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巫女は海を守りたい〜愛が溢れるヒーラー物語  作者: 紫陽花
第5章 次の新しい道 婚約のあと
77/159

第5章 騎士団 体力試験 後編

「見習いっ、しっかり食べたのか?

最終試験の内容を発表する。残った7人は前に集まれ。残りは、しっかり見学しろっ。」


「「「「「 はっ!」」」」」


「最終試験は、勝者最大の5名に褒美が出る。

褒美は、年少優秀騎士の称号だ。この場で、国王陛下から認められる。将来の親衛隊、上官、教官のへ道が約束される。」


悲鳴に近いどよめきが上がった。周りの現役騎士達の方が驚きが多いようだ。


試験の内容が発表された。

現役の年少騎士達から試合相手がたつこと。

相手が勝てば、年少優秀騎士から親衛隊に即配属される。

試合は、格闘技。

それに勝てば、弓コースで、騎乗の弓槍の昇格試験。優秀騎士の昇格基準と同じ内容だ。10中9本の命中が必須。


僕は、喉が干上がりそうだった。

絶対に無茶な話だ。

だいたい、今朝、入団したところだろ。

朝、ここについたばかりだ。荷解きさえしてない。

僕の周りの6人も、さすがにびびってる顔だ。


教官長が、年少優秀騎士達を呼んでいる。

さすがに、一糸乱れず、集合した。

見た目だけでも、親衛隊ジュニアだ。


「年少優秀騎士達、今日は特別に親衛隊への門が開いた。そこにいる7名の見習いに勝てば、陛下のご許可が出て、手続きが終わり次第、16歳を待たずに親衛隊に配属になる。負けても罰はない。現状維持だ。挑戦したい奴は、挙手しろ。」


「「「「「はいっ!」」」」」


何と全員が手をあげた。嘘だろ。20人近くいる。


教官長がニヤリと笑った。

「よしっ、では挑戦権をかけて、今から騎乗で立ち合いをする。馬をつれ、10分以内にここに集合だ。遅れた奴は失格とする。行けっ。」


「「「「「はっ!」」」」」



「見習い、お前ら、口を開けてぼっ〜とするな。」

凄い迫力の年少優秀騎士たちを眺めていたら、アラン殿とユリシーズ殿が、僕たちの前に立っていた。


僕たち7人は、びっくりした。


アラン殿が口を開く。

「見習いっ、聞いていたな。」


「「「「「はっ!」」」」」


「騎士団始まって以来の入団式になってしまったが、最終試験については、陛下を含めた騎士団上層部全員一致で、内容が決まった。お前らが、勝てば、誰の文句もなく、騎士団の総意として、年少優秀騎士、つまり幹部候補生として将来が約束された騎士となる。

ただし、狭き門だ。というより、門は開いてない。今、馬を取りに行ってる年少優秀騎士達は、16歳を待たずして、12歳で騎士になった現役騎士だ。16歳になれば、親衛隊に入るものばかり。

そいつらを負かし、弓槍の昇格基準を満たせるか?合格できれば、必ず騎士になれる。

だが、今回は、真に強い同年代の年少優秀騎士に負かされる洗礼が褒美だと思えっ。」


「「「「「はっ!」」」」」

アラン殿が、やっぱり鬼に見えてきた。

父上も、何考えてんだ。ちょっと僕は、むっとしてきた。


アラン殿が、優秀騎士の選抜場に歩いていき、

ユリシーズ殿だけ残った。

ユリシーズ殿が口を開く。


「というわけで、見習いっ、とにかく勝て。朝、ここには140人、並んでいた。今は7人だ。強いから、ここに立っている。急いで騎士になる必要はないが、力があるのに、ゆっくり騎士を目指す必要もない。

