第三百二十六話
前回のあらすじを三行で
ダグラスの罰
イシュドラにのって移動
本郷たちに課せられた罰
さっそく本郷と族長は今後の展開について相談することになる。
どのあたりの場所がいいのか、どれくらいの規模なのか、何が必要になるか。今度は定住をするための場所を作っていかなければならないため、小人族たちの要望を汲んだものにしなければ意味がなかった。
「じゃあ、あとはお前たちに任せていいな。また様子を見にくるからナルルースは訓練のこと忘れるなよ? そういえば、そっちの魔王の娘。フレアフルていったか……お前の罰を忘れていた」
蒼太の言葉にフレアフルはびくりとする。
自分だけは罰を受けなくて済む、彼女はそう考えており、先ほどの小人族への謝罪の時も彼女だけこっそり隠れていた。
「あ、あたいは別に何もしてないよ!」
彼女の言葉のとおり、小人族に対して何かをしていないというのは本当だった。
「だが、俺たちに敵対したから何もおとがめなしってわけにはいかないぞ。俺と直接戦っていないダグラスですら小人族の謝罪に加わったんだからな」
「むぐっ」
蒼太の言葉にフレアフルは言葉が出てこなかった。
「まず一つ、お前は魔族だが魔王には絶対になるな」
「それはないよ!」
力強く彼女は言った。生まれてからずっと魔王になるために努力してきた。だからこそ本郷が負けても自分が魔族の王になることは変わらないと思っていたのだ。
「本当にそう言えるか? 今後本郷が寿命を迎えて亡くなっても、何かに巻き込まれて仲間たち全員が死んでも決して魔王にならないと誓えるか?」
蒼太の言葉は彼女の心に刺さる。人族として生まれた本郷は魔族のフレアフルよりも早く亡くなることは明らかだった。彼を慕ってついてきたものの、彼が死んだらどうするのかは今が楽しければいいと思っており、ずっと考えていなかった。
「それは……」
そのことを今突きつけられ、フレアフルの表情に迷いが生まれる。
「もし俺たちが死んだとしてもお前は絶対に魔王にはなるな。そうなったら父親と同じ運命を辿ることになる、そんなのは悲しいことだからな」
彼女の肩をそっとたたいて声をかけたのは本郷だった。
「ホンゴー……」
自分を気遣ってくれる嬉しさと、彼らの死を考えた悲しさから彼女は複雑な表情になっている。
「ブラオード、お前は俺たちの中で一番長生きをするだろうからこいつのこと見張ってくれ」
本郷にそう声をかけられたブラオードの表情は読めなかったが、静かに頷いた。
『任せておけ、いつまでも見守ろう』
フレアフルはそのことにやや不満な様子だったが、それでもしぶしぶ了承したようだった。
「さて、これでお前たちの罰は全員分決めたな。あとは小人族の村、いや街クラスになるか。その復興を頑張ってくれよ」
蒼太はそう言うとその場をあとにしようとする。
「ソータ殿、色々と委ねてしまい申し訳ありませんでしたの」
ザムズが謝罪をするが、蒼太は既に歩を進めており、足を止めることなく右手を軽く挙げて答えた。
「ソータさん、次はどうしましょうか?」
蒼太と一緒に歩き出していたディーナの質問に彼はしばらく考え込む。
「……そうだな、一度トゥーラに戻ろうと思っているが、レイラはどうする? 今後も俺たちについてくるのか、それとも竜人族のもとへ戻るか?」
蒼太の質問に今度はレイラが考え込んでしまう。
「うー、どうしよう。戦いが終わったあとのことはあんまり考えてなかったから……一度は戻りたいと思うけど、でもソータさんやディーナさんと一緒に冒険者をやりたい気持ちもあるし……」
彼女の悩みを聞いて答えたのはアトラだった。
『であるなら、いまはトゥーラに一緒に向かって、しばらく過ごしてみるのが良いのではないか? 戻るのはいつでもできるだろう』
「う、うん! そうする! アトランナイスアドバイス! ありがと!」
なんでこんな簡単なことに気付かなかったのかと自分の頭を軽く小突くと、レイラはアトラに抱き着いた。
『我もとりあえずはついて行こうかのう』
「あぁ、エドとアトラは俺についてくるし、ディーナは当然だからとりあえずこっちも身の振り方は決まった感じだな」
イシュドラはついてくるものだと考えていた蒼太は彼の言葉には軽く返すだけだった。
「じゃあ、今度こそ戻るぞ」
広い場所に出るとイシュドラに元の姿に戻ってもらい、全員が彼の背に乗ってトゥーラへと出発する。
空での移動の最中、蒼太は何か考えているようだった。
ディーナやレイラが声をかけても、生返事を返すだけで反応が薄いため、とりあえず彼女たちはそっとしておくことにする。しかし、蒼太はトゥーラが見えるころになっても黙った考え込んだままだった。
「あの、ソータさん……」
ディーナが声をかけると蒼太は勢いよく顔をあげる。
「トゥーラについたら、適当に過ごしててくれるか? ディーナと俺は行く場所がある。悪いがイシュドラには移動に付き合ってもらいたい」
急な言葉であったが蒼太に反対する者はおらず、全員が頷いた。
「じゃあ、アトランとエド君はあたしと一緒だね。宿屋にいってご飯でも食べてようかな」
『うむ、集合場所も宿屋にするのがわかりやすいかもしれないな』
「ヒヒーン」
待機組もすぐにトゥーラに戻ってからの行動を決める。
「じゃあ、一旦地上に降りてくれるか?」
蒼太の言葉にイシュドラは街から離れた場所へ着陸する。
そこで一行は二手に分かれることにした。
「レイラ、お前にこれをやっておく」
そう言って蒼太が取り出したのは新しい偽装の腕輪だった。ボーガとの戦いの最中に壊してしまったため、新しいものを渡す。トゥーラの街に向かうのであれば必要なものだったからだ。
「うん、ありがと! 帰ってくるの待ってるね」
「みんな、悪いな。イシュドラ……エルフの国に向かってくれ」
『了解した、ではいくかのう』
蒼太とディーナは背に乗ったままなのですぐに出発することになる。その背が見えなくなるまでエド、レイラ、アトラは見送り、その後トゥーラの街へと歩き出した。
エルフの国までの道すがら、ディーナが質問を投げかける。
「ソータさん、エルフの国に何か用事があるんですか?」
「いや、確信はないんだが……とりあえず何か掴んでいないかナルアスと話をしたい」
本郷たちとの戦いが終わった今、なんの情報が必要なのかとディーナは首を傾げていた。
「俺の予想だとエルフの国にあるはずなんだが……」
だが蒼太は何かを探しているようだった。
「何が、と聞いてもいいでしょうか?」
ディーナの質問は当然のものだった。蒼太はディーナの予定を勝手に決めており、彼がなにか思うところがあって行動しているだろうからとどこが目的地なのかわからないままでもついて来ている。何も言ってくれないことに不満はなかったが、ただ単純に疑問だった。
「つけばわかる、というのもいじわるな言い方だよな。ちょっと確信がないものでな、その場所にはどうしてもディーナと二人で行きたかったんだ。だからナルアスが何か情報を持っていたらいいんだが……」
蒼太はどこに行くのか明言を避けていたが、それでもディーナには蒼太の考えを少しでも聞けたことで満足だった。
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