第四百一話
はるなの装備を一通り確認し終えると、次は秋と冬子とリズが一斉に白い布を外していく。
「あ、あぁ、もう! 一人ずつやったほうが盛り上がるのにー!」
アリサが不満そうに唇を尖らすが、纏っていた布をたたみながら三人は苦笑する。
「だって……」
「この布……」
「動きづらいんです……」
すっぽりと全身を覆っていたため、動きを制限するものであったそれを三人は早くとりたかったらしい。全員が苦しさから解放されて少し安堵した表情になっている。
「あー、うーん、ごめんね。確かにそうかも」
布を用意したアリサは事情を察して思わず謝る。
風通しの悪い材質の布のせいで空気も籠ってしまう。このままひとりひとり見せていたのでは長い時間入っていなければならないため、どうせ見せることに変わりないのだからと暑さや息苦しさを考え、脱いでしまおうと決めたようだった。
「おー、三人の新装備も可愛いね。秋の装備は格好いいね。すごく強そうだ」
大輝は姿があらわになった三人の装備をひとりひとり見てわあっと感動したような表情になる。彼の口から素直な感想が出た。
秋の以前の防具は動きやすさを重視したシンプルな鎧だった。だが今度はデザインも細かく施され、スタイリッシュな中にも優美であり、尚且つ格好いいものになっている。
この『戦乙女の鎧』は、スポーティーな印象を持つ秋によく似合うすっきりとした緑の色合いが映えていた。
「ありがと、基本的に身体能力を底上げしてくれる装備になっているの。あとは、いくつかいざという時の秘密兵器があったり……それから、武器はこれね」
嬉しそうに語る秋が剣をすらりと鞘から引き抜く。
細身の片手剣であるが、この剣にも竜鉄を使っており、強度は十分である。
刀身は青みがかっており、うっすらと魔力を帯びている。
これには竜鉄に加えて、ミスリルを多めに使っているからだ。そのため、魔法剣を使う秋にとっては使いやすい武器になっていた。
「綺麗な武器だね、魔力がすごく通りやすそうだ」
うんうんと頷きながらじっと秋の武器を見つめる大輝は、一目でその武器の特性を見抜いていた。
「さすがにここでは試せないからあとで、裏庭で試したいわね。――というか、先に行ってくるわ」
武器を披露したことで秋はいてもたってもいられない様子で、すぐに裏庭に向かっていった。
「はは、じゃあ冬子とリズの装備はどんな感じかな」
苦笑交じりで秋を見送り、振り返った大輝の言葉に冬子が無言で頷いた。
「私の装備は、このローブ。布だけどかなり防御力が高いし、魔法を使う際にサポート機能があるから魔法がすごく使いやすい、はず……」
ぺたりと装備に触れながら機能を説明するものの、冬子もまだ自分の魔法を試していないため、聞いた限りの話でしか語れないようだ。
冬子が身にまとうのは『魔導士のローブ』。
吸い込まれそうなほどの濃い青を基調としながらも重たさを感じさせず、ところどころ細かい文様が刻まれている。ローブの中は華美ではないが、複雑な銀色の装飾がされた気品のあるドレスになっており、細身の彼女に似合う魔法使いらしいデザインとなっている。
手にしている杖は『精霊の守り手』と呼ばれるものだ。
精霊に愛されし者の称号を持つ冬子にふさわしい武器となっている。各種の魔法や精霊との相性が良く、これまで以上の能力の発揮が期待できるだろう。
「前のローブと同じで青がベースになってるみたいだけど、デザインがなんか前のものより洗練されてる感じがするね!」
ニコニコと笑顔で大輝がそう評価すると、アリサが胸を張っていた。
「ふっふーん、そうでしょそうでしょ! 私がデザインしたんだから、そう思って当然よ!」
「いや、作ったのは……」
思わず手を伸ばしたボグディがぼそりと言うが、アリサは自分の手柄だと誇っている。アントガルのようにぶっ飛ばされたくないため、ボグディはがっくりとうなだれてそれ以上の指摘をするのを止めた。
「リズの服も可愛いね」
改めて向かい合った大輝にふわりと笑顔で褒められたリズは頬を赤くしている。
「え、えっと、その、私は動きやすいように作って下さったようで……回復魔法も近くにいかないと使えないのと、弓矢での攻撃になりますので」
もじもじと落ち着きないリズは照れながらも自分の装備の説明をしていた。合間にちらちらと大輝と目を合わせては逸らすという恥じらいを見せている。
そんな彼女の身を包むは『プリンセスドレスローブ』。人族の姫である彼女の上品な雰囲気を損なずに、かつ動きやすいミニスカートタイプのドレスとなっている。
