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巫女は海を守りたい〜愛が溢れるヒーラー物語  作者: 紫陽花
第5章 次の新しい道 婚約のあと
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第5章 海神の騎士達の誕生

僕とアリエッタは、二人のやり取りを親と騎士仲間に見られていた。さすがに恥ずかしくて、僕もアリエッタも、みんなの顔が見られない。

クロノス様とポセイドン様から、今日起きた事の意味と説明を受け、何とか、立ち直った。


《さて、ヴァシリス、其方とアリエッタを助ける少年達と、すでに、絆はできているようだが、我らの加護を与えたいので、我々の前で、絆を結ぶがよい。》


「「「「「はっ!お受けいたします。」」」」」


《よし。ヴァシリスはすでに、神々の天海の剣を持っている。

少年たちには、次の剣を授ける。

力は、其方らが、覚悟した使命を果たすために必要なパワーを秘めている。


今から授ける剣は、其方らの手に渡った時から、巫女と5人の騎士しか触れることができない。

騎士寮にある剣は消えてしまう。

天海の剣は、いまポセイドンが持っている。ヴァシリスの剣は、巫女アリエッタしか触れられぬ。


アーサーには、天界の巫女を守るガブリエルの剣を。

ダニエルには、巫女と海の王子を守り助ける軍神アレスの剣を。

パーシーには、シーシェルの未来と王子達を守るクロノスの剣を。

アズラエルには、絆の弟ヴァシリスと海を守る、ポセイドンの剣を。》


クロノスとポセイドンに促されて、

僕達は祭壇の周りに跪いた。

僕とアリエッタは祭壇の奥に。悲愛の聖母の彫像の前だ。僕の後ろにポセイドン様がいる。アリエッタの後ろにクロノス様がいる。


祭壇を挟んで、

アーサー、ダニエル、パーシー、アズラエルが跪いた。


《子らを守り続けてきた其方らも、跪くがよい。天海の庇護を授ける。子らは次代を支えるもの。其方らは、今のシーシェルを守らねばならぬからな。剣を持つ者には、剣に加護を与える。正しく使えば、代々の宝剣となるであろう。》


父上と母上、マースとセレステ、アラン、ユリシーズとオランが、ダニエル達の後ろで跪いた。



寮に置いてあったはずの僕の剣は、ポセイドンが持っていたトライデントだった。ポセイドンから受け取ると、僕の剣になった。

ダニエル達が、また目を見開いて驚いている、


《さあ、ヴァシリスとアリエッタ、心のままに神々に祈るが良い。》


僕は剣を鞘から抜き、アリエッタに鞘を渡し、祭壇に向かって、剣を大きくまわし、正面で構える。

アリエッタに渡した鞘が「リン」と鳴って、母貝のように煌めく盾になった。

ダニエル達が、また目を見開いている。


僕が祈る。

「天界の神々、海神よ、我らの国シーシェルの幸せと、世界の海の全ての生けるものを守り抜く力を与えたまえ。」僕の剣から青白い炎が燃え上がり、稲光りが走る。


続けてアリエッタが祈った。

「シーシェルに生きる命と、世界の海に生きる全ての命が、約束された時まで生きられるように、癒し守る力をお与えください。」

アリエッタが持つ盾から、金色に輝く粉が溢れ出す。


僕とアリエッタは見つめ合った。二人の声が重なる。

「我らのこの命をかけて、どんな苦難にも負けず、全ての海の命とシーシェルのために、互いの心と命を捧げ、愛し守り抜きます。

神々のご加護を賜らんことを。我らに力を与えたまえ。」


二人の剣と盾から出た光は、祭壇の中央で、渦巻き、光り輝き、金色の粉にオレンジ色の光とグリーンの光が加わり、更に床が海になり、コバルトブルーの光が床から天井に向かって広がりはじめた。

