第六章「師弟の日常」
どうもこんにちは。(検閲済)されたユッキング加賀です。
さて、今回から新たな登場人物がまたしても出てきますが、どうなるのか楽しみですね。
ではでは、どうぞ〜₍₍⁽⁽(ી( ՞ةڼ◔ )ʃ)₎₎⁾⁾
宇宙時間 13時6分。
『ミルキーウェイ銀河』。その銀河の端に存在している太陽系から7,660光年離れた位置にある、大気が群青色に渦巻かれている大都会惑星ンヴースヌェ。
地球ほどの規模は無いものの惑星全土が高層建築物に覆われており、毎日異星人が街を行き交い賑わう、そんな惑星。
地球に例えるのなら、アメリカのニューヨーク州にあるブロードウェイのような街並みである。
街中を沢山の人々が歩いている。
その姿は様々であり、やたら鼻が長い者や全身に口を持つ者、ドロドロなスライム状の者に 二足歩行のメタリックなロボットの中心部にある水槽の中にいる水棲植物のような姿の者、直径2メートル程のかなり大きな目玉がギョロギョロと回りながら浮遊して移動している者…と同じ姿の星人を見つけるのが難しい位の数の異星人がこの星を訪れている。
「やあ、ダンネ。昨日のバトルボット大会見た?優勝したンヴースヌェ代表ホーチョレン選手のバイク型ボット、グランロードMk-3の機動は凄かったよなー!」
「マジで最高だったぜフランチャ!あのゴゾーロップを震わすような感覚にシビれて、一晩中平然としてられなかったでよいよいよいヤッフゥゥゥー‼︎」
「全く、道理で酒くせーと思ったよ!また休日だからって、度数78のヴァルカムシラードとか呑んだんだろ〜」
「BBクラブバーで、上司の顔を忘れようと肉々しいダレンプロシュートとBBのテレビ中継を肴に二本くれい空けちまったよ、ヘッケ……」
「おいあれ二本もイっちまったのかよ……」
昼間から屋台もチラホラと見られ、そこではホットキャッグやタイフンボリドフライの店が並び、中には地球にもあるコークの炭酸飲料が入った紙コップまで置かれた店まである。
「テラペッパー味のフライフライとコーラで」
「192ノムね〜」
道端に佇むボロ臭い屋台を訪れた一人の若者。
ホットでリミットな服装に身を包んだというか包めてないというか、とにかくその奇抜なファッションを決めつつも子ども染みた茶色いクマさんのリュックサックを背負っている緑パーマの男性異星人が声を掛けたのは、段ボールにちょこんと腰掛けている、何ともみすぼらしい布切れに正しい意味で身を包んでいる猫背の老爺のような者であった。
「ありがとおっちゃん」
「おっと、おっちゃんとは聞き捨てならんね〜。私はこれでもまだまだ若いつもりなんだけどね〜」
「そんなー、皺くちゃで髭までボーボーに生やしたおっちゃんの何処がおっちゃんじゃないってーの」
「私はこんな老いぼれの爺さんみたいな姿こそしているがね、産まれながらにして老人の種族、ジィバァール星人でね〜。これでもまだ22歳なのよね〜」
「俺より10歳も若いのかよおっ…えと」
「バサル。バサル=ローグンなのね〜」
「バサル…か、俺はケルッピン。ケルッピン・シュトルークだ」
「ケン、またおいで」
「明日また買いに来るよバサルー!」
「…ケッケッケッケッ、まんまと騙されおったわあのガキャ〜ふぇっふぇっふぇっふぇっ‼︎あのフライフライに塗してあるテラペッパーはテラペッパーに非ず。処方惑星スメディンでくすねてきた、宇宙憲法でも禁止されている最悪の劇薬『強制肉体限界突破薬』なのじゃわい…。一時間後が楽しみよのぅ…ふぇーふぇっふぇっふぇっ‼︎」
