ランソワーの降爵 sideリアラスタ
「もういいかしら? 話を進めたいのだけれど?」
「お手を煩わせてしまい申し訳ありません。
ランソワー子爵に説明をする必要などありません。契約は終わったのですから、さっさと追い出せばいいのです」
私の問いかけにコルは、丁寧な謝罪をしてきたが、
威圧を解除しなければ、ダビッドとの会話はままならない。
私は、湾曲にコルに威圧を解除する様に言ったが、コルはわかっているはずななのに、ワザとわからないふりをしている様だ。
「コル。威圧を解除して。さっさと終わらせたいの」
それでも威圧を解除しないので、私は、直接的な言葉をかけた。
漸くコルは、威圧を解除する。ダビッドに対するコルの恨みは相当なのだ。
ダビッドは、咳き込みながらもコチラを睨みつけた。
「どういう事だ!!
それに先ほどから子爵とは、何の話だ!」
お決まりなセリフに、笑いが込み上げそうになるのを隠しながら、私は冷淡な視線をダビッドに向けた。
説明を求められれば、説明の義務が発生するのは、守法人の辛いところである。
後日に説明することは煩わしいので、ここで全ての引導を渡す事が、後々、面倒にならない。
コルの威圧をやめさせたのも、この為だ。
決してダビッドが可哀想だからと言う理由ではない。
「どうもこうもありませんわ。
トラアナ地区は、私の領地になりました。
なので、貴方は子爵になり、この屋敷も私に権利が委譲されたというとになります」
「そんな話は聞いていない!!
っ……ちゃんと私にもわかる様に説明し……て下さい」
激昂するダビッドに、コルは再び威圧を向けた。
先程の威圧とは違い、声は、かろうじて出せる様にうまくコントロールしている様だ。ダビッドの声は、最後の方は先細りして、丁寧な口調になっている。
「聞いていないと申されましても……。
少し考えれば誰でもわかる事ですわ。
トラアナ地区があってこその辺境伯です。
トラアナ地区が他に譲渡されれば、辺境伯で無くなるのは周知の事実でしょう?
トラアナ地区を割譲した後の領地は国境に接しておりませんし、領土の大きさと、経済規模からして子爵相当でしょう」
ダビッドは、呆然としていた。
今まで気づかなかったダビッドも漸く理解した様だ。
フラル王国の貴族爵位は、領土の規模、経済力、国への貢献度に応じて決められている。
ランソワー領は、トラアナ地区を含んでいたからの辺境伯であり、そこを割譲すれば領土は減り、辺境のトラアナ地区も無くなるのだから辺境伯のままな訳がない。
「この屋敷は、トラアナ地区の防衛拠点です。
この屋敷までがトラアナ地区なのですわよ?
ですから、この屋敷は私のものになります。
まさか、ここがトラアナ地区とは、ご存知無かったの?」
ダビッドは、私の言葉を理解できていない様だ。
「屋敷は、魔の森から離れていてる。
裏手に、防衛拠点があるだろう。
あそこからがトラアナ地区ではないのか?
トラアナ地区は、魔の森と接する裏手の平野からなはずだ。
城下町だって、スアナという別の地名が……」
この屋敷は、城塞の様な作りをしているので、その眼下に広がる街並みを便宜上、城下町と呼んでいる。
城下町のスアナと城塞は、トラアナ地区とあまりにも環境が違う為に、便宜上、名前を別に呼んでいるだけで、トラアナ地区の自治の為の拠点であり、条文にも明記されている。
「魔の森と接してはいないだけで、離れているといってもこの裏手から魔の森を一望できるでしょう?
丘を下れば、すぐに魔の森ですわ。
この屋敷と、表に連なる最大の城下町までが本来のトラアナ地区でしてよ?」
この屋敷の裏手から、少し距離を経て魔の森が広がっている。
この屋敷は小高い丘を切り開いて出来た高台にある防塞都市だ。防塞都市を支える為の屋敷の表側の城下町もトラアナ地区である。
裏手にも、防衛拠点は、幾つかあるが、あれは支部であって本部は、この屋敷である。
ダビッドが、領土について明るくない事は予め予想していたが、こうもうまくいくとは思ってなかった。
ダビッドは、トラアナ地区を委譲する事で、降爵と屋敷を失ったのである。