ぐるぐると回る渦巻きが、ゆっくり回り、渦巻きの中から、剣が4本あらわれた。

祭壇の上で、剣がぐるぐると回り続けている。


クロノス様の声だ。

《少年達よ、願うのだ。其方らの使命に命をかけよ。》


ダニエル、アーサー、パーシー、アズラエルがそれぞれに祈っている。


ポセイドンが、トライデントを出した。

神殿全てに、海を起こし、波飛沫がたち、雷が神殿中に鳴り響く。

クロノス様が、手を上げただけで、金色と赤色の光が天井から降り注ぐ。

一瞬、全てが銀白色になり、銀色の雪のような粉が降り始め、みんなに降り注ぐ。


ダニエルの身体が、真っ白に光り出し、

パーシーは、青銅に光って、

アーサーは、深緑に光り、

アズラエルが、青紫色に光る。

そして僕がコバルトブルーに光り出して、

アリエッタが、金色のキラキラを出し続けている。

5人の光と、金色のキラキラが混ざり合って、大きな渦潮になり、剣を巻き込みながら、渦潮だけが天井に向かって消えていった。

祭壇の上には、それぞれの炎色に包まれた4本の剣が浮かんでいる。


ポセイドンが告げた。

《海神の騎士達よ、己の剣を授かるが良い。》


ダニエルが立ち上がって、純白に煌めく剣を掴んだ。膝をついて、体の痛みに耐えているようにみえる。剣の握りにトライデントの紋章が現れて、二の腕を押さえている。しばらくして立ち上がり、元いた場所に戻った。


次に、パーシーが祭壇に進み、青銅に煌めく剣を掴んだ。

アーサーが、前に進み、深緑の剣をとり、

アズラエルは、青紫の剣を掴んだ。

3人とも、苦しそうだ。パーシーとアズラエルの剣にトライデントの紋章が現れて、パーシーもアズラエルもニの腕を押さえていた。

しばらくして、二人は元の場所に戻ったが、

アーサーが、かなり苦しいようで、床に突っ伏して動けないようだ。

アリエッタが《癒し》をと言って、グリーンキラキラをアーサーに出すと、アーサーの剣にガブリエル家の紋章が浮き出てきた。アーサーも二の腕を押さえていたが、しばらくして、立ち上がった。


ポセイドンが、僕らを見て言った。

《海神の騎士達よ。シーシェルと海の未来を託したぞ。》もう一度トライデントを一振りすると、彼らの剣に、コバルトブルーに輝く鞘があった。



クロノスがニコニコしている。

《さて、これで、海神の騎士達に、剣を授けて、安堵した。エドワード王よ。子らはまだ幼い。其方らが、しかと導いてやるがよい。》


「クロノス殿、ポセイドン殿、我が国に、有難きご加護を賜り、感謝いたします。民と海を大切にした国作りをして参ります。」


《頼んだぞ。では、ポセイドン。皆を元の場所に返してやれ。ヴァシリスとアリエッタはしばし残るが良い。ポセイドン、皆をたのむ。》


僕とアリエッタだけ残して、みんなが消えた。王宮に移動したんだ。




《さて、ヴァシリス、今日はよく耐えたな。》


「クロノス様。あれしか思いつきませんでした。」


《あれで良い。天海の神々は満足している。》


「クロノス様、あれは酷すぎます。ヴァシリス様が死んでしまうのではないかと。」


「アリエッタ、まあ、そう言うな。死にかけていたが、其方の力で生き返ったではないか。」


「そうですが、あんなにヴァシリス様を苦しめないでください。」


《アリエッタ、その事だが、これからも、ヴァシリスが命をかけなくてはならぬ事もある。その時は、其方は、命をかけて癒す覚悟はあるか?それを聞きたかったのだ。》


「もちろんです。私の命を削ってでも、」


「ダメだ、アリエッタの命を削るなど。 」


「ヴァシリス様が死ぬなんて、ならば、私も共に死にます。」


「アリエッタを苦しめたくないのだ。」


「ヴァシリス様が苦しまれるのは、辛すぎます。」


《ポセイドン、なんとかしろ。》


《父上、この二人は、いつもこうではありませんか。互いが、互いの苦しみを癒したいと思い、自らを犠牲にしている。あのゼウスの炎に二人で飛び込んだくらいですから。》


《愛ゆえの自己犠牲だな。アリエッタ、これからもヴァシリスに危険があるときは、癒してあげなさい。そのかわり、二人とも命を落とす事はないようにしよう。ただし命のエネルギーを回復するには、長期の眠りが必要になる。それで良いか?》