騎士になる理由を、もう一度しっかりと考えてから戦え。負けても、追い出されないが、今、周りで見学してるちびっこ見習い達との一からの鍛練が待っているだけだ。

前に進みたいなら、何が何でも勝て。

格闘技は、剣を外し、服装は好きにしろ。シャツだけでも構わん、全部脱いでも構わん。試験だから、相手を殺してはならん。あと、弓槍の試験では馬を使う。馬のフォローをしておけ。」


「「「「「はっ!」」」」」


「勝ちたいな。」パーシーが呟く。


「すぐに騎士とは思ってなかったけど、チャンスがあるなら、諦めたくないな。」

アーサーが、ポツリと言う。


「諦めずに、とにかくやろう。門が開いてないと言われたけど、門はある。開かないとは言われなかった。」ダニエルが拳を握る。


「君達は、強いから、可能性はあるよ。」

「君の試合、すごかったじゃないか。僕はヴァシリス。君は?」

「申し遅れた。第一の、ドノバン・マーカスだ。」

「もしかして、親衛隊のマーカス殿の?」

彼は頷いた。


「君の父上は存じ上げている。お強い方と聞いている。お人柄も素晴らしい方だ。」

「僕は、父上の仕事を見たことはないけど、とにかく家では厳しい。」


「親衛隊は騎士の中の最強の騎士だから。」

「陛下、、いや、君の父上も厳しいか?」

「たぶん、厳しい。8歳で入団させるくらいだから。」

「そうだな。お互いに悔いのない試合をしよう。」

「ドノバン、まだ、今日始まったばかりだ。でも、出せる力は全て出そうな。」

僕たちは、堅い握手をした。

第一のもう一人とドノバンが馬を見にその場を離れた。



前の訓練場で、優秀騎士達の騎乗での手合わせが始まった。

その迫力に圧倒される。どこを見ても隙がない。

僕らの今日の戦いは、相手の隙を見つけて勝つばかりだったけど、彼らには隙がない。

みんな12歳から15歳のはずだろうけど、親衛隊を知っている僕が見ても、親衛隊にしか見えないくらいの力だった。馬が、彼らの足のように一心同体にみえる。


それに、僕ら見習いが負けても、僕らはこれから訓練がある。逃げ場があるけど、彼らは、親衛隊に早く入るか、あと数年待つかの、大きな差がある。猶予が違う。

僕は、ふと思った。僕も、アリエッタのことは、あと15年待たねばならない。少なくとも、アカデミー入学まで5年。それが短縮されるなら、どんなに必死になったって、短縮したい。

その思いがあるかどうかだ。


僕は、ダニエルに声を掛けた。

「ダニエルは、本当は、もっと早く入団できたはずだ。それを待ってくれたのだろう?」


「それは、ヴァシリスのせいじゃないよ。」


「僕は早く入団したかったけど、身長が伸びるのを待つしかなかった。もし、あと少しでも低かったら、今年は無理で、来年まで待つしかなかった。そんな不確定要素がある状態で、待ってくれたのだろう?」


「待ちたかったんだ。僕の妹を大切に守る君を、待ちたかったんだ。」


「ヴァシリス、僕だって同じだ。父上に扱かれながら、父上が認めるところまで力をつけないと、入団させないと、タイムリミットが今年になると言われて、必死に鍛練した。」

アズラエルが言う。


「僕もだよ。父上は王宮の事は一切言わないけど、父上が命をかけて守っている貴い方がいるくらいは、わかっていた。僕は一度だけ、父上が、その王子を抱き抱えて騎乗しているところを見たことがある。王太子ではなくてコバルトブルーの瞳を持つ君だった。その時、僕は君を守る騎士になるって決めたんだ。」

パーシーが拳を振り上げて話している。


「僕もだよ。2人の叔母上が守る姫を、幼いながらに守っている君のことは知っていた。だから、必死に鍛練したんだ。ガブリエル家の剣になりたかったんだ。」

アーサーがすごい事を、さりげなく言ってる。僕にしかわからないように。

僕はアーサーの顔をみた。


みんな、もしかして知っているのか?

