恋なんて不確かなものより永遠に家族という血の繋がりがいい
目が覚めた。目が覚めてしまった。
慣れ親しんだ場所ではなくファンシーな部屋……。夢じゃなかったんかい。
まだ希望はある。起きたつもりがまだ夢の中だったんだ。おやすみ私は寝る。
「おはよう」
ニコリと凶悪そうな笑みを浮かべ布団を剥いできた人を見れば青のイケメンだった。
布団を返してくれそうになくて仕方なくイケメンを見る。
そういえば見たことある子なんだよなー。青の髪ってそうそういるものでもないし。てかV系バンドぐらいでしか見たことないぞ。
「アルファカーサ様。お支度が済むまで席を外していただけませんか」
「ステフの無理のないように頼んだよメリッサ。行くよイアン」
「かしこまりましてございます」
何言ってるのか理解不能。これ死活問題だわ。
どうするよ私が理解してないことをいいことに。
「この馬鹿どうするんだ?」
「煮て焼くなり好きな調理方法をおっしゃってくだされば……フフフ」
みたいな会話されてたら怖いぃぃぃ。
「ステファニー様」
肩を叩かれてメイド服を着た人がジェスチャーを始めた。
おお。分かる。分かるぞ! 服を脱げって事だな!
煮られることも焼かれることもなさそうだと脱ぎ始めたら止められた。ああ。色々やってくれるのね。
着方も分からないからメイドさんらしき人って長いからメイドAさんにしよう。に任せることにした。
着せてもらいながらジェスチャーの偉大さを知ったね。ジェスチャーで世界が一つになれるって知ったね。
そういえば、私って日本に帰れるのかな。
聞いたことない言語って事は私が知らない国か。宇宙人に攫われたって事だけど。世間で噂されているような目が真っ黒で腕とか長いタイプではないし友好的だし。まぁどっちでもいいんだけど。買ったばかりのVRFPSが出来ないのがとても悔しくて泣ける。
急に泣き出した私にメイドAさんは何かをいいながら頭を撫でてくれる。
ゲームの事もそうだけど、久しぶりに温かい雰囲気を感じて心がぎゅってなった。
歳を取ると涙脆くなると言うが本当らしい。
ごまかすように笑ってみたらぎゅうぎゅう抱きしめられた。
おおう。胸がたぷんたぷんで気持ちいい。ごちそうさまです。
しばらく抱き合ってからドレスを着せてもらいメイドAさんはメイドBさんに話しかけるとメイドBさんはいなくなった。
椅子に座るように促され紅茶とクッキーが出される。毒は入ってないんだろうけど勇気がでない。頭を下げて入れてくれたことに感謝する。
ポケーと壁を眺めていたらメイドBさんが連れて戻ってきたのは美男美女の人たちでした。
メイドAさんが頭を下げたのを見て私は慌てて立ち上がって同じように頭を下げた。
顎を掴まれてグイッと上を向かされる。グイッじゃないグキャって骨が悲鳴を上げた。
顔を顰めて痛みに耐えてたら手を放されてふかふかなソファーに戻される。
ダンディと美女は前に座りイケメンは隣にメイドAさんはソファーの後ろにメイドBさんは部屋を出ていった。扉のところには執事Aさん執事Bさんらしき人もいる。
重々しい雰囲気に沈黙が続く。
新しい紅茶が入れられて飲まないのかとダンディにジェスチャーされたが手を振って断った。
ダンディはメイドAさんと話はじめる。
「旦那様、ステファニー様は紅茶を召し上がりません」
「クッキーはどうだ?」
「手をつける気配はありません」
「そうか。どうにか食べさせなくてはいけないな。話はできたか?」
「いえ。一言もお喋りになっておりません。ただ不安なのか涙をポロポロと流しておりました」
「……そうか。言葉が通じないというのは大変だな。ステフの家族だと伝えられたらどれほど不安を取り除いてあげられるか」
話している内容が深刻なのか暗くなっていく面々。
イケメンは私に出された紅茶に手をつけて覆いかぶさるようにして私の口を覆った。マウストゥマウス。
舌も入ってきた。なにこの子。何がしたいの。意地でも口あけてやらないと睨んでみたら指も突っ込まれ無理やりこじ開け、口に含んでいたらしい紅茶が入ってくる。口移しの紅茶は、もう体験したくない。
毒が入ってないよって教えてくれたんだと思うんだけど、末恐ろしい子!
