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魔女の呪いは恋になる  作者: 弓園千尋
第一章 瑠璃
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第6話 健吾さんがいなくなった日の出来事2

 ルエットさんが健吾さんの居場所を探すための探査魔法を使った。対象はこの城の全部。でも、見つからなかった。

 この結果を受けて、巧さんの顔つきが険しくなった。ルエットさんも難しい顔をしている。

「これはどういうことでしょう。まさか、城の外に出た?」

「だが、今は普段と違って他の国の使者が集まっている。彼らを守るために、城の出入りはほぼ出来なくなっている筈だ」

「それはそうですが、説明がつきません。初代もやってみられますか」

「俺がか?俺がやると、いろんなものをなぎ倒すように探査をするようになるからな。魔女に嫌味を言われる。そうだ、お前がやってみるか」

 巧さんは私を見た。私は言った。

「でも私のは力が弱いから難しいと思う。今、ちょうど魔女が戦ってるんでしょう。だったらなおのこと」

「それもそうか。あー、こんなときに司がいたらなあ」

 司さんの名前はこのとき初めてきいた。誰だろう、と思ったけど、それを訊ねることはできなかった。野バラの庭の入り口にある呼び鈴が鳴って、私の意識がそちらに向いたから。

 それは、人が来たときに先触れをする魔法の呼び鈴だった。付与魔法が得意なルエットさんが暇つぶしに作ったものだけど、とても便利だった。呼び鈴の鳴り方は三種類あって、私たちみたいな健吾さんの味方というか仲間が来たときは微かに、でも軽やかに鳴る。魔女が来たときには高くて澄んだ音が鳴る。それ以外の存在が来たときは、銅鑼のような音が鳴る。

 このときには、高くて澄んだ音だった。魔女が来たとわかって、私たちは身構えた。女王の娘たちのことを魔女と呼ぶのだけど、魔女は何をするかわからないから。

 このとき来たのは、聖女というあだ名で呼ばれる、女王の末娘だった。青く輝く髪を持った彼女は、庭の中にいた私たちを見て言った。

「良かった、あなたたちがここにいて。王子がどこにいるか、あなたたち、知らない?」

 魔女たちも、この頃には健吾さんのことを王子と呼んでいた。

 ルエットさんが答える。

「わからないんです。どうしましたか」

「楽人の国の客人たちがどうしても帰りたいと言っていて、あちらの世界へ繋がる扉を開けないといけないの。でも、その役目を果たせる者たちは今、広間の戦いの影響を他に広げないための結界作りに参加していて。手があいているのは王子だけなの」

 他の世界への扉を開くのには純粋で強大な魔力が必要だ。健吾さんは扉の開け閉めをするときに、風の魔法を使って扉に魔力を与える役目を担っていた。 

「王子は戻っていないんですよ」

「そう……それは困ったわね。ルエット、あなた、お願いできて?」

「断りますよ。俺には無理です。あなたがやったらいいんじゃないですか、ルレア」

 ルエットさんが言うと、聖女ルレアは頬を膨らませた。

「意地悪なことを言うのね、ルエット。あの扉は一つの属性だけが含まれる魔力を好むの。私のはいろいろ混じっているからだめなのよ」

「俺のだって結構混じってますよ」

「でもあなたは魔力操作が得意じゃない。一つの属性だけの魔力に練り直すこともできるでしょう?」

「それをやると魔力の出力が落ちて、扉の開閉には足りなくなってしまう」

「じゃあ……そちらの方はどうかしら」

 そわそわした様子でルレアは巧さんを見た。巧さんはまともにルレアと目を合わせようとはせず、

「断る。こっちはこっちで取り込み中だ。楽人の国は待たせればいいだろう」

「……そう。そんなウサギに構っている暇はあるのに、私のお願いはきいてくれないのね?」

「知るか」

 吐き捨てるように言う巧さんの傍で、ルエットさんが言った。

「ルレア、これ以上この方に言い募るようでしたら、本当に女王に報告しないとならなくなる。おわかりですね?」

「わかったわ。ティアナと力を合わせて何とかするから」

 ティアナというのは女王の六番目の娘で、ルレアとは双子だ。二人で力を合わせて魔力を使うと、属性のない透明な魔力を出すことができるときいているので、それで扉を開くのだろう。

 ルレアがいなくなった後、ダメもとで私が探査魔法を使ってみた。でもやっぱり駄目だった。魔女と神人の戦いの圧が強すぎて、私の魔法は吹き飛ばされてしまった。巧さんによると、元いた世界でなら十分に通用するのだけど、この世界だと他の魔法が強すぎてなかなか通りにくいのだって。

 じゃあ次には巧さんが、魔女に嫌味を言われる覚悟で探査魔法を使ってみるか、となったとき、また庭の入り口の呼び鈴が鳴った。さっきと同じ、高く澄んだ音だった。

 また魔女が来たのか、と思って私は警戒した。ルエットさんが出迎えに行く。

 ルエットさんが案内してきたのは、オリザという女王の三番目の娘だった。この人が、健吾さんによく剣の試合を申し込んできた魔女だ。褐色の肌に銀色の髪を逆立て、ぴったりとした黒い上下に身を包み、銀色の細い剣を二本、銀色のベルトに挟んでいる。

 オリザは巧さんをまっすぐに見て言った。

「助けを頼みたい。神人と姉の争いに割って入ってほしい」


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