「あの長期とは?」


《使ったヒーリングエネルギー量にもよるが、数日から、一年くらいか。》


「承知いたしました。」


《ヴァシリスよ、今日のような命の危機がある場合は、必ずアリエッタの癒しで生き延びよ。其方は万全でなければならぬ。日々の体調も怪我も、アリエッタの癒しに任せるのだ。アリエッタは其方の巫女だ。そのための存在でもある。

アリエッタは眠る事で必ず回復する。其方らの愛で命をつなげるのだ。》


「アリエッタは、眠るだけで、必ず生きてくれるのですね?」


《約束する。だから、ヴァシリス、命をかけるときは、迷わずに進むのだ。》


「クロノス様、承知しました。」


《今は我のエネルギーで、一時的にアリエッタは回復しているが、王宮に返したら、眠りにつく。今日のヴァシリスは瀕死の状態であった。アリエッタの愛で、ほとんどのヒーリングエネルギーをヴァシリスに与えている。今回は、眠りの時は長くなるぞ。話しておきたい事があれば、今から二人に時間を与える。》


「ありがとうございます。クロノス様、アリエッタが眠っている間、夢で会う事はできますか?」


《其方らが思い合えば、夢で会う事も可能だ。いつも言っているように、何でも願うのだ。願いが全て叶うわけではないが、願わなければ、絶対に叶わない。だから、神々に願え。ヴァシリスとアリエッタ、二人で願うのだ。よいな。》


「クロノス様、ありがとうございます。感謝しています。願い続けます。」


《では、我は先に天界にもどる。ポセイドン、後は頼んだぞ。》


《父上、いずれまた。》


クロノス様は、先に天界に戻って行った。


《ヴァシリス、アリエッタ。私は其方らが可愛くてな。二人を見ていると、私がシェルを思っていた頃を思い出す。しばし大人にしてやる。あまり時間がないから、20分しかないが、大事な話をしておきなさい。20分後には、王宮の治療室に戻す。戻ったら、仕方ないが、アリエッタは眠るぞ。アリエッタが眠る事、セレステには神託で伝えておく。》


ポセイドンが消えた。

僕らは、神殿で大人にしてもらい、二人きりになった。


「ヴァシリス様、どんなに心配したか。」


「アリエッタにもらったペンダントが何回も光っていた。」


「あのとき、ヴァシリス様が、殴られたり蹴られたりしたのが鮮明に見えていて。ヒーリングを送りたかったのです。」


「それで光っていたのか?」


「次からは、私の名を呼んで、癒してくれと、願ってください。これからは私が眠りについていても、必ず、そうしてください。」


「わかった。そうする。だが、アリエッタがヒーリングに大量のパワーを使えば眠ってしまうのだぞ。」


「ヴァシリス様が苦しまれるよりは、ましです。ヴァシリス様を助けられない方が私は苦しくなります。それに、今はお側にいられないのです。長く眠ったとしても、ヴァシリス様のお役に立てるなら、かまいません。きっと同じ夢は見られるはずだから。」


