第二百十七話
前回のあらすじを三行で
ディーナとレイラ足を撃破
不意をつかれて吹き飛ばされるディーナ
真の力に目覚めるレイラ?
「あいつらが戻ってくる前に、この中のやつを倒しておくか」
レイラが発動したトラップは一度転移させると、しばらく魔力を溜める必要があるため現在はただの扉として機能していた。
『そうだのう』
蒼太は古龍を伴って部屋の中へと入っていく。
部屋の中には巨大なゴーレムが鎮座していた。蒼太たちが部屋の中へと入って来たことを感知し起動するが立ち上がったそれはあまりの巨大さであり、蒼太と古龍は目の前のゴーレムを見上げていた。
「でかいな」
『うむ、でかいのう。我の本来の姿といい勝負、もしくはそれ以上かもしれんのう』
古龍もその大きさに驚きを見せていた。
「侵入者か、お前たちは何者だ。名を名乗れ」
その声は蒼太でも古龍でもなく、目の前にそびえ立つゴーレムからであった。
「こいつ……喋るのか?」
人工的に作られたはずのゴーレムが声を発したため、蒼太は驚き目を見開く。
『最近のゴーレムは進化しておるのう』
古龍は能天気にそんなことを言うが、そんなわけがないだろうと蒼太が心の中で突っ込みをいれる。
「その声はどこかで聞いたことがあるな……」
ゴーレムはまず聴覚機能から起動しており、蒼太の声に反応を示す。更に視覚機能が起動してきたため、声の主である蒼太をその視界に捕らえていく。
「お前は……いや、だが記憶にあるものより成長しているようだが……」
ゴーレムは顎に手を当てながら思索に耽っている。
『最近のゴーレムというのはやけに人間じみているのだのう』
蒼太は古龍の呟きを再び否定したかったが、目の前のゴーレムに対しては同じ認識を持っているため認めざるをえなかった。
「お前、名をなんという?」
「……俺の名前はソータだ」
本来思考したり喋らないはずのゴーレムに質問されるという滅多にない展開に戸惑いつつも蒼太は返答した。
「ソータ、ソータ……やはりそうなのか? お前もしかして、魔王と戦った異世界からやって来た勇者か?」
それを知っていることに疑問を持ったが蒼太は正直に答えることにする。
「そうだが……お前は一体何者なんだ?」
「ん? おぉ、悪いな。俺は見ての通りゴーレムだ。ただ、古えの小人族の長老グレゴールマーヴィンの記憶を受け継いでいる」
「グレヴィンの記憶だと!?」
蒼太の反応、そしてグレヴィンという呼び名を聞いてゴーレムは得心がいく。
「お前、やはりソータか。懐かしいな、前より少し背が伸びたんじゃないか?」
あっさりと言ってのけた後のフレンドリーな様子に蒼太は面を食らってしまう。
「いや、そりゃ三年経ってるから。というか、どういうことだ? 記憶って、でもその口調は」
古龍は蒼太が慌てているのを見るのは初めてだったため、その様子をにやにやと眺めていた。
「あぁ、すまんな。あくまで受け継いでいるのは記憶だけで、口調とかの年齢的な影響は受けていないんだ」
「なんか違和感があるが……まあ、なんとなくはわかった。これまたすごい技術を使ったものだな……それならば、色々と聞かせてもらいたいことがあるんだが」
蒼太は竜人族の神殿で集めることができなかった情報を聞き出そうとする。
「そうしてやりたいんだがな……それは無理だ。俺は記憶を受け継いでいるが、ここの守護者である以上、それを無条件で話せるようにはできていない」
ゴーレムは申し訳なさそうに、しかし自分の与えられた役割を果たそうと一歩踏み出した。
「それは、やるっていうことか?」
ゴーレムからは返事は返ってこなかった。
『かっかっか、これは面白いのう。我とお主の共同戦線、しかも相手は千年前の勇者の記憶を持つ巨大ゴーレムときたもんだ』
古龍は未だかつてない相手に一人盛り上がっていたが、蒼太の表情は冴えなかった。
「本当にやるのか?」
相手はゴーレムの姿だが仲間であった者の記憶があるという状況は身内を傷つけたくない蒼太の心に躊躇いを感じさせていた。すがるように声を出したが、すでに戦闘体勢に入り、拳を振り下ろしているゴーレムの動きは止まらない。
『やりたくないのであれば下がるとよいのう!』
古龍は蒼太にゴーレムの拳が届く前に本来の姿に戻り、ゴーレムと取っ組み合いになった。
「ふむ、古龍種か。なかなか珍しいな、侵入者と戦うとは思っていたがまさかそれが古龍種のものだとは思いもしなかったぞ」
ゴーレムの言葉は無機質だったが、どこか楽しさを含んでおり、その好奇心から蒼太はふとグレヴィンを思い出す。
『それがわかっていて、その余裕のある反応は気に入らんのう。古龍がどれほどのものか見せてやるかのう』
怒ったかのような言葉を選ぶが、口調は戦闘を楽しむそれであった。
「興味深い、見せてもらおう」
古龍はゴーレムを突き飛ばすと、距離をとりブレスを放つ。蒼太に放った火竜のそれではなく、本来の姿である古龍の姿でのそれは威力でも範囲でも上回っていた。
「ぐうぅうぅ!」
蒼太はその余波を魔力の防壁で防ごうとするがすさまじい威力を持っており、その場に留まるにも自然と踏ん張るために声が出てしまう。これを直撃で受けたゴーレムはひとたまりもない。蒼太はそう考えながらブレスが放たれた先を見つめる。
「やるな」
しかし、ブレスがおさまり土煙が舞っている中からゴーレムが現れ、古龍へと迫っていく。
『な、なんだと!』
古龍は傷一つ負っていないゴーレムの姿に驚き、その接近を許してしまい、拳の直撃を受け後ろへと吹き飛ばされてしまう。
「悪いな、魔法やブレスなどは効かないように加工されているんだ」
その言葉通り、ブレスによる影響はゴーレムから見て取ることはできなかった。
『ぐあああああぁ』
久しぶりに受けたまともな攻撃は古龍に痛みというものがどんなものなのか、思い出させるには十分な威力を持っていた。
「俺がやる。さがっていろ」
グレヴィンの記憶を持つゴーレムと戦うことを躊躇していた蒼太だったが、仲間である古龍がやられたことで戦う気持ちを刺激され、夜月を構えてゴーレムの前へと立ちはだかった。
「ほう、やっとやる気になったか。だが古龍でもあのあり様だぞ? 明らかにサイズの小さいソータで太刀打ちできるのか?」
ゴーレムの挑発的な言葉を受けて、蒼太のやる気が湧き上がる。
「やはり、お前は記憶を持っているだけでゴーレムなんだな。グレヴィンだったらそんな言葉は言わないだろうさ!」
吹っ切れたように戦闘体勢に入った蒼太がゴーレムへと走っていく。
ゴーレムと蒼太の戦いが始まった。
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