第三百二十八話 最終話~蒼太とディーナの旅の終わり~
前回のあらすじを三行で
ナルアスの工房
聖地へ向かう
墓があった……
そこには、獣人族の勇者バルザ、竜人族の勇者レジナード、ドワーフ族の勇者ラウゴ、そしてディーナの兄でありエルフ族の勇者ソルディアの墓があった。
墓石にはそれぞれの名前が彫られており、石の前にはそれぞれの装備が供えられていた。千年の時が経過しているが、それらには保存魔法がかけられており、劣化せずに当時のままでおかれている。
また侵入を防ぐものとは異なる風雨にさらされないための結界も張られていた。
「これはすごいな。昔のままの状態で装備が置かれている……」
それにそっと手を触れながら仲間に思いをはせ、蒼太は昔を懐かしんでいた。
「みなさん……それに兄さん……」
ディーナの目には遠目から見ていた時よりも大粒の涙が浮かんでいる。
本郷のことをディーナは許した。彼に対しての恨みも既になくなっている。それでも、兄を失った悲しみまでは消えることはなかった。
蒼太はディーナの肩にポンッと手を置いた。
「うぅ、ソータさん……」
それに答えるように振り返るとそのまま蒼太の胸を借りて涙を流す。
蒼太は彼女に胸を貸しながら、墓を順番に眺めていく。
「バルザ」
出会いは強烈だった。いきなり襲いかかってきて戦闘に発展しかけたのをディーナが止めてくれた。結局時間をおいて夕食のあとに戦ったが、あれがあったからこそ、蒼太は彼のことを素直に認められていた。
「レジナード」
バルザが戦いに対する気合などの気持ち、そして瞬間瞬間の判断の大切を教えてくれた師匠とすると、レジナードは戦いに対する細かな戦略についての師匠であった。
寡黙な男だったが、若い蒼太のことを心配していつも気にかけてくれていた。勇者としての心構えを叩きこんでくれたのも彼だった。
「ラウゴ」
言わずとしれた鍛冶の師匠。他種族であるにも関わらず、蒼太に様々な技術を教えてくれた。
蒼太に技術と知識がついてくると、今度は一人の職人として扱ってくれた。その中で二人でたくさんの武器を作り上げた。それは主武器になったり、時には遊びとして作った挑戦的なものもあった。
筋がいい。彼にそう言われた時に、蒼太は感動に打ち震えたことを覚えている。
「ソルディア……」
ディーナの兄だが、まるで蒼太の兄のようでもあった。彼は女性が好きで時に軟派な態度を見せることもあったが、魔法については一流であり、彼は蒼太の魔法の師匠だった。
蒼太が困った時には彼がいつも助け舟を出してくれていた。
バルザに勝てず、レジナードに手も足も出ずに悩んでいた蒼太に的確なアドバイスをしてくれたのもソルディアだった。
四人との思い出を思い浮かべると蒼太は次の行動に移る。
泣き止んだディーナをゆっくりと自分の胸から引き離すと、四人の隣に墓石の代わりの杖を一本ずつ、計二本地面に挿していく。
「その武器は……」
ディーナにも見覚えがあった。エルフの国を訪れた際に、グレヴィンとフランシールが持っていたものだった。
「あぁ、最後の戦いの時は別の武器を使っていたが、この二本は二人が使っていた武器さ。これは亜空庫に入れて預かっていたものだったが、二人の行方は結局のところわからなかったからせめて、な」
グレヴィンが使っていたメイスとフランシールが使っていた杖。
それに蒼太は他の武器と同じように保存魔法をかけていく。
「グレヴィン……」
小人族にしては年齢が大きく勇者たちの中でもレジナードに次いで高齢だった彼は、パーティのまとめ役、ご意見番を担っていた。経験に裏打ちされた彼の意見はためになり、問題点をしっかりと指摘するものであった。バルザですら彼のいう事はしっかりと聞いていたくらいだった。
蒼太の錬金術の師匠であり、時に茶目っ気を見せて蒼太と二人でとんでもないものを作り、みんなを驚かせていた。
そして、彼が様々な情報を残してくれていたからこそ、今の蒼太たちがあった。
「フランシール」
蒼太がこの世界で初めて出会ったのが彼女だった。彼女の父の命令で実施された召喚魔法。そのことを彼女はいつも申し訳なく思っていた。本来であればこの世界のことはこの世界の人間だけでなんとかするべきだ、と。
それゆえに、彼女はいつも蒼太のことを気遣ってくれていた。
彼女は自分の兄がレジナードを殺したことにいち早く気付いており、なんとか蒼太だけでも元の世界での暮らしに戻ってもらいたいと全魔力を消費して送還魔法を使っていた。彼女は送還魔法を使うことで魔力喪失状態に陥ってしまったことになる。魔力の核の力を使い果たすということは、その人物の生命エネルギーを使い果たすのと同義だった。
