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巫女は海を守りたい〜愛が溢れるヒーラー物語  作者: 紫陽花
第5章 次の新しい道 婚約のあと
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第5章 年少優秀騎士達の誕生

そのあとの

弓槍試験は、すごい事に、全員が満点で合格した。弓担当教官が、何度も弓や槍や的を調べていたが、不正も何もなく、全員合格になり、また騎士団中、大騒ぎになった。


ローグ のせいで、グダグダしてるうちに、パーシー達4人が、かなり回復して、みんな絶好調になっていたからだ。僕は、指が折れていたけど、満点だった。クロノスの御加護がズルと言われたらズルだろうけど、弓には自信があった。きっと無敵なんだと思う。


やっと、入団式と体力試験が終わった。


父上は昼からいないと思っていたけど、本部の2階から最後まで、望遠鏡で見ていたらしい。



閉会の挨拶は、アラン隊長が簡単に締めた。


「みな、今日は、前代未聞のことばかり起きたが

素晴らしい年少優秀騎士が5名、選抜された。非常に喜ばしい事だ。

国王陛下は、ご多忙のため、試合を全てご覧になり、王宮に戻られた。5名の騎士の称号授与は、後日に行われる。


今日から、騎士寮での生活が始まる。騎士見習いとして、互いを尊重し、いざこざを起こさぬように。

寮では寮長、班長の指示に従え。

では、これから、みな各寮に戻れ。

馬を出したものは、先に馬の面倒を見よ。

以上、解散。」


僕たち5人は、厩舎に帰り、馬の世話をしてから、寮に戻った。

寮長は、1人だけど、第三団騎士団の騎士が、見習い5人に1人、班長として寮にいてくれるらしい。

僕たちの班長は、何とトビーだった。


寮に戻った途端に、トビーが飛んできた。

「殿下、お怪我は、、」

「トビー班長殿。ヴァシリスでお願いします。」

「そうだった、やりにくい。」

「トビー班長殿っ!」


「わかったわかった。みんな怪我はないか。朝から、謀反の初陣に、後始末に、体力試験も、いつもと違い、我らも生きた心地がしなかった。小さな怪我でも報告せよ。」

「今のところは、大丈夫です。具合が悪くなったら、すぐに相談します。」

ダニエル達も大丈夫だと言ってる。

「ヴァシリスは、一昨日の傷が開いたようだから、あとで医務室に行くように、団長から指示があった。いいな。」

「はいっ」


「馬の世話は終わっているな?」

 「「「「「はっ!」」」」」


「では、先に風呂に入れ。あまり広くないから、5人ずつ班ごとに入るようになっている。あと15分くらいで空くから、その後すぐにはいれ。今日来ていたものは、血のりがついているから、必ず洗濯室にだせ。服に氏名はついているはずだが、確認するように。破れたものも一緒に出せば、修復不可能なものは、新しくなって戻ってくるから、とにかくぼろぼろでも出しておくように。」

「「「「「はっ!」」」」」


「部屋に戻って、剣を置いて、着替えを準備して、部屋で待て。1人ずつ、部屋の施錠と解錠を説明する。」

「「「「「はっ!」」」」」


僕たちはみんな2階に上がった。

5人並んでいるが、よく見たら、1番手前がトビーの班長部屋だった。


荷物を開けて、部屋着を出した。

寝着は寝台の上に置いた。寝台は、1人で寝る大きさだった。王宮の寝台は、これが6個くっついた位の大きさだ。これにアリエッタが寝たら、確実に落ちる、びっくり踊りもできないな、と、笑いが込み上げてきた。

