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巫女は海を守りたい〜愛が溢れるヒーラー物語  作者: 紫陽花
第5章 次の新しい道 婚約のあと
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第5章 騎士団 体力試験 前編

入団早々に、体力試験です。

教官らしき騎士の声が響く。


「見習い達、今から体力試験で、御前試合を行う。それぞれ、自分の真剣を使え。剣は試合前に、我々が確認する。」


「いいか、第一訓練場で、第一は、前半30名と、第二の30 名と試合だ。

第二訓練場で、第一の後半40名と第三の40名が試合だ。今から移動しろ。さっさと走れ。ダラダラ歩くなっ。」


みんなが、小走りで、それぞれに訓練場に移動した。


「ルールは、どちらかが剣を落とすまで。相手にかすり傷と擦り傷以外の、傷を負わせてはならん。同時に手から剣が離れ、拾い上げられない場合は、引き分けとして、格闘技で、延長試合だ。教官が、やめろと言ったら剣を引いてしまえ。

むやみに攻撃したり、上官と教官に背いたら、即効、騎士団から叩き出すぞ。正々堂々と戦え。年齢差は考慮しない。勝ち上がり式に試合をする。最後の5名は、国王陛下より、褒美が出る。」


第二訓練場に移動してから、ダニエルが、近くにきていた。

「ヴァシリス、来てすぐ、体力試験って、知ってたか?」


「ダニエル、入団式だけと聞いていたが、突然、真剣勝負なのか。」


「とにかく、がんばろう。体力試験だから、負けたとしても、追い出されるわけじゃない。ひどい怪我を負わずに、勝てば、ベターだな。」


「やるしかないな。騎士団に入ったのだから、遅かれ早かれ戦うことになるからな。」


試合場所の四隅に、教官らしい騎士が、立っている。2ヶ所の試合場所の真ん中に、見晴らし台のような高い場所があり、国王が座っている。周りに親衛隊がいる。


僕達は、団毎にまとまって座った。


「では、はじめっ!」

上官が、一人ずつ名前を呼んで、試合をさせていく。


みんな大変だった。自分の剣を鞘から抜き切れずに転んだり、振り回した剣が手から離れて飛んで行ったり、初心者以前の者が大半だった。

上官も、見慣れているのか、苦笑している。

父上も、にこやかな感じだけど、アランとユリシーズと、一部の上官たちは、難しい顔をして、名簿のリストをチェックしている。

ただ第一の見習いが勝つ確率が高い気がする。

第一に強い子息たちが集まっているとしたら、それはラングドン兄上の将来のためだ。


「アーサー・ガブリエル」と名前が聞こえた。


ダニエルが教えてくれた。

「僕の従兄弟だ。母上の実兄の息子だ。10歳だ。」


と言う事は、セレステとオランの兄の息子だ。代々巫女を輩出するガブリエル家。きっと強いと思った。

相手も強くて、少し斬り合いになったが、相手が突っ込んできたのを、うまく交わして勝った。見極めが良いんだ。すごいなあ。


「次っ、アズラエル・ウリエル」

ウリエルだから、アランかユリシーズの息子?ユリシーズって息子いたの?

僕は何にも知らない事に気がついた。


「ウリエル家の息子だな。プレップスクールには来てなかった。」ダニエルが呟く。


試合が始まった。顔見知り同士みたいで、相手が悪態をついている。すごい剣のぶつかり合いで、剣が同時に飛んだ。それが僕達の前に飛んできた。みんな逃げたけど、たまたま僕が掴んだ。

教官を見たら目が合って、そのまま持ってろ、みたいな感じだったから、大人しく座って見学を続けた。

二人とも剣がないから、格闘技で勝負だけど、あれは、喧嘩に近い取っ組み合いだ。

だが、アズラエルの動きは、ユリシーズの動きに似ていた。僕もユリシーズに叩き込まれているからわかる。きっとユリシーズの息子だ。

真ん中にいるユリシーズの顔を、そっと盗みみたら、更に怖い顔になっていた。隣にいるアランも、鬼の形相で睨んでいる。あんなユリシーズやアランの顔、見たことがない。怖っ。

