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巫女は海を守りたい〜愛が溢れるヒーラー物語  作者:
第5章 次の新しい道 婚約のあと
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第5章 騎士団 体力試験 中編

父上がこちらを見た。

「ヴァシリス、片付けをする。手伝え。」


また消すんだ。

こればっかりは、超特級ヒーラーが必ず必要らしい。特級ヒーラーだけでは、消せないと、つい最近聞いたところだった。


「そこの少年達、見習い騎士達を守り、よくぞ戦った。礼を言う。ついでだ、後始末をさせてやる。消すのは初めてか?」


「はっ、国王陛下。初めてです。」

ダニエル、パーシー、アーサー、アズラエルが跪く。


「知っているだろうが、ヴァシリスは超特級ヒーラーだ。これから、後始末の仕事は其方達の役目となる。よく見て、一緒にやってみろ。」


「「「「はっ」」」」


「ヴァシリス、まずは、こっちの山だ。」


「はっ、陛下。」

父上が僕の顔を見た。


「初日にして、バレた。隠しても仕方ないぞ。そこの少年達も同じだろう。アランの息子に、ユリシーズ、マース、ガブリエルの息子まで揃っている。はっはっはっはっ。

アラン、ユリシーズ、数が多い、手伝え。」


「はっ。」

アランとユリシーズも近くに来た。


「さっ、ヴァシリス、詠唱せよ。」

みんな何を、するのか興味津々だ。だけど、みたら、後が大変だ。見習いに見せるつもりだ。

でも、騎士になるなら、今見ようが、後で見ようが、あんまり関係無いようにも思えてきた。

ダニエル達も、消す意味は知ってるだろうけど、実際に見た事はないはずだ。


父上の隣りに立った。両脇に、アランとユリシーズが立つ。

僕は剣を構えた。


「今日の晴れの日に、私怨と謀反でシーシェルの騎士団を、汚したものたちよ。

その罪を償え。一人残らず、天神クロノスの元で裁かれるがいい。二度と、その魂がシーシェルには戻れぬように。」


父上とアランとユリシーズが唱える。

「二度と、その魂がシーシェルに戻れぬように。」


父上が剣を振るう、朱色の炎が、死体の山で燃えている。

アランが、紺碧の剣で、更に炎を増やし、

ユリシーズが、青白の冷たい炎を増やし、

僕が剣をまわすと、コバルトブルーの炎が重なって、

最後に、4人が剣を横なぎに振り抜くと、銀白色の光が強く光って、全てが消えた。


見習い達が、気分が悪そうだ。

父上は、僕たちに言った。


「見習い達、自分達が斬った者達の後始末をしなさい。」


僕たちは、顔を見合わせて頷いた。

僕たちは、さっき切り殺した謀反人たちの死体の山に近づいた。


僕は、もう一度、剣を構えた。剣から稲光りが走る。

4人も剣を構えている。僕たちの剣には、まだ血がついていた。

僕は詠唱を始めた。

「今日の晴れの日に、私怨と謀反でシーシェルの騎士団を、汚したものたちよ。

その罪を償え。一人残らず、天神クロノスの元で裁かれるがいい。二度と、その魂がシーシェルには戻れぬように。」


続いてダニエルが唱える。真っ白な炎だ。

パーシーが唱える。青銅の炎だ。

アーサーが唱える。深緑の炎だ。

アズラエルが唱える。青紫の炎だった。

そして僕が、コバルトブルーの炎を出すと、

4人の炎が混ざり合って、すごい渦巻きになり、死体の山を巻き込み始めた。海の渦潮のように、巻いていく。

渦潮は細長く天に上り、強く銀白に光って、全てが消えた。



「ほう、、渦潮に、なったか。」


「陛下、選ばれし少年達、シーシェルの宝がまた増えましたな。」


「アラン、あとであの5人と会わねばならぬな。」


「はっ」



そんな会話も知らずに、僕たちは、呆然としていた。自分達が出した渦潮が、あまりにも美しかったからだ。


「これはっ」僕が一番びっくりした。


あとの4人も騒いでいる。

「今の見たか?」

「なんだ、渦潮になって、海水だったぞ。全部が一瞬で消えた。」


「もしかして、君達、海洋生物特級ヒーラーか。」


「ヴァシリス、なんで、わかった?」


「君達とは、今日が初対面だ。だが、海洋ヒーラー同士のヒーリングは、それぞれの力を増幅するんだ。これだけ強い君達のパワーだ。5人で、50人分くらいになるかもしれない。。」


