↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女の呪いは恋になる  作者: 弓園千尋
第一章 瑠璃
PR
8/55

第7話 健吾さんがいなくなった日の出来事3

 三番目の魔女オリザは庭を訪ねてきてすぐ、巧さんをまっすぐに見て言った。

「助けを頼みたい。神人と姉の争いに割って入ってほしい」

「また無茶を言う」

 ルエットさんが、思わずといった風に呟いていた。巧さんは呆れた様子で、

「広間から伝わってくる魔力の感じからすると、いろいろな使い手が参戦してるみたいだけど。何でこうなってるんだ」

「事前にわかっていた出席者から、不穏になることは予想されていた。それで、備えている者は備えていたという感じだ」

「出席者って?神人の国の使者と揉めてるんだっけか。因縁がある相手だったってことか?」

「本人が直接、ではないんだが。母上としては、何年もかけておさめていた想いを刺激されたというところか」

「神人ということは、もしかして麗しの君の関係者ですか」

 思い当たったようにルエットさんが言う。私も噂できいたことがある。元はこの城に訓練のために来た人なのだけど、女王が恋して、訓練が終わっても国に帰したくないと思って、女王はその人が帰るのを妨害しようとした。

 麗しの君は国に帰りたくて、話し合った結果、勝負をして女王が勝ったら麗しの君は城に残る、麗しの君が勝ったら国に帰ることに決まった。勝負は酒の飲み比べで行うことにし、その結果、麗しの君が勝って、約束通り国に帰っていった。そしてその後何年も、女王は失恋の悲しみにうちひしがれていたんだって。

 魔女オリザは重々しく頷いて、

「ああ。神人の国からの使節団の一人は、麗しの君と一緒にこの城に訓練に来ていた者だ。元々、麗しの君とは幼なじみときいている」

「そんなのを使者に立てるとか、神人の国は不用心ですねえ」

「今まで用心はしていたさ。ただ、その者の式神が最近この城に出入りしても咎められなかったから、大丈夫だと思ったのだろう」

 そこで何故か魔女オリザは私たちを意味ありげに見た。それを受けて、巧さんがため息をつく。

「なるほど、わかった。一つ確認だが、お前がここに助けを求めてきたのは、他の姉妹の意向も受けてのことか」

「少なくとも一番上の姉は同じ考えだ。妹たちは知らん。特に下二人は広間の騒ぎを収めるよりも客人たちを無事にこの城から出すことに意識を向けているからな」

「問題の神人と戦っているのは二番目の魔女か。母親の意向を汲んで神人に難癖をつけて戦っている、と」

「母上の神経を逆撫でしたのは間違いがないからな。だからといって戦いを始めていいわけじゃないが」

「わかった。場を収めるのに協力してやる。ただし、俺はお前のサポートとして力を貸す。表立って動きたくはないからな。で、その貸しはすぐに返してもらいたい。健吾を探すのに力を貸せ」

 魔女オリザは同意し、巧さんはその言葉の通りに揉め事を収めた。そして、オリザは約束通りに健吾さんを探すのに力を貸してくれた。

 その結果、健吾さんは翼の城にはいないことがはっきりとした。

 生きていることは間違いない。それもわかってる。でも、その居場所が難しい。目星はついているのだけど、それはたどり着くのがとても難しい場所で、どうやって助けるかと皆で考えていたとき、私と真田は世界の揺り戻しにあってこちらに戻ってきた。

 こちらに戻ってくるときは、こっちから行ったときとは違って、その前兆っていうか、これから帰るんだ、っていうのがわかっていた。一緒にいた巧さんとルエットさんと、途中から健吾さんの捜索に加わっていたみーちゃんが気がついて、それで、より安全に戻れるように、ってみーちゃんがついてきてくれることになったのだけど、別れ際、巧さんが言ったの。

「久山地蔵堂に行け。そこに司っていう奴がいるから、あいつに相談しろ。あいつなら、健吾を助けるのにどうしたらいいか、わかるだろ」

 久山地蔵堂、と言われて私は戸惑った。うちの校区にあって、不良が集まる店だと言われている。そんなところにいる人が本当に助けてくれるんだろうか。

 でも、信じるしかなかった。元の世界に戻るしかないのはわかっていたし。

 そして私と真田はこちらに帰ってきた。

 私も真田も、戻ってきたときには病院のICUのベッドの上だった。私たちは二人とも世界の波に飲み込まれる寸前、大けがをしていたので、治療のためにそこに入れられていたのだった。そして、私たちは同じ病院に入院していた。それがわかったのは、私がICUから出された後に入った病室に、偶然、真田も入ってきたから。あちらは、私よりも一週間くらい後にICUを出られたのだった。

 お互いのことはすぐにわかった。私は安心で涙が出て、真田は楽しそうな笑い声を上げた。

 そして、その一週間後、まだ軽傷だった私の方が真田より先に退院することができた。

 私が退院するとき、真田は言った。

「いいですか、瑠璃さん。司っていう人に渡りをつけておいてください。私が必ず合流しますから。お願いしましたよ」

 それが先週のこと。学校のこととか家のこととか、あと純粋に私に体力が戻っていなかったりとかいろいろあって、すぐに地蔵堂に来ることはできなかったけど、ようやく今日、訪ねていくことができたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。