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巫女は海を守りたい〜愛が溢れるヒーラー物語  作者: 紫陽花
第5章 次の新しい道 婚約のあと
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第5章 更なる試練が

私はヴァシリス様と、海神の庭にいた。

ポセイドン様とシェル様もいて下さった。


10才からの事を、全て思い出して、ヴァシリス様に話した。


ヴァシリス様が、ずっと私の手を握りしめている。やっと安心できた。


「苦しすぎて、ヴァシリス様への思いを閉じ込めてからは、ご神託だけを告げる巫女となれたけれど、心の深いところでは、無意識にヴァシリス様をお慕いしていたと思います。だから、何か足りなくて、心の中が抜け落ちてしまったみたいに感じると、胸が痛くなって。」


「僕は、アリエッタからもらったペンダントが光る事で、繋がりを信じ続けていた。

それに、アリエッタが僕の婚約者である事を、知っていたのは、僕たちの周りにいる者だけだったからね。」


「まさか、国中の人に、ブラインドがおりたなんて。」


「クロノス様が、僕がそばに居てやれない期間、アリエッタを守って下さったんだ。」


「それは、わかるのですが、何の連絡も取れず、会えず、あまりにも苦しくて。途中からは、ペンダントが光る理由も、わからなくなりました。」


「何にも感じなかったのか?」


「すごく大切な何かがある事だけは、でもそれしかわからなかった。」


「でもアリエッタ、それでも僕らは、繋がっていたし、気持ちは変わっていなかった。それは、わかるだろう?」 


「気持ちは変わらないです。」


「2人の愛が強すぎて、ご神託が消えてしまう事を、クロノス様は、心配されたのですね。」


「シェルもそう思うか?父上が、2人を割くなど、ありえないからのう。」


「ポセイドン殿、僕もそう思っていました。」


「ヴァシリス、いつかはわからぬが、海を救うために、其方らの愛が必ず必要になる時がくる。この6年は、アリエッタが、ヴァシリスよりも、ご神託を優先して受け取るために、必要な時間でもあったのだ。アリエッタもわかるな。」


「はい、ポセイドン様、最初の2年は、ヴァシリス様の事しか考えられなくて。」


「毎日、アリエッタが、ヴァシリスの名を呼ぶ声が、一日中、聞こえると、シェルまで泣いていたからな。」


「アリエッタの思いが、私はわかりますから。

ねっ、ねぇ、アリエッタ、愛しい人と引き離されたら、その方の事しか考えられませんものね。」


「シェル様、そうです。それしか、、考えられず、手から血が流れても、壁を叩いて、声が出なくなるまで、ヴァシリス様を呼び続けました。」


また涙が止まらない。

ヴァシリス様が、そっと引き寄せてくださる。


「アリエッタ、それは僕も同じだ。隠し通路が消えて、神殿に入れず、神殿の扉をトライデントで破壊しようとして、ポセイドン殿にお叱りを受けた。」

 

「私もクロノス様に叱られました。もっと広く民と命を愛せと。」


「アリエッタ、僕らは、まだ未熟だった。今もまだ未熟だ。だから、それも試練なのだ。何とか、乗り越えてきたから、今日は、クロノス殿が、会えるようにしてくださったのだぞ。」