ペンダントに触れて、アリエッタを思った。

今、月の宮か、ミカエラード家かどこにいるんだろう。それすらわからない。

ペンダントが光る。アリエッタも、思ってくれているのか。


トビーが来た。

「ヴァシリスでん、いや、ヴァシリス、今日はよくがんばった。我らも何の手出しも出来なかった。」

「ありがとうございます。側におられることが、心強かったです。」


扉の解錠、施錠は、ヒーリングエネルギーを扉に込めるだけで良かった。

母上からもらった王家のノートやペンと同じ仕組みだ。

剣立ても、全てヒーリングエネルギーを込めておけば、他者には、触れないらしい。

まあ僕の剣は、父上でも触れられないし、、盗もうなんて事したら、剣から、雷が落ちるだろうけど。


着替えを持って、風呂に行った。王宮では湯浴みと言うけど、ここは風呂というらしい。

時間は30分と言われた。

真夜中から朝6つまでは、自由に誰でも入れるみたいだから、それも嬉しい。


浴室に入ると、結構広かった。

5人が浴槽に入っても足を伸ばせた。

シャンプーや石鹸が、ユリシーズからしょっちゅうしていた匂いだった。

王宮の石鹸の匂いはわかるし、ウリエルの屋敷に帰った日は、良い香りだったけど、スパイシーな匂いは騎士団の石鹸とシャンプーだった。なんかすごい発見だ。と言う事は、ユリシーズ、騎士寮にいる事が多いんだ。


みんなで、鍛練中の傷の見せ合いっこをしたり、

頭も体も洗って、スッキリした。

浴室で鏡をみたら、顔が腫れあがっていた。ずっと血が口の中に出てくる。

タオルも備え付けで、使ったらカゴに入れておくだけでいいらしい。


トビーが昼の6つから夕食だと教えてくれた。騎士団ごとに、ダイニングがあり、騎士団ごとにメニューが違うらしい。

部屋に戻って、6つまで時間が少しあるので、

荷物を出して、騎士服や下着をクロゼットに入れた。持ち物が少ないな。

荷物の底に小さな箱があった。入れた記憶がなかったけど、箱を開けたら、アリエッタの手紙と、毒消しの海藻薬、回復の海藻薬、擦り傷の海藻塗り薬と、キャンディが入っていた。


「我が君、これを見てくださっていると言う事は、無事に荷解きをしてらっしゃるのですね。私は、多分、ミカエラードにいると思います。

離れ離れと言うのが、生まれて初めてです。寂しくないとは言えません。きっと夢で会えますよね。私も努力します。お薬は、ポセイダルゴ様に習って作りました。どうかご無事で。アリエル」

手紙は、アリエッタの香りがした。


扉がノックされた。

扉を開けるとユリシーズがいた。

「ユリシーズ団長殿」


「ヴァシリス、怪我はどうだ、顔がひどいな。痛むだろう。王子の顔を殴るなど。側室が爪で顔を引っかいても、打首の時代もあったのに。」

「えっ?そんな時代が?」

「そうだ。今でも妃が王に 爪を立てたら謹慎だ。顔に傷をつけたら、二度と会わせてもらえなくなる。」

「まさか、そんな。」

「ヴァシリスが殴られ続けていたのを、陛下は

直視するのが辛いと。もし、あの時、見習いでなかったら、アランが一発目が当たる前に手を切り落としていた。」

「そんな」


「だから、殿下は、国の宝だと言ってる。しかし、口の中も切れているし、出来るだけ早く医師に見せたい。気分は悪くないか?」


「はい。口や顔も痛いですが、背中の傷の奥が痛くて。アリエッタが2回ヒーリングしてくれたのですが、まさか殴られて出血するとは。それから、今日は、あまりにも色々ありましたが、ご神託で、わかっていた事ですか? 」