はっきり言えない、言わない、だけど、胸のうちはわかりあえた気がした。


「残るなら5人全員だ。」


ダニエルが、凄い提案をした。

「もし、誰かが負けたら、騎士は返上する。5人一緒でないと、今日まで待った意味がない。それでいいか?」

みんなが頷く。

「全員残るか、全員一からやり直すか、だ。」


「戦略なんて、もうないだろう。隙がない相手だ。向こうも、早く親衛隊に上がりたいだろう。」


僕は思っていた事を言ってみた。

「なあ、みんな。向こうは自分が勝てば上がれる。それが隙じゃないのか?」


「そうか、こっちは、5人一緒と言う目標が大きい。全員の意志だ。」


「そうだ。それは弱味になるかもしれないけど、僕は強みになると信じている。負けても、僕らは一緒だ。責める理由も恥じる理由もない。共に上がれる時に上がる。」


「僕らの渦潮を見たか?僕らはきっと強い。もっと強くなれる。」


「よし、愛馬のフォローを、しておこう。弓槍試験、受けられるようにな。」


5人で、仮繋ぎの場所に向かった。

みんなで愛馬の体調を見て、少し餌と水を補充して、待機場所に戻った。


「ようしっ、皆聞けっ。7人の優秀騎士が決定した。年齢差は無視だ。くじ引きにした。

剣は置け。服は着たままでも脱いでも構わん。

これは実戦ではない。試験だ。

男の急所と後頭部は殴るな、相手に屈辱を与える事も許さん。正々堂々と戦え。どちらかがギブアップするか、上官が止めるまで戦え。」


「「「「「はっ!」」」」」


優秀騎士達が殺気立っているのがわかる。夢にまで見た親衛隊が、そこにあるからだ。彼らは、一人倒せば、親衛隊だ。


「1番目、第一、見習いジョシュアと、優秀騎士 ヨハン」


のっけから、すごかった。ジョシュアが弱いわけじゃない。だけど、一発殴られて、首を絞められ、意識がなくなった。

「そこまでっ。ヨハンは親衛隊だっ」


ジョシュアが、教官に担がれて運ばれていく。


優秀騎士達から、すごい歓声が上がった。ヨハンは親衛隊に決まった。



「2番目、第三、ダニエルと優秀騎士ブリーザ」


僕は、ダニエルに言った。

「僕の全てをかけて、アリエッタを愛し抜き守る。」

ダニエルが言った。

「その2人を、必ず守る。必ず勝つ。こんなところで、足踏みなんかしてられない。」

拳を合わせた。


ブリーザは身体が大きく、スリムなダニエルはハンデに見えたけど、投げられても投げられても、ダニエルは向かって行き、相手の隙を見つけた。そう、僕も気がついた。右への回転が弱い。ダニエルは、そちらに誘い込み、何度も何度も、投げ飛ばした。最後は、下から締め上げて、ブリーザは気を失った。