舗装もしっかりなされており、観光客を乗せたホバーバスや仕事先へと急ぐジェットバイク、ドライブデートを楽しむフライトカー等が道路から少し浮いた状態で行き交う。
「ダーリィ〜ン!ワタシ喉渇いちゃったから、これからキメラニアントカフェ寄ろぅ〜よぉ」
「ま〜じぃぃ〜?行く行く行っちゃうぅぅ〜?」
「行っちゃ〜〜〜〜〜〜〜〜あっ……………………」
「どうしたんだぁ〜いぃぃハァァ〜〜〜……にィィ〜〜〜〜〜⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」
この惑星の名物は、首都のサクアージから名前が取られたサクアタワー。その高さ624mのタワーの展望階から見える景色は都会の煌びやかな灯りで色付き、夜空を地上から照ららららららららららららららららららら「グオアアアアアアアアアアアアアーッ‼︎」
ガラガラと音を立てて崩れ出すこのサクアージの名物サクアタワー。昇りゆく灰煙の中から現れたそれは、ピチピチに伸び切ったホットでリミットな服に身を包めているかも分からないような姿をした、頭から緑色のパーマを生やしているトカゲのような化け物であった。
サクアージのメインストリートを歩く一組の男女。
「もう腹減っちまっただぁ…。おいソード、そろそろ昼飯にしようぜ〜?」
地球人風の、それも高校生ぐらいの体格をした地味な黒Tシャツとダメージジーンズを身に付けた、普通の短めな黒髪の男性が腹を空かせているのか、『ソード』と呼ばれた、メタリックな銀色に輝く西洋の鎧姿をした赤髪でポニーテールの同い年程度の見た目をしている女性へ気怠そうに催促をする。
「そうですね師匠。あっ、コズミルキーバーガーショップがありますよ!あそこでランチでも――」
「待て、サクアタワーに何かがいる」
ソードからの提案を遮るように、その『師匠』は己の視界に映った存在を示唆する。
「敵…、でしょうか」
「分からん……。行ってみようか」
「はいっ!」
ソードと師匠は空腹を忘れて崩れかけのサクアタワーへと駆けていくのであった。
「ギャハハハハハハハ‼︎死ね死ね死ね死ねぇーッ‼︎」
肌がゴツゴツとしている緑の大柄な化け物は、サクアタワーからドゴーンと重い音を出して飛び降りると、着地した道路はヒビ割れ、そして化け物は手の平から紫のエネルギー弾のような球を何発も発射し始めたのだ。
人々は悲鳴を上げて逃げ出す。
「全力で逃げろ、ハァァ〜ニィィ〜!」
「ダーリン、前〜!前〜ッ!」
「えっ、どうし……あっ」
「死ね」
「…へっ?」
次の瞬間、彼の体は頭部を失った。
取り残された肉体は噴水のように紅い体液を噴出し、バタリ、と音を立てて姿勢を崩壊させた。
「オラァ〜、返してやるよ。オマエのダーリン」
全身に返り血を浴びた一匹の怪物が、かつて"ダーリン"だったものの一部を鷲掴みにしている。
「嫌ああああああああああああああああああああ‼︎」
化け物は"彼"の鮮血が滴る生首を彼女に見せ付けながらゲラゲラと下品に大爆笑した。
「オマエも今すぐクビになるんだよぉぉーッ‼︎」
「今すぐクビだとか言っちゃってさ〜、君そうだよね?○リフターズの読み過ぎだよね、妖怪首置いてけかよこのポッと出モブ野郎が」
「ンハッ⁉︎⁉︎」
怪物の背後に現れた二人の戦士。
「師匠、やっちゃいますか」
腰に携えた剣を抜こうとするソードを、師匠は沈着に鎮める。
「まあ慌てるな。ここは俺に任せて、ソードは向こうを頼む」
