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巫女は海を守りたい〜愛が溢れるヒーラー物語  作者: 紫陽花
第5章 次の新しい道 婚約のあと
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第5章 近衛隊 入団式

いよいよ、ヴァシリスが騎士団に入団します。

近衛騎士団 入団式 前日


アランとユリシーズは、明日の入団式を控えて、第三騎士団の会議室で、頭を抱えていた。


第三騎士団の騎士全員が集まっていた。見習いはいない。実戦にでる騎士ばかりだ。


「そんな事、できるわけがありません。」


「団長、それは無理です。できません。」

班長のトビーが怒っている。


「命をかけてお守りしてきたヴァシリス殿下に、剣をむけるなど。」


「何も殺せと言っているわけでも、痛めつけろと言っているわけでもない。いじめる必要もない。」


「団長は、平気なのですか?ユリシーズ殿は、ずっと殿下をお守りしてきたのですよ。」


「だから、更に強くなっていただきたいのだ。

なあ、お前ら、私が殿下の鍛練をしてきたのは知っているだろう。それを騎士団で続けるだけの事だ。

いずれ、第三騎士団は、海洋ヒーラー軍と、合同で、殿下の指揮下にはいることになる。

殿下は、この国唯一の海洋生物超特級ヒーラーだ。ミカエラード公爵令嬢のアリエッタ様も、海洋生物特級ヒーラーだ。

このお二人は、これから、どんどんと前線に出られるのだから、共に戦い、お守りする訓練は、避けては通れないのだ。」


「アリエッタ姫様も前線に?まさか?」


「お前ら、今まで、お二人を警護してきて、何を見てきた。ずっと海に入っていたのを、ヒーリングをしているのを、見てきたではないか。

あれは、幼い子らの遊びではないと、わかっていたはずだ。」


「そっ、それは、しっ、しかし。」


「剣だけではない、乗馬も格闘技も、弓も、殿下が幼い頃から、手に豆を作り血を流して鍛練なさったのを、見てないとは言わさないぞ。

何度も馬から落ち、ご自分の剣で、どれだけ傷ついてきた。

殿下は、海では最強だ。だが陸では、幼い身体で、引けをとり武が悪い。だからこそ、鍛練されてきたのだ。何を見てきた。」


「今から、連携をとらねば、殿下と私達の間に、距離やレベル差があっては困るのだ。」


「昨日だって、殿下もアリエッタ姫様も、お守りできなかったのに。」


アラン親衛隊長が口を開いた。


「あれは、殿下ご自信が囮になられた。」

皆が驚愕で固まった。


「えっ?団長殿は、それを知っておられたのか?」


「陛下を始め、上層部と親衛隊は、知っていた。昨日の襲撃は、事前に情報を得ていた。

王妃さまと、ユリシーズの妻と、ヴァシリス殿下が、自ら、囮になられたのだ。パニエールを確実に仕留めるために、だ。」


「親衛隊長殿、あまりにも非道すぎますっ。」


「綺麗事を言うな。それだけ、切羽詰まっていた、と言う事だ。パニエールは、我が国の女性を拉致しては、チャンシアに売っていた。我が国の恥だ。一つ間違えば、アリエッタ様が、チャンシアの皇帝への献上品になっていた。」


「ま、まさかっ。けっ、献上品だと。」


「ヴァシリス殿下は、まだ8歳だ。神童と言われ、どの王子よりも、聡明でお強い。年齢より大人びてみえる。

だが、女性が献上される意味はご存知なかった。大切に守ってきた婚約者が、その対象であると、その意味を全て知られた時の、お気持ちが、お前らにわかるか。それを知った上で、囮になり、戦われたのだ。

