第36話 魔王のもとへ
処置を済ませた俺は魔眼を封じておく。
聖騎士はしばらく放置だ。
どうも使い道が思い付かない。
本当に無駄になったら捨てればいいだろう。
当分はこの部屋で管理するということに決めた。
俺は気持ちを切り替えて転移扉へと歩いていく。
「用事は済んだ。次は魔王に会いに行くぞ」
「勝負を挑むのか?」
「そのつもりじゃないが、展開次第では殺し合いになる」
今の俺が魔王と戦っても負ける気はしない。
しかし、絶対に勝てる保証もない。
そもそも現代の状況を知った今、もはや敵対関係であるかも怪しかった。
向こうは俺を好意的に見ていないだろうが、憎まれるようなこともしていない。
むしろあの魔王にとって真の敵は、自身を裏切って離反した新時代の魔王達だろう。
彼らが世界のさらなる混沌を招いたと評しても過言ではない。
魔王からしても、侵略に滞りを生んだ直接的な原因だった。
(余計な魔王を潰したいという点で理外は一致するはずだ)
ただしこれは希望的観測である。
かつての魔王が問答無用で殺しにかかってくる可能性も十分にある。
戦闘の勃発に備えて用意すべきだろう。
俺は懐から一枚の羊皮紙を取り出した。
それを丸めて幻創魔術で干渉する。
羊皮紙は細長く伸びて材質を変えると、一本の蒼白い剣となった。
「こんなものでいいか」
俺は剣を握って軽く振ってみる。
特に支障はない。
最低限の扱いで困ることはなさそうだった。
一連の動きを興味深そうに見ていたノアが俺に尋ねる。
「ふむ。奇妙な力を帯びた武器だな」
「退魔の剣だ。よその国の剣士が使っていたものを再現してみた」
俺は魔術師だから完全に使いこなせるわけではない。
それでも退魔の効力は魔王にも有効だろう。
持っておくだけでも牽制にはなる。
俺は退魔の剣を腰に吊るす。
一方、ノアも気合十分に張り切っていた。
「魔王が相手ならば、我も出番がありそうだな! 万が一の時は真名を呼ぶのだぞ。竜の姿で魔王を葬ってやろう」
「ああ、頼りにしている」
彼女は最強の種族である竜だ。
魔王と真っ向から殴り合いができる数少ない存在だった。
此度は彼女の力を借りることになるだろう。
俺は転移扉に触れる。
奪った記憶を参考に行き先を設定した。
「魔王の支配地に繋げるからな。すぐに戦うことになるかもしれない」
「問題ない! 我が華麗に蹂躙してやろうぞ」
頼もしいノアの返答を聞いた俺は、ゆっくりと扉を押し開いた。