ここからの動きは、僕にもわかった。アズラエルが勝つ。


思った通り、アズラエルが勝って、彼が僕達のところに走ってきた。

「剣を飛ばしてすまない。しかし、飛んだ剣を素手で、取ってくれるとは、すごい、、、君、、、、もしかして、ヴァシリス?」


「ヴァシリス・シーシェルだ。もしかして、ユリシーズの?」


「そうだ。アズラエル・ウリエル。9歳だ。ユリシーズの息子。会えて光栄だ。父上がなかなか合わせてくれなくて、やっと会えたな。」


「知り合いか?ヴァシリス?」


「今、初めて会った。ダニエル、こちらは、アズラエル・ウリエル。僕の師匠の息子だった、と、今、知った。」


「僕は、ダニエル・ミカエラードだ。11歳。」


「アリエッタ姫の兄上だな。初めまして、よろしく。」


なんだなんだ、こうなることになっていたんだ。

じゃああと一人、、

「アズラエル、もしかして、パーシーって。」


「僕の従兄弟だ。アラン叔父上の次男だ。長男のベリーズは第一騎士団を希望した。

今戦ってたのは、その長男でベリーズだ。

あいつには、負けたくなかった。」


と言う事は、ユリシーズの息子が、アランの息子に勝った。アランがあの形相になるのが、わかった。


ダニエルが呼ばれた。


「行ってくる、ヴァシリス、アズラエル、また話を聞かせてくれ。」

「ダニエル、武運を祈る」

「ダニエル、負けるな。応援してる。」


ダニエルの相手は、剣を抜いた時にわかった。あいつ強い、、、ダニエルは大丈夫か?

しかし、ダニエルは、ミカエラード公爵家の男子だ。神殿警護隊の隊長であり、国王の側近で、護衛までできる父親がいる。弱いはずがない。


「ダニエルが勝つな。神殿警護隊と鍛練していると聞いていた。」


「僕もダニエルが勝つと思う。」

僕とアズラエルは顔を見合わせて、ニッと笑った。


ダニエルが剣を抜いた。やっぱりダニエルの方が強い。向こうが剣を振り回しているうちに、勝負は、ダニエルの一振りで決まった。

国王が拍手している。

アリエッタの兄上は、最強かも。

ダニエルが、誰かと一緒に僕達の場所に戻ってきた。


「ダニエル、見事な剣捌き、一振りだった。」


「ありがとう。ヴァシリス。あっ紹介する。

従兄弟のアーサーだ。」


「ヴァシリスだね。アーサー・ガブリエル10歳だ。」


「ヴァシリス・シーシェル。8歳。よろしく。」


「オラン叔母上とセレステ叔母上が、なかなか会わせてくれなくて。君は、プレップスクールにも来てなかっただろう。」


「なかなか行く余裕がなくて。」


「今日、会うのを楽しみにしていた。」


次々と試合が進んでいく。

名前がきこえた。


「あっ、今、パーシーが呼ばれたぞ。あいつ強いんだ。」

さすがにアランの息子、ウリエル家の息子だ。圧巻で、相手を叩きのめした。のめしすぎて、教官が止めに入って、引き剥がしたくらいだ。相手は気を失っていた。


アランを見ると、眉が吊り上がっていた。


パーシーが手を振りながら、アズラエルのところに来た。


「アズラエル、もう友達ができたのか?」


「パーシー、見ればわかるさ。この瞳。」

パーシーが僕の顔を覗き込んだ。


「ヴァシリスでん」最後の「か」は消えた。


アズラエルが、パーシーの口を押さえていた。

そうか、みんな、知ってて、知らんぷりなんだ。


「ヴァシリスだ。圧巻の試合だった。見事だ。」


「やっと会えた。」

僕は、パーシーに抱きしめられた。


「くっ苦しい、パ、パーシー」


「パーシー、ダメだろ、ちゃんと挨拶しろよ。」


「ずっと会いたかったんだ。だけど、強くならないと、会わせないと、父上から禁止されていて。10歳だ。ヴァシリスの入団まで、待ってたんだ。」


「えっ?なんで?」


「「「「だって、一緒に見習いから共に騎士になるためだよ。」」」」


4人が同時に同じ事を言った。

「えっ?君も?」

「なんだ、お前もか?」

「そうだ。今年入るしかなかった。」

「10歳まで待つのは、つまらなかったからな。」


確かに、この4人の力なら、8歳でも、いや7歳でも騎士団に入団できただろう。

僕の入団を待っていた?

