第22話 五年後の実力差
「ぐぼぁっ!?」
聖騎士が派手に地面を転がる。
そのまま通りへと飛んでいってしまった。
すぐに兵士達の騒然とした声が広がる。
反逆者を捜索する中、いきなり聖騎士が転がってきたのだから当然だろう。
「何見てんだ! さっさと行けッ! 邪魔なんだよ!」
怒声を受けて、兵士達の気配が一斉に遠ざかっていく。
本来なら俺達を捕縛するために連携を取るべきだ。
聖騎士は殴り飛ばされた恨みをよほど晴らしたいらしい。
俺に攻撃されたことがよほど許せないようだった。
(仕返しに執着する気持ちは分かるが、この状況で味方を立ち去らせるのは悪手だな)
実際はどれだけ兵士が増えようと俺には関係ないものの、聖騎士の立場からすれば愚かと言う他ない。
単独でも問題ないと判断したのは、根本的に俺を舐めているからだ。
五年前と同じ役立たずの幻術師と考えているからこそ、わざわざ味方を散開させた。
自分が殴り飛ばされた恥を誤魔化したいがために、敗北への道を一気に突き進んでしまったのだ。
「痛ぇな、くそが……」
立ち上がった聖騎士が苦い顔で悪態を吐く。
咄嗟に大盾で防いだが、衝撃を逃がし切れなかったのだろう。
ただし、憎悪に歪む顔にはまだ余裕が覗く。
足取りもしっかりしていた。
(そう簡単には倒れないか。さすがに頑丈だな)
性格は最悪だが、聖騎士は英雄の一人である。
それも魔王討伐パーティに選ばれるほどだ。
少数精鋭の防御役として最高峰の技能と有している。
俺みたいに術の珍しさではなく、純粋な実力でのし上がった本物なのだ。
口端から血を垂らす聖騎士は、俺を睨みながら大盾を前に構える。
警戒心が強まったのは明らかだった。
「どういうことだ。幻術師のお前が攻撃なんて……まさか、今のも幻に過ぎないのか?」
「解釈は自由だ。好きに考えるといい」
「生意気を言いやがって、この野郎ッ!」
聖騎士が突進してくる。
大盾を押し込んで、強引に斬りつけるつもりみたいだ。
五年前から変わらない基礎戦法であり、それでいて隙の少ない万能の型だった。
もっとも、俺が慌てることはない。
ただの幻術師なら太刀打ちできないが、今は幻創魔術の使い手である。
真正面から突っ込んでくる相手を恐れることなどなかった。
魔眼を使うまでもなく、徐々に現実を歪めていく。




