第四百話
「勇者が使う武器だから、白い剣にしてみた……というより、あんたをイメージしたら勝手にそうなったわけなんだが」
自慢げに語るアントガルは、大輝が話を聞かずに魂を抜かれそうになるほど剣に夢中であることを嬉しく思っていた。武器職人として、これは最大の評価だと思われるためだった。
「~~~っ、すっごく格好いいです! すごいです! めちゃくちゃ綺麗です!」
ぐるんと勢いよく振り返った大輝は子どもがおもちゃを買ってもらった時のよう――というには足りないほどそれ以上にはしゃいでおり、語彙力が著しく落ちていた。
「そ、そうか。喜んでくれてよかった……――あいつとは偉い違いだな」
頬を引くつかせてぼそりと顔を逸らしたアントガルの呟きは、はしゃいでいる大輝の耳には届いていない。近くにいたボグディだけが苦笑交じりに聞いていた。
目をキラキラと輝かせて大輝がじっくりと自分の剣を見ていると、きゃっきゃと何か盛り上がりながら女性陣が戻ってきた。
「あー! だいくん恰好いいー! すっごく素敵な装備だね!」
「その剣、すごいね!」
腕を広げて感動したように走ってきたはるなが防具を、目を細めてじっと手のほうを見た秋は剣を褒めている。
秋に至っては、単純に武器に興味がいっており、大輝の装備自体は目に入っていないようだった。
「悪くない……」
ぼそりと呟いた冬子。こくりと頷いてぐっと指を立てた彼女からの評価もおおむね好評だった。
「素敵です……」
とろけるように大輝に見惚れているリズはポッと頬を赤くしている。
「みんな戻ってき……って、なんでみんなはそんな恰好をしているの……?」
彼女たちはどうだったのか見ようと顔を上げた大輝は戸惑うような表情で問いかける。
それもそのはず、女性陣――はるな、秋、冬子、リズは同じ恰好をしていたのだ。
全員がお化けのコスプレでもしているのかと思うほど、身体をすっぽりと隠すように白い布をまとっており、何を着ているのかわからない。頭部も深いフードになっており、どうなっているのかわからないようになっていた。
「あーこれはね……」
気づいてくれたことを嬉しそうにしたはるなが言おうとしたが、彼女らの後ろからドヤ顔のアリサがやってきて説明を変わる。
「これは、あなたに驚いてもらうために私が考えたものよ! みんな順番に布をとってもらって、あなたに披露するの!」
腰に腕を当てて胸を張ったその宣言は、ドーンッという効果音がつきそうなほどの声だった。
「な、なるほど……」
白い布に身を包んだ女性陣の前に構えるアリサのあまりの迫力に大輝は気圧されてしまう。
「さーて、それじゃあ……誰からいっちゃう?」
くるりと振り返って茶目っ気たっぷりに微笑んだアリサはわくわくしているようだった。
それほどに、今回の四人の装備はアリサから見ても良いものであるようだった。
「じゃあじゃあうちからっ!」
はいはーいと大きく手をあげて最初に挙手したのははるなであり、みんなも異論はないようであった。
「じゃあ、脱ぐね!」
言葉だけ聞いたら危ない発言をしながら脱ぎ捨てるようにガバッと白い布をとると、はるなの装備があらわになる。
「じゃじゃーん!」
はるなは大きな胸を張ってポーズを決めると、新装備を大輝に披露する。
彼女の武器であるメイスは元々のものをベースに強化が施されている。
『女神のメイス』と呼ばれるそれは、対魔族様に強化された彼女の武器で、光属性が施されている。
それゆえに普通の武器ではダメージを与えられない魔族にも、このメイスでダメージを与えることができる。
胴装備は『光のマント』に、『癒やしの衣』。輝いているように見えるほど透明感あふれる白を基調とした装備で、細かい文様が刻まれている。
光のマント――その名のとおり光属性のマントであり、魔に対する抵抗が強く、魔法攻撃を防ぐこともできる。
