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魔女の呪いは恋になる  作者: 弓園千尋
第二章 司
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第2話 母の怒りは恐ろしいらしい

 健吾さんが姿を消し、その行方を突き止めたときには、健吾を連れ去った犯人はもう翼の城を去った後だった。

 その一部始終は、過去を見る魔法の適性を持つ瑠璃が突き止めたのだけど、瑠璃はその魔法の出来が不安定で、時間がかかってしまったらしい。そのせいで犯人である楽人の国の使者たちをむざむざ帰してしまった、そのことに対して、瑠璃はかなり忸怩たる思いがあるようだった。

 僕は軽い調子で言った。

「そんなに自分を責めるものじゃないよ。そもそも過去を覗く魔法が適性を持っている者は稀少だから、その魔法をキミが使えたというだけでも幸いなことだと思う。それに、どんなに速くに突き止められても、楽人の国の連中がやらかした後だったんだから」

 だが、瑠璃は本格的に泣き出していた。

「健吾さんが封じ込められた箱って特殊で、一度入れられたら、箱を閉じた人以外の人が開けるのは難しいんだそうです。……犯人が楽人の国に帰る前に捕まえられていたら、健吾さんが入った箱を引き揚げた後にどうやって開けようかなんて悩むことはなかったのに」

「確かに、箱を閉じた人物だけ拘束しておけばいいからね?……まあ、状況はわかった。何で楽人の国が健吾さんを連れていこうとしたのかはわからないけど、健吾さんは彼らによって魔法の掛かった箱に閉じこめられて、翼の城の傍の峡谷に箱ごと落ちてしまった、そこから引き揚げるのも大変だけど、引き揚げることができたとしても、箱を開けることができない、と」

「はい。三番目の魔女から楽人の国に、箱を閉じた人をこちらに渡してくれって言っても、無視されて。城で預かっている楽人の国の戦士がどうなってもいいのか、って言っても駄目だったそうです」

「キミが魔法で見た内容を証拠として示したら?」

 術者が見た光景を魔法で固定することも可能だ。翼の城に戦士を送り込むような世界ならそれは証拠として使える筈なんだけど。

「三番目の魔女はそうしようとしたらしいんですけど、六番目の魔女と七番目の魔女が反対して。それをやると、二人が扉を開けるのに失敗して使節団を国に戻すのに二回扉を使ったことが明らかになるからって」

 馬鹿げたことを言う、と思う。でもそれをここで言っても仕方がない。

「それじゃ、楽人の国に頼らずに箱を開けることを考えないといけないっていうことだね」

「女王ならできると思うってルエットさんは言っていました。女王はそういうものを扱うのに長けているとかで」

「翼の城自体が、元々はそういう魔法がかかった宝物の保管と修理のために作られたもので、女王は本来はその管理人だからね。でも、女王には頼めていないんだ?」

「そもそも、女王に健吾さんが城から連れ出されたことを伝えられていないんです。それも、六番目の魔女と七番目の魔女のせいで」

「女王に伝えるのを邪魔されている?」

「そうです。女王が知れば、間違いなく女王は動くだろうってルエットさんは言っていました。健吾さんについてはアレクシス王子と同等の待遇をすると約束しているから」

「でも、だからって、助けるとは限らないんじゃない?あの女王なら『楽人の国ごときにやられる方が悪い』くらい言いそうだけど」

「娘である魔女がそういう目に遭ったらそうだろうけど、王子相手だとそうはならないんだってルエットさんは言ってました。魔女たちと王子では、女王にとっての子どもの種類が違うんだって」

「ああ、なるほど」

 ルエットが言うことはわかる。これまでに翼の城の女王は今まで数多く子どもを生んでいるけど、女王は相手が好きだからといって子どもを持つことはしていない。必ず目的があって産んでおり、それには二種類ある。自分の跡取り候補として産む場合と、他の存在に請われて、決まった目的のためにその相手との間に子をなす場合と。魔女たちは前者で、アレクシス王子は後者だ。

 女王は、自分の跡取り候補として産んだ子には「自分で乗り越えろ」と考え、それができなかったらそこまでの器だと見なす。が、他者に請われて産んだ子については、その子が将来、その本来の役目に就くことができるよう、女王が守りに入る。

 つまり、アレクシス王子が将来の役目を果たせなくなるかもしれないようなトラブルに見舞われていたら、女王は対応に動くし、同様の待遇を約束している健吾のことについても動く。

 今回、六番目の魔女と七番目の魔女が女王への報告を妨害してきたのは、自分たちの失態が知られれば、過去に見捨てられた娘たちと同じように女王から見限られると恐れているからだろう。

 僕は言った。

「まあ、女王が知らなくても、とりあえずは大丈夫だよ。少なくとも、健吾さんを峡谷から引っ張り出す方法はある」

 とってもシンプルな方法なんだけど。

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