


 しかしミナモは目を細める。乗る気でない雰囲気が漏れていた。


「イベント発令で出入りが出来なくなってるかもしれないけど」


「あっ、そっか。

 そう言う風になる事もあるか」


「それにその世界が本当にあるか、想定している別の世界かもしれない」


「…それを確かめるために調べないか?」


 ミナモへ視線が突き刺さる。視線を二人から背けるが、内にある好奇心が検証に走りたいと訴えていた。


「もう時間ないけど」


「だから今」


「……行ってくるよ」


「待って、僕も行く」


「俺も」


「駄目、と言いたいが、少し待ってて、幾つか候補あるから」


 そして想定する世界へと転移した。

 ミナモは目を開き、舞踏会がありそうな街を探し漁る。


「この世界じゃない」


 次の世界へ飛び、さらに検索する。

 十分ほどすると該当した世界を見つけ、すぐに戻った。


「どうだった?」


「あったけど、なにするの?」


「何って、下見と世界観を調べる」


「…まあ、いいけど」


 ミナモはあまり良い様な表情をしない。

 それがなぜなのか。他の二人は卑怯だからと推測していた。

 渋々と二人の手を取り、そのまま転移して向かう。

 そして降り注ぐ赤い雨に二人の体力が削られていった。


「うわあ!? そ、装備溶けてる!?」


「た、体力もうないよ!?」


「それみろ」


 ミナモはぎりぎりのところで二人の身体を魔法で守り、透明な幕に覆わせる。


「お前、無事なのか? 合羽だからか?」


「元々私にはただの雨だから」


 降り立った場所は岩の様な城が聳え立つ街であった。

 作られた家々も石材ばかりで、若干不格好で一部は岩石をくりぬいた様な所であった。


「適当に来た証に、その家の隅に傷付けておく?」


「そう、だなぁ…」


 イベントがこの世界であったなら、何処から区切られるのか、それを知る為に家の一部に傷をつけて、イベント時に傷があるのか確認するつもりであった。


「ちょっと聞き込みする?」


「…ちょっとせこいが、まあ、俺は参加しないし、行くか」


「ボクはネタバレ歓迎だし、レッツゴー」


「おー」


 そして周りを見回し、閑散とした街並みを眺める。


「誰も居ないけど」


「んだな」


「…この雨だから?」


「そうだろうか?」


 ミナモは鼻で笑い適当な鍛冶屋などを目指して移動する。

 二人はミナモ頼みでついていくしかなく、頼もしくもあるが、本当にこの世界なのか不安に思い始めた。


「…本当に答えに辿り着こうとしてないか?」


「しら~ん」


 ミナモは意地悪している様子をみせる。

 表情とは裏腹に探求心がその足を前へと進ませていた。


「こんにちは」


 雨の中扉を叩き、開ければ、その先に居るのは竜人であった。

 角が生え、蜥蜴の様な顔立ちと鱗に覆われ、リザードマンと言われる見た目である。

 背からは翼が、そして尾骨付近から尻尾も生えていた。


「―――」


 竜人が何かを口にする。

 ミナモ以外の二人は何を言っているのか理解でずにいたが、ミナモは愛想笑いを浮かべてそれに答えている。


「――――」


「な、なんっつてんだ?」


「わ、分からないよ」


 ミナモも異世界の言葉を話し始め、二人は身を寄り添いながら無駄に身構えた。

 そして傍に居たもう一人の男性の剣士の様な竜人がそれに加わり近づく。


「――――」


 何処か警戒して怒っている様な雰囲気があるが、ミナモは小ばかにする様に言うと、眉間に皺を作って武器の方へと向かう。


「…言葉、通じないんですが」


「まあそりゃ、ササだって異世界行った時言葉駄目だったろ?」


「…うん」


 バルトハイネは他国の言語を必死に覚えた。

 覚えたというよりも文字を見て、聞こえてくる声に耳を傾ける。

 鍛冶屋ならば、その文字を鍛冶と仮定していき、そうやって理解すると、単語が分かるようになり、会話が徐々に出来る様になって来た。


「けど、なんか、今回のは無理そう」


「言語が特殊だからねぇ。

 とは言え、結構簡単な方だよ」


 ミナモは武器を眺め、宝石のあしらわれた剣を手に取った。


「――――」


「―――――」


 男に鼻で笑われるが、ミナモが言い返せばさらに眉を顰める。


「――――」


「―――――!!」


 煽る様なミナモ、それに怒る男性。

 剣を向けられるが、ミナモが指でつまめば、びくともしないことに驚き手を離した。

 彼の持っていた柄に納めて投げ返すと、男は鼻を鳴らしてそっぽ向き、鍛冶屋から去って行った。

 外は雨が降っているとはいえ、構う事無く、身に着けている服も溶ける事は無い。


「マジかよ…」


「……高難易度、かぁ」


 二人は高難易度な理由を理解し、深々とため息をついた。

 そして再びミナモの方を見れば、店主らしき竜人が近づき少し怒った様に話しかけていた。


「――――」


「――――? ――――――ヒヒッ」


 悪い笑みを浮かべ、アイテム欄から取り出した剣を手渡す。