金色の美しいロングヘアの彼女を輝かせる色合いとデザインがプリンセスの名にふさわしいものだった。頭の上で輝く白銀のティアラやアクセサリが輝きを放っている。
彼女の武器となる弓は『プリンセスアロー』。金色に輝く綺麗な弓は女性らしい細やかな装飾が施され、芸術品としても価値がありそうなものとなっている。
「うん、みんなすごく似合ってて綺麗だ」
女性陣のどれをとってもそれぞれの特徴をよくとらえ、かつさらに美しく洗練されたものへと昇華する装備に大輝は自然と笑顔になる。
裏庭に先に行った秋を含めて、四人とも種類の違う美人であるため、するりとタラシのような発言が出てくるが、これは大輝の素だった。
何の裏もない言葉に残った三人は顔を見合わせて嬉しそうに笑いあった。
「私たちも裏庭に行こう」
それは冬子の提案だった。彼女も新装備を試したいらしく、うずうずしていた。それははるなもリズも、そして大輝も同様だった。
「うん、行こう!」
まだ装備の説明書を見るのも途中だったが、新しい装備を手にして試したい気持ちは抑えられず、我先にとやや駆け足で大輝たちは裏庭に向かって行った。
「――せい! ……ふっ!」
そこでは既に秋が的を自分で用意して装備を試していた。破壊された的がいくつか転がっている。
魔法剣を使う秋。それまで彼女が使っていた魔法剣とはその名の通り魔法で形どった剣だが、今回は作った武器を媒体にして魔法剣を生み出していた。
「うむ、いい感じに使いこなしているな」
彼女の試し切りを見たアントガルは腕組みをしながら満足そうに頷いていた。
魔法だけで剣を生み出すと、発動している間中、かなりの量の魔力を消費してしまう。
しかし、剣に魔力を流した場合は剣自体が魔力に耐えられないこともある。
そして、耐えられても魔力の流れが弱く簡単な強化しかできない。
その問題をなんとか解決したいと秋はアントガルに相談を持ちかけていた。
「あの剣なら、魔力はスムーズにいきわたって、剣を中心として強力な剣を作り出すことができる」
アントガルの言葉をそのまま表すように、秋はその剣を使って次々に的を壊していく。その勢いはすさまじく、各種の様々な金属を使われた的たちが無残な姿になっていた。
「しかし……ちょっとやり過ぎだ!! ちょっと止めろ! 中止だ!」
耐えきれないと大きく手を振りながら大声でアントガルが秋のことを止める。
「――えっ!?」
驚いた秋は慌てて剣を振るう手を止めた。発動していた魔法剣が一気に力を無くし、光の粒子となって魔力が霧散した。
どうやら秋は自分の武器をうまく使いこなせるように集中して魔法剣を使っていたため、今どんな状況になっているか把握していなかったようだった。
「……あ、あれ? こ、これは……?」
自分の周囲に転がるいくつもの的が全て原形をとどめないほど破壊され、剣戟の余波からか、大きく地面がえぐられていたのを確認した秋は、こんな状況になってしまったことに驚いていた。彼女の身体の後ろだけが綺麗になっているのがまた、その異様さを露わにしている。
「ちょっと秋ちゃん!? これはやりすぎだよー!」
ぷりぷりと頬を膨らませたはるなが駆け足で近づいて、えいやっと秋の頭を軽くチョップする。
「は、はるな。私、この剣がすごく使いやすかったから、その、つい……」
つい制御を忘れて夢中になってしまったことを反省した秋は慌てたように剣を鞘にしまうと、左右の人差し指を突き合わせながらもごもごと言い訳をしている。
普段はとてもしっかりしている彼女だが、武器のこととなるといささかうっかりしている部分があるようだ。
「これはすごいことになったねえ」
苦笑交じりに大輝は地面にあいた穴を見てそう言う。
秋はどこまでの性能なのかを確認するため、一切手加減なしで全力で攻撃を放っていた。
そのため、衝撃波で空いた穴やえぐられた地面の被害は相当なもので、かなり悲惨な光景となっている。
「あ、あはは……ちょっと力を入れ過ぎた、かな?」
「「「「「「「ちょっと!?」」」」」」」
困ったような笑いを浮かべた秋のその発言にその場にいる全員の声がかぶり、彼女は申し訳なさから身体を小さくしていた。
今年最初の再召喚更新となります、よろしくお願いします。
お読み頂きありがとうございます。
誤字脱字等の報告頂ける場合は、活動報告にお願いします。
ブクマ・評価ポイントありがとうございます。