お前らの、妻や娘が、そうなると、言われたら、どうする?」


一人、また一人、俯いていく、拳を握りしめて、唇を噛む。


「王家の者は常に狙われている。その愛妃が一番の弱点になる。それらも含め、王家と国を守り抜くのが、親衛隊と近衛騎士団だ。その栄誉と誇りを忘れたのか。」


「もう一度言う。

ヴァシリス殿下には、騎士団で、更に強くなっていただかなくてはならぬ。海洋軍では、ヒーラーとして、アリエッタ様と、最前線に立たれる。

それが、お二人の国務である。お二人の意思で、陛下に誓われた。

昨日のような事が、この国で起きては、ならぬのだ。」


「お前らが、殿下を鍛え上げ、殿下と信頼の元に一団となる事が、殿下や王家をお守りすることになる。それが国を守ることに繋がる。」


「殿下は、明日の入団式には、一般騎士見習いとして、入団する。もう殿下とお呼びしてはならん。呼び捨てでよい。特別扱いもしない。

もし、特別扱いするとしたら、鍛練が特別に厳しくなる、くらいだろう。」


「ヒーラーの力は有り余るほどお持ちだ。だが、人対人では、もっと鍛えねば、不意をつかれたら、お命にかかわる。

お前たちの協力が必要だ。やってくれるな。いや、やるのだ。

陛下も入団を望まれ、殿下自らも希望された。殿下は国のために、死なせてはならぬお方だ。」


皆が立ち上がった。

「お前たちが、共に命をかけたいと思う立派な騎士に、殿下を育て上げよ。」


全員が跪いた。

「「「「はっ」」」」


アランが皆を見渡し口を開いた。

「みな、わかってくれたな。では、新しい任務だ。第三騎士団は、ヴァシリス殿下の護衛を解く。」


またどよめきが上がる。


「お前ら、いちいち騒ぐな。」

ユリシーズが黙らせる。


「ヴァシリス殿下の護衛は、殿下が騎士の称号を得られるまで、親衛隊がつく。

お前らが、今みたいな状態では、仲間か護衛対象か、判断がつかないだろう。よって殿下の護衛は、親衛隊がする。

ユリシーズは、親衛隊副隊長と、第三騎士団団長を兼ねる。ユリシーズに逆らうという事は、親衛隊に逆らう、ということだ。命令は絶対服従。

ヴァシリス殿下は、ヴァシリスだ。それを理解できないやつは、騎士団から叩き出す。よいな。」


「「「「はっ」」」」


ユリシーズが口を開いた。


「見習いや年少優秀騎士を含めても、ヴァシリスが、一番幼い。まだ8歳だ。だが、特別扱いの必要はない。明日の体力試験で、立ち合いを見ればわかるはずだ。

鍛練での怪我などは仕方ないが、万が一、あり得ないと思いたいが、騎士団内や寮で、殺し合いや謀があれば、それは謀反とする。ヴァシリスを狙う奴がいれば、必要があれば斬れ。

それから、昨日の祝賀会で、お前たちは、見ているが、毒に倒れた。寮内の毒物検査も、しっかりとするように。全て、騎士の基本ばかりだ。常に、公務と言う緊張感が消えないだろう。だから、しっかりやれ。お前らが、一番きついぞ。わかってるな。」