疑心暗鬼してる私が悪いんだけどさ、私のを一口飲んで渡してくれたら私も飲んだと思う。
いや、毒見してもらうのは申し訳ない。ここは潔くクッキーに手を伸ばす。
いける。いけるよ私! いまやらなくていつやるの! 今でしょ! 待て待て口逃げるな。逃げるなってばァァァアア!
一人攻防戦をしてたらイケメンがクッキーにかぶりついて残ったクッキーを私の手ごと口にグイグイ押し付けてくる。
またしても毒見をしてくれたイケメンに頭を下げてクッキーを頬張る。今度は上手い。
イケメンはクッキーを取って一口食べると私に押し付けてくる。ありがとうありがとう。実はお腹空いてたんだよね。
なされるがままクッキーを頬張ってたらお皿に置いてあったクッキーが無くなった。食べたりない。
申し訳ないと思いつつもクッキーの催促をした。エアクッキーを食べるフリを披露したら理解してくれたのかメイドAさんが出て行った。
「でだ、黙ってみていたが紅茶を口移しで飲ます必要はなかったと思うが?」
「悪戯です。飲めるようになったんだからいいでしょう」
「アルフ。ステフを可愛がるのは構わないが兄妹の枠を抜けないようにな」
「当然です。恋なんて不確かなものより永遠に家族という血の繋がりがいい。私と同じ血が流れると思うと歓喜せずにはいられません」
イケメンは蕩けるような笑みを浮かべて私の頬を手の甲で撫でてきた。ぞぞぞぞって鳥肌たった……。
「……兎に角、兄妹の枠を抜けるような事はするなよ。毒見は別につける」
「いえ、俺がやります」
「なにかあったらどうする」
「なにかあったらステフを道連れにするので大丈夫です」
「なんだそれは。毒見とは言わないし大丈夫じゃないだろう!」
「信用なりませんし、ステフが食べるモノに口をつける人間がいるなんて耐えられません。却下です。却下」
「こちらだって却下だ! 却下!」
修羅場ってるけど大丈夫?美女を見れば女神様のようなほほ笑みが返ってきた。尊い。
ヒートアップして殴り合ってるけどいいのだろうか。人間の域を超えている。私には止められない。
美人も我関せずで紅茶をすすってるから私も知らんぷりをしてクッキーを待った。
クッキーを持ってきてくれたメイドAさんに伝わらないだろうけど「ありがとうございます」と声をかけて頭を下げた。
美人は待ってましたとばかりに私の隣に座ってクッキーを一口食べて私の口に押し付けてきた。
イケメンもそうだったけど押し付けるの好きだな!?それでもありがたいと齧り付いたけど。
美人にもお礼を言って何度かクッキーをもらった。
で、美人は私の紅茶に口をつけた。
い や な よ か ん が す る!!
ですよねー!!
美人にも舌を突っ込まれ紅茶を流しこまれた。
助けてくれているわけだしキスぐらいどうってことないけど。心臓がもちそうもない。
「エリザ!?」
「こうしましょう。犯人を捕まえてくれたゲオルグに匂いを嗅いでもらい毒がないのか確認してもらいます。そしてステフの前で食事に口をつけて安全だと証明してあげたらいいのではないかしら?」
「さすが私のエリザ! 愛している!」
「私もですわ! アナタ」
急にいちゃいちゃし始めたダンディと美人におおふと声がもれた。