「アリエッタ、たくさん話したいのに、時間がない。」


「ヴァシリスさま、抱きしめてください。今は、20歳です。」


「それさえ、忘れていた。」

僕はアリエッタを抱きしめ、頬ずりをしてみた。


「ヴァシリスさま、お髭が、くすぐったいです。」


「ヒゲ?」そうだ、23歳の僕は、口と顎にヒゲを生やしていた。

もう一度、アリエッタに頬ずりした。アリエッタが、クスクスと笑った。


「今日は苦しかった。何度もアリエッタを思って頑張った。手紙も薬も嬉しかった。朝の出発のあれは、反則だぞ。涙が出そうになった。」


「ヴァシリス様に、いただいてばかりで、思いをお伝えしたかったのです。大切で大切で、、だから、どんなに心配したことか。」


「今日はあれから、どうしていたのだ。」


「ヴァシリスをお見送りしてすぐに、お母様が迎えにきて、ミカエラードに連れ帰られました。

すぐに神殿で、巫女教育が始まったのですが、一日中、ヴァシリス様の戦っているお姿が浮かんで。最後は、夕方に、ご神託で、治療室で血を吐かれたのを見たのです。お母様を振り切って、無我夢中で、。夢で見た隠し通路を思い出して、導かれるように、ここから隠し通路を走ったら、ヴァシリス様のお部屋にたどり着きました。 」


「えっ?ここから僕の部屋に行けるのか?知っていたのか?」


「知らなかったのですが、夢に道が少し見えていて、お母様は知らない道です。ここから、」


アリエッタは、悲愛の聖母の彫像に、僕を引っ張って行った。

「ここを、、」

彫像の聖母に彫られているロザリオの十字架の中央に小さなトライデントの紋章があった。そこを押すと、彫像と祭壇の間に、下におりる階段が現れた。


「まさか。」


「ヴァシリス様の勉強部屋のクロゼットの中に出ました。子どもの時の服がある方です。

お部屋からでたら、アンジェラおかあさまにあって、ヴァシリス様があぶないから、医務室に行きたいとお話しして、」


「アリエッタ、ありがとう。」

僕はもう一度抱きしめた。


「ヴァシリスさま。私が長く眠ったり、巫女教育で会えなくなったら、ここの私の部屋に閉じ込められます。会いに来てくださいますか? 」


今のアリエッタは大胆だ。


「神殿の中に私の部屋があるのです。お母様と私しか開けられないと言われましたが、ここを、、」


悲愛の聖母彫像の奥は、真っ白の壁だったが、アリエッタの示す場所に手をを当てると、金色の王家の紋章が浮き出して、扉が表れ、開いた。


「やっぱり、ヴァシリス様は、開けられるのですね。」


「長く会えないときや、王宮で会えなかったら、ここに会いに来る。眠っていても、できるだけ来る。アリエッタも来れるなら、私の部屋に来れば、母上が気づいてくださる。月の宮には、其方の部屋もある。夢でも、必ず会おう。」


ポセイドンの声が聞こえた。

《あと5分だ。》


「ヴァシリスさま。」目が潤んでいる。


「アリエッタ、ほかに伝えたい事はないか?」


「あ、あの、」


「時間がない、なんでもよい、言ってよいから。」


「ヴァシリス様の匂いがする寝着を、ください」


「そなた、そこまで私を、、」

アリエッタが頷く。


「今朝、着替えたものは、部屋がそのままなら、いや、侍女が入っていたら、もう洗濯に回っているか、、 」


「では。くださるのですね?」


「そんなもので良いなら、ただ、今手元にないし、部屋にも、、」


「も、もう、いただきました、、朝、ヴァシリス様のお部屋にあった、今朝まで着ておられた、寝着を、どうしても、、今、神殿のお部屋にあります。、」

 

僕は目を見開いたまま固まってしまった。


「私は、きっと、へんたいです。」


「嬉しい。」


「へ?」


「そこまで私を、思ってくれていたのか」


もう言葉はいらなかった。


「アリエッタ、お前が眠るまで、、こうしている。」


抱きしめたまま、甘く切ない口づけをし続けた。




アリエッタが、エネルギーを使い果たすと眠り姫に。

読んでいただき、ありがとうございます。

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