本日は私の為にお越しいただきまして。誠にありがとうございます。楽しい時間をお過ごしください
あの後、目が覚めたアルファカーサは残念そうに肩を落としながら説明してくれた。
1週間で使えるようにならなければ銃はクラウスの手元に戻ると。
1日目は銃を開発した人がやってきて使い方を教えてくれた。
実際に撃ってみると反動が凄い。片手で撃てるようになるには肩から鍛えないと肩が吹っ飛ぶかもしれない。
昼まで言語を学び、昼から夜にかけて筋トレし銃の練習をして早6日目。
技術が発展していないからなのか需要と供給が追い付いていないからか弾に掛かるお金が半端ない!
1日1弾倉しか撃てない。これでは使えるようにならないと空になった弾倉を振る。
どうにかなんないかなー。うーんと唸りながら1時間、銃と弾倉を見比べてみてハッ!と閃いた。
弾倉に魔法込めたらいけるんじゃないだろうか。
『運命の輪。ペンタクルのA解放。なーんちゃって』
魔方陣が浮かびだして弾倉に土魔法が吸収され淡く光る。
で、できちゃった。日本語で出来ちゃった。これってチートってやつ?なんて私に都合がいい……。
属性付与の運命の輪は回復補助魔法が使えないとムリなのに。
ゲームでは普通に進めればヒロインが中盤で使えるようになる。
他の回復補助魔法が使えるのかとやってみたが使うことはできなかった。
これで実際使えるのか弾倉を装填しスライドを後ろに引いて銃身内に弾をこめる。
暴発したらどうしようと手に汗握る。
心臓の音が耳にとどく。
安全装置を外して構え的に狙いを定め指に力を込めた。
パンッと通常の音を鳴らしつつ土魔法の弾が的めがけて勢いよく飛び、的は砕ける。
暴発しなかった事に胸を撫で下ろしつつ、銃弾よりも威力が上がってる事に慄いた。
反動も全然無かった。これで憧れの二丁拳銃も夢じゃない。
どうして、なんでと考えたところで答えなんて出ないし私は頭よくないので早々に考えるのを止めた。
弾倉を抜いて銃身内に残ってる弾を地面に向けて撃つ。
ふと後ろを振り向けば、この6日間直立不動で後ろに控えていたメリッサの口が引き攣っていた。
「かじょく、しっ。ね?」
明日驚かせてやるんだからとメリッサに口止めをする。
コクコクと頷くメリッサの手を取って今日は終わりだと歩く。
夕食時に色々と聞かれたが分からないフリをしてやり過ごした。……まぁ殆ど分からなかったが。
運命の7日目。今日は夕方から銃が扱えるか見せる為、語学は休みになったが昨日の感じだと大丈夫そうなので語学に時間を当てお昼を頂き時間を待っていると来客が揃ったと告げられた。
こっそりと庭を見れば攻略対象者とシークレットキャラ、それにヒロイン親子がいることになんのエンディングなのかと、失敗したらどうなるんだろうと天を仰ぐ。
この現実から目を逸らすようにシークレットキャラとヒロインを見つめる。
メリッサに庭に一人だけいる女の子は誰だと声をかければ教えてくれた。
ヒロインは食事の後、アルファカーサと初顔合わせだったらしい。
決まってしまったから仕方ないと考えない事にしていたが、逃げ道のないアルファカーサルートを思い出して泣きたくなった。
なにがなんでも騎士団入りしてやるとシークレットキャラに目を向ける。
イグナーツ・ヘンセル。紫髪に紫目の鍛え抜かれた体が男らしい。騎士総団長
アラン・グライエ。黄緑髪に緑目のフェミニスト。騎士副総団長
ローラント・リンドヴァル。オレンジ髪にオレンジ目のマゾヒズム。第一分隊長
ここで彼らの目にとまれば騎士団入りも夢じゃないが、マゾヒズムが率いる第一分隊には入りたくない。
普段は隠していて二人きりになるとマゾへと変貌する。そしてヒロインとのSMプレイはソフトだと思ってゲームしていたらガチプレイで引いたのを覚えている。
フェミニストな副総団長は浮気性。総団長は絶倫。
ステファニーに影響は無いからこの3人の事は気にしないでもいいが、どうなるかは分からないので警戒するに越したことがない。
覚悟を決めて庭に向かえば、待ってましたと視線が集まる。
堂々としようと決心していたのに顔がいい面々に見られて、こんな経験したことないと気恥ずかしさから視線が段々と下がる。
地面を見ながら父上の前口上を聞く。
緊張も相まってなんと言っているのか全くもって分からない。
背中をトンッと軽く叩かれてビクッと肩が揺れる。
恐る恐る顔を上げて事前に教えられた言葉を口にする。
「ほじゅちゅは、わたくしゅの、ために、おこしゅい、ただきましゅて。まことにありと、ごじゃましゅ。たのしゅい、じゅかお、しゅごしゅくだしゃい」
スカートの裾を掴み最敬礼をする。
教えられた通りに言えたと顔を上げれば賓客の後ろにいるアルファカーサが肩を震わせながら手を交差してバッテンを作っていた。
完璧にマスターした気でいたからズーンと項垂れながら今まで練習していた射撃場に向かう。
誰も一言も喋らない。この重々しい雰囲気の中でやる方が緊張する。
昨日の2発しか撃ってないから「どうぞ」と手渡された弾倉に「あるでしゅ」と首を振る。
的は10枚しかないので弾倉に入っている11発で事足りる。
後ろにいる面々にお辞儀をしてスライドを後ろに引く。
前を向いて安全装置を外し右手だけで構えれば慌てたような声がかかる。
「しっ。ね?」
人差し指を唇に当ててなんも問題は無いとニコリとほほ笑めば、喉が上下する音が聞こえた気がした。
深く息を吐いて構えた瞬間、銃をリズミカルに発砲していく。
全段命中した事を確認し残りの一発を残して置いてもしかたないと地面に撃ってホールドオープン状態をスライドストップを下げ解除し安全装置を戻して後ろを振り返る。
何が起こったのか分からないみたいな表情をした人たちに驚かせる事ができたと顔を綻ばせた。