みんな、唖然となった。僕だって、唖然だよ。



アランの声が聞こえてきた。

「見習い騎士達。体力試験の続きをするぞ。

元の位置に戻れっ。」


「「「「ええっ〜」」」」

さすがにみんなびっくりした。

さっき謀反の乱闘があったばかりなのに。


「何か問題あるか。邪魔が入ったくらいで、体力試験を止める理由にはならん。」

アランが鬼だ。


「パーシー、君の父上は、いつもあんな風なのか?」


「いつもだ。何がどうなろうが、鍛練が後回しになることはない。いつもの父上だ。」


「だろうな。うちも似たようなものだ。」

ダニエルが呟く。


「ダニエルとパーシーのところは、軍閥だから、仕方ないだろう。」

アズラエルが笑っている。


「アズラエル、お前もウリエルだろうが。ユリシーズ叔父上は、ウリエルの身内のなかでは、鬼上と言われてるんだ。」


ちょうど、ユリシーズの声が聞こえてきた。みんなビシッとなった。


「見習いっ、第二戦の組み合わせは、第一線で勝った順だ。第一団の勝者が多いので、所属団同士の組み合わせもあるが、試合しろ。名前を呼ぶから始めろ。それから、先程の最終試合は、謀反ゆえ、ヒーリングパワーが使われたが、これからは、剣だけで戦え。剣にパワーを込めるのは構わんが。他の物は出すな。良いなっ。では始めるっ!」


体力試験の第二戦が、始まった。

第一戦と違い、みんな剣が普通に使えた。名前を聞くと、軍閥関係の子息だとわかる。

親が騎士や海洋軍だと、幼い頃から鍛練させられるから、当たり前と言えば当たり前なんだ。


アーサー、アズラエル、ダニエル、パーシーは、普通に勝ってきた。僕も意外と苦もなく勝った。


第三戦になった。

気分が悪くなり、棄権した者もいた。僕たち5人は圧勝した。


ユリシーズの声が響く。

「見習い達、よく聞けっ。第三戦が終了し、14人が残った。第一団が7名、第二団が2名、第三団が5名だ。

第四戦は、騎乗で行う。対戦はくじ引きで決める。残った者は、厩舎に戻って、馬を連れて戻れっ。準備時間は、20分。遅れた奴は、失格だ。急げっ!」


「「「「はっ」」」」


返事しながら、みんな一斉に走りながら、ぼやいている。

嘘だろ?騎乗戦までするの?腹減った〜。

もう力残ってないよ、みんな同じ思いみたいだ。


僕らも、走って厩舎に戻った。

厩舎で準備しながら、みんな、ぼやいていた。


「なんか、厳しくないか?」

「初日で、騎乗戦なんて、聞いてない。」

「残ってる奴、知ってるか?」


ダニエルが教えてくれた。

「たぶん、第一騎士団長の息子、第二騎士団長の息子、ザドキエル大将の孫、あと、騎士団本部の教官の息子とか、親衛隊の息子とか、何にせよ、みんな軍閥関係の息子ばかりだ。プレップスクールの顔見知りが多い。」