 その剣はあの発狂する世界であった剣であった。

 竜人はその剣を引き抜き、その気配に驚き急いで鞘に仕舞った。


「――――」


「――――」


 肩をすくめ、手を振った。


「――――」


「――? ―――――」


「――」


 竜人は目を閉じ、偉い人物にでも貰ったかのように膝を付きそれを預かる。


「――――」


 ミナモが言えば、彼はさらに頭を下げて礼をする。

 ミナモも手振り頭を上げる様に促し、傍にある椅子に腰かけた。

 それから二人を取り残して会話が始まる。


「――――剣―――する」


「―――剣? ――――」


 少しすれば、スキルの補正により一部の会話が分かるようになってくる。

 ただそれ以上の会話は続く事は無い。

 ミナモは奥にある溶鉱炉などを指差し、竜人と共にそちらの方へ向かった。

 適当に鉱石を取り、それが一瞬で溶解していき熱い鉄となる。

 他の鉱石が浮かび、その功績と合わさり、さらに魔法陣が展開された。


「なんだこれ?」


 そう思っているのは竜人もまた同じで、興奮した様子でそれを眺める。

 魔力で作られたハンマー、そして金床が現れ、溶解して浮かぶ鉱石が剣の形に伸びていく。

 そして金床にそれを置き、ハンマーを一振り。


「わっ」


 音叉の様な心地良い音が響く。

 世界が震えた様な気がしてならず、思わず皆が身震いした。

 そして同時に扉が開き、先程武器屋に居たであろう竜人がやって来た。

 しかし打ち込む姿を見て、思わず立ち止まり、再び金づちを振れば、その衝撃に胸を打たれる。

 そして何処からともなく取り出した、透明な液体をすっとふりかけると燃え、しかし鉄の色が露になり始める。

 刀身に再び色が付いていき、燃えたぎり、金槌を振り下ろし剣を鍛える。


「なんか、すげぇ…」


 ここまで心が躍る事は初めてだ。

 その時間もすぐに終わり、気が付けば一振りの剣が出来上がっていた。

 ミナモは出来上がった刀身を眺め、一息つく。


「―――」


 そして傍にある木材などを使い、柄などを素早く作り始める。


「―――」


 この世界とは違う言語が口から飛び出る。

 文字通り口にした言葉が刀身などに刻まれていき、それがすっと鋼の中へと消えて行った。

 光、そして色が変化し、それを確認すると剣を鞘へと仕舞った。


「―――」


「うお!? な、なに?」


 突然後ろに居た竜人が二人を退ける様に突き飛ばし、づかづかとミナモの目の前にやってくる。

 ミナモは首をかしげ居ていると、その手を掴み。


「――――」


 その一言でミナモは呆け。


「はぁ?」


 今まで見た事の無いほど呆れ、そして嫌そうな表情を向けていた。

 男は握り方を変え、まるで乙女ゲームのヒーローがヒロインの手を握る様子である。


「あのさ、俺、分からないけど、…分かったかも」


「奇遇だねぇ、ボクもだよ」


 当のミナモはかなりげんなりしており。


「お前はアホか」


 言葉は分からないが、絶対に言った言葉だ。

 そして男もまた。


「それでも君が好きなんだ!」


 ミナモはするりと手を退け、そのまま流れる様に後ろに周り一歩引く。


「――――」


「はぁ!?」


 男が言った事に驚愕し、余計に嫌そうな表情になると、払う様に手を振った。


「―――――――――」


 ミナモがその顔のまま男へ向かい口にし、二人の手を取り走り出す。

 そしてそのまま転移して、いつの間にかロッジの場所へと戻ってきていた。


「……んで、どういう事?」


「告白されてなかった?」


「マジでさぁ、何アイツ」


 ミナモは女性にあるまじき態度で悪態をつきながら、ショーツでも見えそうなくらい足を組む。


「いや、説明してくれよ」


「……アイツ、私を妃になってくれとかのたまいやがった」


「妃? やっぱり告白じゃないか」


 その時パーティクルはその言葉に強い引っ掛かりを覚えた。

 バルトハイネは興奮した様子で前のめりになりさらに問い詰める。


「まさかこういう事ってあるんだな、初めて見たぜ」


「あーそうだなぁ、別ゲーならあったが、…いや、ここでも何回かあったか」


 ミナモは深々とため息をつき嫌そうな表情をさらに強めた。

 その時パーティクルが手を叩く。答えに辿り着いた、辿り着いてしまったのだ。


「ああ! もしかして、あのNPCって今度のメインキャラ!?」


「え?」


 答えを聞こうとミナモに視線を向けた。

 ミナモは目を逸らし。


「…あの国の王子なんだとさ」


「妃、って、やっぱり」


「は? はあぁ!?」


 バルトハイネは慌てて今回のイベントの文章を眺め、頭を抱えた。


「え、冗談だろ? 重要人物に、しかも、結婚申し込まれたって。

 え、お前に、惚れ、…え」


「やっちまったなぁ」


 ミナモは他人事のように言葉を投げかける。

 殆ど攻略不可能な難易度になった事を悟り、バルトハイネの悲鳴は響き渡った。

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