蒼太は墓から少しだけ離れ、全体の中央に立つ。
ディーナも今は涙が止まっており、気丈な様子で蒼太の隣に立った。
「やっとみんなの敵を討つことができたよ。バルザが生きていたら、甘いって言うかもしれないけど……でもさ、あれでよかっただろ? 本郷のやつも何百年も何千年も転生し続けて苦しんだんだ……」
「私もあれでよかったと思ってます。今でも兄さんとの最後のペアコネクトの記憶を思い出して泣きたくなることもありますけど、それでも……ずっと引きずるのは良くないですよね?」
微笑みかけながらの蒼太とディーナの言葉に反応したのか、墓が光を放ち始める。
「これは、どういうことだ!?」
「お墓が、光ってる?」
それはグレヴィンが残した最後の仕掛けだった。
蒼太を除く勇者たちは魔王討伐前、一つのことを話しあって決めていた。
『ソータ。これを見ている頃には恐らく俺たちは既にいないはずだ。そういうことでいいんだよな?』
最初にあった四つの墓の中心からバルザの姿が浮かび上がっている。その彼は、後ろにいる誰かに質問しているようだった。
「まさか、記憶石か?」
ディーナが蒼太に思いを残すために使った記憶石、それがこの場にも埋められいた。
『えーい、お主に一番手を任せたのが間違いじゃったわい。ソータ、わしらは何かあった時にお主だけは絶対に生きのびさせようと考えているんじゃ。これを見ているということはそれが叶ったということじゃと思う』
バルザを押しのけて話し始めたのはグレヴィンだった。
『別に何かあるってわけじゃないけど、フランシールさんがソータ君に言葉を残したいっていうんでね。本当ならこれは誰の目にも触れないのが一番なんだろうけど、念のためだね』
バルザの隣でいつも通りの優しそうな笑顔で話すソルディアにディーナは涙腺が決壊していた。
『ソータさんには、元の世界に戻るという選択肢があります。それを私たちの都合に巻き込んでこの世界で終わらせるわけにはいかないんです……でも、元の世界に戻ることを選ばずに、もしこれを見てしまった場合、その時のソータさんが心から幸せであることを願います。なんか、何を言いたいのかよくわからなくなってしまいましたね。ふふっ』
フランシールの笑顔はどこか儚げだったが、レジナードが頭にポンッと手を置くとそれはいつもの笑顔に戻っていた。
『そういうわけだからさ、とにかく君が幸せに暮らしていることを願っているよ。兄としては隣にディーナがいてくれると嬉しいかもしれないけどね。ははっ』
そのソルディアの言葉を最後に映像は途切れた。元々はもっと長いものだったが、元々記憶石は試作であり完成版ではなかったため、全てを千年間保存することができないようだった。
それでも、彼らの思いはしっかりと蒼太とディーナに伝わっていた。
「うぅ、兄さん。みんな……!」
「みんな、俺のことを色々と考えてくれていたんだな……しかも、俺がここに来たら反応するような仕掛けまで作って……ははっ、グレヴィンらしいよ」
そう言って笑った蒼太だったが、その目からは涙が流れていた。
ひとしきり墓の前で泣いた二人は落ち着くと、もう一度墓に向かい合う。
「みんな俺はこの世界で生きていくことを決めたよ。フランシールのおかげで地球に戻れたけど、やっぱり俺にはこの世界が合っているみたいだからな」
「私はソータさんと共に歩むつもりです。みんな空の上から見守っていて下さい」
頭を下げてその報告だけすると、二人は墓を後にした。
二人の後ろでは墓に並べられた武器が柔らかく太陽の光を反射し、それはまるで二人の新たな門出を祝福しているようだった……。
これにて再召喚された勇者は一般人として生きていく? 一旦完結となります!
去年から投稿を始めて、ここまで328話。たくさんの方に読んで頂き、作者としてとても嬉しく思っています。
長らくお読み頂きありがとうございました。
そして、書籍版の二巻の発売が決定しました! 2017年1月21日発売になります!
『再召喚された勇者は一般人として生きていく? エルフの国の水晶姫』がタイトルです!
よろしくお願いします。
そしてそして、本日から新作の投稿を始めていきます!
タイトルは……
『豪傑の元騎士隊長~武源の力で敵を討つ!~』
になります。こちらも合わせてよろしくお願いします。
http://ncode.syosetu.com/n1478dr/




