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ペステ:革命は内側から始まる  作者: fm344
第一章 アファロス:古びた経済の都
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18節 まとまりのない集団

「だから、俺じゃねえって!! 何回言えば気が済むんだ?」


 ジュリオと僕が部屋に入ると、

 二人の若者が口論をしていた。


「何よその言い方!! 私の目を欺くのには一億年ぐらい早いわ!!」


 そして彼らはそれに集中していて、僕らの存在に気づかない。個人的には、少し見苦しい光景だった。


「いや、あの…」


 僕が何かを言おうとしても、誰も耳を貸してくれず、ジュリオも会話への割り込みを避けていた。


「お前が勝手に失くしただけだろうが!」


 と、男は彼女に向かって指差しながら言った。

 女の方は、この上なく失礼なことを言われたかのように、彼を見た。


「そんなわけないでしょ? この私に限っては――」


 この状況がいつまで続くのかと思い始めた時、


「――二人とも黙れ。ジュリオが来たぞ」


 と、部屋の隅にいた男が、いよいよ彼らを落ち着かせた。


 その低い声を聞いて、二人とも急に黙り、僕たちを見て座った。

 そして互いに、喧嘩腰の視線を何度か送り合った。


「外から丸聞こえだぞお前たち…」


 と、ジュリオが二人に呆れた顔で言う。


「いや、アイツがあのナイフを失くしたって言うから…」


 男の方が、彼に事情を説明しようとしたが、


「あっ。あったわ…」


 と、彼女は呆気なく、探し物を見つけた。

 そして、「てへへ」と笑いながら、その場を乗り切ろうとした。


《なんだコイツら…》

 それは恐らく、僕とジュリオの本音だったのだろう。


 まあ、言いたいことは本当に多いが、まずは状況を確認する所からだ。


※※※


 ――どこか気まずい空気。

 この部屋に入った瞬間、最初に感じたものだった。


 そしてそれは、部屋にいた人物――

 ――次の三人によって作られたものだろう。


一人目:赤髪の女性。


 悪くはない見た目だが、少し挑戦的な目つきをしており、頑固そう。

 穴だらけのズボンを履いていて、あまり年上には見えなかった。

 いや、年上だと思いたくなかったのかもしれない。


二人目:奇妙なチュニックを着た男性。


 僕より明るい栗色の髪に尖った鼻をしていて、五歳ほど年上だと予想した。

 結構人良さそうな顔つきをしているが、先程の口論から、その印象は消えた。


三人目:大きな帽子テンガロンハットをかぶっている男性。


 平均より少し背が低く、30歳は超えているように見えた。

 彼は他の二人と違って落ち着いていて、一番話が通じそうな雰囲気を帯びていた。


---


 そうやって、

 彼らを注意深く観察していると、


「そいつ、誰?」


 と、女性が無愛想に尋ねた。


 僕のじろじろした視線が気に入らなかったのかも知れない。


「そんな言い方すんなよ、ナタリア。」


 ジュリオが答える前に、尖った鼻の男が落ち着いた口調で言った。


「…彼を連れてきた理由は“あれ”だろう?」


 と、意味深なことを言いながら僕をチラ見した。


「その通りだ、ガブリエル」


 と、ジュリオは怪しげな微笑みで言った。


 ナタリアはそんな彼らに不満の眼差しを向け、 隅の男はただ黙ってそれを見ていた。


 そして、ジュリオは僕の両肩に手を置き、


「今日は彼を、この素晴らしきグループの新メンバーとして紹介したい」


 と、表明した。


 僕は彼の手にわずかな不快感を覚え、少し距離をとった。それでも、まだ心細かったので、彼のそばを離れなかった。


「それではアレハンドロ、自己紹介しろ」


 ジュリオが僕の背中を軽く押し、ニコニコしながら言った。


 その反面、

 彼ら三人は、警戒心――いや、敵意と言っても良いくらいの視線を僕に向け、わずかだが恐れを感じた。



《いや、落ち着け…》

 手汗が出始めた自分に言い聞かせた。


 実際、ここで一歩下がったら、今までの行動と覚悟を台無しにしてしまう。

 もしそうなったら、自分がアンコナから出た意味もなくなってしまう。


 ――犠牲を犠牲のままにしたくない。

 だから勇気を振り絞って、僕は一歩前に出た。


 そして、


「僕の名前はアレハンドロ · オンブロです。

…この国を変えるために、さ、最善を尽くします!!」


 と、少し強く言った。


 周りは無言でそんな僕を見つめたが、

 なぜか、

 その視線が少しマシになった気がした。


《案外いけたかも…》


 ――でもその自信はすぐに踏み潰されてしまった。



