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この加虐的シスコンどうしてくれよう

 あれから1ヵ月が経過した。

 慌ただしくも充実した毎日に子供のころを思い出す。あの頃はなんでもキラキラ輝いて見えた。

 いつから夢を抱かなくなっただろう。いつから上を見ることを止めたのだろうと感傷に浸る。


ドゴォォォン!


 感傷に浸らせてくれ!

 音にイラッとして勢いよく机を叩いたら家庭教師のマイナ先生が体を飛び上がらせた。


「ごめにゃ、ごめにょ、ごめ、な! しゃい」

「い、いえ。文字もだいぶキレイにかけるようになりましたね。文字、キレイ」

「はい。ありとうごじゃましゅ」


 私は長い言葉を喋られるとまだ理解ができなくて。何を言っているのか最後に簡潔に教えてくれる。

 だいぶ成長できたと思う。日常会話なら成り立っていると胸を張って言える。

 授業を再開して一生懸命文字を書いているのに爆発音が煩い。

 アルファカーサの友達がくると言っていたから、騒いでるのだろう。

 魔法世界の友達と遊ぶというのは、こうも派手なのだろうか。イライラと指が机をリズムよく叩く。

 集中力が無くなったことに気づいたのかマイナ先生は今日は終わりにしようと言ってくれた。

 寝る前に文字を練習しよう。その前に騒音を出しているアルファカーサを絞めに行かなくては。


「ありとうごじゃましゅた」

「はい。お疲れ様でした」


 マイナ先生と一緒に外にでて頭を下げて見送る。そんな事はしなくていいと言われたが教わってる身なのだからと一生懸命説得した。

 頭を下げたまま横を見れば攻略者が全員揃っている。

 あー。うん。気づかなかったふりして今日はとりあえず部屋に戻ろう。

 

「にやあああああ!」


 頭を上げて踵を返したら鞭が鼻を掠った。

 下手したら鼻が無くなってた!ヒリヒリする鼻を押さえて元凶を叱るように呼ぶ。


「ありゅふぁあしゃ!」

「おや。痛い?」


 コクコクと頷けば鼻を押さえてた手を外され、鼻にちゅっとキスをされた。

 軽く抱きしめられ顔にキスの嵐……。

 この加虐的シスコンどうしてくれよう。


「俺に気づいてたのに無視したステフがいけないんだよ?無視、ダメ、ね?」

「むしゅにゃい」

「虫じゃないよ。俺、いた、分かる?」

「はい」

「話してくれないと寂しいよ。話す、する、しない、寂しい」

「ゆうじゅんいりゅ。めっ。ね?」

「めっ、じゃないよ」

「おい。俺様がいるのが見えねぇのか? 甘々な雰囲気作ってるんじゃねぇよ!」

「……ステファニー、部屋に戻っていいよ。部屋、戻る」

「ん、ありゅふぁあしゃ。しっ。ね」

「いい度胸じゃねぇぇぇか! てめぇら沈めてやる! カップ(Three)の(of)3(Cup)解放!」

「カップ(Five)の(of)5(Cup)展開」


 おお! 水魔法が発動された! 魔方陣がかっこよくてやばい。

 キラキラした目を向けたのが分かったのか、アルファカーサは得意げに笑った。


「しゅおいしゅごい! しゅごーーい! ね! ね! しゅごい! しゅごーい!」


 かっこいいという単語は知らないから、凄いって言葉しかでない。


「しゅる!しゅてふぁにぃしゅる!」

「待って。解放……解除。クラウス様大丈夫ですか?」

「ァア゛! 大丈夫に決まってんだろ!」

「それは良かった。あまり無理されませんように」


 アルファカーサに倒されたのは、クラウス・L(ルアード)・バスケニア。

 バスケニア王国第二王子である。金髪で三白眼な緑目。実際見てみると性格も相まってちょっと怖い。


「ステファニー、友人を紹介するね」

「はい」


 このままスルーしてくれても良かった。

 私の心情に気づくわけもなく、残り二人のところに向かう。

 ポンと腰を軽く叩かれて挨拶するようにと即される。

 両手でスカートの裾をつまみ片足を斜め後ろの内側に引き、もう片方の足の膝を深く曲げ腰も曲げて頭を深々と下げた。


「しゅてふぁにぃ・ふぁりむしゅ。でしゅ。よろしゅくおねがいしゅましゅ」

「めっちゃ可愛い赤ちゃんみたーい! すっごい破壊力だね! 忘れられてるのは残念だけど……。僕はハインツ・キルヒアイゼンです。よろしくねー」

「はいんつ、きりゅ、きるひあいぜしゃま」

「うんうんー。ハインツでいいよー」

「オレは、ギルベルト・シュトラウス。よろしく」

「ぎるべりゅと、しゅとりゃうしゅしゃま」

「ギルでいい」

「ぎるしゃま」

「クラウス・ルアード・バスケニアだ」

「くらうしゅ、りゅど、ばしゅけにゃしゃま」

「一か月練習して、これか。ひどいな」

「さ行が難しいみたいで。ん、も抜けます。一音ずつならしっかり言えるんですけどね」

「可愛いからこのままでもいいと思うけどなー」

「可愛いからって放置したらコイツの為になんねぇだろ」

「あ、クラウス様も可愛いって思ってるんだー。へぇー」

「なっ!?」


 はしゃぎだした攻略者たちを見て、年相応なんだなって感慨深くなる。

 ハインツ・キルヒアイゼン。髪と目は両方とも真っ赤に燃えるように赤い。間延びした喋り方が特徴的。

 ギルベルト・シュトラウス。腰まである髪と目は両方とも真っ黒で褐色肌。寡黙。

 私としてはギルベルト推しだな。ヒロインにはギルベルトを選んでほしい。って私は誰の婚約者なんだろう? ゲームのときはヒロインが決めたら決まるけど、リアルならもう決まっているはずだよね……。

 後で母上に聞いてみよう。


「さてと。ステファニー」

「はい」

「魔法、見る?」

「まほう?」

「水。ドバー」

「みる!するましゅ!」

「そうだね。見て、しようね」

「はい!」


 待ちにまった魔法だ! これで勝つる!!

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