「16歳の、お約束。」


「思い出したのか?」


「はい。やっと。。でも、ヴァシリス様の成人の儀式が、見れませんでした。」


「今、目の前にいる。成人している。約束は果たせる。」


「もう、大人になってしまったのですね。私だけ、子供です。ダニエルお兄様も、海神の騎士の方々も、みなさん大人に。」


「今日は、アリエッタも、許されるから、そう思い詰めるな。」


「ヴァシリス様、あと2年したら、私も成人です。」


「兄上たちは、国務と世継ぎが早く必要だから、18歳で成人の儀式と共に婚姻されたが、僕たちは、待たなくてはならない。アリエッタが20歳になったら、必ず妻にする。」


「成人しても、すぐにお側に行けず、まだ待たなくてならないのですね?」


「ご神託で見ただろう?僕が23歳で、」


「私は20歳。あと4年。」


「ヴァシリス、アリエッタ、天界の父上が、今日、会わせて下さったのはな、あと4年、またアリエッタにブラインドが降りるからなのだ。」


「ええっ?ポセイドン様、何故?何故ですか?私はまた忘れてしまうのですか?」


「アリエッタを守る為と、海洋生物研究所が

力を蓄えるためだと、聞いた。」


「ポセイドン殿、未来に、一体、何が起きるのですか?アリエッタが2年眠った時は、僕のパワーが世界の海全てを守るパワーになるためと、アリエッタを眠らせて、まだ更に?」


「ヴァシリス、アリエッタ、許してくれ。天界の父上クロノスは、お前たちを、試練に突き落とし、愛を試し続けられている。私は、海の神だ、私をもってしても、まだ足りず、救えない可能性がある未来が必ず来る。其方らが必要なのだ。」


「その為に、更に耐え、力をつけよと?」


「そうだ。それしか、わからないのだ。だから、ポセイダルゴにも、世界の海を監視させている。」


「……ポセイドン殿、理解しました。」


ヴァシリス様は、更に私を引き寄せて、向き合って顔をみて、話す。


「アリエッタ、明日になれば、今日の事は、また記憶の扉の向こうに、閉じ込められる。でも、今日は、僕を思い出してくれた。だから、これからの4年、共に耐えてみせよう。」


「ヴァシリスさま、私、また4年、ひとりぼっちになるのですか?」


「ひとりぼっちに思えても、僕は思い続ける、心は、つながり続けるから、信じてほしい。

僕は、あと数日でアカデミーを卒業し、海洋生物研究所の所長になる。そこで、アリエッタを待つ。あと4年、僕への思いに煩わされずに、アカデミーで力を養ってほしい。」


「その努力はいたします。でも、でも、ヴァシリス様は、もう成人されました。いつでも、お妃様を選べます。周りからも、早くと言われます。なのにまだ4年も、待ってくださるのですか?」


「まだ心配か? アリエッタ以外は、いらないと、ずっと言ってきただろう?父上と母上が、アリエッタを婚約者だと、わかっているのだ。翻る事はない。僕の思いも変わらない。」


「4年後に、私が思い出せなかったら?」


「思い出してくれるまで待つ。アリエッタ、忘れたのか?海の教会で、式をあげるあの日を。」


「覚えていますが、海の教会は、どこに?」


「今は無いから、この4年で、私が建てる。」


また涙が出てきた。

「ヴァシリスさま、もう離れるのは嫌です、忘れるのも、知らない人みたいになるのも、嫌です。こんなに愛しているのに、私の命より大切なのに、離れるのは、嫌です。ヴァシリスさま、、」