「それって、みんな強いって事だな。」


僕は、キロンに鞍を乗せ、全身をチェックした。今日のキロンは、始めての厩舎の割に、落ち着いているし、機嫌もいい。ずっと耳をぴこぴこしている。

「キロン、今から練習試合だ。負けたくないから、頑張るけど、無理するなよ。」


キロンに飛び乗り、訓練場まで早足で戻った。

試合の場所が変わっていて、広くなっていた。

みんな、それぞれに色々な馬に乗っていた。

落ち着かない馬もいて、じっとしてられないのが、二頭ほどいる。騎士団の雰囲気に馴染めてないんだ。


第四戦は、くじで、組み合わせが決められた。

「見習っ、ルールは基本的に同じだ。馬には危害を加えるな。相手の馬の足に怪我や骨折させたら、即刻騎士団から追い出す。いいな。落馬しても負けではない。剣を離すまで戦え。

では、第一試合は、ダニエルとウィリアムだ。」


ダニエルは、第二騎士団団長の息子と当たったらしい。ユリシーズがダニエルに何か言ってる。

向こうは、アランが、ウィリアムに何か言ってる。


試合が始まった。2人とも、譲らない。ダニエルの手綱捌きは華麗だ、動きに無駄がない。互角かと思ったけど、一瞬の隙を突いて、ダニエルが勝った。


2番目はパーシーが、騎士団教官・騎馬担当の息子と当たった。ユリシーズが、怖い顔でパーシーに何か言っている。

親が騎馬の教官なんて、ズルだろう。騎乗での動きは、子供とは思えない技術だった。だが

パーシーには関係なかったらしい。戦車のように突進して、まさかの落馬に持ち込み、即効で勝った。力技と言うのもありなんだ。


3番目は、第一と第二の近衛騎士の息子同士で、第一が勝った。


「次っ、第四戦、第一からアレクサンダー・ザドキエル、第三からヴァシリス・シーシェル。」

「へっ?」

僕は、おじいさまの孫と当たったらしい。

第一から歓声が上がっている。ザドキエル大将の名を知らぬ者はない。

先に勝っているダニエルとパーシーが、僕の顔をみた。


「かなり強いぞ。海洋軍の訓練も受けていると聞いている。」

ダニエルが教えてくれた。


「おじいさまの孫だろ、想像したくないくらい、強いはずだ。とにかく頑張ってくる。今、負けても、これから強くなればいい。だって、そのために騎士団に入ったんだ。」


「ヴァシリス、君は強い。もっと自信を持てよ。」アズラエルが、背中を叩いてくれた。


ユリシーズが、早く来いと手招きしている。キロンを連れて前に行った。


「ヴァシリス、ザドキエル大将の孫が相手だ。年齢は同じで、かなりの使い手と聞いているし、馬の捌き方も上手い。

だが、ヴァシリス、私は5年、心血を注いで、お前を鍛練してきた。自信を持て。

それに、向こうの馬が大きい。キロンの方が小さいからそこを考えて戦え。」

「はっ。キロンがなぜか、この場所に落ち着いているので、焦らずにいきます。」

「ほう、気がついたか。」

「えっ?」

「キロンの調教はここでしていたからな。」

「???ユリシーズ団長殿、まさか、、ありがとうございます。」


「ヴァシリス、勝てる。アレクサンダーは、ザドキエル大将の秘蔵っ子だが、こっちは、ヒーリングだけ強いと思っているだろう。

お前は、毎日、多くの強い騎士に囲まれて育ってきた。だから、強い騎士そのものをみている。軍と騎士団の違いもある。

私は近衛隊でアランと一位を争う時以外、負ける相手はいない。お前は、その一番弟子だ。どういう意味かわかるな?」

「はいっ。勝ってきます。」

「よしっ、行ってこい。」

ユリシーズがニッと笑った。


僕はキロンに飛び乗り、位置についた。

ユリシーズが、キロンを騎士団に慣らすために、ここで調教してくれていたなんて、僕はどれだけ過保護なんだ。よくよく考えたら、ユリシーズは、この騎士団の、いやこの国の頂点にいる騎士だった。父親がわりみたいに、ずっと育ててもらって、毎日毎日、5年間、ほとんど休まずに教わってきた。