「了解しました、師匠っ!」
弟子のソードが首の無い遺体に寄り添う彼女の元へ駆けていった事を確認すると、師匠は一瞥して静かに構えた。
「スゥゥ…」
師匠の呼吸音だけが微かに響くサクアージの街並み。
体の奥底から全身へと行き渡る力の波。漲る、昂ぶる、熱くなる。臨界点まで燃え上がれ、我が闘志。
「…こい」
「この馬の骨がぁああぁぁぁ〜‼︎」
始めの一歩の踏み出しから師匠目掛けて拳を突き出し勢いよく飛び込む。が……。
「攻撃、するんじゃないのか」
「おい…、何で、パンチが…確かに当たっているはずなのに…、当たっているのに、当たっていねえ…だと…⁉︎」
怪物の渾身の一撃は師匠の腹を貫いた筈だった。
その感覚はまるで、何も無い方向へ拳を向けているような、『空気』へ攻撃しているような空虚なものであった。
何も感じない。当たった感触すらしない。だが、『それ』は目の前にいる。まるで意味が分からない。
「テメーはここに俺が立っていると、視覚で認識して一撃打ち込んだ。だが、それでは遅過ぎるのだよ」
「こいつ…、何を言って……」
「俺とやり合うにゃあ間に合っちゃあいねーつってんだ。速さも、力も……」
師匠の姿が空気に溶け込み、紛れ、ついに目視すら出来なくなった。
「――そして、その全てが」
動きが見えなかった。
「存滅」
怪物の後頭部にスッ…と手を当てる。
「あああッ…、あが…あがが…がッ…」
全身から黒い煙のようなものがだらだらと溢れ、それは白く変わり、光となって消えてゆく。
「あり…、俺は…何で此処に……」
「……やはりか」
そう言うと深い溜息をついた。
「ソード、こいつは盛られていやがった。恐らく『強制肉体限界突破薬』ってところだろう。だよな…、バサル=ローグン143歳」
「ヒィィッ⁉︎」
「なーにが22歳なのね〜だこのバチカン……、もとい、バカチンがぁぁ〜!」
倒壊した建物の瓦礫に挟まれ動けなくなっていたのは、ケルッピンにテラペッパー味と偽って強制肉体限界突破薬を振り掛けたフライフライを売ったボロボロの老爺だった。
「騙したのかバサル‼︎よくも……!」
「キ、貴様はケン……⁉︎くっそぉ〜〜〜‼︎あと少しのところだったのにィィィィー‼︎‼︎」
嘆くバサルは何やら懐をガサゴソと探っている。
「誰かに盛ろうってのが無理あったのだ……!それならば私自身が飲ん…、な、な、な、無いッ⁉︎このカプセル瓶に入っているはずの私の強制肉体限界突破薬が無いだとッッ‼︎」
「俺の技、存滅は存在そのものを消し去る。始めから…、この宇宙には、この世界には、そしてどの次元にだって、もう…強制肉体限界突破薬の存在は最初から無かった事になるんだ」
「なん…、だと……」
今、師匠の手の中にはほんの小さな光の球が握られている。それは、美しくも残酷な力の結晶のような力強い輝きを放っている。
「俺には全て読取るんだよ。何もかも…、『チカラ』で読み取れるんだよ……。触れる必要すらもない、ただ、同じ空間に存在しているだけで手に取るように知る事が出来るんだよ。テメーがそこに居るケルッピン・シュトルーク32歳独身にクスリを盛ったフライフライを寄越し、その肉体に無理矢理に限界以上の力をもたらしたって程度にはな」
「ぐっ…、ぐぬぬ……」
何もかもをピタリと言い当てられ、全身の毛の震えが止まらないバサル。
「死を以って償え……、これが俺の与える『天罰』だ」
師匠の右手から強烈な力がバサルの元へ向けてストレートに投げ放たれた!
