奪った命を背負っていく覚悟を。奪われる覚悟を。
危ないからと言われ、2階にある自分の部屋に戻りバルコニーから戻った事が分かるように手をふる。
それを合図に4人は戦いながら詠唱を繰り広げる。
魔法がぶつかりあっては消え砂埃が舞う。
キーーンと音がする。鉄がぶつかり合う音だ。
「ワンドの2かいほーう!」
「カップの3展開」
「えー! 2までって言った本人がどッーして3使うのさ!」
「火属性はやっかいだからだ。燃やされたら困る。ソードの2解放」
「ほっんとーに! アルファカーサと戦うのヤダ!」
アルファカーサに翻弄されるハインツは悔しそうに懐に飛び込もうとしてアルファカーサの鞭に足払いされていた。
サディストに鞭って……。
口が引き攣りつつギルベルトとクラウスに目を向ければ迫力満点な戦いが繰り広げられている。
近づいては離れ、剣をぶつけ合いながら相手の隙を狙うように詠唱していく。
ギルベルトは剣が掠っても気にした様子もなく、目をそらすことはない。否、逸らせないのだろう。
殺気が肌に突き刺さる。
凄いと思うと同時に怖いと肩を震わせる。
こんなにも簡単に人を傷つけることができるなんて。
ゲームだから楽しんでいたんだ。
覚悟を決めろ。
奪った命を背負っていく覚悟を。奪われる覚悟を。
「ステファニー」
アルファカーサの声にハッと顔を上げる。いつの間にか戦闘は終わっていた。
「おいで。ステファニー」
優しい音色に心がギュとなる。泣きそうになる。
「ステファニー」
腕を広げるアルファカーサになんの躊躇もしないでバルコニーから飛び降りた。
年甲斐もなくぎゅうぎゅと抱きつく。
背中に回された手が宥めるようにゆっくりと撫でる。
「しゅてふぁにぃ。いたい、する、いった。ごめにゃしゃい」
「俺たちは、いつも、やってることだし、気にする事ないよ」
「そーそー! 男の勲章だよ!」
「おとこのくしょうだよ?ありとうごじゃましゅ。しゅごいでしゅた」
「かっこいいってこーと!」
「?」
何を言っているのか分らなくてアルファカーサを見る。
「俺、男。ステファニー、女。俺、かっこいい。ステファニー、かわいい。分かる?」
「??」
かっこいい。かわいいが理解できなくて首を傾げていれば。これかっこいい。これはかわいい。と色々なものを指さして教えてくれる。
なるほど。そういう意味だったのかとハインツを見上げる。
「はいつしゃま、かこいい」
「でしょでしょー!」
「かこいい! かこいい!」
手を取り合って褒めてたら、こめかみがギシリと悲鳴をあげる。
「いたいいたいたい!」
「ステファニー魔法。やりたくなの?」
「するましゅ! すりゅましゅ!! いたいめっめっ!」
「なら説明するために一旦戻ろうか。クラウス様たちはまだいるんですか?」
「コイツは4属性持ちなんだ。俺たちもいたほうがいいだろ」
「分かりました」
アルファカーサはニコリと笑いながら指に力が加わっていく。
離されることのない指に泣きながらサロンに引きずられた。