もう無理、この6年分の寂しさが、溢れて溢れて、止まらない。


「ヴァシリス、我らが伝えたいことは話せた。あとは、2人で残りの時間を大切に過ごせ。他に聞きたいことはあるか?」


「ポセイドン殿、4年後、アリエッタが私を思い出すには、今日のように、私から婚約者だと、言ってはならない事は、同じなのですか?」


「そうだ。ヴァシリスからは、伝えてはならない。アリエッタが思い出さなくてはならない。」


「ポセイドン様、あの、、おとぎ話の眠り姫の物語は、運命の王子様の口づけで目覚めます。それもダメなのですか?」


突然、クロノス様の光が海の底に届いた。


「アリエッタよ、其方が、ヴァシリスの口づけを、受け入れたなら、目覚める。だが、ヴァシリスからの無理強いはいかん。わかるな。」


「クロノス様、わかりました。私が忘れてしまえば、ただの巫女が、王子から口づけをされるなど、ありえない事です。だから、だから、クロノス様は意地悪です。」

体が震えてきた。どうしたって、どうにもならない。


「お前たちに、不可能はない。励め、海を救う為なのだ。ヴァシリス、アリエッタを頼むぞ。必ず、其方の手に引き戻すのだ。」


「クロノス殿、アリエッタは、必ず、僕の妻にします。」


「うむ、4年後を楽しみにしている。」


気がついたら、クロノス様の光も、ポセイドン様とシェル様も消えていた。



「アリエッタ、色々な話しで、疲れただろう。浜辺に戻るか?それか、しばし、ここ海神の庭にあたいか?」


「6年ぶりの海です。もう少しだけ、ここに。」


ヴァシリス様と、並んで、光る石に座った。


「アリエッタ、辛かっただろう。」


「私は忘れていだけれど、ヴァシリス様は、全てをわかってらしたから、知らないのも苦しいですが、、知っている方が辛いのではないかと。」


「きっと、どちらも辛い。開かぬ壁を挟んで、アリエッタも私も、狂ったように壁を叩いていたのだから。」


「でも、同じ思いをしていたと、わかって、嬉しかったです。ヴァシリス様、ありがとうございます。私、愛されています。」


「わかってくれたか?」


「はい、、こんなに素敵な王子様に、、この数年、私は、夢の中のご神託でしか、近づいてはならない方だと、ずっと、そう思っていたのですから。」


「何を言っている。生まれた時から、ずっと一緒だったではないか。アリエッタが、ベビーベッドから飛び降りた時も、昆布ドレスの時も、アリエッタを離した事はない。」


「ヴァシリスさま、それは、恥ずかしすぎます。あの、昨年と、その前、私、お誕生日の日に、夢か幻で、夕陽を見たのです。ヴァシリス様が、この浜辺に来て下さったのですね?」


ヴァシリス様が、頷いた。


「ヴァシリスさま、、私、4年後に、必ず、思い出しますから。私が、ヴァシリス様を忘れるはずがありません。」


「アリエッタ、僕は信じるよ。4年後、眠り姫は、必ず僕の口づけを受けてくれると。」


「きっと、大丈夫、です。」


「アリエッタ、そろそろ、浜辺に戻ろう。夕陽の時間が、近づいている。見せたいものもある。」


「はい。」


ヴァシリス様が、トライデントを出して、一振りすると、浜辺に戻っていた。


「アリエッタと海にくると、いつもびしょ濡れだな。次からは、シースーツにするか?」


「わざわざシースーツでなくても、、シースーツは、《仕事》と言うイメージが強いです。プライベートは、やっぱり私服が。でも、アンジェラおかあさまからのドレスが、、帰ったら、セレステお母様から、叱られますね。」


ヴァシリス様が、笑いながら、騎士服の上着を脱いだ。雰囲気が、また変わった。シャツ姿も、ドキっとするような、男らしさが、、。


「アリエッタ、すぐには乾くまい、着替えた方がいい。こっちへ。」


ヴァシリス様は、私の手を引いて、先程の建物に歩いていく。

中に入ると、オランおばさまが、いらした。


「オランおばさまっ。」


「姫さま。記憶が、戻ったのですね。」


「心配をかけて、ごめんなさい。でも、今日だけなの。明日から、またヴァシリス様との思いは、消えてしまうらしいの。でも、あと4年経てば、きっと思い出すから。」


「坊っちゃまと姫様なら、大丈夫ですよ。」


「オラン、すまないが、また海に入った。アリエッタの着替えは、少し準備していたので大丈夫かな?」


「ええ、ございます。」


「ヴァシリス様、先程は、思い出していませんでしたが、ここ、ヴァシリス様の離宮の場所、完成したのですか?」


「完成間近だ。来週から1人で住み、アリエッタが20歳になるまで待つ。一緒に暮らすんだ。僕たちの離宮だ。さっ、先に着替えておいで、風邪をひくぞ。オランがわかってるから。」


私が、記憶がない間に、ヴァシリス様の離宮ができていた。そして、4年後、私はここに住むなんて、驚きだった。


「さ、姫様、坊っちゃまが、準備して下さってますよ。」


何が起きるのか、試練はまた先にも。

読んでいただき、ありがとうございます。

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