一番弟子だと言ってくれた。僕は負けるわけには行かない。初めて負けたくないと思った。


「始めっ!」


アレクサンダーと僕の体格はあまり変わらないけど、確かにアレクサンダーの馬が大きい。海洋軍で使うがっしり系の馬だ。

キロンは、まだ若いし、成長中だから小さめだけど、瞬発力が高く、小回りがきく。

アレクサンダーが剣を抜いて真正面から来た。

僕は、まだ剣は抜かない。体を低くして、キロンとすり抜ける。

アレクサンダーは空振りだ。アレクサンダーが方向転換して、また正面からくる。

馬の方向転換に時間がかかっているような気がした。もう一度、すり抜けた。


「逃げるな、卑怯者っ!」アレクサンダーが叫ぶ。


「ヴァシリスっ。気にするなっ。」

第三から、応援の声があがる。


次だ。アレクサンダーが方向転換して、また突進してきた。僕の低い姿勢を狙ってくるはずだ。

僕はすれ違う寸前に、剣を抜き、姿勢を戻して、上からアレクサンダーの剣を叩いた。アレクサンダーの体勢が崩れかけて、立て直そうとしている。

普通なら、2人はすれ違って、離れて体勢を整え直すが、すぐにキロンの方向転換をして、アレクサンダーの後ろから、崩れた体勢に斬り込み、剣を下から上に斬り込む。剣が手を離れ、上に飛んでいく。

アレクサンダーは、剣を見失い、僕に背中を向けて走っていく。


「そこまでっ!」教官の声がした。勝った。


だが、僕は飛んだアレクサンダーの剣が、上から、弧を描いてアレクサンダーに向かって落ちていくのを見た。


「アレクサンダー危ないっ。にげろっ。剣は上だっ。キロン、行けっ。」僕は彼の剣を追いかけ、怒鳴った。


周りからも「逃げろっアレクサンダー」と怒鳴り声が聞こえている。

振り向いたアレクサンダーは上を見上げて、固まった。教官も駆け寄ろうとしているが、僕より遠いところにいるから、間に合わない。

だめだ。アレクサンダーは逃げられない。


キロンの手綱を思いっきり引いた。

「キロン、飛べっ。」キロンはすごい跳躍をした。固まっているアレクサンダーと馬の上を飛び越える、アレクサンダーの頭上で、落ちてくる剣を、身体を捻りながら、剣を一振りして、落ちる剣の方向を変え、キロンから離れた。

離れないとキロンの着地に負担がかかりキロンは足に怪我をしてしまう。

「キロン、一人で行けっ。」キロンは空中で耳をぴこぴこした。通じている。キロンが離れた先に軽く着地したのを見て、僕は受け身を取りながら、地面に転がった。


みんなが息をのんで固まっている。

アレクサンダーは無事か?

アレクサンダーに教官が駆け寄って、泣いているアレクサンダーを馬から下ろしていた。


ユリシーズが走ってきた。

「ヴァシリス、怪我はないか。」

「たぶん、受け身だけは、自信あるので。アレクサンダーは無事ですか?」

「よくやった。ヴァシリス。完璧だ。」


キロンが僕のところに戻ってきて、耳をぴこぴこしている。ユリシーズが僕を助け起こしてくれた。

立ち上がり、キロンの額に僕の頭をつけて、立髪を撫でた。

「キロン、ありがとう。よくやった。」


すごい歓声が上がってる。

なんだ?