なんかよくわからない話になってるうちに、僕は呼ばれた。


「ヴァシリス・シーシェル」


「呼ばれたから、行ってくる。」


「ヴァシリス、僕らは君を応援している。勝って来いよ。」


「ありがとう。」


僕は訓練場に入った。

父上の方は見なかった。父上がいても、いなくても、勝たなくてはならない。

周りがざわつきだした。


相手は第一騎士団の見習いだけど、でかい。

身長は大人と変わらない。顔も、無精髭をはやして、おっさんみたいだ。


「始、、」

教官の声が終わるか終わらないかで、切り込んできた。

「、、じめっ」


周りで「卑怯だっ」と騒ぐ声がする。

僕は剣を抜かずに、跳んで避けた。

振り返ると、剣を2本持っていた。二刀流か。


「剣を2本なんて、無しだろ。」

「汚いぞ。」

見学者の誰かが怒っている。

上官が何人か集まって、話しているのも見えた。


正規の騎士の戦い方ではない。傭兵みたいだ。

僕は、間合いを取った、相手の足運びを慎重に見る。相手が何であろうと、卑怯であろうと、真剣勝負だ。やらなければやられる。

チャンシアだと思えばいい。



「アラン、あれは誰の息子だ。名前は。外見もおかしいとは思わないか。」


「陛下、今、ユリシーズが、本部に確認に行きました。こちらの名簿には、ランドルフ男爵の嫡男と、陛下、ランドルフ?ランドルフなど。」


「そうだ、アラン、ランドルフ家など、今は、シーシェルに存在しないぞ。絶やした家ではなかったか?」


「確かに、陛下がまだアカデミーの頃。まさか。」


「誰が最終リストを作った?

アラン、それに第一団は、ラングドンの警護に関わる貴族家を中心に、かなり事前に調べたはずだ。私も名簿や資料を見ている。あれは、誰だ。それに、今日の組み合わせを決めた奴は誰だ?ヴァシリスを狙っているのではないか。」


ユリシーズが走ってきた。

「陛下、兄上、ランドルフは20年前、前王の治世で、断絶した男爵家でした。試合中の者を受け付けた本部の教官のダンドルが、今日は休んでいます。」


「試合の組み合わせは誰が決めた。」


「教官のダンドルです。休みで、いま、この訓練場に姿がありません。」


「ヴァシリスを狙ったか、私を狙ったか、騎士団全員を狙ったか。」


「ユリシーズ副隊長」

騎士団諜報部の副長が走ってきた。


「何かわかったか?」


「はいっ。王宮と海洋軍の諜報部に問い合わせたところ、ガブリエル大将が直々に回答くださり、姿形が似ている脱走兵が、一人該当しました。

ランドルフ断絶の時、生まれたばかりの次男が1人行方不明になっています。当時、ランドルフ家の護衛をしていたダンドル家は、断絶を免れ、その後、1人息子を大商人の婿に出したそうです。大商人の家から、海洋軍の兵に入隊していますが、かなり素行が悪く、喧嘩で兵を殴り殺し、軍法会議の前に脱走したようです。

