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【第3章 逢ひ見ての のちの心に くらぶれば】全年齢版③

【第3章 第3話】


 程なく食卓には、美味しそうな食事が並んだ。


「おれもあまり自炊しないから、簡単なものしか作れないけど……」


 ごはんに豆腐の味噌汁、ウィンナー。自分より遥かに手際よく準備された食事に、ひとときの幸福を感じる。


「マジやばい。美味そう。なぁ、食べていい?」


「もちろんだよ」


「いただきます!……うまーーい!!」


「よかった。って、焼いただけだけど。味噌汁とごはんならおかわりもあるよ。……あ、こんな時なんだけどさ……明日、デートしない?」


 思わず啜っていた味噌汁を、吹き出しそうになる。


「お、おう。いいけど…」


 あたたかくておいそうな空気に二人のささやかな時間が溶けていった。夜も深まり灯りを落とすと、部屋は一気に静まり返った。


 壁一枚向こうに、柊がいる。それだけのことなのに、意識がそっちへ向いてしまう。布団に横になって、天井を見つめる。


(……寝れねぇな)


 今までも、同じ屋根の下で寝たことはあった。ひまわりの里でも、泊まりがけの時でも。なのに……妙に落ち着かない。


 夕飯のあと、台所で交わした何気ない言葉。並んで座った食卓。近すぎず、遠すぎない距離。


 寝返りを打つ。布団が小さく擦れる音が、やけに大きく聞こえた。耳を澄ますと、隣の部屋からも、同じような音がする。


(……起きてるのか)


 そう思っただけで、胸がひとつ、早く打った。声をかける理由はない。ただの世間話なら、いくらでもできるはずなのに。でも今は、声を出したら何かが変わってしまいそうで……それが、少し怖かった。


(……バカだな)


 親友だ。俺たちは、それ以上でも以下でもない。そう言い聞かせながら、目を閉じる。


 それでも、壁一枚向こうの気配を、無意識に探してしまう。


 しばらくして、ようやく呼吸が落ち着いてくる。明日になれば、きっといつも通り話せる。そう思いながら、意識はゆっくりと、夜の底へ沈んでいった。

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