癒しの衣は身につけているだけで、自身と周囲の仲間の小さな怪我などを治す。更に、回復魔法の効果を上げることもできる。
靴はデザインはバラバラだったが、女性陣四人が同じものを装備している。
『疾風の靴』――走る速度があがる靴であり、風の魔力によって小さな防御結界を張ることもできる。
そして、彼女のふわふわの茶髪の上で輝く白い『竜鉄のティアラ』。
「この服も靴もすごいんだけど、このティアラがいっちばんすごいんだよ!」
そう言ってはるなが魔力を込めていく。すると、白いティアラが青く光り出す。
「魔力を込めてからの……」
ふうっと大きく息を吐きながら精神統一していくはるなの姿に、次に何が起こるのか、大輝は息を飲んでみている。
「――正拳突き!!」
なぜただのパンチをしたのか――と思った大輝だったが、次の瞬間驚くこととなる。
彼女の突き出した腕からどんと強力な風圧が放たれ、大輝の方へすごい勢いで駆け抜けていき、彼は自分が押されたような感覚を受ける。
「う、うおお!」
急な衝撃に驚き、声をあげてしまうが、後方に倒れるのはなんとか阻止することができた。
「……い、今のはなんだい!?」
体勢を戻しながら大輝は目を丸くして、はるなに質問する。
「ふっふーん、これはねえ、このティアラの力なんだよ。身体能力を向上、そして魔力を攻撃に変換することができるの!」
自慢げにティアラを撫でるはるな。
援護やたまにメイスで攻撃するだけだった彼女だが、このティアラの力によって戦闘に加わった場合の動きのバリエーションを増やすことができる。
「これは、元々それなりに動ける人で、なおかつ魔力が高いハルナだからこそ扱い切れる装備ね」
そこへティアラを作成したアリサが付け加えるように説明する。
大輝たちのパーティの中では、多くの魔法が使える冬子が一番魔力量が多いとみんな思っていたが、実際に特殊な魔道具を使って魔力量を計測すると、はるなが最も多かった。
装備を作ってもらうだけを考えていた彼らにとって、今回の事は新たに自分自身の力量を知る思わぬきっかけとなった。
「他にも細かい機能はあるんだけど、とりあえずはこんなところかな~」
メイスを両手で握ったはるなはそう言うと、ふわりとほほ笑んでくるっとその場で回り、大輝に向けて全体を再度披露する。子どもらしい振る舞いの多いはるなだったがその瞬間、服装もあいまって大人びて見えた。
「――か、可愛い……」
幼馴染としてずっと一緒だった彼女の女性らしい一面を見た大輝は思わずそう呟いてしまった。
「ふっふーん! ……よかった、だいくんが気に入ってくれて……。えっとねえ、実はこの服のデザイン案はアリサさんと一緒に私も考えたんだよ~」
はにかむようにはるなが服の裾を掴みつつ自慢してくる。防具自体を作ったのはボグディだったが、デザインに関しては女性ものであるため、アリサと本人の希望をかなり多く取り入れていた。
「そうそう、はるなはいいセンスしてるわよ。デザイン重視のアクセサリを多く作ってきた私が言うんだから間違いないわ!」
「ねー!」
手を取り合ってにっこりと笑いあうアリサとはるなは波長が合うのか完全に意気投合しており、年頃の女子が二人ではしゃいでいるように見える。
「……アリサ、お前結構年が、げふっ!」
言わなければいいのに、ついアントガルがアリサの年齢について口にしようとした瞬間、どこからか飛んできた鉱石が顔にヒットして、そのまま気絶し、彼は横に倒れてしまった。
「――口は災いの元……」
頬を引くつかせて乾いた笑いをこぼしながら呟かれたそれは、アリサの性格をよく知っているボグディの言葉だった。
おかげさまで400話まで書き続けることができました。来年も更新頑張ります。
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