「そこまでっ、ダニエルは最終試験へ。」


見習いからすごい歓声が上がった。

ダニエルはぼろぼろになって戻ってきたけど、笑顔だった。アーサーが、打撲を冷やせと、氷を包んた濡れタオルを渡した。



「次、3番目第三、パーシー、優秀騎士ジャニス」


「ヴァシリス、必ず勝って、お前を守る。」

「パーシー、長年の鍛練に感謝する。僕の命を預ける。共に進もう。」

僕らは拳を合わせた。


パーシーは戦車のように、突っ込んだ。向こうの身体がでかい。組み合ったまま、両者譲らない。

先にパーシーが投げられたが、またかかっていく。あのパーシーが何度も何度も投げられる。

前を見ると、アランが眉を逆さにして怒っているのがわかる。パーシーが、首を締め上げられている。

僕らは叫んだ。

「パーシー、諦めるな。」

「パーシー、足を使えっ。」

パーシーの顔が赤くなり、手足の力が抜けてきた。鬱血してきている。

アズラエルが叫ぶ。

「ウリエルの名にかけて、立ち上がれっ!」

パーシーの目が開いた。身体を返そうとしている。

僕は、叫んだ。「パーシー・ウリエル、お前の覚悟は、その程度かっ!お前が倒れたら、、みんな死ぬぞ!」

パーシーが、ジャニスを投げ飛ばした。そこからがすごかった。間髪おかずに、腹にパンチを打ち込み、ジャニスはひっくり返ったまま動かなくなった。

「そこまで、パーシーは、最終試験へ。」


第三団から、またすごい歓声が起きている。パーシーコールまで出た。

パーシーが、ヘロヘロで戻ってきた。打たれて顔が腫れあがっている。

「ヴァシリス、すごい応援をありがとう。」またパーシーが抱きついてきた。

「パーシーは強いなっ。」

また氷タオルの出番だ。



「次っ、4番目第一、ドノバンと優秀騎士ジュバン」

ドノバンは強かった、だけど、ジュバンと言うのが、キック力がすごく、あちこちを蹴り飛ばして、ドノバンが組めない。ドノバンが体を低くして足を掴もうとした時、キックが首にはいり、ドノバンは気を失った。

「そこまでっ、ジュバン、親衛隊へ。」


優秀騎士から、すごい歓声があがる。ジュバンコールだ。



「次っ5番目、第三アーサー、優秀騎士マルクス」


「ヴァシリス、僕は、命をかけて、ガブリエルの剣になる。」

「アーサー、わかっている。長い道のりに、君の助けが必要だ。生き残ってくれ。」

僕らは、拳を合わせた。

アーサーは、ガブリエル家の使命を理解していた。


アーサーの相手は、これまた強かった。体格は変わらないが、スピードが速い。実戦なら、殺さなければ殺されるタイプだ。アーサーの俊敏さも、すごい。相手の動きは必ず見ている。

もしかしたら、ガブリエル家には、巫女を守る独特な何かがあるのかもしれない。

激しく撃ち合ってないように見えるのに、見えないスピードで、パンチが入っている。

一瞬、アーサーの身体から、グリーンのモヤが出て、相手を壮絶に投げ飛ばした。相手は起き上がれないみたいだ。

「そこまで、アーサー、最終試験へ。」


もう見習い側が、すごい歓声になっている。優秀騎士を次々と倒す仲間に歓喜している。

口から血を流しながら戻ってきたアーサーに、氷タオルを渡した。

「アーサー、ありがとう。」

「ヴァシリス、僕らの時代が始まるな。」



「次、6番目、第三アズラエル、優秀騎士アンソニー」


「ヴァシリス、君が姫と出会う前、僕らは3年間だけ乳兄弟だったらしい。僕もほとんど覚えてないけど、その瞳だけは、遠い記憶にあった。父上も母上も、君が優先で羨ましかっだけど、君がこんなにいい男だとわかって、父上と母上の思いがわかったような気がする。命をかける決心ができた。必ず、ユリシーズの息子として、君の兄として、何としても勝つから、弟も勝ってくれ。」

「約束する。僕らは、ユリシーズの息子だ。」


僕は、アズラエルを固く抱きしめた。アズラエルは、びっくりした顔をしたが、嬉しそうだった。

「父上のハグに似てるなっ。」

「当たり前だろっ。」


アズラエルは、9歳だが、アランの長男にも勝っていた。精神力は、ユリシーズに鍛えられていたら、絶対に強いはずだ。

相手のアンソニーは、上半身ハダカだ。筋肉質で、背がたかい。16歳に近いのかも?打ち込んでくる。それも、腹ばかりじゃなくて、アズラエルの筋肉のある場所を痛めつけてくる。あれでは、筋肉がやられてしまう。