もし、ランドルフの子供が生きていたら、20歳か21歳。」


「ヴァシリスの前にいる奴の名前は、偽名かも知れぬが。」


「ワルキュー・ランドルフという名です。」


「それは、私が消した奴だ。あれは、死んだ兄の名を騙っている。」


「陛下、アカデミーで王妃を襲った一派の1人。私たちが、消した後、前王が、各貴族家を断絶にしたと、父から、聞いていましたが。」


「残っていたのだ。ダンドルが、主人の息子を育て、復讐にきた可能性が高い。ダンドルは、この中に、必ずいるぞ。」


「陛下、ここは危険です。」


「ここは、私が統括する王の騎士団本部だ。ここから動く気はないし、息子も、巻き込まれている真っ最中だ。ダンドルを探せ。」



訓練場で、悲鳴が上がった。

試合のエリアに、炎が上がって、みんなが逃げている。


「私を殺したいのか?」


「そうだ、お前の祖父が、我が父を殺し、お前の父親が、我が兄を殺した。」


「おおかた、お前の父親か兄が、王家の怒りをかうような事をしたのだろう。忠誠と信頼の間で、家名断絶などないはずだ。」


「父上は濡れ衣を着せられたと、聞いた。」


「誰から?誰から聞いた、正しい情報を得ているのか。」


僕は、距離を測りながら、相手の力を見定めていた。それに、僕はまだ剣を抜いてない。

相手は、ヒーリングパワーで、試合場に、小さな炎をだしている。


「ランドルフとか言ったな。ヒーリング光では、人は殺せぬぞ。」


「私は殺せる。たくさん殺したからな。お前も父親も、なぶり殺しにしてやる。たかが8歳の子供だ、切り刻んでバラバラにしてやる。」


「そうか、で、炎は、それで終わりか?」


「これだけあれば、誰もお前を助けられない。泣いて、命乞いをしろ。」


馬鹿らしくなってきた。確かに強そうにも見えるけど、お粗末な炎で、脅かされても困る。

僕は剣を出した。そして一振りして、海で炎を消した。


周りから、驚く声が聞こえる。

火が消えたと、騒いでいる。


「えっ?」


「だから、お粗末な炎だと言っただろう。ランドルフ。」


炎が消えたら、父上の場所が見えた。父上がこちらを見ている。首の前で、小さく手を横に引いた。

ギルティ、消せの合図だ。

僕は、腹が立ってきた。

どんな思いをして、ここに来たと思っているんだ。またこれか。みんな普通に試合してたのに、何で僕の試合には、こんな奴が。


「おい、ランドルフとやら。ここは、国を守る騎士が集まる神聖な場所だ。お前のような人殺しがくるところではない。さっさと失せろっ。」


周りの炎が消えて、みんなが、固唾をのんで、僕達のやり取りを見ている。見習いたちの中には、震えて、泣きべそをかいてるのもいる。


父上の周りには親衛隊が、僕の試合場の周りに、第三騎士団の騎士が、たぶん、全員いる。

父上のいる場所や本部の建物の周りで、騎士達が走り回っている。

ユリシーズが、こちらに向かってくる。


「ヴァシリス・シーシェル、ぬくぬくと甘やかされて育ってきた王子には、俺の苦しみなど、分からん。」


周りから、やっぱりヴァシリス殿下だ、と聞こえてきた。

こいつ、王子だと言ったな。バラしたな。

もういい、騎士団で、普通の少年の生活を叶えるつもりだったのに、お前、奪ったな。

いつかバレるだろうけど、初日から、全員の前で、王子だとバレたくなかった。


「お前の事情に興味はない。言わせてもらうが、王子にも王子の事情があってな。とやかく言われる筋合いはないっ。」


「ガキのくせに、8歳でも、大口を叩けるのは、周りに助けがあるからだ。お父さまに泣き付いたらどうだ。強い騎士が助けてくれるからな。」


ふつふつと、怒りが込み上げてきた。感情を抑えろ、冷静になれ、と自身に言い聞かせる。


「お前、一体何歳だ。それなりの大人が、子供に喧嘩を売ってるのか。」


「俺は、ランドルフ男爵家の後継ぎ、ワルサー・ランドルフ、20歳だ。父上の無念を晴らす。」


僕の護衛が、第三騎士団全員が、一斉に剣に手をかけたのを見て、制した。周りが息をのんでいる。


「ワルサー・ランドルフ。

もう一度言う。ここは、国を守る騎士の聖地だ。神聖な入団式に乱入し、私怨で汚し、未来の騎士達に迷惑をかけている。それでもまだ、この場で、仇討ちをしたいのか。それも成人した者が、未成年に挑むのか。」


「そうだ、お前なんか、我がランドルフ家の仇、ズタズタにひきさいて、犬の餌にしてやる。」


「仇討ち、受けて立ってやれう。その前にに、もう一つ、お前を引き入れた奴を教えろ。どうせ私が死ぬのだろう?」


「ランドルフ家の護衛。リッキー・ダンドル、私の養父だ。」


お前は馬鹿か?黒幕を口に出すなど。

僕は、剣を構えながら、大声をだした。


「第三騎士団団長殿、そのような者は、存在しますか?」


「見習い騎士、間違いなく、手引きした者だ。いま捜索中だ。

見習い騎士ヴァシリス・シーシェル。この場で、逆恨みの仇討ちを受けるか、騎士団で討伐するか、お前の決断に任せる。ただし、私怨の仇討ちは、お前に部が悪くとも、こちらは助けられないが、覚悟はあるか。」


「団長殿、覚悟の上ゆえ、助けは無用。」


「陛下の御許可が出ている。全ての力を使い存分に戦え。」


「陛下の、お許しに感謝する。」


周りが、ざわざわしてしている。

すごい事になったと、みんなが僕らを囲んでみている。あっちにいた見習いたちまで、近寄ってきた。


「ワルサー・ランドルフ。逆恨みだが、仇討ちを受けてやる。だが、お前が負けたら死を持って償え。」


「こちらのセリフだ。小僧死ねっ。」


剣を2本持って、突っ込んできた。

やっぱり、腹が立ってきた。

僕の晴れの日に、このザマだ。本気で腹が立ってきた。

体からオレンジ色が出ている。

もう構わない。ユリシーズは、全ての力、と言った。僕の剣の刀身に青い炎が走り、稲光りがし始めた。


剣から稲光りが出てる。すごい剣だ。

宝剣か?