「「「「はっ」」」」


「それから、昨夜始末したが、親衛隊に一人、間諜が紛れていた。」


「まさか」


「私とユリシーズで探っていたが、紛れこまれてしまった。すでに関係者の処分は終わっている。漏れはない。

近衛騎士団の中の、最上位の親衛隊に紛れ込まれるなど、前代未聞だ。全体を厳しくするしかない。更に、第三団は、親衛隊と同じレベルが目標だ。覚悟してかかれ。」


「あと、明日の入団式だが、王子が入団する状況で何が起こるかわからん。アラン隊長と私の指示に注意しろ。いいな。勝手に先走るな。」


「「「「はっ」」」」



*・゜゜・*:.。..。.:*・''・*:.。. .。.:*・゜゜・*


王宮の朝の6つの鐘が鳴っている。

起きる時間だ。


珍しく夢を見なかった。いつものようにのびをしようとしたら、腕が重い。

自分の斜め下を見て、息が止まった。一瞬。

アリエッタが、僕の腕に頭をのせて、静かな息づかいで、眠っていた。

嘘だろ。

空いている手で、髪を、撫でてみる。

深い緑の髪、さらさらしている。

今朝に限って、こうなのか。

大の字で寝ていて欲しかった。


入団式へ出る準備をしなくてはならない。


アリエッタの髪に口づけした。髪をかき分けて、額に口づけした。頬にも口づけした。

そっと腕を引き抜いて、毛布をかけて、僕の剣と夢のノートとペンを持って寝室を出た。


勉強部屋とクロゼットがある部屋で、

荷物にノートとペンを、入れた。


第三騎士団の見習い騎士服を着た。

腰の革ホルダーに剣をさす。

荷物を持って、母上の私室の扉をあけたら、オランがいた。


「坊っちゃま。おはようございます。」


「オラン、来てくれたのか。」


「騎士にとっては、晴れの日ですからね。」


「ありがとう。ユリシーズをまた忙しくさせてしまった。すまない。」


「ユリシーズが騎士をやめたら、ユリシーズではなくなります。ユリシーズは、坊っちゃまを言い訳にして、騎士生活を堪能できるから、喜んでいますよ。」


「ありがとう、オラン。

あっ、アリエッタはまだ眠っているから。」


「坊っちゃま、よろしいのですか。」


「時間通りに行かなくてはならない。今日から、特別扱いはないから。」


「ダイニングで陛下もアンジェラも。」


「ありがとう。」


ダイニングに行くと、父上と母上が朝食をとっていた。


「父上、母上、おはようございます。」


「ヴァシリス、なんて凛々しいの。よく似合っているわ。」


「確かに似合っているな。だが、ヴァシリス、早く、その見習い騎士服から、騎士服になれ。」


「父上、無茶を言わないでください。でも、できるだけ早く。必ず努力いたします。」

家族の会話が嬉しかった。


朝食が終わり、エントランスに向かう。

外には、親衛隊の護衛と、キロンが待っていた。


父上と母上が見送ってくださる。


「ヴァシリス、お前が騎士になるまでは、親衛隊が護衛をする。騎士になってから騎士団組織全体を作り直すから、それまではアランとユリシーズと親衛隊に頼れ。第三団騎士団は、将来、お前と共に戦う者を作り上げる場所だ。よいな。」


「はっ。」


「母上、アリエッタを頼みます。」


その時だった。

「ヴァシリスさま、ヴァシリスさま。待ってください。」


「お待ちください、アリエッタさま、お着替えを」


月の宮の扉の向こうから、アリエッタの声が聞こえる。すでに月の宮の扉はしまっている。


僕は唇を噛んだ。だから、会わずに行こうとしたのに。あの真珠のような涙が落ちるところを見ると、僕は感情が揺れてしまう。


父上が扉に顔を向けている。


「ヴァシリス、会ってやれ。まだ幼い。それに、扉が爆発するぞ?」


「えっ?」

頑丈であるはずの扉を見たら、グリーンキラキラが、隙間から溢れ扉が揺れている。まずい。扉が吹き飛びそうだ。


母上が、開けなさい、と命じると、後宮の扉が開いた。


オランが急いで、アリエッタに部屋着を頭からかぶせていた。

全身グリーンキラキラのアリエッタが、扉から走り出してきた。


「ヴァシリスさま、黙っていかれるなんて。あまりにも、ひどいです。」


「こうなるのを、避けたかった。」


「ヴァシリスさま。お役目を果たしに行かれるのに、泣いたりいたしません。ヴァシリスさま、これを。」


アリエッタの目はウルウルしていたが、涙は流れていなかった。堪えているのがわかった。

アリエッタが何か差し出した。アリエッタの瞳色の貴石のペンダントだった。切れないように、革紐で丁寧に編みこんでペンダントにしてあった。


「私が作りました。海の庭で見つけた石を、お守りに。クロノス様のご加護をいただきました。」


「其方が作ってくれたのか。」


「はい。どんなときもご無事でいてくださるように。」


「つけてくれるか。」


アリエッタから、初めて、貴色を贈られる。

僕はアリエッタの前に跪いた。

アリエッタが僕の首に腕を回して、革紐を結んでくれた。そして、そのまま、僕の額に唇をそっと触れた。アリエッタのグリーンキラキラが、僕に降り注ぎ、ペンダントの、石が強く光った。