「必殺光球……‼︎」
その優しくも恐ろしい光の力はバサルの全てを包み込み…、光の粒となって跡形も無く消え去った。
「師匠〜!」
「おう、そっちは済んだかソード?」
「はいっ、ちゃんと『巻き戻し』てきましたよ!」
ケルッピンが薬を盛られた事で化けていた怪物が殺害した例の彼の死体が無くなっている。
向こうでその彼女が泣きじゃくっている。
だが、これは決して喪ったことで得た悲しみによる涙ではなかった。
「もおおおおおおうバカァァァァァァ‼︎死んだかと思ったじゃないのよぉぉぉっ‼︎」
「痛いったらハァァァニィィィ〜!」
その涙は、一度喪いかけたものを取り戻したことで得た喜びによる涙であったのだ。
「今度こそ…、キメラニアントカフェ行くか〜。喉、渇いてんだろハニー?」
「うん……‼︎喉、渇いたっっ!」
「ぬわああああああああああああああああああん疲れたもおおおおおおおおおおおおおおおおおおん‼︎(迫真)」
「お腹空きました……(小並感)」
「もう(昼飯)食べたくなりますよぉ〜」
戦いの疲れを癒しに、そして食欲を満たすべく、師匠とソードの二人はミルキーウェイ銀河では有名なチェーン店であるコズミルキーバーガーショップに入店していた。
「この辺にぃ(メニュー表の右上)、美味しいハンバーガー載ってるみたいですよ(憶測)」
「じゃけん注文しましょうねぇ〜(督促)」
唐突に謎の間が空く。
「あのー、あのー、アタシがお昼選んでた時、隣でチラチラ見てましたよね(一転攻勢)」
「えっ」
「そうですよ」
自分で自分に便乗していくソード。
「頼みたきゃ頼ませてあげますよ…(震え声)。ほーら、ほーら(迫真)」
「何で師匠の俺が弟子の分までハンバーガー頼みにレジまで行く必要があるんですか(正論)まあいいや、何食べたいんだ。今回は俺の奢りだ」
「ふふっ…、やった。ありがとナス!」
奢りと聞くや否や、ソードの瞳がしめしめと笑う。
「それじゃ…、コズミルティガーフィレオとコーラのSでお願いします、師匠っ」
「カシコマリ!」
コズミルキーバーガーショップ店内のカラーリングは緑・白・赤という、アメリカンなメニューとは裏腹の何ともイタリアンなもので中々のアンバランス感を醸し出している。だが、ここを訪れる大体の客がアメリカだのイタリアだのとミルキーウェイ銀河の端にあるような惑星にある一国の事など知っている筈も無く、これを不協和音に感じる者は殆ど居ないのである。
「コズミルティガーフィレオ一つと〜、コーラのSとL、それから…、コズミルJバーガーとコズミルナイソンイヤガーポテトフライのLも下さ〜い」
「コズミルティガーフィレオがお一つ、コーラのSサイズとLサイズがそれぞれお一つずつ、それとコズミルJバーガーがお一つとコズミルナイソンイヤガーポテトフライのLサイズがお一つ。以上でよろしいでしょうか」
「はい」
律儀にも、メニューの名称を一切略す事無く確認してきた。
「かしこまりました!それではレジの横でお待ち下さい!」
ハキハキとした態度の男性店員だった。二本のいちいちクネクネと動いている、細身の黒い触角が妙に気になる。昆虫タイプの異星人なのか、地球に生息しているクロオオアリのような大顎を持っており、また、集合体のように見える粒々とした複眼も備えている。
四本の細長い腕を器用に扱い、レジ打ちや注文した品物の配置を効率的且つ迅速に進めている。
「お待たせ致しました!お代が1,499ノムになります!」
「はいよ〜」
師匠は尻ポケットからモノクロのゼブラ柄が特徴的な二つ折り財布を取り出すと、1,000ノムと500ノムの紙幣を渡す。
ノムはミルキーウェイ銀河のみならず、どの銀河であっても一部の惑星を除いて通貨として使われている。100ノムまでは銀河大統領の横顔が彫られた硬貨が使われるのだが、500ノム、1,000ノム、5,000ノム、10,000ノムにはそれぞれ宇宙の歴史的有名人が描かれた紙幣が使用されている。これら通貨に描かれる人物は20年毎に変化しており、歴代の通貨を集めているマニアも少なくないのだ。