いや、宝剣は、王太子が賜ったと聞いた。

第三王子は、海神の庇護を受けたと噂がある。

でも8歳だろう?

なんか、みんな色々言ってるが、ほぼ合っている。相変わらず、ヒソヒソ声がよく聞こえる。


二の腕のトライデントが、ドクンドクンとなっている。

ヒソヒソ話しを聞いている場合ではなかった。


ワルサーが突いてきた2本のうち1本を薙ぎ払ったら、簡単に折れて、バラバラになって地面に落ちた。


ワルサーは目を見開いて、なくなった剣を持っていた手をみている。


「ワルサー、其方の剣、もう土になったぞ。次はどうしてほしい。」


また小さな炎を出してきた。

周りの見習いが逃げ惑っている。騎士が、見習い達を後ろに下げた。


「ワルサー、また焚き火を出したのか。炎というのは、こういうふうに、、出すのだ。」


剣をクルリと回して、

ポセイドンの小さめの稲光りを呼び、青い炎を試合場一面に出した。

ワルサーに火がつき、燃え始めた。

周りから叫び声が聞こえる。

あっ、やりすぎた。みんなの前で、焼き殺すのはまずい。

急いで、剣を縦に振り、海を出したら、勢いよくでて火は消えたけど、ワルサーが波で吹っ飛んだ。

トライデントじゃないから、加減がわかりにくいから、ちょっと使いにくいな。

もう僕は、魔王状態になっていた。見習い達が、息をのみ、静まりかえっている。


「ワルサー、子供だましの火遊びはやめて、剣で立ち合えっ。」

ワルサーが突っ込んできた。僕は、よけた。

何でこいつは、こんなに弱い。気の毒になってきた。

ワルサーが、引き返して、剣を振り上げている。

茶番は終わりだ。斬り合う気も失せた。

一振りしたら、ワルサーの剣が吹っ飛んだ。

初日に、人前で斬り殺したくない。


「そこまで。」ユリシーズが、止めてくれた。

「謀反の疑いがあるゆえ、ワルサー・ランドルフは、親衛隊に引き渡す。見習い騎士は、命を、奪わぬように。」


「はっ。」僕が剣をしまって、試合場から出ようとした時だった。後ろに気配を感じた。まだ来る気か。

周りから「危ないっ」と聞こえた。


「死ねっ。ヴァシリス。」

「しつこいっ。」


僕は、振り向きざまに、剣を引き抜き、ワルサーの短剣を弾いたつもりだったが、指ごと切り落としていた。短剣には、掴んだままの指が、5本ついていた。しまった。やってしまった。

