第77話 魔王になった者達
「レードは勇者を殺すつもりか」
「少なくとも今のあいつを野放しにするべきではないと考えている。説教をして改心する性格でもないだろうし、おそらく命を奪うことになるはずだ」
「そこに抵抗はないのだな」
「まったくない。今後の世界のために必要な行動だ。そこを躊躇っていてはさらなる犠牲が出てしまう」
少なくとも俺の視点からは勇者は害悪だ。
己の利益のために他者を足蹴にすることを厭わない。
噂ではこの戦乱の時代を掌握するために新たな企みを進めているらしい。
その正体はまだ分からないが、奴のことだから碌な計画ではない。
ここで食い止めた方がいいだろう。
(あいつはどうして魔王の時代を許したんだ。努力して成長していれば、きっと人間陣営が勝利することもできただろうに)
本人に訊きたいところだが、答えは何となく分かっている。
勇者は世界最高峰の英雄ではあるものの、精神面がそこに伴っていない。
あいつは良い意味でも悪い意味でも勇者という立場にこだわっていないのだ。
現在、魔王として活動しているのが何よりの証拠だろう。
己が特別な存在であり続けることに意味を見出しているのだ。
一方でその力の方向性については普遍性がない。
ようするに自分が強い力を持って何かを成し遂げられるのなら善悪を問わないのである。
だからかつての勇者は魔王を名乗っている。
もっとも、俺がそのことについて勇者を批判できる立場にはない。
五年前の俺はとにかく無力で、勇者パーティに同行するのが精一杯だった。
置き去りにされたのも実力不足で役立たずだと判断されたからだ。
奴らの判断を決して肯定はできないが、自分に非があったことは否めない。
今はそれを認められる程度にはなっている。
そんな俺も特別な力を手に入れて何かを成そうとした結果、勇者と同じく魔王になる道を選んだ。
歪んだ形であれ、発展してきた世界を否定し、己の主義主張を通すために規格外の暴力を振りまいたのだ。
見方によっては勇者よりも一層悪質かもしれない。
あいつの行動を糾弾し、偉ぶるのは違うだろう。
とは言え、ここで立ち止まるつもりはない。
俺はどこまでも進むつもりだ。
こうして身勝手な主義主張を通してきたのだから、これからも同じように徹底していく。
半端なところでやめてしまえば、それこそすべてが水の泡になる。
未来永劫、俺は悪しき魔王として歴史に名を刻むことになるだろう。
それは構わないが、世界に悪影響をだけを与えて終わってしまうのは絶対に駄目だ。
どうせやるならば貫き通す。
その覚悟があるからこそ、俺はこの立場に君臨しているのだ。