「師匠〜、イヤガーポテト少し分けて下さいよー」
「しょうがねえなあ…、ほれっ」
物臭そうに返答しつつも、コズミルナイソンイヤガーポテトをソードに半分寄越した。
「師匠っ、ありがとうございます!」
「まぁ…、弟子の一人も満足に食わせられなければ、師匠として失格だしな…」
何を思ったのか、昼から忙しく開閉している自動ドアの動きを目で追い始めた師匠。
「師匠っ」
そんな表情の見えない師匠に声を掛けたソードは、
「なん……ウグッ⁉︎」
「ふふっ、お返しです!」
急に呼ばれて開きかけた師匠の口に、自分の食べかけのコズミルティガーフィレオを突っ込んだ。
「ゲッホゲホ…、おいいいッ!」
フィレオで喉が詰まりかけた師匠を置いて、一人、両肘を立てて光射す窓を見つめているその弟子。
「なんか…、こうしてると平和って感じしますよねぇ…」
「ついさっきまで、クスリでゴリマッチョと化した異星人の暴動が起きてたけどな……」
「確かにそうでしたけどぉ〜。でもこうして、コズミルキーでコーラ飲んだりハンバーガー食べたり、師匠とお話だったりなんかをしていると、なんだか穏やかな日常の中で過ごせている気になったりもするんですよ〜」
「日常、か……。たまにはソードとこうしてゆっくり飯食ってるのも悪くないのかもなぁ……」
「ですよねですよね~!」
「だからって、いつまでもこうしている訳にはいかんからな?何処かで俺達を必要としているやつが居る限り、そしてそいつらの『日常』ってものを取り戻す為に、俺はソード、お前と共に闘い続けるんだ。それに、」
「それに?」
残りのコーラをズーズーと飲み干した。
「そう、それに、唯一無二の弟子にちゃーんと稽古してやらんといけねえ。助けを求めるやつらだけでなく、俺達自身の日常ってものも守るんだ。俺らの日常無くして、他人の日常はねえ。その逆もまた然り。どの日常も、決して欠かす事があってはならねえんだ。いいな?」
「はい、師匠……‼︎」
そんな時だった。
『モ〜ウ ハ〜ナサナイ〜 キミ〜ガ〜スベテサァ〜』
「あ、俺のだ」
突然鳴り響いた師匠の携帯電話"コズフォン"。
『ビィ〜マ「突然で申し訳ない、今時間はあるかね⁉︎」
「ちょうど空いてるぜ、エフビライ現ミルキーウェイ銀河大統領」
此処は地球。日本の埼玉県にある志木市、午前9時27分。
「んで…その、早朝に土手でジョギングしてたら見つけちまって…。よく分かんない卵みたいなの拾ってきちゃった(白目)」
震え声で説明している青髪橙瞳の青年と、
「えっ、何してるんですかアレス……さん」
冷ややかな目で主人公を見つめる、ロングの緑髪赤眼で部分的にたわわな少女と、
「アレスさん。いや、アレス。死んで下さい」
殺意の波動に目覚めた黒髪ショートの部分的に平らな女の子の3人による非日常的な日常。
「ちょっ、楓ェェ⁉︎」
ここは細田宅。今は現家主の細田楓と、居候として転がり込んで来たギリシャ神話に伝わる軍神アレスと魔界から観光目的?でやって来た魔物のソフィア・ヒュドラントの3人で一つ屋根の下を共にしている。
そして楓の両親は、高校へ入学した頃には海外で共働きである。
「こーんな碌でもない物拾って来ちゃうなんて、今時の小学生ですらしませんよ?バカなんじゃないんですか?いや、むしろバカ真っしぐらというかバカそのものですよね?ねえ、軍神バカスさん?」
「(最近なんか楓が超怖いんだが…」
戦争を司る事で知られている神ですらも恐れる女子高生。
「心のおパンツからボロボロボロボロ漏らしちゃって〜。アレスさんひょっとして、おまるのガマンも出来ないお子ちゃまか何かですか?」
「楓さんが話逸らしちゃってどうするんですかぁ…」
アレスに対する楓の責めに押されて、青褪めながらも話の軌道修正を図る新参者のソフィアである。