第三団の騎士達が、落ちた指のついた短剣を回収し、ぎゃーぎゃー騒ぐワルサーを、引きずって行った。


まだ気配がする。

心で聞いた。

『ポセイダルゴさま、もう1人、どこにいますか?』


首元で、アリエッタのペンダントが光った。

そうか、陸地はクロノス様に、聞かなくてはならなかった。服の上から、ペンダントを握って、クロノス様に聞いた。


『クロノス様、お助けください。父上を狙っているダンドルはどこに。』


《ヴァシリス、久しぶりだな。巫女の守護石とは、巫女の愛が、可愛いのう。》


クロノス様、いま、恋人の話しじゃなくて、、

『巫女が、作ってくれました。』


《うんうん、アリエッタは愛らしい、で、何か用か?》

最初の質問、聞いてないし。まあ、忙しい神様だから、ポセイドンやポセイダルゴ様みたいには、単刀直入とはいかないんだ。


『父上を狙っているダンドルの居場所をしりたいのですか。教えていただけますか。』


《国王のすぐ後ろにおる。多勢だ。早く行け、ヴァシリス!》

一瞬、父上の背後で、キラっと何かが、光った。


「父上、アラン隊長、背後にっ。」


僕は、ありったけの声で叫んで、父上に向かって走り出した。


父上とアランが、壇から飛び降りて、剣を抜いて、すでに斬り合いになっている。


えっ?後ろから誰かくる。

後ろじゃない、早い、もう横にきている。パーシーとアーサーとダニエルが走っている。少し後ろにアズラエルがいた。

パーシーが走りながら言った。

「ヴァシリス、我々は、加勢する。許可をくれ。」


「ありがたい。ちちう、いや、国王を守らねば。」


ダニエルが剣を抜き、走りながら、言った。

「皆で戦うぞ。敵は1人ではない。」


父上の周りで乱戦になっている。

よく見ると、見習い騎士達も、何者かに襲われている。

騎士団が見習い達を守りながら、戦い始めた。


「敵は騎士じゃない。軍人でもない。軍人崩れの傭兵だっ。」

アズラエルが剣を抜いて怒鳴った。


「第一団の見習いが特に狙われている」アーサーが、剣で、場所を指している。


アランの声が聞こえた。

「パーシー、ダニエルは、ヴァシリスを守れっ。ヴァシリス、アズラエル、アーサーは見習いを守れっ。これは練習ではない。斬れっ、陛下は問題ないっ。」

父上が、凄い勢いで敵を斬り捨てている。


やっぱり、そうだったのか。

この4人は、強すぎる。もっと早く入団できたのに、僕の入団に会わせるために、わざわざ遅らせて、一緒に入団した。僕を守るために。

どれだけ鍛練したのだろう。見ず知らずの僕のために。胸が熱くなってきた。


「ヴァシリス、どうした。集中しろよ。」


「ダニエル、すまない。ちょっと考え事を。」


アズラエルが笑い出した。

「ヴァシリス、お前、こんな状況で、考え事かよ。」


みんなが笑い出した。

アーサーも笑ってる。

「この程度じゃ、笑って片付けられるなっ。よし、さっさと片付けて、体力試験に戻りたい。」


パーシーが「腹も少し減ってきた。」と言っている。


僕たち5人は、見習い騎士に襲いかかる中途半端な傭兵たちに、斬りかかった。

僕も腹が立っていたし、胸も熱くなっていたので、思い切り、剣を振るった。

あっという間に僕らは、20人ほど倒していた。

本部前も、親衛隊と騎士団で、100人くらい、斬られた傭兵が山積みにされていた。

父上の前で、ダンドルらしき男が、親衛隊に取り押えられていた。


アランが口を開いた。

「ダンドル、お前、先王の温情で助けられたのに、よくも、このような謀反を起こせたな。」


「ワルサーは、私の息子だ。」


「今更、嘘を言うな。ワルク・ランドルフの次男を引き取ったのだろう。」


「母親は、ランドルフ夫人だ、父親は私だ。」


「そなた、まさか、主人の妻と不貞を働いたのか。」


「マーガレットをずっと守っていたのは私だ。ずっとだ。私の許嫁だったマーガレットを奪ったのはワルクだ。私は下級貴族だから抗えなかった。だが、ワルクの嫡男ワルキューがアンジェラなんぞに横恋慕するから、連座でマーガレットまで殺された。私たちの幸せは崩れた。あんな女、アンジ」


父上が、ダンドルの口を蹴り飛ばした。

「私の妻の名を、その汚れた口で語るなっ。」


「陛下っ、」アランが父上を止めている。


父上は、黙らなかった。

父上が、母上のことになると、誰も止められない。止めても無駄だ。


「ダンドル、あの襲撃の時、おまえはいなかった。だから、罪に問わなかった。お前がマーガレットを奪われたのはお前が弱かったからだ。私の妃の名を、二度と口にするなっ。私は自分の女は自分で守るっ。」


ダンドルが項垂れた。


見習い騎士達と、騎士団の若い騎士たちが、父上のカッコよさに、ぼっ〜となってる。

  『自分の女は自分で守る』

みんなが呟いている。騎士になりたい男子が、口にしたい言葉だろう。父上、反則だ。

父上の王妃への寵愛は有名だ。さらに騎士としての王が愛妃を自ら守ると言う伝説が加速されていくんだろうな。母上に教えたら、また極上の笑顔が見れるかも。


親衛隊と騎士団の上官たちは、いつもの事だから、さっさと片付けを始めている。みんな偉いっ。


アランが後ろの親衛隊に指示を出した。

「連れて行けっ、ダンドルとワルサーは、後で尋問する。」


ヴァシリスの周りに、平穏はなさそうです。

読んでいただき、ありがとうございます。

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