第二百十八話
前回のあらすじを三行で
しゃべるゴーレム
戦うゴーレム
古龍と蒼太とゴーレム
「ほう、今度はお前が相手か」
ゴーレムの前に立ちはだかる蒼太を見てゴーレムは笑っているようだった。本来無機物のゴーレムにそのような感情があるとは思えなかったが、それはあながち的外れではなかった。
「あぁ、今吹き飛ばされたやつよりは手ごたえがあると思うぞ」
蒼太もそう言いながら笑みを浮かべる。
記憶を受け継いでいるといっても、ゴーレムはあくまでゴーレムであり、グレヴィンとは違う。そのことはゴーレム自身も蒼太も理解していたが、昔の戦友と対峙しているような不思議な感覚をどちらもが持っていた。
「いくぞ!」
先に動いたのはゴーレムだった。その拳が蒼太へと襲いかかるが、蒼太はその場から微動だにする様子はなかった。そしてそのまま蒼太が吹き飛ばされる、そうゴーレムは思ったが自分の拳に何も手ごたえがないことに驚いた。
「なに!?」
蒼太は触れる瞬間高速で移動し、ゴーレムの右足の前で夜月の柄に手を当て構えていた。
「倒れろ」
静かに呟くと、夜月を抜刀しその足を真っ二つにする。ゴーレムはそのままバランスを崩して膝をついた。
「どうだ? 少しは手ごたえがあるだろ?」
「そうだな、なかなかやるじゃないか。だが、これで動きを封じたと思っているなら甘いぞ」
蒼太の挑発にゴーレムは冷静に反応を返した。
強がりかと思ったが、ゴーレムの両足は身体から取り外され、胴体だけで空中に浮き始める。元々装甲に自信を持っていたため、自動修復などの難度の高い機構は入れていなかった。
「まさか、この装甲をそうやすやすと真っ二つにする者がいるとはな……いやソータならありえない話ではないのか」
グレヴィンの記憶から蒼太の記憶を引き出しそう判断する。記憶を引き出す、という言葉の通りゴーレムの中にあるグレヴィンの記憶は本のようなもので、あくまで知識としてそこに存在するものであり、人格の移植まではされていなかった。
「まさか浮くとは思わなかったぞ、それ一体どういう仕組みなんだ?」
蒼太は空を飛ぶ機構に興味を持っていた。
「それも全て俺を倒してから調べればいいさ」
ゴーレムはジェットエンジンを積んでいるかのように、縦横無尽に飛び回り蒼太へと襲いかかっていく。
「そう、させてもらうよ!」
突っ込んでくるゴーレムの動きに合わせて蒼太は夜月を振るうが、それは読まれており夜月に触れる前に軌道を変えて背後から蒼太へと拳を放ってくる。
蒼太は振り向かずにその拳を夜月の柄で迎撃する。
「吹き飛べ」
蒼太は柄に魔力を込めて、後方へとその魔力を解き放ち爆発を生み出す。
「ぬおおおおお」
ダメージはなかったが、ゴーレムは目の前で爆発が起きたことに驚きの声をあげ、後方へ吹き飛ばされた。
『やりおるのう。そのサイズでまともにあのゴーレムとやりあってるとはのう』
自分を吹き飛ばしたゴーレムと蒼太が対等に戦えていることを古龍はどこか誇らしく感じている。それは蒼太に対して仲間意識が芽生えてきていることを示していた。
「だが、これくらいじゃあいつには響いてないみたいだがな」
ゴーレムは吹き飛ばされてはいたが、致命的とはいえずすぐにその体勢を整えていた。
「なかなかやるじゃないか、さすがはソータだな」
「そっちこそ足以外はほぼ無傷じゃないか」
蒼太は褒められて悪い気はしておらず、相手のことも素直に称えていた。
「「いくぞ!」」
一人と一体の声は重なり、そのまま正面からぶつかった。
『これは、すごいことになっているな……』
そこにはトラップから抜け出し一足早く戻ったアトラの姿があった。
『うむ、両方とも相当だのう。あのゴーレムにいたっては我も吹き飛ばされてしまったからのう』
『ほう、古龍殿を吹き飛ばすとは相当だな』
のんきに話す二人の視線の先では、今も蒼太とゴーレムが死闘を繰り広げている。しかし、二人は蒼太の実力を信頼しているため焦る様子はなかった。
事実、蒼太はここまで一度も攻撃を食らっておらず、ダメージをほとんど負っていない。攻撃を受けているのは一方的にゴーレムだけだった。
「どうした、そんなのんびりした攻撃じゃ俺に当てることはできないぞ」
「そっちこそ、そんな虫が刺す程度の攻撃ではダメージを与えることはできんぞ」
ゴーレムは足だけ硬度の低い素材を使っていたためあっさりと斬ることができたが、胴体の硬度は高くほとんどダメージを与えることができなかった。
一人と一体の戦いのレベルは高いものであった。しかし、その罵りあいはまるで子供のケンカのようで、ゴーレムに至っては楽しんでいる様子さえ窺えた。
「埒があかないな、少し力を見せるか」
蒼太は夜月を鞘にいれるとそこへ魔力を流していく。鞘は流し込まれた魔力を増幅させ夜月へと還元していった。
「お、おい。それやばいやつじゃないのか?」
ゴーレムはここにきてより一層、人間らしい反応を見せる。夜月に集まる魔力はそれだけ強大なものだった。
「そうだな、これくらいやらないとお前の本体にダメージを与えるのは無理みたいだからな」
「いやいや、待て待て。そんな強力な攻撃を放ったら迷宮ごと崩れてしまうじゃないか! そんなことになったら、お前や仲間まで生き埋めになってしまうぞ!!」
ゴーレムの慌てぶりは最高潮に達し、何とか蒼太を止めようと必死だった。
「防壁を張るか、古龍に乗って逃げればなんとかなるだろ」
蒼太には止める気配は全くなく、更に魔力を溜めている。
「えーい! わかった、やめんか!! わしじゃ、グレヴィン! グレゴールマーヴィンじゃ! わしの負けじゃ、そんな強力な攻撃を打たれたらここのアイテムまで全て埋まってしまうわい!」
「やはりか」
蒼太はこの展開を予想しており、脅しをかけることでゴーレムからその本来の言葉を引き出そうとしていた。
「よくわかったのう。わしがゴーレムとしての意識ではなく、グレヴィンとしての意識を持っておることが」
その言葉は懐かしの昔の仲間との再会を示していた。
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