「――オンブロ、ねぇ…」


 ナタリアが、少し不満足そうな顔でそうつぶやいた。


「…あんた、年はいくつ?」


 そう言って、僕をじっと見つめた。

 彼女からの強い視線に少し動揺した。


「年?」


 僕は彼女の奇妙な質問に首を傾げた。

 それでも、


「…来年の一月で18歳です」


 と、きちんと答えた。

 すると、彼女は目つきを一気に和らげ、


「私より年下…?」


 と、恐らく悪気はないけど、

 少し気に障る言い方をした。


 まだ成人じゃないと知ったからだろうか、彼女の僕に対する警戒心が突然なくなったと感じた。


「それがどうかしたのか?」


 と、ジュリオが僕の気持ちを察して彼女に尋ねたが、


「いやいや、こんなガキが私たちの組織に入ってきて良いわけないでしょ!! 

それに、随分甘えた見た目をしてるじゃない?」


 と、非常に酷いことを躊躇(ためら)いなく言った。


 普段はこういうことを言わないが、

 僕は彼女に対して、あまり良い第一印象を持たなかった。



「甘やかされたって、どうしてそう思うんだ?」  


 と、ジュリオが珍しく不快そうに返した。


《アイツも少しは怒るんだな…》

 僕は少し驚いた。


「見ればわかるでしょ! 彼に革命の雰囲気なんて、少したりともないじゃない!」


 と、彼女もさらに不満を込めて言った。


《マルタより気が強いな…》


 そう思ったけど、彼女の濃緑の目には、

 少し、心配に近い感情もあったように見えた。


「彼女は言い過ぎだけど、俺も全体的に同感だ」


 と、ガブリエルも加わった。



 彼らの目から敵意は消えたものの、僕に対する不信の思いが増えたことに気づいた。


 実際、急に変なガキが国を変えたいなど言ってきても、そもそも相手にしない自信がある。

 僕が未成年であるのも事実だし、彼らの気持ちは理解できなくもない。


《できなくもないが…》



「――悪気はないけど、貴方たちもあまり大人っぽくは見えないですよ」


 と、つい、本音を言ってしまった。


《やべぇ…》


 そして案の定、場の雰囲気が急に一変した。


※※※


「よくもそんなことを!」


 ナタリアが立ち上がり、僕に詰め寄った。


 彼女ならそうやってすぐ怒るだろうと、なぜか確信があったのに、僕は発言を抑えなかった。

 しかし、

 ――だからって、今更逃げるわけには行かない。


 僕は覚悟を決めて、真っ直ぐ鋭い視線を彼女に向けた。


 ガブリエルは笑顔でその様子を見つめ、「やったれやったれ!!」とでも言うようにニヤニヤした。



「喧嘩で勝つことで認めて貰えるなら、僕は喜んで引き受けます」


 と、無駄にかっこいい台詞を放って、一歩前に出た。


「良く言う… あんたの後悔した顔が楽しみだわ」


 彼女は窓から吹く風に髪をなびかせ、にやりと奇妙な笑みを浮かべて拳を鳴らした。

 そして僕は身構え、彼女の攻撃を受け止めようとしたその時――


「ペシッ!!」


 ――ジュリオが僕たちの頭を軽く殴った。


「「痛ぇッ!」」と、二人ともつぶやき、

 少ししゃがんだ。



「ナタリア、俺はお前に革命の雰囲気なんか求めた覚えがない。

それに、そもそもこっちは人手不足だ。そんな事言ってる余裕がない」


 彼は叱りとまではいかない、少し厳しめの口調で彼女に言い、


「――そしてアレハンドロ、お前も彼女を挑発するな。痛い目に遭うぞ。」


 と、僕に注意をした。


 二人は距離を取らせられ、

 席に戻ったナタリアは痛む頭を押さえつつ、

 拗ねた顔をした。


《ガキかよ…》

 そう思う僕も正直、結構痛かった。


 ガブリエルは彼女をからかい、帽子の男は何も言わずに少し微笑んだ。


 場の緊張が、少し緩んだ気がした。


---


「すまないが、俺は君たちの意見を聞きに来たわけじゃない。これは元から俺とロメロの間で話がついていたんだ」


 ジュリオは僕ら全員に向かって、少し威圧的に言った。


 ガブリエルは、ロメロの名前に少し反応したが、特に何も言わなかった。



「アレハンドロはきっと大切な仲間になる。仲良くするんだな」


 と、まるでリーダーのようにジュリオは笑顔で言った。


 それでも、

 ナタリアは賛成している様子はなく、

 ガブリエルも本気で受け止めた気配がなく、

 帽子の男は何も言わなかった。


 ――皆違う方向を向いている。

 どうやらこのグループはあまりまとまりがないようだ。


《――でも、その分、面白そうではあるな…》


 僕は少し笑顔になったが、ナタリアがちらっとこちらを見たため、再び真顔に戻った。


《慣れることができれば…》

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