「ここまで起きるとは思ってなかったが、全て必要な事だった。よく持ち堪えてくれた。完全に想定外だったのは、お前ら5人の年少優秀騎士合格だ。1番、困ったぞ。」


「あれが、想定外だったんですか? 」

「そうだ。あとで陛下に呼ばれる。先に隠し扉を」

「あっ、そうでした。」


ユリシーズが隠し扉の場所を2箇所教えてくれた。

「ここは、陛下と殿下しか開けられません。開けてください。」


壁を押さえると小さな扉が開いた。中に

王子の指輪が入っていた。王子権限王命証もあった。

「ご存知ですね。陛下に何かあれば、これを持つ者が、王命を下せます。騎士団と海洋軍を動かす証です。」

「父上が、これを。僕に。兄上ではなく?」

「そうです。陛下は最初からそのおつもりでしたから。緊急時は、必ずこれを持ち出してください。」

「わかった。」

とんでもないものが入っていた。


もう1箇所は、寝台の側のもう少し大きな場所だった。王家のノートと、アリエッタの手紙と薬を入れた。

ユリシーズが、にっこりした。

「もう恋文が?」

「荷物に入っていた。」

「離れると、男より女性の方が寂しいでしょうから。」

「オランは寂しいとは言わない?」

「口では絶対言いませんが、顔をみたらわかります。」

「あの、オランが?」

ユリシーズは、ニッと笑った。

「抱きしめたくなる?」

「当たり前でしょう。で、この場所は、殿下しか開けられません。恋文はここでしょうね。

そろそろ6つ。ダイニングへ。」


「ユリシーズ、色々とありがとう。」

「私の1番弟子ですから。アズラエルが僻むかもしれませんが。」

「そうだ、アズラエルのことも知らなかったのに。」

「1番弟子はあなたです。さっ、ダイニングで挨拶と紹介がすんだら、医務室に連れていくので、それまで持ち堪えられますか。あと20分くらいかかりますが。」

僕は頷いた。


ユリシーズは、部屋を出て、左右の扉を叩いて声をかける。

「優秀騎士は、早くダイニングへっ移動せよ。」


大きなダイニングは、100人くらい座れた。縦に長いテーブルが並んであり、上官は前に丸いテーブルがいくつかある。


縦長のテーブルの片側は、現役騎士と決まっていて、その向かいは、見習いになっていた。

一緒に生活することで騎士団の連帯感を出す目的だそうだ。

だが上官と現役騎士は、届けをだしておけば、屋敷から行き来できるみたいだ。意外に自由である。


僕たち5人は丸いテーブルの前に立たされた。


ユリシーズが立ち挨拶する。


「近衛騎士団、第三団団長のユリシーズ・ウリエルだ。親衛隊副隊長を兼任している。

今日は、我が騎士団へ入団、おめでとう。

入団早々に、体力試験で、想定外の事件もあったが、みな、うまく対処できていた。

騎士団とは、常に戦いと隣り合わせのところだから、今日が普通だと思うように。

体力試験では、驚くべきことに、第三団の見習い5人が、最終試験を突破し、入団当日に、年少優秀騎士となった。第三団始まって以来の快挙だ、

みんなもう知っているだろうが、改めて紹介する。敬意を込め、拍手するように。

ダニエル・ミカエラード 11歳。

パーシー・ウリエル 10歳。

アーサー・ガブリエル 10歳

アズラエル・ウリエル 9歳。

ヴァシリス・シーシェル 8歳。」

この5名は、今から現役騎士の扱いとなる。」


みんなから、すごい拍手をもらった。

班長が教えてくれた席は、見習いではなく、現役騎士席だった。見習いの席をすっ飛ばして、騎士になってしまった。強い者が上になる。そう言う世界だ。


「これからの鍛練や寮生活については、明日から、順次、班長から話がある。今日は、初日で疲れただろう。

食事をしっかりとり、風呂がまだの者は順番に入って、早く休むように。

では、食事を始めよ。」


僕ら5人は、医師の診査があるから、すぐに本部の医務室にすぐ行くよう言われ、ユリシーズとトビーに引率され、本部に向かった。

僕だけ重症だからと、別の医師の診察になった。

ユリシーズが僕を抱き上げて、どんどん複雑な通路を歩いていく。扉をあけたら、そこは王宮の医務室で、幼い頃から、診てもらっていた王宮専属の医師がいた。


「ヴァシリス殿下、これはひどい。すぐに診ますから、全部脱いでください。」

部屋着を脱いで下着だけになる。


ユリシーズの説明を聞きながら、、医師が全身をチェックする。

脇腹から蹴り上げられて背中の傷が、開いてしまい悪化しているらしい。


「殿下、ご自身でヒーリングされましたか?」


「途中で、背中の止血と、右腕の打撲は、周りにばれないようにヒーリングした。すぐに弓を使わなくてはならなかったので。」


「無茶をなさってはなりませんよ。止血は少しは効果がありましたね。

まず、痛み止め、化膿止め、止血剤を数本、注射します。これでは睡眠もままならない。

それから、口に薬を含んでください。ご気分が悪くなったら、全て吐いてください。」

丸い鍋みたいな入れ物を渡された。


「ユリシーズ殿、殿下のグリーンヒーラーは呼べますか?蹴り上げられた傷と、お顔の腫れが酷すぎます。お顔に傷が残ります、それに内臓の損傷が激しく、意識が持つかどうか、、、」


