第28話 幻術師レードの必要性
「俺が、時代錯誤だと……?」
「そうだ。遅れた価値観を持ち出して世間を批判している。それがどれだけ滑稽か分からないのか。恥を知るがいい」
国王は見下した顔で言う。
周囲の者達も同じ感情を醸し出していた。
俺だけが、異物なのだ。
(しかし、魔王を倒して世界を平和にするのは間違っていないはずだ)
自問自答するまでもない。
悪逆を容認するのが間違っている。
そんな俺の思考を遮るように、国王は嫌悪を交えて語る。
「幻術師レード。魔王と人類は調和しつつある。双方に野蛮な勢力が跋扈しているが、それこそ種族など関係ない話だ。人道的な魔王軍と人間の国は、着々と良き関係を築いている。お前はそれを破壊するのか? 己の矮小な倫理観に従って台無しにするつもりかッ!」
「……俺にどうしろと言うんだ」
「立ち去れ。或いは王国に忠誠を誓うがいい。幻術に戦力的な価値はないが、催しの芸にはなるだろう。望むだけの給金を与えてやる」
国王はふんぞり返って提案した。
それから玉座で前のめりになって言葉を重ねる。
「どうだ。幻術師には勿体ないほど破格の待遇だろう。早く答えよ」
「断る」
「――何?」
国王が固まる。
予想外の答えを理解できなかったらしい。
だから俺は、はっきりと意思を告げることにした。
「断ると言ったんだ。侮辱してくる奴の参加に入りたいと思うわけないだろ」
俺の主張を受けた国王が小刻みに震える。
その後、勢いよく顔を上げると、唾を飛ばしながら命令を発した。
「……殺せ! こいつを! 今すぐに、殺せェッ!」
周りに控えていた兵士達が俺を包囲する。
無数の槍の穂先が俺に突き付けられた。
息を荒くする国王は、憎悪に満ちた目で俺を睨んでいた。
「温情を無碍にするとは、絶対に許せん。過去の世情を蒸し返す愚かな幻術師め。お前などこのまま亡き者になってくれるのが好都合だ! 不穏分子は即時に始末するのが現代の王国流であるっ!」
「そうか。俺にも言い分があるんだが、聞くつもりはないんだな」
「当然だ。これから死人になる者の話にどんな価値がある? お前は世界の在り方にこだわっているようだが、誰もそんなことに興味はない。真実はどうでもいい。勝者が都合よく歪めればいいからだ!」
国王は開き直ったかのように力説する。
俺はただ、笑みを深めて呟いた。
「真実はどうでもいい、か。確かにその通りだな」
向けられる槍も気にせず、俺は片手の指を鳴らした。




