新領主 sideリアラスタ
「説明は済んだ。さっさと出ろ」
冷酷に退出を告げるコルに、ダビッドは、矛先をコルに変えた。
「コル……。お前は、なぜここにいる?」
「俺が新領主だからな」
「正確には、まだ代理ですけどね」
今更か、という表情で、コルはダビッドを見下した。
私は、正確な情報を付け加える。
正確に、伝える義務もあるのは守法人の辛い所ね。
ちゃんとしないと後でヨールの説教があることが面倒なのだ。
「は!?」
「私では、魔の森の討伐は出来ないので、コルに統治を委任すると、契約書にも書いてあったはずですわ。
3年間、問題なく統治がされれば、そのまま譲渡する予定なです」
「俺はヘマしないから、領主になるのは変わらない」
「随分な自信家ね」
「事実だから問題ない」
コルは、なんとでもない様に言っているが、魔の森の管理は誰でもできる事ではない。
コルに屈強な身体能力、魔法技術があるからこそと言える。
更にコルの後ろにいる、彼を支える同じ獣人仲間たちの存在も頼もしい限りだ。
トラアナ地区は、これから多くの変化があり、大変だろうが、きっと乗り越えてくれるだろう。
「そんな事は聞いてない!!」
またも声を荒げるダビッドに私は、にっこり微笑んだ。
「聞かれなかったので。けれど、委任する事は話したはずですよ?
コルの名前も、共通語ですが、しっかり記名されていましたけれど、お分かりになりませんでしたか?」
「騙したのか」
「いいえ、聞かれなかっただけですわ。
あぁ、そうそう。
コルは、貴方のご子息で半獣ですが、種族としては獣人ですからね。
ランソワー子爵は、獣人に領土を割譲した事になります。
その意味わかりますよね?」
ダビッドの顔が青白くなる。
フラル王国と隣国の獣人国は、対立関係にある訳ではないが、種族が違う為に法を司る結界の種類が違う。
この世界では、国毎に独自の法律があり、結界にて管理されている。
結界で管理される法は、根本的な基準となる法律のみで、それ程多くはない。けれど獣人国と人間国では根本的に法律が違う部分がある。
やはり、獣人国は獣人に、人間国は人間に有利な法律になっているのだ。
ダビッドは、獣人国に領土を売ったと思う者は多いだろう。
「そんな、私は売国奴になるのか。……今、この領地は獣人国の法律なのか?」
ダビッドは、自分が犯した罪をようやく理解した様だ。
「獣人国の法律も含んでいますわ。」
「……も?」
「そうです。フラル王国と獣人国の法律、両方ともの適用になっていますわ」
「そんな事が可能なのか?」
「可能か不可能かと言われれば、可能ですわ。
ただ、問題もいくつかありますけど」
私は、ダルサスに目を向けた。
ダルサスは、それだけで理解した様で、ダビッドに近づき、軽く腹を殴った。
ダビッドのでっぷりとしたお腹のお陰で、ダメージはそこまでない様に思う。
けれど、予想に反して一時呼吸が止まった様に見えたので軟弱過ぎて驚いた。まぁ、ゲホゲホしているので死んではいない様だ。
「こんな感じで、女神の加護が無くなるという事ですけれど」
「1番大事な所だろうが!!」
鋭い指摘をするダビッドに、私は涼しい顔をした。
女神の加護。この世界の根本とも言える。同じ種族が、争う事を許さない物理的な結界と罰は、素晴らしい事であると思う。
けれど……。
「そうかしら?
皆の倫理観さえ、しっかりしていれば暴力等起こらないでしょう?
起こした場合は、法律に則って処罰すればいい話ですわ」
そう、皆が法律を守ればいい話である。
女神様が、独り気に悩む事はない。
皆が、守ればいいだけ。加護に頼りすぎなければいい。
「最初は荒れるかもしれません。
その分、警備は以前以上に人員を割くつもりですわ。
けれど、女神の加護がなくても、私達には理性があります。新しい領主の下で、しっかり軌道にのせますのでご安心くださいな」