「ああ…、ゴメンねソフィアちゃん!それにしても…、この卵どうします?砕きます?捨てます?調理します?」
「(ほんとに情け容赦の欠片も無いぞこの小娘は…)」
ジョギング中のアレスによって発見された、赤と黒の禍々しい縞模様が特徴的である手のひらサイズの謎の卵のような物体は、無機質にも居間の畳の上を転がっており、同時に楓の運命の掌の上でコロコロと転がされているのだ。
宇宙時間3時19分。惑星ンヴースヌェの首都サクアージの外れにあるスペースターミナル、サクアージ空港。
「今回の依頼はエフビライ大統領からだ。何でも、別の銀河からとある凶悪生命体の卵がこのミルキーウェイ銀河の端にある水陸惑星アース…、現地の名称で言うと『地球』って星に飛来してきたのだとか」
「へー。で、その卵を何とかして処理してくれっていうのが今回のお仕事なんですね、師匠?」
「ああ……」
師匠とソードは地球へ向かう為に空港に来ていた。
二人は既に出星審査を終えており、今は飛行するスターシャトルが見えるターミナル内の出星ロビーにあるベンチで座っている。
「アース人の殆どは、全宇宙でも最下位クラスの戦闘能力しか持たないと言われている。そんな奴らしか住んでいないような所に、星一つどころか銀河丸ごと壊滅させるような化け物が来てみたらどうなるかなんて決まっている。間違い無く宇宙希少種族のアース人は絶滅、そのまま化け物によって太陽系が消滅し、果てはミルキーウェイ銀河までもが終焉を迎えるだろう。だが、そうはさせない。俺達がこの銀河の危機を食い止めるんだ。アース人の日常を守る為にも、な」
「はい!…あ、師匠!アナウンスで呼ばれましたからそろそろ行きましょっ!」
『お客様番号8722様、8723様。スペースファイターGS03XXのハイパーテレスタートドライブシステムの準備が完了致しましたので、第8搭乗口までお越し下さい』という、ターミナル内に響いた機械的で無表情なアナウンスに応じてソードと師匠は立ち上がった。
「おうよ!」
搭乗口の先では、サクアージの群青色の大空を眺めるように斜め上を向いて傾いているリング状の発射台の中心で、師匠とソードが乗っている二人乗りタイプの赤と黄の塗装が施された、スマート且つスタイリッシュなデザインのスペースファイターが浮遊している。
『目的地までのルート計算、終了。フォトン式ワームホール、生成完了。ハイパーテレスタートドライブシステム、起動』
発射台のリング内が透き通る青色の光に満ち始める。
そして、スペースファイターの眼前には虹色の光で燦々と眩しくも黒い移動用空間トンネル、フォトン式ワームホールの入り口が現れた。
『これよりカウントダウンを開始致します』
3。
スペースファイターのエンジンが掛かり、噴射口が青白く灯される。
2。
シュゴゴゴ…と轟音が聞こえたのと同時に、スペースファイターの全身が光の粒を散らしながら金色に輝き出した。
1。
「よーし、地球へー!」
「しゅっぱーつ!」
『スペースファイターGS03XX、発進』
発射台から勢いよく飛び上がったスペースファイターがワームホール内へと突入、直後にワームホールの口は跡を残さず消え去った。
結局、何だかんだで白く暗い冷蔵庫の中に仕舞われた一つの、『卵』。
その卵は、内側に居る何かが左右にユラユラと揺れ動かしている。
その卵の殻は、バリバリと音を立ててヒビを表面に走らせる。
その卵の中の主は、今、目覚めようとしている。
アレス達はまだ知らない……。
この何気無い冷蔵庫の中で、ミルキーウェイ銀河全土に破滅を招来させんとする宇宙の凶悪生命体が産まれようとしているという事に。
皆さん、鉄のアレス第六章はいかがだったでしょうか。
突如として現れた師匠さんとその弟子ソードさん。
そして、アレスに拾われた銀河を滅亡の危機へと誘う凶悪生命体の卵。
次回をお楽しみに〜。




