【第3章 逢ひ見ての のちの心に くらぶれば】全年齢版①
【第3章 第1話】
「それじゃあ、蓮さん。柊さんを頼みますね」
柊と共に、渡辺さんをはじめ、ひまわりの里のみんなを見送る。姑獲鳥の一件後、職員や子供たちは、しばらくの間、他県の施設で預かりとなった。
「蓮にいちゃん、必ず……会いにきてよ。柊にいもね」
半べその日向が、バスの窓から身を乗り出し、手を振っている。
「おう。大丈夫。すぐにまた会えるから!」
気休めかもしれない。終わりはまだ見えない。それでも、早く日常を取り戻したいという気持ちに嘘はなかった。
「何かあれば、すぐに連絡してください。立場は変わっても、あなたたちは私の大事な子供なんですから」
優しい眼差し。子供たちを心配させまいと気丈に振る舞う渡辺さんは強い。
「ありがとうございます。皆さんも、お元気で」
奇跡的に怪我人を出さずに済んだ。しかし、半壊した施設は、自分の弱さを突きつけられているようで、胸が苦しかった。
「大丈夫だよ。また、すぐにみんなで暮らせるようになる。おれが一緒にいるから」
柊が、そっと俺の肩を抱く。優しい言葉に、こらえていたものが揺れる。
「……柊。残ってくれて、ありがとうな。ひとりだったら……きっと、抱えきれなかった」
何を、とは言わなかった。それでも、柊は分かったように笑った。
「当たり前だろ。蓮は、おれが守るって約束した。それに……玄武の力も借りられたしな」
二人で、吉岡酒店へと歩き出す。花冷えの風に、思わず肩を寄せた。
「あれはマジで、まさかって感じだったな。俺も、正直びっくりした」
「はは。それは、おれの方が驚いたよ。勇ましく戦うヒーローが、まさか蓮だったなんて」
まるでヒーロー番組の感想を言い合うみたいに。
向き合わなければならない現実と、これから始まる新しい生活への不安と期待が、静かに混ざり合っていた。




