第27話 空白年月の重み
扉の先は謁見の間に繋がっていた。
玉座の国王と、周囲の兵士や貴族が驚いている。
何らかの式典か儀式の最中だったらしく、その只中に侵入してしまったようだ。
国王が非難するような口調で誰何してくる。
「な、何者だっ!?」
五年の経過により、国王は記憶の中の姿より少し老けていた。
老獪な印象はますます強まり、衰えた感じはまったくない。
この国を支配する王として相応の覇気を帯びている。
しかし、国を制御する資格がないのは既に分かっていた。
俺は前に進み出ながら名乗る。
「憶えていないか。幻術師レードだ」
「そんな馬鹿な! あの男は魔王軍に寝返った末に死んだはずだッ!」
国王が驚愕を滲ませてそう叫ぶ。
それを聞いた俺は呆れと怒りを感じた。
(勇者達が吹き込んだのか? 見捨てた挙句に裏切り者に仕立て上げたんだな)
まさかそこまでやっているとは思わなかった。
彼らのことはとっくに見損なっているが、その印象が底無しに下がっていく。
俺があの場で死ぬと確信した上で、さらに嫌がらせとして汚名を被せたのだろうか。
或いは万が一にも生き延びていた時のための保険か。
どちらにしても悪質には違いない。
必死にもがき生きていた俺は、英雄どころか裏切り者として周知されているのだから。
感情的になりそうな衝動を自覚しながらも、俺はなんとか抑え込む。
鬱憤を晴らすのは簡単だが、今はそれを優先すべきではない。
国王には確認しなければいけないことがあるのだ。
「俺がレードと信じられないのか。それなら幻術を見せれば納得するだろう」
能力を極限にまで弱めて術を行使する。
赤い絨毯の上に一輪の花が咲いた。
ただしこれはただの幻に過ぎず、実体も何もない。
もちろん現実世界に影響を及ぼすような力は持っていなかった。
それでも個人の証明にはなり得る。
ひとまず納得したらしき国王が咳払いをする。
「本当に幻術師レードなのだな。なぜ今になって戻ってきたのだ」
「今度こそ世界を救うためだ。現代は狂っている。魔王と人間が癒着して滅茶苦茶だ」
「そうか、狂っているか……ふはは。お前は、そう解釈したのだな」
国王が愉快そうに笑う。
やがてそれは兵士や貴族にまで波及し、謁見の間は笑い声で満たされた。
すべてが俺に対する蔑みであった。
「何がおかしい」
「考えてみよ。倫理や価値観など時代によって変動する。どこで何をしていたのか知らぬが、五年の歳月で世界は根本から変貌した。もはやお前は時代錯誤なのだ」
国王は言い放つ。
残酷な言葉は、俺の認識に深く切り込んできた。




