第三百二十七話
前回のあらすじを三行で
フレアフルの罰
トゥーラに向かう一行
蒼太とディーナはエルフの国へ
イシュドラにはエルフ国近くの森で降ろしてもらい、小さくなった彼と共にそのまま歩きで向かうことになった。エルフの国へ入国は王にもらった短剣によってスムーズに入ることができ、三人は真っすぐナルアスの工房に向かった。
工房ではナルアスとアレゼルが笑顔で迎えてくれた。
「ソータさん! ディーナリウス様! それと古龍さん!」
久々に顔を見れたことがうれしかったのかアレゼルは満面の笑みで三人の名前を呼んだ。
「みなさんようこそいらっしゃいました。その表情を見る限り戦いは無事に終わったようですね。お疲れさまでした」
蒼太たちの表情からすべてを理解したナルアスは落ち着いた笑顔で一行の労をねぎらう。
「あぁ、二人にも感謝しないとな。色々と世話になった、本当にありがとう……それで、ちょっと聞きたいことがあってきたんだが」
蒼太が何を聞きたいのか口にする前にナルアスは頷いている。
「わかっています。あの場所がどこにあるのか、ですね?」
ナルアスは質問の内容がわかっており、その答えも持っているようだった。
「あの場所?」
ディーナが首を傾げて質問する。ナルアスの隣でアレゼルも同じようにきょとんと首を傾げている。
その反応に蒼太とナルアスは通じ合うようににやりと笑いあった。
「こちらへどうぞ」
早速と言わんばかりにナルアスは二人を部屋のテーブルへと招いた。
「お座り下さい。今、準備をしますね」
蒼太たちが座ったのを確認すると、ナルアスは戸棚に何かを探しにいく。
「ありました」
そう言ってナルアスが持ってきたのは少し古いタイプのエルフ国の地図だった。
「地図、ですか」
どこかの場所を教えてくれる、ということから地図を持ち出すのは不思議なことではなかったが、どう見てもあまりに古いものだったため、ディーナは疑問が顔に浮かんでいる。
「そうです、地図です。ただ……ここを見て下さい」
ナルアスが示す場所には読みづらいが蒼太たちにとって見覚えのある署名がしてあった。
「グレヴィンって……まさか、なんでこんなところに! これって古いですけど、この国の地図ですよね?」
エルフの国の地図に小人族の長老の名前が入っていることにディーナは驚いている。しかし、蒼太は知っているかのような表情で頷いていた。
「さすがナルアスだな。何も言っていないのに俺の望むものを用意しているとは、それでこれはどこなんだ?」
以前、何か情報があるかもしれないから調べておくとナルアスが言っていたことから、蒼太は地図を用意していることまでは予想できていた。だがエルフ国の地理に詳しくないため、その場所がどこなのかまではさすがわからないようだった。
「これはこの国の中心になっている神聖樹がある森を抜けた先になります。聖地と呼ばれていて通常は行くことができないのですが……」
あなたなら行けますよね? ナルアスの目はそう語っていた。
「ディーナ行くぞ」
はやる気持ちを抑えきれないのか蒼太は地図を受け取ると、足早に工房を出て行く。
「は、はい!」
ディーナはナルアスたちに一礼すると慌てて蒼太のあとについていく。ナルアスたちはいきなり来てすぐ出ていった彼らを咎めることなく、温かいまなざしで見送った。
工房を出ると蒼太は真っすぐ神聖樹へと向かう。
「ソータさん、どうやって聖地に行きますか? 王族でもなければ許可はなかなかおりないと思いますが……」
ディーナは既に王位継承権を破棄しており、さすがに聖地には王からもらった短剣を持っていても聖域と呼ばれる場所への通行の許可はおりないと思われた。
「俺が考えている方法は二つ、一つ目は真っ向からの強行突破なんだが……これはやめておきたいところだな」
蒼太の不穏な発言にディーナは表情を曇らせて何度も頷いていた。
「だから、もう一つの方法で向かおう。このへんでいいな……イシュドラ頼む。俺たち二人を乗せられるサイズで頼む」
蒼太は人目につかない場所まで移動するとイシュドラへ声をかけた。
『ふむ、それは構わんが我が向かったのでは目立ってしまうぞ?』
言われるがままにサイズを変えながらイシュドラは問題点を口にする。
「あぁ、だから少し工夫するつもりだ」
蒼太とディーナを乗せたイシュドラは通常の高度ではなく、超高高度にいた。
『このあたりかのう。この真下にあるはずだのう』
目的地の真上でイシュドラは旋回していた。
「あぁ、助かるよ。聖地の入り口は一か所で、それ以外の場所は結界が張られている。それゆえに入口以外の警備が手薄なんだ」
蒼太の右手にはナルアスにもらった結界を斬ることができる短剣が握られていた。
「ディーナ、空中での制御は頼めるな?」
声をかけられた彼女は既に風の精霊を呼び出しており、風魔法による体勢の制御について話し合っていた。
「大丈夫です。いつでもいけますよ」
しっかりとうなずいたその返事に迷いはなかった。ここまでくると彼女も蒼太がどこに向かおうとしているのか予想がつき始めていた。
「だったら、行くぞ!」
二人はイシュドラの背から飛び降りる。聖地に張られた結界目がけて。
結界の手前についたところで、風魔法でふわりと二人は制止する。蒼太はすばやく短剣で結界に切れ目をいれると、すぐに中に入り、それをふさいだ。
「……ふう、なんとかばれずに辿りつけたな」
着地したのち、蒼太は周囲の気配に動きがないことを確認してからそう口にした。
「みたいですね」
きょろきょろと見まわしたディーナもあたりに変化がないことからそう判断した。
「目的地はこの先だな……」
そこからは蒼太は無言で歩を進めていく。
進んだ先には空間魔法の使い手でもなければわからないほど緻密な障壁が張られていた。
「この先だ」
それを難なく解除するとその先に進んで行く。もしこの障壁に気付いたとしてもそれを解除するにはこの障壁を張った者と同じだけのレベルの空間魔法の使い手か、ナルアスにもらった短剣のような特別な魔道具が必要になるため、他の者がここに辿りつける可能性はほとんどなかった。
どちらもを持ち合わせている蒼太でもなければ……。
「ここだ」
障壁からしばらく歩くと、目的のものが見えてきたため、そこで蒼太は足を止めた。
見えてきたものの正体を知ったディーナはその隣で静かに涙を流していた。
「……っここに、あったんですね……」
それは千年前の戦いで命を失った勇者たちの墓だった。
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