第5章 アリエッタ 16歳の誕生日
「アリエッタ様、早く起きてくださいませ。今日はお誕生日でございますよ。」
侍女が起こしに来ている。
さっきも、お母様に起こされたような、、、
「ん〜〜」私は、思いっきり伸びをした。
昨夜は夢を見ずに、しっかり眠ったみたい。
今日は休みなのに、、、お誕生日だし、、、
あっ、今日は、ヴァシリス王子様とお約束があったんだ。
寝台から起き上がると、侍女が、控えていた。
「アリエッタ様、16歳、おめでとうございます。
ヴァシリス殿下とのお約束時間に間に合わなくなりますから、早く湯浴みをなさってくださいませ。」
私は湯浴みをしながら、初めてお会いするヴァシリス殿下の事を考えていた。
今までは、夢の中でお会いして、ご神託をお伝えし、ヒーリングのお手伝いをしただけなのに、
実物にお会いして、どうすれば良いのかしら?
湯浴みが終わって、いつも使っているマリンノートと言う香りのシリーズの香油を塗ってもらって、簡単な朝食を済ませた。
昨日、アンジェラ王妃様から賜ったコバルトブルーに真珠が散りばめられたドレスに着替えた。まだ未成年なので、ドレス丈がくるぶしまでだ。
ズロースは、乗馬用のズボンみたいなものをはかされた。
「馬に乗るの?」
「セレステ奥様から、殿下が騎乗でお連れくださるので、乗馬用のズボンをドレスの下に、と、ご指示がありました。」
馬って、どこに行くの?
「あの、髪はハーフアップにしないで、この髪留めを。」
「しかし、アリエッタ様、髪をひとまとめでは、殿下に失礼かと?」
よくわからないけれど、この髪留めにしなくては、と、強く思った。
「いいえ、馬に乗るなら、これを。もし、お叱りを受けたら、私がお詫びしますから。髪はひとまとめに。お願いっ。」
―――――――――――
ミカエラード家のサロンでは、すでにミカエラード公爵とセレステ公爵夫人が、ヴァシリス王子殿下を迎えて、内談をしていた。
「まだ、全てを思い出してないのですね?」
「婿殿、そのようです。それに、私も妻も、まだ神殿に入れず。」
「母君も、神殿には入れないのですか?」
「婿様。そうです。ご神託はおりますが、神殿には入れず。アリエッタも、夢の中でご神託を見ていて、ヴァシリス殿下とヒーリングをしていると言うのですが。」
「母君、先日のヒーリングも、アリエッタと夢で繋がって、その場で修復しました。この数年は変わらずです。つまり、アリエッタにとって僕は、夢の中の王子なのですね?アリエッタらしいと言うと、そうなのですが。」
「婿様、それでもなお、アリエッタが生まれた時のご神託に変更はございません。」
「それが僕の支えです。アリエッタを守るために、クロノス殿が、シーシェル全てに、ブラインドを下ろしたようなものですから。クロノス様の力は絶対です。ポセイドン殿も、手が出せぬとの事でした。」
「まさか、国王と王妃様、我らと、ウリエルのアランとユリシーズ夫妻、ガブリエル卿と、海神の騎士達だけが、真実を知っているとは。他の者の記憶を閉じ込めてしまうなど、クロノス殿の力は強大。人間ではどうしようもない。
アリエッタ本人も、婚約者であることすら忘れるほど。」
「父君、仕方ありません。私の手の届かないところで、アリエッタが我が婚約者だと知られれば、守りきれなかったと思っています。
僕らより、記憶を消されたアリエッタの方が辛いはずです。神殿に監禁は、あまりにも、、、」
「婿様、それで良かったのです。娘は、ヴァシリス様の事になると、感情で突っ走りますから、巫女として、ご神託が後回しになるのは、絶対にあってはなりませんから。」
「今日は、アリエッタと自由に過ごしても、良いのでしょうか。」
「婿様、ご神託ですから。クロノス様が、2人には16歳の約束、があると。」
「ク、クロノス殿はご存知であったのか。アリエッタと7歳の時にした約束です。彼女が、16歳になったら、海神の庭に行く約束です。」
