【第6章 この世をば 我が世とぞ思ふ】全年齢版①
【第6章 第1話】
1:風吹けば名無し
あのヒーローの動画、また伸びてるけどさ
正直あれ信じてる奴やばくね?
2:風吹けば名無し
>>1
CGって言うには出来良すぎん?
音声とか現場の反応が生っぽい
3:風吹けば名無し
ヒーローごっこでしょ
どうせ炎上狙いのフェイク
4:風吹けば名無し
でもさ、あの怪物との会話
「子を成せないのは罪か」ってやつ
あれはちょっと刺さった
5:風吹けば名無し
>>4
わかる
あれ台本だとしても、言葉は本物っぽい
6:風吹けば名無し
>>5
関係者乙
7:風吹けば名無し
いやいや冷静になれよ
結局ヒーロー側の正当化じゃん
8:風吹けば名無し
擁護っていうより「裁く側が絶対に正しいのか?」って話だろ
9:風吹けば名無し
正直あの青の方、最後まで相方見捨てなかったのは好感持った
10:風吹けば名無し
>>9
BL的な目で見てる奴多そう
11:風吹けば名無し
最近、怪物の目撃情報減ってね?
12:風吹けば名無し
怪物が消えた場所、実際に立ち入り禁止になってるらしい
ニュースにはならんけど
13:風吹けば名無し
>>12
それが一番怖いわ
完全な作り話なら、そんな対応いらんだろ
14:風吹けば名無し
全部信じる気はないけど、気味悪い話で片付けられなくなってきてる
15:風吹けば名無し
あの赤のセリフな「俺たちの幸せは俺たちで決める」ってやつ、なんか頭に残ってる
16:風吹けば名無し
綺麗事だと思うけど、言えない人が多い言葉でもあるよな
17:風吹けば名無し
否定してる奴らも、結局動画何回も見てるの笑う
18:風吹けば名無し
世界が変わるとかはないけど
考え直すきっかけにはなった
19:風吹けば名無し
>>11
まぁ元から本当にいるのかどうか怪しいけどな
20:風吹けば名無し
ヒーローが正しいかは分からん
でも、怪物の言い分だけが正しいとも思えない
画面に流れる文字列を、鷹宮透真は黙って追っていた。否定。嘲笑。半信半疑。そして、わずかな共感。スクロールを止め、背もたれに体を預ける。
「……案外、好意的な意見もあるやん」
独り言のように呟き、ふっと息を吐いた。
「まぁ、あいつら見てたら、そうなってまうわ」
赤と青のヒーロー。言葉を交わし、否定され、それでも立ち続けた二人。
「せやけど」
鷹宮は、画面を閉じる。
「人が考え始めた時が、一番危ないんやけどな」
来月の記事の構成をめぐらす。最初は飯の種と思っていた二人。深く関わるうちに、どうしても彼らを好きになってしまった。現時点で、手持ちのカードは、ホテルに潜入した時の映像と音声。蒸気が充満するまではしっかり撮れているが……。
「ボクが、映ってもうてるからなぁ……」
机の上で、スマートフォンが震えた。表示された番号を見て、ほんの一瞬だけ、表情が消える。
「……はいはい」
通話ボタンを押し、いつもの調子で応じる。
「こちら鷹宮です。あぁ、これはどうも。おおきに」
短い相槌。だが、目はもう笑っていない。
「……ほう」
声が、わずかに低くなる。
「もしかして、十七年前の事件、進展があった思てええんやな?」
鷹宮は、肘をつき、指先で机を叩いた。
「……なるほど。ほんなら、点と点がやっと繋がるわ」
電話の向こうに、何かを念押しするように言う。
「資料は、全部揃っとるんやな? 名前も、経緯も例の二人分」
短く息を吐く。
「了解。こっちでも、動くわ」
通話を切る。しばらく、無言のまま画面を見つめてから、鷹宮は、連絡先を一つ開いた。
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Antinomieの昼下がり。客のいない時間帯のカウンターで、蓮と柊は並んで座っていた。
そこへ、通知音。画面を確認した蓮が、眉を寄せる。
「……鷹宮さんからだ」
「かなり久しぶりだ。雑誌の件以来だね」
柊が、覗き込む。メッセージは短い。
『明日、時間空けといて。場所は安倍晴明資料館や。あんたらに、見せたいもんがある』
「……資料館?」
柊が、首を傾げる。
「急だな。鷹宮さんらしいけど」
蓮は、画面を見つめたまま言った。
「見せたいもんって言い方が、なんか、嫌な予感する」
その言葉に、柊は否定しなかった。
「……うん。でも、避けられない気がする」
二人の間に、短い沈黙が落ちる。まだ何も聞いていないのに、胸の奥が、ざわついていた。
「行こう」
柊が、静かに言う。
「今さら、知らないままにはできない」
蓮は、ゆっくりと頷いた。




