↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女の呪いは恋になる  作者: 弓園千尋
第七章 瑠璃
PR
50/55

第2話 高校生になりました!名字が変わりました!

 時田女子高等学校の受験は、合格しました。

 真田は、

「大丈夫ですよ。うちは、そんなものすごい進学校じゃないですから」

 と言っていたけど、やっぱり心配じゃない?

 だから、合格を知ったときには、飛び上がるくらいに嬉しかった。

 それから、卒業式を迎える前に、私は名字が「木下」から「榊木」になった。

 そう、私は摩耶ちゃんの養子になったの。

 お母さんはずっと鷹村さんとの再婚を認めてほしいと私に言い続けて、私は私で高校を出てからだったらどうぞ、という姿勢を崩さず、平行線のままで、摩耶ちゃんは私を養子にする手続きを進めた。手続きのときには裁判所に行って話をきいてもらったけど、きちんと話すことができた。弁護士さんも、大丈夫でしょう、って言ってくれたけど、受験と同じでこっちも結果が出るまでは怖くて仕方がなかった。

 卒業証書は榊木の名字でもらえて、ちょっと複雑な気持ちだった。卒業式には摩耶ちゃんは当然だけど、夏実さんも来てくれた。高校の寮に入るまでは夏実さんの家にお世話になることで、摩耶ちゃんと夏実さんの間で話がついていて、私はずっと夏実さんの家から中学校に通っていたから、夏実さんも親代わりには違いなくて、それで、摩耶ちゃんと夏実さんの二人で出席。卒業式が終わったらそのまま神村先生の家に行って、お祝いしてもらった。司さんもいて、これで真田さんと同じ学校だね、と言ってくれた。

 そしてちょっとこれはびっくりしたのだけど、真田は留年して、また一年生をやることになっていた。

 怪我は治ったけど体力がなかなか戻らなくて、このままだと学校に戻っても単位が足りそうにないから留年した、というのが真田の説明。

 確かに、真田の体はすんなりとは治らなかった。ナイトレイヴンの上映会のときには体力が戻っていたけど、それまでは寝込んだりしていた。

 受験勉強の合間に、私が司さんに、真田の体調が心配だ、というようなことを言うと、司さんは少し首を傾げて、まあ、安静にしているしかないんじゃないかな?とだけ言った。そうしている筈なのに治らないから、こっちは心配しているのに。

 入学式の日、真田はちゃんと学校に来ていて、入学式の会場で私を待っていた。

「一年生だけど式の出席者じゃないっていうのが、ちょっと複雑な立場ですけど」

 そう言いながら、私に新入学生が胸につける造花を渡してくれた。

 高校入学と同時に私は島にある学校の寮に入った。一人部屋で、隣が真田の部屋だ。真田は私の部屋でいつも過ごす。他の生徒は真田に用事があるとき、真っ先に私の部屋に探しにくるほど。そして実際に真田はいるのだけど。

 あと、学校でちょっと戸惑ったのが、真田が真田ではないってこと。真田って本人が好きで名乗ってる名前なのね。本名は別にあるってこと。それは入院してたときに知ったことなのだけど、病院ではたまに呼ばれるくらいで、大抵本人がいるから、本人が普通に返事をして終わりだけど、学校だと本人がいないところでいきなり真田の本名が出てくるから、反応するのにちょっと時間がかかってしまう。

 真田は本名があんまり好きではなくて、本名で呼ばれるたびに唇をきゅっとやって、ちょっと嫌そうな顔をしながら返事をしている。学校の先生に本名で呼ばれるのはあきらめてるけど、生徒同士では真田って呼んでほしいみたい。

 学校は生徒の数が少ないので、部活は二つしかない。合唱部か家庭科部か。私は合唱部に入った。家庭科部でやる裁縫とか料理はそれなりにできるから。特に、料理は家でやっていたし得意。真田も合唱部だ。

 アレクシス王子は最初の予定通り、地蔵堂で働いていた。そして、健吾さんが行方不明になったお地蔵様がある元映画監督の家で暮らしている。元映画監督の家は地蔵堂まで車で四十分くらいかかる距離なので、魔法で司さんの家に移動して、そこから地蔵堂に行っている。

 地蔵堂には巧さんも毎日行っていて、かっこいい二人がいるお店だなんてすぐに人気になるかなと思ったら、そうでもない。毎週、土日のどちらかに私は真田とお店に行っているのだけど、いつもほどほどのお客さんがいるっていう感じだ。

「まあ、その辺は調整してるからね」

 飲み物を運ぶ姿が板についてきた王子が言う。

「僕はそのうちこの世界を去るんだから、変に知り合いとか作るのもね?」

 私たちが地蔵堂に行くときには、司さんも必ず来る。そして、お店のお客さんが来るスペースではなくて、その隣の、お地蔵様が置かれている部屋でみんなで話をする。ここは司さんの結界が張ってあって、中から閉じたら絶対に外から入れないし、当然中の会話は外からきかれない。

 話題は、いつ月の王の術式が起動されるか、ということ。つまり、健吾さんをいつこちらに戻すか、ということだ。

 アレクシス王子的にはいつこの世界を去るか、なのだけど、当人としてはいつでもいい、だそうで。翼の城の方も、健吾さんがいつこちらの世界に戻ってもいいように異世界とを繋ぐ扉を起動できる人を育てていて、ちょっとまだ心許ないけど、いつでも帰って大丈夫って言っている。

 あとは、月の王、つまりアレクシス王子のお父さんが今やっている、術式の起動日を自由に設定できるようにする作業がいつ終わるかだけど、これももうそろそろ終わるそうで。

 術式を起動できるようになったらすぐにでも起動させればいいんじゃないかと私は思っていたんだけど、巧さんは、ちょっと違う考えを持っていた。

「グラハムとも話したんだけど、マスコミ対策をどうするかっていうのがあってな」

 確かに。あの氷上健吾さんが十年ぶりに神隠しから戻った、となったら、絶対に大騒ぎになるだろう。

「秘密にする、っていうのはできないんですか?少なくともマスコミには公表しない、っていうか」

 私は言ってみたけど、

「無理だろ。あいつだってこっちに戻ったら学校に行ったりするから戻ってきてるのがすぐに周りにわかる。それに、また芸能活動をやりたいって言ってるし。そうなると、嘘は最小限にした方がいい」

 巧さんがため息混じりに言った。

 そっか。健吾さん、芸能界に戻るんだ。うん、健吾さんならやれると思う。だってあんなに素敵なんだもん、そういう場所で頑張ったらいいと思う。

 術式の準備はゴールデンウィークの頃に出来た。そして、五月最後の土曜日、いつものように地蔵堂に集まったときに、巧さんは言った。

 月の王の術式を起動させる日を決めた、と。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。