「いかなるときも、あなたの巫女は、クロノス様のご加護を願い、あなたの無事を祈り続けます。

お慕いしております。我が君ヴァシリスさま。」


「くっ。」

こんな時に、こんな場所で、こんな事を言うのは反則だ。これは、愛の告白ではないか。

僕は、思いっきり抱きしめて、頬に口づけした。


「アリエッタ、誓いを忘れるな。」


頷くアリエッタの瞳を見つめて、立ち上がった。


「父上、母上、行ってまいります。」


「母上、オラン、アリエッタを頼みます。」


僕の方が泣きそうだった。僕はなんで、こんなに弱いんだろう。


僕は、エントランスに出た。


マーカス率いる親衛隊が、ザッと音をたて跪く。


「ヴァシリス殿下、お迎えにあがりました。」


「未熟な見習い騎士の護衛、ご苦労。騎士団まで、よろしく頼む。」


「ヴァシリス王子殿下、今日の晴れの日の護衛、名誉にございます。」


騎士達にとって、騎士団に入る覚悟をする者は、誇らしいと捉えてくれている。


僕はキロンに飛び乗った。


「行くぞっ」


僕は、月の宮を振り返らなかった。

*・゜゜・*:.。..。.:*・'・*:.。. .。.:*・゜゜・*



騎士団本部の門の前の広場に着くと、たくさんの馬車と馬が、入り乱れていた。

入り口で、家族と別れを惜しむ者がたくさんいた。

近衛騎士団は貴族出身からなる、王の直轄騎士団だ。さまざまな階級の騎士見習いがいる。

ざわざわしていたのに、

僕たちが、広場の入り口に着いたら、一瞬で静まりかえった。

さすがに朱赤の騎士服に護衛された、つまり王の親衛隊に護衛されるコバルトブルーの瞳を持ち、コバルトブルーの見習い騎士服を着た少年は、この国の第三王子だと、バレバレだった。