「婿殿、昨年の婿殿の成人の儀に、婚約者として、お側に娘がいなかったのが、申し訳なくて。」
「父君、あれで良いのですよ。兄上2人が婚姻し、王太子に王子が生まれた。私は、目立たない第三王子です。海洋ヒーラーとして生まれた時から、わかっていたし、決まっていた事です。
婚約者がいない、女性に興味がない研究馬鹿だと言われる事が、アリエッタを守る事ならば、煩わしい事が省ける。婚姻まで、あと4年です。それまで巫女を守りきらねば。」
「婿殿にも、苦労を背負わせてしまうとは。」
「私は、アリエッタの心を信じます。」
バタバタと誰かが廊下を走ってくる音がする。
バンっ!と、勢いよく扉が開いた。
「お母様っ、準備できましたが、馬って、馬でで、か、けっ、で、で、殿下。」
「アリエッタ、ヴァシリス殿下がお迎えに来て下さっているのに、何と、はしたない、、ご挨拶なさいっ。」
サロンには、お父様とお母様しかいないと思っていたのに、まさか、あ、あの、ヴァシリス王子様が、ソファに座って、お茶を飲んでおられる。
確か、昨年成人され、お年は19歳。親衛隊の騎士服をお召しになり、腰には、ヒーリングの時に使われる《海神の剣》。
夢でみるより、背も高いし、お顔立ちは、アカデミーで見かけるより麗しく、コバルトブルーのあの瞳は何?私を真っ直ぐに見てらっしゃる。
騎士服姿が、素敵すぎて、破壊力が強すぎる。
顔が、何故か、かぁっ〜とする。首が熱い。
「アリエッタ、ご挨拶なさいっ。」
お母様が怒っている。
は、早く、ご、ご挨拶、を、、、どうするんだっけ、淑女のれい。
嘘、殿下が、立ち上がって、こっこっちに、く、くる。
で、殿下が、私の前で、跪かれた。
うそ〜〜〜なんでっ、お母さまっ、助けてっ。
「久しくお目にかからず失礼した。お忘れではないと思うが、ヴァシリス・シーシェルだ。私の巫女、アリエッタ嬢。」
で、で、殿下が、手、手をさしのべて、、。
「はっ、はっ、あ、あの、アリエッヒャミカゃえ?☆%€〆#♪」
ダメだ。
殿下の、コバルトブルーの瞳が、私を見つめて、る、何故っ、
「母上からの贈られたドレスが非常にお似合いだ。美しくご成長なされた。アリエッタ嬢。」
「いっ、いえ、はっ、はい。ありがとうございます。」
私はなんとか、淑女の礼をして、で、で、殿下の手を取った。手まで震えて赤くなる。
「アリエッタ嬢、ご準備がよろしければ、其方の誕生日の贈り物に、海へむかいたいのだが、付き合ってくださるか?」
「はっ、はい。」
「では、ミカエラード公爵、セレステ夫人、アリエッタを、しばしお借りする。」
エスコートの手を離してくださらない。
そのまま、屋敷の正面エントランスに向かうと、
エントランスの手前で、また親衛隊の騎士服の方がいらした。どこかであった人だけど。
「アリエッタ、今日の護衛は、親衛隊隊長だ。」
「本日、護衛をいたします。親衛隊隊長、ユリシーズ・ウリエルと申す。」
「あっ、ユリシーズおじさま。よろしくお願いいたします。」
泣く子も黙る、シーシェル一の騎士、ユリシーズ・ウリエル様。オランおばさまの旦那様だわ。
エントランスに出ると、馬が2頭、いる。
ユリシーズおじさま様が後ろの馬に乗った。カッコイイ。
前の馬に、殿下が飛び乗る、そのお姿が、更に麗しい。素敵さにめまいがする。
「アリエッタ嬢、手を。」
殿下の差し出された手を取ると、ぎゅっと握られて、急に馬の上に、またがっていた。
なんで、私、馬にまたがったことなんて、あったっけ?こんな簡単にのれるの?
エントランスにお父様とお母様がいらして、殿下に挨拶をしている。
「キロン、行くぞっ。」
殿下の掛け声が、私の頭の後ろで響く。
殿下が、手綱を持たない方の手で、私の腰回りを、軽く支えてくださっている。
なんか懐かしい。殿下の香、、懐かしい。
やっと再開した二人です、
読んでいただき、ありがとうございます。