「お前への歓声だ。またやらかしたな。騎士物語が増えたぞ。」

「へ?何の騎士物語ですか?」

「くっ、くっ、あとで、友達に聞けっ。」


鬼上ならぬ、ユリシーズ団長殿が、笑いを堪えながら笑っている。いつものユリシーズだった。


キロンを連れて、みんなのところに戻ったら、更に大歓声になり、パーシーにまた抱きつかれてしまった。

「ヴァシリス、凄すぎる。お前、ほんとに8歳か?対戦相手を捨身で助けるなんて。まるで騎士物語だよ。」

「パーシー、暑苦しい、抱きつくなっ。」


アズラエルが、パーシーを引き離してくれた。

ダニエルが、怪我はないかと、あちこち、触って確認してくれる。

アーサーが、キロンに怪我がないか、見てくれてるみたいだ。


「今の試合は両者とも無事だったから、心配するな。次っ5番目は、第一からイーサン・ケリー、第三からアズラエル・ウリエル。」


「アズラエル、ここまできたら、第三で5人残ろう。」


「僕もそう思った。ヴァシリス、聞いていいか?鬼上は、良い師匠か?」


「アズラエル、ユリシーズ殿は、君の父上だが、僕にとっても親父殿のような唯一無二の師匠だ。最初の君の戦い方を見て、ユリシーズ殿の息子だと、すぐにわかった。似ているんだ。動きが。だから勝てる。」


「ヴァシリス、1番嬉しい褒め言葉だ。勝ってくる。」


「アズラエル、イーサンは第一騎士団長の息子だ。正統派の戦い方のはずだ、」


「アーサー、ありがとう。かなり参考になった。」


アズラエルが、ユリシーズの元に小走りで向かった。何か話している。ユリシーズの表情が厳しい顔に戻っていた。


アーサーが言った通りだった。第一騎士団は、基本的に親衛隊の補助と、王太子の護衛が主任務だから、正統派の警護や戦い方をする。それに比べて、第三は、僕みたいな変則的な王子の警護で、何でもこなさなくてはならないから、臨機応変度は高い。アズラエルがユリシーズに鍛えられいるならば、変則的な戦いに持ち込めば勝てる可能性は高くなる。

アズラエルは騎乗で、変則に変則を重ねて、イーサンをブチ切れさせ、最後まで凄い斬り合いになり、集中の切れたイーサンが、落馬し、剣を落として負けた。


第三団は、これで4人勝ち抜いた。


第6試合は、第一と、第二があたり、二人とも親衛隊の息子で、激しい戦いで、第一が勝った。あとで聞いたが、僕の護衛のマーカスの息子だったらしい。


最後の第7試合は、アーサーと、神殿警護隊の副隊長の息子ルーカスだった。

アーサーとダニエルが、相談している。どうも、いつも一緒に練習していた仲間と当たったらしい。


「アーサー、たまには、羽目をはずせ。緻密にやり合うと、長引くだけだ。」


「わかった。第三らしくなるしかないな。緻密がよければ第一に行けばよかったんだし。」


「みんなで残ろう!僕だけ負けるなんて嫌だからな。勝ってくるから、待っててくれっ。」


「応援してるぞっ」


アーサーとルーカスは、剣の構え方から馬の乗り方から同じだった。ダニエルが、神殿警護隊の戦い方だと教えてくれた。師匠が同じなら、戦い方はどうしても似る。それは呼吸やタイミングが似て、連携に繋がる良さもある。

途中から、アーサーの戦い方が急に変わり、ルーカスが、戸惑いだした。物静かそうなアーサーが、魔王のような顔になっている。相手を翻弄し、最後は力でたたみかけ、相手の剣を奪って勝った。

僕達は、盛大な拍手をした。

第三は、5人が勝ち抜いた。


「見習いっ。第四戦は終了。しばし休息だ。各団の休息場で、簡単に昼食が準備されている。時間は60分。時間になったたら、その場で待機だ。」


馬場の近くに、それぞれの団の色の大きなテントがあり、簡易の食事場所になっていた。立食形式だ。パーシーが、60分しかないな。早く食べよう。腹が減ってぶっ倒れそうだ、と一番に走って行く。