ヴァシリス第三王子殿下だ。

やはり騎士団入団は本当だったのか。

毒で危篤ではなかったのか。

またヒソヒソ声が聞こえてくるけど、それよりも、すごい事が起きた。

みんなが一斉に跪いた。


親衛隊のマーカスが、騎乗で声をかけてくれた。


「殿下、この門を越えると、見習い騎士です。」


「早く入った方が良さそうだ。ここにいる方が、みんなに迷惑がかかる。ありがとう。マーカス。」


「殿下、騎士団の訓練エリア以外は、護衛いたします。どうか、ご武運を。」


僕は、キロンを降りると、親衛隊も馬をおりた。親衛隊のみんなもここを通り、鍛練に鍛練を積み、年少で優秀に優秀を重ねて親衛隊になった騎士達だ。


僕は、感謝と尊敬を込めて、親衛隊に言った。

これも王子の仕事だ。


「これより私の護衛任務を解く。みな、大変ご苦労であった。王宮に帰還せよ。」


「ヴァシリス王子殿下。ご武運を。」

親衛隊がザッと音を立てて跪いた。


周りは大変だ。国王の最強の親衛隊を間近で見たことがない者の方が多い。

一糸乱れぬ親衛隊は、騎士の憧れ、ファンクラブ状態だ。

それを引き連れる僕は、ヘナチョコ王子だ。


僕は、荷物を持ち、キロンを連れて、騎士団の入り口を抜け、受付に行った。


「見習い騎士は、所属騎士団と名を述べよ。」


「はっ、第三騎士団所属、ヴァシリス、シーシェルであります。」


リストを確認している。顔パスじゃなくなった。


「よし、馬の名は、キロンで間違いないな。」


「はっ、キロンで間違いありません。」


「よし、先に厩舎に馬を預けて、名札をもらい、馬につけてやれ。その先の指示は、厩舎でする。移動は、騎乗で行けっ。」


「はっ」


僕は、キロンに荷物を積み、飛び乗って、言われた厩舎まで軽く駆けた。

横目に、まだ跪き、見送ってくれる親衛隊が見えた。必ず強い騎士になる。


厩舎に着くと、厩舎受付があった。

また所属と名前を聞かれて、キロンにつける名札をもらった。

ユリシーズの馬についてるのと似ている。

馬の場所は、騎士団毎に分かれているらしい。


第三騎士団は、1番奥にあった。その奥が騎士寮だ。


キロンに名前をつけると、場所を教えられる。

キロンの場所に行くと、僕の名前とキロンの名前の札が、扉についていた。


ヴァシリス・シーシェル/キロン


左隣をみると、パーシー・ウリエル/カオス


右隣は、アーサー・ガブリエル/グラコス


その右隣が、ダニエル・ミカエラード/アレス


その右隣が、アズラエル・ウリエル/トリトン


えっ?知ってる貴族家ばかりだ。だが、名前は初めてみた。誰の息子なんだろう?

