ステファニーを連呼するアルファカーサに一同ドン引き
どこの世界でも理事長の話は長いらしい。
服装は基本自由だが騎士科は動きやすさを重視している為、騎士団とは色違いの軍服を着用している。
女子の制服は無いからと騎士団で着ていた軍服を身に纏う。
ヒロインは動きやすそうなドレスを着ていた。
騎士科に女子2人は珍しいのかチラチラとこちらを見て者もいるが興味も無いので無視を決め込む。
気づかれないようにそっと周りを見ると、この世界は軒並み顔面偏差値が高いようでこの年代の子たちは輝いて見える。
日本の私がこの場にいたらヒエラルキーは一番下に違いない。
入学式が終われば実力テストと言う名のチュートリアルダンジョンに行くことになる。
基本は4属性1チームの構成である。
ヒロインはいわずもがな攻略対象者たちと同じチーム。
なるべく関わりたくないから別チームに組み込まれてくれることを祈ろう。
「ステファニー様」
「しっ、ですわ」
軽く服を引っ張られて隣を見ればヒロインのソフィーナは理事長の話に飽きたのか小声で話しかけてきたが、どこで誰が見ているかも分からないのだ偉い人の話を聴かないのは将来の出世にも響く可能性がある。
私の返答に不満げな顔をしながらも前を向いたソフィーナの指を軽く触る。
ピクッと指が動いて不思議に手を見るソフィーナに今度は指を絡ませた。
女の子の手だと思いながら指で撫でる。
そしてふと、普通に握るならまだしも撫でるなんて変態行為に当たるかもしれないと手を離した。
ソフィーナの好感度を上げるはずがこれで下がってしまったらと思案してチラっと隣を見れば不満げな顔は解消されていたから大丈夫そうだと自分に言い聞かせて入学式が終わるまでのんびりと話に耳を傾けた。
「諸君入学おめでとう! さっそくだが実力テストを行う! 4属性1チーム。こちらでチームは編成したので呼ばれたら前に出てくるように!」
次々とチームが組まれ、私が呼ばれることは無かった。
やっぱりイレギュラーはダメってやつですか。
「ステファニー・ファリムス。君は見学だ」
「けんがく?」
「やる必要はないという事だ」
「?」
「戦う、しない」
リーノ教官の言葉が初めて聞く言葉で理解できなくて疑問符を飛ばしていたらアルファカーサが助けてくれたけど、戦わなくていいってどういう事だと余計疑問符が飛び交う。
「君は騎士団で銃の指導及び訓練を行い中級ダンジョンをほとんど一人で攻略したと聞いた。故にこの実力テストは不必要だろう」
「はい、ですわ」
「そろそろ騎士団の方々もお見えになる頃だろう。君には模擬戦をやってもらう」
「はいですわ!」
ところどころ理解できなかった言葉もあるが模擬戦という言葉に元気に頷く。
タイミングよろしく魔導師様、総団長、第一分隊と第二分隊が爽快と現れた。
シーンと静まり返った場に静かな声が響いた。
「入学おめでとうございます。今日は初めてのダンジョン攻略ですので無理のないように。少しでも怪我をしたならば私が治しますので遠慮なく申しでてください」
「1チーム1名騎士がつくが手出しはしない。気を引き締めていけ」
魔導師様と総団長のイグナーツにダンジョン攻略という実感が湧いてきたのか浮き足だつ子供たちにリーノ教官は一喝した。
「気を引き締めろと言われたばかりだろう! 注意事項だ。ボスは倒さず戻ってくるように。以上だ! これより実力テストを開始する!」
各チームで作戦が練られているのかポツンと佇んでいる私に声をかけてくれる人がいなくて意気消沈していたらイグナーツが近づいてきて手を握ってきた。
「入学おめでとう」
「ありがと、ございます」
「入学祝いだ」
そう言うと後ろに控えていたローラントは銃が3丁に3連のヒップホルスターを渡してきた。
右に1丁。左に2丁入れられるタイプだ。
「ありとうごじゃましゅ!」
興奮して早口になる。
これで属性付与していても敵に遅れをとることはない。
未だに繋がれている手を振り払っていそいそとヒップホルスターを腰に巻きつけ銃に属性を付与していく。
これで4属性瞬時に撃ち放題だ。
うっとりと銃を出し入れして感触を確かめているとイグナーツに腕を掴まれる。
「銃ばかり見るな」
「ホルスター見るしてるですわ」
「そうじゃない。俺見て俺!」
いじけたように言うイグナーツに魔導師様は可笑しそうに笑った。
「ほんとイグナーツは変わったわね。でも今は仕事中なのだから慎みなさい」
「ぐぅ。婚約者に会ったら喋りたい触りたいと思うことはいけませんか」
「仕事中です。週末にも会えるでしょう。それに婚約者じゃなくて婚約者候補でしょう」
「いつまで候補なんですか!?」
「私に聞かれても困るわ」
「候補ってことは増える可能性もありますよね」
「むしろ貴方が取消になることもあるんじゃなくて?」
「! ステファニー既成事実を作ろうか!」
「きせいじじつ?」
「そうSE「言わせませんよ」
鞭をしならせながらアルファカーサは足早にやってきてイグナーツから私を奪った。
「俺はアナタを認めていない。俺のステファニーをアナタに渡すわけがない。ステファニーの為にならないのならアナタはいらない。ステファニーを傷つけていいのは俺だけだ。俺だけのステファニーだ」
最近は大人しいと思っていたがそうでもないらしい。
ステファニーを連呼するアルファカーサに一同ドン引き。
「彼女の初めては俺が全てもらいます。アナタは彼女を守る為のナイトでしかない。指を銜えて見てるがいい」
ついばむようなキスをしてアルファカーサは鼻で笑った。
病みはじめたアルファカーサを銃のマガジン部分で勢いよく殴る。
ソフィーナか魔導師様が治してくれるだろうと倒れてきたアルファカーサをスルーして地面に激突するのを見守った。
この段階でヤンでるってヤバくないか。
取りあえずとりあえずどうしよう!
パニックで何も考えつかない。
イグナーツは震えている私に気づいたのか抱きしめて背中をさする。
「俺が守るから一人で抱え込むな」
上書きするようにキスをしてきたイグナーツの頬にペシリと手を当てる。
「ありがとございます。だいじょぶ」
釈然としない表情をしながらも頷いてくれたイグナーツから離れて騒然としている場をどうにかしないといけないと言葉を発しようとしたら魔導師様が口を開いた。
「イグナーツ。貴方の発言で場の雰囲気が乱れたのだから貴方がどうにかなさい」
「シスコンだろ。今まで一緒にいたんだ離れるとか考えたら過剰にもなるんじゃないか? 気にするな。ただ、行き過ぎだと思ったら止めるか報告してほしい」
頭を下げたイグナーツにそこにいる生徒全員頷いた。