「入団日に騎士なんで、10年早いんだよ、お前ら、甘いんだよ。」

「だから、なんなんだ。でかい図体して、まだ少年騎士団かよ。」

アズラエルが煽っている。取っ組み合いになり、相手がアズラエルのシャツを破り裂いた。

「やったな。」アズラエルが、相手の脇腹に噛み付いた。噛み付いて離れない。

「痛いっ、やめろ、離せっ。」アンソニーがもがいているが、アズラエルが噛み付いたまたまだ。


ユリシーズの顔をそっと見たら、下を向いていた。あれは笑いを堪えている時だ。


アンソニーが痛がって、体制を変えた時だった。アズラエルは、アンソニーの片足を持ち上げ、ぐるぐる回して、ぶっ飛ばした。地面に落ちたアンソニーは、目が回っているらしい。

そこに馬乗りになり、首を締め上げていく。アンソニーが落ちた。

「そこまでっ、アズラエル、最終試験へ。」


もう見習いは、お祭り騒ぎだった。

後は、僕だけだ。負けられない。絶対に負けられない。



「最終、7番目、第三、ヴァシリスと優秀騎士ローグ 」


「ヴァシリス、気をつけろ。あいつ、ちょっと悪で通ってるやつだ。あれを親衛隊に入れるわけにはいかないぞ。」

ダニエルが珍しく、ネガティブ情報を出してきた。


「わかった。みんなが勝ったんだ。僕が負けるわけにはいかない。」

僕は、見習い服を脱いでシャツだけになった。

アズラエルが、口から血を流しながら、戻ってきた。

「これ気にするな、相手の血だから。噛みつき過ぎたっ。ヴァシリス、必ず勝て。」

みんなは約束を守った。僕は絶対に負けられない。


ローグ は、ワルの顔をしていた。僕よりでかい。騎士には珍しく目つきが悪かった。最初から、煽ってきた。

「王子様が、こんなところに、何をしに来た。」

すぐに打ち込んでくる。避けた。

「逃げるのか?」また打ち込んでくる。

これって格闘技じゃなくて、チンピラの喧嘩じゃないか。仕方ない。チャンシアだと思う事にした。

無視して黙っていると、パンチがいくつも来る。顔ばかり狙ってくる。

「ここ、刺されたんだろ?」イライザに刺された背中を、後ろから蹴り上げられた。

「うっ」治ったはずだったのに、まだだったのか。膝をついた。


ダニエル達は、僕が祝賀会で刺されたのを知っている。

「卑怯だぞっ」ダニエルとアズラエルが怒鳴っている。

「傷を殴るなとは言われてない。」

後ろから首を絞められ、傷のある背中を数発殴られた。血が流れ出したのがわかった。

第三騎士団が剣に手をかけた。ユリシーズがこちらを見た。僕は首を横に振った。


「王子様よ、その麗しいお顔で、女を溺愛してるらしいな。」

顔を続けて殴られた。

「こんなところより、毎日、ダンスでもしていたらどうだ。」

また顔を殴られた。口の中が、血の匂いがしている。

「あれっ、王子様はオシャレだなっ、愛しい女からもらったか。こんなもの、何の力にも、ならないんだよ、ガキのくせに色気づきやがって。」

アリエッタのペンダントに手を出そうとしている。ペンダントが何度も光っている。

僕はキレた。

「触るなっ、」相手の顔にパンチした。ローグ が吹っ飛んだ。

「ガキのくせに、俺様を殴ったな。」