ユリシーズが頷いて部屋を出ようとしたのを止めた。

「ユリシーズ、アリエッタはダメだ。」

首のペンダントが光る。


「姫様が適任です。」


「心配させたくないんだ。」


「朝から、ずっと心配していました。」

アリエッタの声がした。

振り返ると、母上とアリエッタがいた。


「ヴァシリスっ、こんなに。なんてこと。」


「ヴァシリスさま。誰がこんな酷いことを、酷すぎます。」

アリエッタが駆け寄ってきて、僕の手を包む。


「先生、私がヒーリングを。場所と順番を教えてください。」

言いながら、身体全体がグリーンだ。


「まず、全身の気力をキープしてください。エネルギーは、強ければ強い程よい。

口の中が何箇所も切れ、出血が止まらず、次にお顔の腫れは何度も殴られておられる。

それから、脇腹から毒を受けた背中まで、何度も蹴り上げられ、炎症をおこし再出血。

殿下がご自身のヒーリングの止血で、一時的に止まっていたようですが、また出血が始まっています。内臓の損傷が激しく、体内で出血がおきて、止まりません。

右腕が踏みつけられて、筋肉が損傷し、指の骨が3本複雑骨折を。必要な薬剤は既に注射をし、口腔内に、止血剤を含んでいただきました。」


アリエッタが、僕の頬に両手をそっと触れると、グリーンキラキラが溢れ出した。

アリエッタが、僕を見つめ続けている。涙がポロポロとこぼれている。今日は、涙までグリーンだ。

「どれほど、重荷をお一人で、、私が一緒にと言ったのに。」


アリエッタが泣きながら、僕の目の周りに触れていく。目の周りが腫れあがって、前がよく見えなくなっていた。

アリエッタが触れると、ふわふわして温かくて、痛みが減る。


「アリエッタ、痛みが薄れていくよ、ありがとう。」


「ヴァシリスさま。まだです。私の命を削ってでも回復していただきます。こんなになるまで、我慢してはいけません。ヴァシリスさまは、いつから、こんな馬鹿になったのですか。」


突然、気持ち悪くなり、口を押さえたら、血を吐いた。先生に渡された容器に吐いたが、何回も血を吐いてしまい、容器から吐血したものが床に溢れていく。意識が薄れていく。


「殿下、お気を確かに。」

「ヴァシリスさま。」

「アリエッタ、あい、し、て、、」

「ヴァシリスさま。しっかり。」


「姫様、ヒーリングを続けてください。もう少し強く出来ますか?強いのは問題ありません。全身にかけて。」


「わかりました。」


「ヴァシリス様、海を出します。

クロノス様、海のお父様、どうかヴァシリス様を助けてください。

ヴァシリス様、ヴァシリス様、私を見てください。ヴァシリスさまっ、

クロノス様っ、力を貸してくださいっ。」


僕は海の中にいた。アリエッタが僕を抱きしめてくれている。

とても心地いい。このまま眠ってもいいんだ、、。


体が軽くなった気がして、目をあけた。

僕は心地よい布に包まれて、アリエッタに膝枕をしてもらい、抱きしめられていた。

アリエッタと僕は、グリーンキラキラで包まれている。アリエッタから、心地よいエネルギーが流れ込み続けている。繋がっている安心感は、互いの思いが一つだとわかる。


少し目が見えるようになった気がする。

アリエッタは目を閉じて、僕の額に唇をつけていて、そこから、グリーンエネルギーが僕に注がれているのかわかる。

アリエッタの貝殻の指輪をしている手が、僕の心臓に当てられていて、グリーンエネルギーが、心臓に浸透してきている。もう片方の手が、僕を優しく抱きとめてくれていた。


口の中から、血の匂いが消えていた。

アリエッタ、アリエッタ、大切なアリエッタ。

僕は、優しい波にさらわれるように、また眠りに落ちた。


読んでいただき、ありがとうございます。

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