僕は、何もかも新鮮で、見てはびっくり、聞いてはびっくりで、周りの様子を見てから動くから、何でも後からになってしまう。


アズラエルが話しかけてきた。

「ヴァシリスは、王宮育ちだから、こういうの、初めてだろう?」


「王宮しか知らないから、全部が珍しくて。アズラエルは慣れているのか?」


「ウリエルの家が、こんなんだから。屋敷は騎士だらけだし、いつも食事場所が、こんなだ。食い物まで取り合いになる。」


「軍閥は、みんなそうらしいな。生まれた時から、屋敷は騎士団の寮みたいな場所みたいなんだろう?僕は、こういうの、初めてだよ。なんか戸惑っている。」

アーサーは、ガブリエル家出身だ。セレステやオランを見る限り、躾が厳しそうだ。育った環境は僕に近いだろう。


「じゃあ、アーサーとヴァシリスが、食いっぱぐれそうだな。早く行かないと、美味いものから無くなるぞ。」


ダニエルに言われて、ギョッとした僕もアーサーもテントに走った。

王宮なら、教育係に叱られそうな食べ方だが、昼食は楽しくて美味しかった。知らない奴とも、少しずつ話せた。騎士団って楽しい、と思い始めていた。


☆*:.。. .。.:*☆


騎士団本部の上官専用のダイニングでは、教官、上官が頭を悩ませていた。そこには国王もいた。

円卓で昼食を取りながら、最終戦の相談をしていた。


「今年は、強いのが多すぎるな。それに第三団が5人、第一団が2人。最終の5人にどうやって絞り込む。」


「アラン、答えは見えてるだろう?」


「陛下、それを言ってしまうと、身も蓋もない。」

アランが困っている。


「第三団が、強すぎる。あれでは、すでに騎士だ。これ以上、何を教える。」


「アラン殿、ユリシーズ殿、あの5人は今まで、共に訓練してきたのですか?」


「いや、バラバラだ。ヴァシリスとは、今日が初対面だ。鍛練してきた師が違う。」


「「「ええっ?」」」

みんなが驚いた。


教官長が、口を開く。

「陛下の前で失礼します。簡単に褒めたくはないですが、ヴァシリスのあの完成度は、騎士団始まって依頼の歴史的快挙。ザドキエル大将の若き頃も伝説ですが、それを上回る能力。8歳とは思えません。」


「私の息子だ。強くて当たり前だろう。ユリシーズが3歳からしごいてきたからな。」


「「「ええっ?3歳から?ユリシーズ殿が?」」」


「そう驚かなくても。各団長、教官、軍閥、騎士の家系は、どこだって生まれた時から、真剣を持たせて鍛練しているだろう?ヴァシリスは、3歳から始めた。皆より3年遅れを取っている。まだまだだ。」

ユリシーズが笑って説明している。


「皆も知っている通り、我が息子は、海洋ヒーラーだ。他の王子と違って、領海を守るために、前線に出ねばならない宿命を持って生まれた。鍛えざるおえなかった。ただ、ここまで強くなっているとは思わなかった。ユリシーズ、礼を言う。」


「陛下、ありがたきお言葉。」


「しかし、困ったな。第三団の5人の今後を考えると、ここで勝負させたくないし、してはならんだろう。」アランが腕を組む。


策略長が、声を上げた。

「見習い同士ではなく、教官と手合わせしては?」


「はあっ?入団式、初日にか?さすがに無茶だ。」


「其方ら、完成度が高いと言ったな?」


「陛下?」


「策略長の案は良い。其方らが相手をすれば良いではないか。アランに勝ったら騎士にしてやれっ。剣が抜けぬ、馬に乗れぬ見習いを教えさせれば良いだろう。」


「陛下っ、何と、それはっ、ちょっと。」

アランが珍しく焦っている。


「アラン、息子達に負けそうで怖いか?ユリシーズはヴァシリスを叩きのめしてきたから、平気だろう。」


「そうですね、平気です。」


「ユリシーズ、陛下の前だぞ。」


「アランは知っているな。ラングドンとパトリックが、私に直訴してきた事があってな。」


「そういえば、ありましたな。王太子殿下とパトリック殿下が、ヴァシリスの鍛練を見て、陛下が第三王子を、鍛練を理由にして亡き者になさろうとしていると、泣いて訴えられました。」