目が血走っている。

「だからなんだ、俺様とは。お前は何様だっ」

「ジプラー侯爵の嫡男、ローグ だ。」

「それが何だ。」

「ぶっ殺してやる。」

飛んできたパンチの手を掴みねじあげた。


「今、しているのは、試合だ。なぜ、ぶっ殺す話になるのだ?」

「気に入らないからだ、なんでも手に入れられて、腹が立つ」

捻じ上げた手を更に捻じ上げ、足を払って、組み敷いた。

しまった。背中の痛みから、抑えが弱くなり、抜けられ、背中をまた殴られた。

「うっ。」


「痛いなあ、王子さまよ。」

脇腹から背中を何度も蹴り上げられる。

また血が流れ出していくのがわかる。


ダニエルとアズラエルとパーシーとアーサーが、走り出してきたのを教官が抑えた。

「ヴァシリス、負けていい、もう辞めろ。」

「傷が治ってない、無茶するな、騎士なんかより、お前の方が大事だ。」

「ヴァシリス、護衛に任せろ。お前は王子だ。」

4人が叫んでいる。


「王子様、降参しろよ。許してくださいって、頭を擦り付けて頼めよ。」

まだ、傷口を蹴り続けるつもりだ。

倒れ込みながら、前が見えた。アランとユリシーズが話している。何人か上官が走っている。

こいつ、何かある。くじ引きじゃない。

だから、僕の相手にしたんだ。

父上は知っているはずだ。


このまま僕が倒れても、不敬罪に問える。王子とわかって執拗に痛めつけたわけだから。

父上の「死なないように」の言葉が聞こえた。

うつ伏せになり、アリエッタのペンダントを掴んだ。ペンダントが、また光っている。

僕のために、4人は死闘に近い戦いをして勝った。ここでは強いものが生き残る。

兄上を守る騎士に、こんなやつを親衛隊にいれるわけにはいかない。アリエッタを守る親衛隊にこんな奴は絶対に不要だ。

僕は僕のためじゃなく、みんなのために、こいつを倒さねばならない。

アリエッタ、守ってくれ。


砂を掴んで立ち上がった。

「王子さま、まだやるのか?膝をついて、助けを乞えよ。」


「いい加減にしろっ。」

砂を投げつけた。

「くそっ、卑怯者。」

「卑怯者はどっちだ、黙って聞いていれば、王子、王子、王子、王子を守るのが親衛隊だろう。お前のような根性が腐り切っているやつが、親衛隊に入れると思うなよ。お前のような奴に、父上や兄上を守る資格などないっ。絶対に阻止してやる。やれるものなら、僕を殺してみろ。口先だけの、侯爵のドラ息子めっ。」


相手の顔が真っ赤になっている。

また砂を拾って投げつけた。相手が怯んでいるうちに、急いでシャツを脱ぎ、シャツで傷周りを覆ってぎゅっと結んだ。少しは止血になるだろう。


突進してきた。屈んで、腹に殴り込んだ。体を折った相手の顔を蹴り上げた。


「お前のような奴が、何故、近衛騎士団にいるんだ。何で、ここにいる。騎士の誓いを忘れたか。」


「見習いの癖に黙れっ。」

「だったら、今から、騎士になってやる。なればいいんだろう?お前に勝てば、なれるからな。」


「くそっ。」取っ組み合いになると、脇腹から背中を殴られ出血が止まらない。痛みにうずくまった時に、右腕と右手を、力いっぱい何度も踏みつけられた。指が折れた音がした。

