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異世界転生したので探偵になってみた  作者: 羽越世雌
第2章:探偵は魔法を失った王都で、嘘と真実を暴く
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第12話:麻薬(魔法)の切れた街で、誰もが嘘をつく

「おい、見たか? あの路地裏の『闇市』」


俺――探偵ツヨシは、エリスと共に王都の喧騒を歩いていた。魔法が消えて三ヶ月。かつて空を舞い、念力で荷を運んでいたこの街は、今や「人力」と「泥臭い駆け引き」で回る、別の生き物になっていた。


通り沿いには、かつて魔法学園で権勢を誇った貴族が、魔法回路を組み込んだガラクタを必死に売っている。その横では、魔法に頼らずとも逞しく生きていた商人が、高値で薪や食料を売り捌き、新たな富を築いていた。


「魔法っていう『麻薬』が切れて、みんな禁断症状が出てるんだな」


俺が呟くと、エリスが首をかしげる。

「麻薬? 魔法は妖精さんの……ああ、今はもう妖精さんはストライキ中だもんね」

彼女は魔法を失った喪失感を、持ち前の適応力で埋めている。だが、街全体が抱える「魔法喪失のショック」は、そんなに軽いものではない。


その時、俺たちの行く手を数人の男たちが塞いだ。元・魔法騎士団の構成員だ。彼らの制服はボロボロで、魔法という「力」を失った今、彼らが持っているのは、使い慣れない鉄の剣と、歪んだプライドだけだ。


「おい、探偵。お前が魔法を消した張本人だろう?」


彼らは俺を囲み、鋭い殺気を放つ。

「魔法が消えたせいで、俺たちの騎士としての価値はゼロだ。貴族からは見放され、平民からは『魔法が使えないならただの役立たず』と罵られる。お前のせいで、俺たちの人生は壊れたんだ」


「人生を壊したのが俺だと?」

俺は冷ややかに言い返した。「あんたたちの人生は、魔法という『システム』に依存していただけだ。それがなくなったからといって、あんたたちの体から力が消えたわけじゃない。ただ、他人の魔法に頼らずに生きる『現実』を受け入れられないだけだろう」


「うるせえ!」

男の一人が鉄の剣を振り下ろす。エリスが反射的に杖を突き出すが、そこから光弾が出ることはない。彼女はただ、木製の棒を突き出しただけだ。


だが、男たちの剣先が俺の鼻先に届く直前、俺は懐から小さな「鋼鉄のパチンコ」を取り出した。かつて俺が、この街のガラクタから拾い集めた材料で自作したものだ。パチンコ玉が男の額を正確に射抜き、男は悶絶して地面に這いつくばる。


「魔法がなくとも、物理法則は変わらない。速度と重さ、そして狙い。探偵の武器は魔法じゃない。論理的な予測と、そこから導き出される確実な一手だ」


俺の言葉に、残った騎士たちはたじろいだ。

「魔法がなくても、あんたたちは生きていける。ただ、そのプライドを捨てて、泥水の中で生きる覚悟があるかどうかだ」


男たちは捨て台詞を吐いて逃げ去った。

エリスが目を丸くしてパチンコを見る。「ツヨシ、すごい! 魔法なしで勝っちゃった!」


「勝ったわけじゃない。ただ、彼らの『思い込み』を論理で崩しただけだ」


街を見渡すと、そこには魔法の消えた世界で、互いに疑心暗鬼になりながらも、生きるために必死な人間たちの姿がある。

魔法という便利な「嘘」が剥がれ落ちた今、ここには剥き出しの人間ドラマがある。誰が何を隠し、誰が何を守ろうとしているのか。


俺はコートの襟を立てた。この泥臭い街でこそ、探偵として解決すべき「真実」が山積みになっているはずだ。


「さあ、行こうかエリス。魔法の消えたこの街で、次に『嘘』をついている奴を探しに行こう」


俺たちの新しい探偵ライフは、まだ始まったばかりだ。魔法が消えたからといって、人間の欲望まで消えるわけじゃない。むしろ、魔法というフィルターがなくなったことで、欲望はより純粋で、より厄介なものへと姿を変えているんだから。

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