「私がここで騎士になった時にいた皆も知っているだろう。私を含め、アランやユリシーズ、マースが、当時の団長、ザドキエル大将に半殺しにあうような厳しさだったのは。

今残っている7人のうち、第三の5人は、冗談ではなく、騎士レベルには仕上がっている。見習いの中に入れても意味がない。

第一があれでは、ラングドンの守りにならん。それは今後の課題だが、まずは、あの5人だ。方法がない、其方らが戦え。」


みんなが押し黙ってしまった。


「では、16歳の騎士と戦わせては?」


「負けた騎士の未来が無くなるぞ。」


ユリシーズが口を開く。

「私は戦うのは、構わないが、絶対に負けない。アラン兄上殿とて、当たり前に負けない。だが、あの5人をちび見習いと同じにはできないのは、皆もわかっているだろう。

どうだろう。16歳以下の年少優秀騎士の中から希望者を募り、戦わせる。力は互角と見ている。

優秀騎士が勝てば、即、親衛隊に配属。負ければ現状維持。

もし見習いが勝てば、年少の優秀騎士に任ずる。

今日の体力試験で、見極められてないのは、格闘技と弓槍だけだろう。斬り合いはさっきの謀反という実戦で、あの5人は20人は切り殺していたし、突然降って湧いた謀反が、正に初陣だった。騎士団全員が見ている前だ。だれも文句は言えない。

陛下やアラン殿の指示にも、従っていた。

今も、テントで普通に飯を食っているし、精神的にトラウマになっているとも思えん。あそこにいる方が浮いている。」


みんなが二階の窓から下のコバルトブルーのテントを見ると、みんなでワイワイしているのが見える。自然に目立っているのが一目でわかる。


「もう、既に伝説を作り出している、のか。」

誰かがつぶやいた。


教官長が発言する。

「私は依存はない。力のある者が上に立つ。下において置く意味がない。初見えで、5人が連携を取れるなら、騎士道精神も鍛えられている。

新しい王太子が立ち、騎士団も作り直していく過渡期に入っている。第三団から動かし始めるにも、よいきっかけだと見た。」


策略長が続いた。

「陛下がおっしゃるように、第一と第二は時間がかかる。第三が強くなれば、他も触発されるし、同年代で、ここまで差がつけば、鍛練が厳しくなるのも納得できるだろう。」


弓の教官が口を開いた。

「弓に関しては、騎士昇格と同じ内容なら問題ありません。弓コースを騎乗で走り抜け、10本中9本命中、それが、16歳以下の年少優秀騎士昇格基準です。弓か槍、どちらでも構いません。」

 

「9本だったか?」


「16歳以下の優秀騎士は9本。16歳以上の一般騎士は7本です。優秀騎士は、仕損じてもらうわけにはいかない。一本の矢でも、陛下の御身は危険にさらされますから。」


アランがまとめた。

「では、先に、優秀騎士と格闘技の試合だ。

そのあとに、弓コースで、年少優秀騎士昇格基準を満たすかどうかの最終試験とする。」


「アラン殿、弓を後にしたら、格闘の疲れから、命中率が、下がります。」


「それで良いではないか。実戦で、元気いっぱいで弓をひける状況など、現実にはない。疲れ果ててなお、戦う力がなければ、優秀騎士になどなれぬ。アラン、それでよい。それから、年少優秀騎士は、立候補者が多ければ、戦わせて勝者から選べ。。

あの5人が負ければ、それはそれで、また頑張るだろう。」


「はっ、陛下は、やっぱり、厳しすぎますな。」


「いつも言っているだろう。死ななければ良い。さっ、みな準備してくれ。」


「はっ。」


みんな騎士になれるのでしょうか。

読んでいただき、ありがとうございます。

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