第二百十六話
前回のあらすじを三行で
余裕余裕
トラップ発動して、分断
ディーナ・レイラVSクラーケン
クラーケンもグニルによる一撃は効果的で、何とか一本の足を撃破する。一方のディーナも順調に足を破壊しており、既に三本目にとりかかるところであった。
ここは水の精霊が多く、ディーナは自分が契約している精霊を通して周囲の精霊たちの力を借りることで、多用な攻撃を行えていた。クラーケン自体は水適正が高い魔物だったが、普段水による攻撃を受けていないため耐性は低く、ディーナはそこを突く形で次々に撃破していく。
「ディーナさんすごい……あたしも負けられない!」
レイラはディーナの流れるような動きを見て、一瞬見惚れるがすぐに自分の戦いに集中する。彼女は器用ではないため、グニルに頼った攻撃に終始するが、徐々に武器のポテンシャルを引き出すことができるようになり的確にダメージを加えていく。
「やっぱり、この槍はすごいよ。槍に引っ張られてあたしの力が上がってきている気がする」
事実グニルには所持者の力を引き出す効力があり、持ち主の成長や力を求める心によってその効力が発揮されていく。ガインとの戦いでその真価の一旦はみられたが、あの時はガインが更にその上をいっていたため効果の程を実感することはできなかった。
レイラの戦いかたはシンプルで、足の攻撃を避けたら横から素早くグニルによる攻撃を打ち込んでいくというものだった。しかし、その一撃一撃は重く、相手に大きなダメージを与えていく。また、浮遊島で戦った時は少しくらい当たっても構わないという考えだったために小さな怪我を負っていたが、その時とは異なりダメージを負うことを良しとせず確実に避けていた。
訓練や決闘で戦うことと、魔物を相手にする場合では考え方を切り替えなければいけない。彼女はそれを肌で感じとっていた。
「くらええ!」
かけ声と共に繰り出した一撃は足に大きな穴をあける。
「次い!」
辺りに目をやると、ディーナが六本の足を倒しており、残りは二本となっていた。
「レイラさん、油断しないで下さいね。残りの二本は本命みたいです」
他の八本と形状が異なり、その二本の動きは鋭く攻撃力も格段に高かった。
「うん!」
その返事と共に、二人はそれぞれが別々の足へと向かっていく。
ディーナは周囲の精霊を総動員し、水の魔力を集中させてまるでレーザービームであるかのような一撃を足に向かって打ち出していく。
「私の攻撃は水の魔法だけではないですよ!」
水のビームで足を貫きながら、更に風の魔法で穴を中心に切り刻んでいく。更に追い討ちとしてアンダインによる斬撃も加えていった。
「ディーナさん! ごめん!!」
呼びかけられてそちらへ視線を向けると、そこにはレイラが戦っているはずのもう一方の足がディーナへと向かっていた。クラーケンは二人のうち、強いほうから潰そうと考えて標的をディーナへと集中することにした。そしてそれは効果的な判断だった。
その結果ディーナはアンダインを振り下ろした体勢であり、振り向いた時も姿勢は崩れたままだったため反対の足による攻撃を直撃で喰らうことになってしまった。
「きゃああああ!」
そう悲鳴を上げて、舞台の端まで弾き飛ばされてしまう。
「ディーナさん!! くっ、どけ!」
慌ててディーナに駆け寄ろうと声をあげるレイラだったが、その前にクラーケンが立ちはだかったためその足を止めざるをえなかった。
更にクラーケンは無傷の足と、ディーナによって傷ついた足、更には本体までがレイラをターゲットとして見すえ、襲い掛かってくる。
「……どけって」
レイラの全身を強い魔力が覆っていく。彼女の怒りに呼応するかのように魔力が高まり、角が伸び、皮膚は竜の鱗に覆われて魔力だけでなく、竜人族や龍族だけが持つといわれている竜力がグニルへと流れ込んでいった。
「言ってるだろおおおお!!」
彼女は立ちふさがるクラーケンに向かってグニルを思い切り投げつけた。その投擲は今までのディーナ、レイラの両名のどの攻撃よりも強力で、防ごうとした二本の足を貫いてもその威力は全く軽減されずそのままクラーケンの胴体をも貫く。そこでやっと威力がおさまり、グニルは壁に突き刺さった。
「はぁはぁ、やった」
その攻撃はレイラの身体に大きな負担をかけたため、ぐったりとその場に座り込んでしまった。
「レイラさん、お疲れ様でした」
そんな彼女のもとへディーナが駆け寄り、労いの言葉をかけると回復魔法をかけていく。今まで使ってこなかった竜の力を使ったことにより、肉体への負担が大きく、筋繊維なども傷ついていたため、その回復魔法はレイラの疲労感をとっていく。
「はぁはぁ、ディーナさん。無事だったんだ。よかったあ」
そこまで言ったところで蓄積された疲労と安心感から大の字になる。
「心配してくれてありがとうございます。攻撃を受けた時に自分から飛びましたし、すぐにダメージを回復させたので私の方は大丈夫です。レイラさんもすごかったですよ、あの攻撃が自在に使えるようになったら次に負けるのは私かもしれませんね」
レイラは眠りについてしまったため、その耳には最後の言葉だけ届かなかった。
「眠りましたか、しばしの間休んでいて下さい。私は後始末をしましょう」
レイラによって討ちぬかれたクラーケン。ダメージが大きく、動かなかったためレイラは倒したと判断したようだが、実際にはその核がまだ健在で徐々にダメージを回復して復活しようとしていた。
「疲れて寝ているので、起こさないであげてくださいね」
ディーナは笑顔でまだ動けないクラーケンへと近寄ると、その核を魔力で探知して魔力を込めたアンダインによって打ち砕く。
「クラーケン……イカの魔物のようでしたけど、おそらくは核を使って作られたゴーレムの一種なんでしょうね。さすがグレヴィンさん、こんなものまで作っていたなんて」
研究者としては一流だったが、実用性や危険性を考えると紙一重だなとディーナは呆れ混じりに感心していた。
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