とにかく名前は覚えておかねば。

とにかく暗記した。アリエッタに兄がいたなんて、知らなかった。考え事は後だ。


キロンに水と、干草を用意した。鞍置き場にも、名前がついていたから、そこに置いた。


厩舎を出ると、騎士寮に行かされて、部屋の場所を教えられ、荷物だけ置いたら、剣を持って奥の演習場に行けと言われた。


部屋は2階の奥から2番目だった。

扉に名前のプレートが貼ってある。

《第三見習い》《ヴァシリス・シーシェル》


隣の扉を見たら、また


左隣をみると、パーシー・ウリエル 


右隣は、アーサー・ガブリエル


その右隣が、ダニエル・ミカエラード


その右隣が、アズラエル・ウリエル


どう考えても、この面子、父上やアランたちが、集めたんだ、と、わかった。

とにかく荷物を置いて、剣を持って、部屋を出た、鍵はないみたいだ。


奥の演習場に向かう道を抜けたら、突然、開けた場所にでた。

調教用の馬場もあるし、森や林や訓練場がたくさんある。とにかく広い。


騎士服の色で、所属騎士団がわかる。

僕は、コバルトブルーが集まっているところに足を進めた。

きっと、ここまで来たら、みんなに埋もれる。

知り合いもいないし、

端っこの方で大人しくしていたら、スリムで上品な騎士見習いが近づいてきた。


「君、ヴァシリスだね。」 


「えっ?」

どこかで見たことがあるようなないような、濃いめのグリーンの瞳にブロンド、優しい表情。


「やっと会えたね。僕は、ダニエル・ミカエラード、アリエッタの兄だ。」


えっ、え〜〜〜っ!と、僕は叫びそうになり、

口を抑えた。こんな場所で、目立つわけには行かない。


「すまない、驚かせてしまったな。パトリックの同級で、11歳だ。父と母はよく知っているよね。僕だけ、ずっと君に会わせてもらえなかったんだ。」


ダニエルは手を差し出した。

僕はその手を握って、名乗った。


「はじめまして。ヴァシリス・シーシェル、8歳だ。父君と母君には、大変お世話になり、、うっっ、」


「どうした、ヴァシリス?」


「も、もしかして、兄君になるの?ですか?」


ダニエルは笑った。

「僕の父上が君の父君なら、そうなってしまうけど。騎士団では、お互いに名を呼び合うらしいから。とにかく、よろしく。」


「よっよろしく。」


誰かに似ていると思ったら、ミカエラード公爵に似ていたんだ。瞳の色も、アリエッタに似ている。

父上たち、謀ったな。僕には何も教えてくれてないっ!でも、知り合いが一人でもいて、少し安心した。


入団式が始まるようだ。

みんな並べと言われている。


呼ばれた順番に、前に進んで、騎士見習い徽章を

首からかけてもらうらしい。万が一、死んだ時にわかるように、名入りの徽章だ。

各団長が顔と名前を照らし合わせて、首にかけるらしい。そのあと、その順に並べと言われた。


騎士団の人事担当が、準備に名前を呼んでいく。

第一騎士団は、見習いが70人。ラングドン兄上が王太子になったから、第一は人数強化なんだ。


第二騎士団は、30人。パトリック兄上が山に入ることが多いから、体が大きくて、屈強な感じの見習いが多い。


第三騎士団は40人。たぶん、脱落者が多いかもしれないから、最初の数が多いのかも、ふと、そんな気がした。


僕はヴァシリスでVで始まるから、最後に呼ばれた。

「ヴァシリス・シーシェル」


「はっ!」


僕は前に出た。

親衛隊の騎士服をきたユリシーズがいた。

ユリシーズ、めちゃくちゃ、カッコいいけど、顔が鬼みたいに怖すぎる。緊張しまくった。


「第三騎士団、騎士見習い、ヴァシリス・シーシェルに間違いないか。」


「はっ、間違いありません。」


僕は、僕の名前が掘り込んである徽章を鎖に通したものを首からかけてもらった。


「この国の王家に忠誠を尽くし、命を捧げる騎士になれ。」


「はっ」


「列に戻れっ」


僕は、晴れて騎士見習いになった。


「では、近衛騎士団の最高統括である国王陛下から、お言葉をいただく。みな跪け。」


ちっ父上、来るなんて聞いてない。

みんな、まだ跪き方を習ってないから、バラバラだけど、見よう見真似で、跪いている。僕は、ユリシーズに3歳から叩き込まれてきたけど、こういう事って大切なんだ。


父上が、壇上に上がってきた。

側にアランとユリシーズが守っている。

その後ろに親衛隊が10人並んでいる。

この親衛隊だけで、ここにいる見習い全員、簡単に消せるくらいの力のはずだ。


見たことない父上の騎士服姿だった。

親衛隊と同じデザインだけど、色が濃い朱赤で、全ての金モールが太い。ものすごいオーラだった。誰が見ても、正真正銘の強く逞しい王だ。


騎士でない者は、絶対に騎士服は着られない。だから、みんな、国王が騎士だとわかったはずだ。

周りで、どよめきや、すごいため息が聞こえる。男の中の男を見た時って、ため息がでる。小さな声が聞こえる。

僕達がお仕えする国王様だ。やっと、お顔を拝見できた、カッコいいな。強そうだ、と。

昨日、湯浴みで湯をかけあって、今朝、出発前に抱きしめてもらった、僕の父上は、国の宝だった。

ふと母上を思った。母上は、僕が出発した後、この父上を送り出した。母上は、アリエッタの思いを一番わかって下さるだろうと、僕はみんなと別の事を考えていた。


「第33代国王 エドワード・シーシェルだ。

騎士見習いの少年たちよ。この国のため、王家のために、命を捧げる覚悟を持ち、近衛騎士団への入団、王として、礼を言う。

これからの、厳しい鍛練の日々を、騎士道精神で、生き抜いてもらいたい。

騎士の資格を得た暁には、私がこの王剣で、其方らに騎士の称号を授けよう。。」


父上が、王剣を抜いた。

刀身に朱色の炎が走り、オレンジの光で広場が満たされていく。騎士見習いたちが、わあっと声をあげている。


「脱落するな、強くなれ。正義を守る騎士になれ。この国を守る根幹となれ。」


王が王剣を横なぎに振り抜き、マントを翻し、壇上に跪き、剣を捧げ持った。

カッコ良すぎる。

騎士団のエリアすべてに朱色と金の光が降り注ぎ、金色に光って消えた。

みんなから歓声が上がっていく。


僕は、父上との会話や、約束を、思い出していた。2日前に、父上が先頭切って、戦うのを見たところだった。知らない父上がたくさんある。でも、いつも、すごい父上だ。チャンシアが来ていたら、今日はなかった。愛する父上が守るものは、僕も守り続けなくてはならない。

父上の言葉は、みんなにも向けられていたけれど、僕に向けられていたと、わかっていた。


すごい騒ぎの中、入団式が終わった。

みんなが興奮冷めやらぬまま、ざわざわしていると、アランが壇上に上がった。


「私は、アラン・ウリエル近衛騎士団団長、親衛隊隊長だ。本日は、最高統括の王がお見えだ。

今から、体力試験を行い、訓練のグループ分けをする。組み合わせは、名簿順に行う。今から、上官の指示に従って、試合場所に移動しろ。」


今から試験?王の前で。

聞いてないっ。

父上、やることが、やっぱり、えぐい。


読んでいただき、ありがとうございます。

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