「うぐっ、貴様、」


「弓がひけねば、騎士にはなれない。」


周りが怒り始めた。第三団騎士団だけでなく、全ての騎士達が上官に食ってかかっている。

誰が見ても、僕は王子だ。痛めつけるにも限度がある。


「私は、騎士になってやる、こんなところで、ぐずぐずしてる暇はないっ。」

立ち上がりざまに、低い姿勢で、足をとり、投げ飛ばした。

見学者の場所に飛ばされたローグ が立ち上がった手には剣があった。


またかよ。なんだ。私怨か、謀反か、ただの馬鹿者か。


さすがに第三団騎士団、全員が、剣を抜いて、間に立ちはだかった。近くにいた第二騎士団も剣を抜いている。

みんなが息をのんでいる。またこのパターンだ。今日は一体なんだ。僕だけが目立っている。父上のご神託なら、父上に斬りつけるぞ。


馬鹿者が言った。

「ほら、お父様が助けてくださるぞ。」


「第三騎士団、第二騎士団の騎士達。今は王子の立場ではなく、見習いだ。剣を収めてもらえないだろうか。」


「殿下、見習いの前に、殿下は殿下です。これは謀反です。許される事ではありません。」

班長のトビーが引かない。


「トビー、少し待ってほしい。これは騎士をかけた試合だ。」

「……はっ」


僕は、騎士団を挟んで、聞いた。

「ローグ 、何故、剣を持っている。これは格闘技の試合だ。それもわからんのか。剣を捨て、格闘技に戻れっ。」


「王子が嫌いだ。同じ人間なのに。何故お前たちは、特別扱いなのだ。」


「お前は馬鹿か。人はそれぞれに役目がある。そんなに嫌なら騎士になどなるな。近衛騎士団を出て行け。神聖な騎士をこれ以上、貶めるな。

私に勝って、親衛隊に入れば、王家直属の護衛だ。お前のように、王子が嫌いでは、仕事にならぬ。」


「だから、殺してやる。今更、親衛隊には戻れない。」


「何故、殺す話になる。」


「戦えっ、逃げるなっ。」


「逃げてないから、ここにいる。

さっきから言ってるだれう。お前は馬鹿か?誰と戦いたい。私か、護衛騎士か選べっ。」


「王子だ。」

近くにユリシーズが来ている。


「ユリシーズ副隊長殿。勝敗を決めたい。本人は王子と剣の試合を望んでいる。私個人は、不敬罪には問わぬゆえ、何とか方法を検討してもらえないだろうか。」


「ローグ 、格闘技に戻れ、親衛隊副隊長命令だ。」


「剣で戦いたい。」


「ローグ 、お前は、すでにいくつもの規律違反を犯している。今現在、すでに除隊処分で、騎士団に籍はない。」


「最後に王子と戦わせろっ。殺してやる。」


「ユリシーズ副隊長殿、不戦勝で、騎士には、なれぬ。」


アランが来た。

「ローグ 、最後まで格闘技で戦え。なぜ剣にこだわる。」


「剣なら絶対に勝つ。」


僕は呆れて、アランとユリシーズを見た。

2人とも、さすがに呆れた顔だ。

相手は馬鹿だ。話にならない。


さっきから、グダグダ話をしている間に、僕は、そっとキラキラを、だしながら、背中の止血をし、右腕をヒーリングしていた。だいぶ楽になってきた。


「アラン隊長殿、見習いの分際でおこがましいとはわかっているが、王子王子と連発されて困っている。今は、見習いとして、騎士の称号がかかっている。共に励まし合い戦った仲間達の努力を無駄にしたくない。

なので、不戦勝だけは拒否したい。それと今日の問題は今日、片付けてしまいたい。指示を願いたい。」


筋は通さねばならない。

それが王子としてあるべき姿だからだ。


「ローグ は、騎士団の規律を何重にも犯し、不敬罪にも問われ、更に王子に対し殺人を口にし謀叛人である。

それでも、殿下は、この試合を続けるおつもりか。」


「最初から王子の立場であれば、斬り捨てるか、護衛が斬り捨てていただろう。ここに至ったのは、見習いとして騎士を目指していたからだ。やめるわけにはいかない。」


「謀反人ローグ は、見習いではなく、ヴァシリス殿下と、剣の試合を望んでいる。格闘技は引き分けとして、あくまでも、相手の要求を殿下が呑まれるならば、この勝敗で、決着をつける事を許可するが。」


