マゾヒストの対処の仕方なんて知らないから!
あれから色々とあったが無事、銃の指導と訓練を終えた。
騎士たちの腕前を見たが可も不可もなし。
だからと言って実践に投入できるのかと言われれば否だ。反動を受けてから照準を合わせるのに時間がかかりすぎる。
魔法を入れた銃。略して魔銃を渡せればいいが属性付与できるのが私と魔導師しかできないとなるとそれも厳しい。
いい指導方法は無いかと考えたが訓練で疲れ果てた体では何も浮かばない。
とりあえず今は目の前にいるローラントを排除するのが先決だ。
訓練が終わった後、ローラントに案内されたのは庁舎にある個室のシャワールームだった。
鍵をかけたローラントの瞳がゆらりと揺れた気がした。
危険な香りがして構えた瞬間ローラントは目の前から消え、壁に顔を押し付けられお湯をかけられる。
背中についているドレスのファスナーがジジジと下げられ全力で抵抗したらローラントは離れた。
振り返る勢いを利用し回し蹴りを繰り出したら避けることも防ぐこともせず、蹴りを受け入れていた。
やられた。
「もっとです! もっと!!」
またも壁に押し付けられ股の間に太ももが入ってゆるゆると刺激を与えられる。
漏れそうになる声を抑えながら頭突きをする。アルファカーサと違ってローラントは意識を失う事がなかったが緩んだ手から離れてシャワー室を急いで出た。
マゾヒストの対処の仕方なんて知らないから!
怒りに任せて執務室のドアを開ければイグナーツが目に入ったが来るとき着ていたドレスを引っ掴んでパーテーションの裏に引っ込む。
なんなんだ! ほんとなんなんだ! 興味のない人間にセクハラされても嬉しくもなんともない! 思考回路いかれてるんじゃないか!? 幼気な少女だったら怯えて家に引きこもるわ!
――おばさんだって心が砕けるわ。
日本にいたときは男からセクハラされることなく平凡に過ごしていた。顔だって平凡だ。それでも人を好きになり付き合って、最後までやることはやった。そこには愛があった。
この世界に来て、見目がいいからとなんの過程もなく好きでもない男達にセクハラされ所詮どの世界でも性格より顔や体なんだなって思い知らされる。
ローラントの場合は顔や体より加虐的な部分で気持ちよくさせてくれそうな人で私を選んだんだろう。
どこで血迷ったのか分からないが、嫌な事をすることで暴力を振るわせるっていうのが気に食わない。
怒りで頭がおかしくなりそうだった。
父上を待つこともイグナーツに挨拶する気もなく私は城をあとにした。
城の近くに中級ダンジョンがあったはずだとゲームの知識を頼りに向かう。
死ぬかもしれない。それでも発散しなければ私がおかしくなる。ステファニーよ、無事を祈っていて。
少し冷静になりながらもダンジョンに足を踏み入れる。
『いただきます』
モンスター倒すたびに恨みつらみを叫んでいた。レベルアップの音もその都度聞こえる。
『一回でもモテてみたいって思ってた私が間違ってた!』
『チカンだ! チカン! 訴えてやりたい!』
『むしろ再起不能にしてやりたい!』
『イケメンだからってなんでも許されるとおもうなよ!』
『ヴァーーーーーカ!!』
フーフーと肩で息をして銃に魔力を込めていたらモンスターが襲ってくる。
あぁ、これは攻撃避けられないやと他人事のように考えていたら斧が飛んできてモンスターと一緒に壁にささる。
流石乙ゲーの世界、ピンチになったら助けてくれるってやつか。
『大っ嫌いだ! お前らも! この世界も! だいっきらいだ!』
「泣くな」
ゲームの仕様かと思うと八つ当たりせずにはいられない。
抱きしめてきた男イグナーツに抵抗する気力も無くてとりあえず足を踏む。
ダンジョンはシリアスな雰囲気をぶち壊すかのようにモンスターを放ってくる。
今の私にはありがたいとモンスターに銃を向ける。
『死にさらせぇぇぇ!』
『クラウスの初心が愛おしい!』
『ギルベルトの優しい心が好きだ!』
『ハインツの茶目っ気が恋しい!』
『アルファカーサ! 君は自重して……』
『騎士組調教してやる!』
『手玉に取ってやるから覚えてろよ!』
『セクハラされたら倍返しだ!』
『私の前に立つんじゃねぇぇぇぇ!』
イグナーツにギリギリのところ目がけて発砲するも避けられる。楽しそうに避けるイグナーツに顔を引きつらせながらボス部屋にたどり着いた。
弱点は分かっているので銃の属性を変えてボスに突っ込む。
イグナーツが強いからなのかあっさりと倒された。
レベルアップの音が連続して聞こえる。
ボスを倒すとしばらくは雑魚も出てこないので戻りながら戦利品を拾っていく。
『ごちそうさまでした。ありがとう』
そう声をかけてダンジョンを出る。
出た瞬間、ビンタからの抱擁頂きました。
雨がポタポタと降ってきたと顔を上げたらイグナーツは泣いていた。
ポカーンと口を開けて凝視していたら目を塞がれた。
「ありとうごじゃましゅ。ごめなしゃい」
イグナーツは声にならないのかしばらく泣き、落ち着くと説教が始まる。
何言ってるか分からないと頭を傾げてやり過ごす。
父上は屋敷に戻っているらしく送ってくれる道中も、説教は終わらない。
元はと言えばイグナーツとローラントが悪い。
触るのダメだと告げたらしょんぼりとしている。
様子がおかしかった私を追いかけてきてくれたイグナーツを無下にできなくて、これならいいと、そっと手を握った。
まるで私に恋しているみたいだと嬉しそうに笑うイグナーツを仰ぎ見る。
屋敷に戻ったら私とイグナーツは父上にしこたま怒られた。
私は一人で城を出てダンジョンに無断で入ったこと、イグナーツは私の制服をハレンチにしたことを。
あのドレスに合うように上に羽織るモノを作るように約束させていた。