「有難き采配、承知した。」

僕は、アランに跪き礼をした。


「服装を整える。しばし時間を。トビー、指が折れている。布で縛ってほしい。見習い服を。」


それからローグ に向かって言った。

「ローグ 、王子と試合だ。誰かから奪った剣は返せ。服装を整え、自らの剣を使え。貴族なら、侯爵家の嫡男らしくしろ。」


みんなうなずいている。見習いも貴族の子息ばかりだ。静かに見守っている。


僕は、腹回りに巻いていた血まみれのシャツを着て、朝から血だらけになっている見習い騎士服を着た。指が折れて、ボタンが止められない。

トビーが、ボタンを止め、濡れたタオルと水筒を渡してくれた。顔が腫れているのがわかる。とりあえず血だけは拭き取り、口をゆすいで吐き出すと、血がたくさん流れた。右手を布で縛ってもらった。

ぼろぼろの王子だ、それでも王子だ。


ローグ が騎士服を着て、剣を持って、試合場に戻ってきた。


「ローグ 、先に言っておく。其方はすでに不敬罪だ。本来ならば、其方の試合のゴリ押しなど、全くもって、拒絶できた。

だが、私がシーシェルの王子であるかぎり、其方のような馬鹿者でも、我が臣下となる。其方の訳のわからん言い分を聞くのも王子の役目だ。

それに、こんなつまらん茶番を引き受けるのも、第三王子の役目だ。

王太子となられたラングドン兄上やパトリック兄上には、到底、其方では、絶対にたどり着けぬことを知っておけ。

其方が思う王子が何かは知らんが、試合は最後までしてやるから、安心せよ。」


「トビー、僕の剣を。」

跪いたトビーから、剣を受け取った。

みんなが何故か反応した。「僕の剣を」という言葉に。シャチ事件で流行った「僕の剣ごっこ」を思い出した。めちゃくちゃ恥ずかしくなってきた。


護衛が、会場周りを取り囲む。これが王子だ。


アランの声が聞こえた。

「ジプラー侯爵嫡男ローグ の真剣試合の申し入れを、ヴァシリス王子殿下が受けられた。

どちらかが剣を取れなくなるまで、最後に剣を持つ者を勝者とする。ヴァシリス王子殿下が勝者の場合は、最終試験の弓槍試験に進むものとする。両者、立ち合えっ。」


僕は、剣を抜いた。

剣に青白い炎が走り、稲光りで光っている。


ローグ が斬り込んでくる。力任せの剣だ。これで、何故優秀騎士になれたか、よくわからない。

軽く払いながら、合わせてみるが、他に力があるのか?

今日は、僕が、簡単に勝ってしまうのは何故だ。相手は、こんなに弱いか?

僕は思い出した。クロノスとポセイドンから剣を授かってから、あまりにも色々な事がありすぎて、一度も剣の練習をしてなかった。


ヒーリングとトライデントは使ったけれど、剣の立ち合いは今日が初めてだった。

考え事をしていても、立ち合いできるなんて、信じられない。

ローグ がうるさく斬りつける。もういい、わかった。今日の出来事は、僕が無敵だと自覚するためだったのか。

ローグ を軽く払ったあと、真剣に構えた。

「お前なんか、ガキの王子の癖に、死んでしまえっ」真っ向から来た。

僕も、真正面から、剣を振り下ろした。稲光りが走って、ローグ の剣が縦に真っ二つに裂けた?

ローグ が唖然としている。


「言われなくても、何度も死んだ。」小さな声でつぶやいて、ローグ の右肩を思い切り刺した。

死なないように。ローグから剣を抜いて、血のりを振り落とし、剣をしまった。

ローグ が崩れておちる。

「なぜ、そんなに強い、、」

「王子だから。」

僕は、また魔王になった。

無性に寂しくなった。


「ヴァシリス王子殿下、最終試験へ。」

アランがローグ を一度も見ずに言い切った。


親衛隊が、ローグ を引きずっていく。


アーサーも、ダニエルも、アズラエルも飛び出してきた。

パーシーが、抱きつく。

「ヴァシリス、やったぞ。」

「うっ、痛っ。」

「すまん。大丈夫か?」

「キツイ、、、」


見習いが歓喜の叫びをあげていた。


騎士団の体力試験、切り抜けてほしいです。

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