第5章 巫女の決意
「アリエッタ 大丈夫か。
「ヴァシリスさま、ヴァシリスさま、ヴァシリスさま、うっ、うっ、、」
「アリエッタ、目を覚まして、僕を見ろ。」
「いやっ、いやっ、いやっ〜〜〜、汚い手で触らないで、いやっ、いやっ。「 」
僕はアリエッタから手を離した。
アリエッタが、頬や首をゴシゴシ拭いている。
「ヴァシリスさま、助けて、、、」
触るな、に、助けて、と叫んでいるが、どうすれば良いかわからない。
アリエッタが部屋を走り出た。
追いかけたら、浴室に飛び込んでいる。
湯を頭からかぶっている。
「いやっ、汚い、触らないで、いやっ」
湯をかぶり、頬と顎や首を引っ掻いてゴシゴシしている。
最後のあの、、皇帝に触れられた時か。僕は、やっと思い当たった。
「アリエッタ、僕だ、こっちを見ろ、あの男はいないから大丈夫だ。アリエッタ、だめだ。 」
アリエッタが、首の皮膚を剥がす勢いで、引っ掻いている。血が滲み出した。
「いやっ、触らないで、ヴァシリスさま、助けて、ヴァシリスさま、お願い、ヴァシリスさまっ。」
僕がアリエッタを羽交い締めにしても、すごい勢いで抵抗してくる。アリエッタは皇帝から逃れようとして、僕に助けを求めているが、僕が僕とわかっていない。どうすれば、、、
「僕だ、アリエッタ、ヴァシリスだ、僕だ、目を覚ませっ 」
浴室で、僕達が叫んでいるのが、聞こえたのだろう。
侍女達が駆けつけ、父上と母上が浴室に飛び込んできた。
「ヴァシリス、何があった。」
「父上、クロノス様が、アリエッタに、、見せて、、チャンシアの皇帝がアリエッタに手を出して、、」
母上が、侍女達を人払いしている。
母上が、アリエッタを抱きしめようとしてくれている。
僕はアリエッタを離して母上にあずけた。
「アリエルちゃん、アリエルちゃん、おかあさまよ。アンジェラよ。」
アリエッタの抵抗が止まった。
アリエッタの頬から顎にかけて血が滲み、首筋から鎖骨にかけても、引っ掻き傷がひどい。皮膚が剥がれて血が滲んでいる。
父上が、僕を連れて、浴室を出た。
「ヴァシリス、とりあえず、着替えなさい。濡れたままでは、風邪を引く。」
僕は急いで着替えて、父上の寝室に行って、
父上に一部始終を話した。
「そうか。」
「父上、驚かないのですか。」
「昔、セレステにも、あった事だ。内容は違うが、アリエッタと同じような話だ。
巫女は、最初、どうしても、勘違いするらしい、密告者みたいな気持ちになってしまうのだろう。その結果、人が死ぬ事になれば、死の使者のように自分を責め始める。
クロノスの判断は間違ってはいない。
実際、今回、ご神託がなければ、お前たちが見た光景が、そのまま起きていただろう。この国は終わっていた。」
「父上、僕は何を間違えたのですか?」
「何も間違っていない。」
「ヴァシリス、巫女がご神託の光景を見る時、自分で経験しているように感じるらしい。
だから、アリエッタのあの抵抗は、チャンシアの皇帝の手が、自分の身体に直接触れ、その恐ろしさを目の当たりにしたからだろう。あの年齢では、何をされるのかはわからないだろうが、忌み嫌う男に素肌に触れられる恐怖は、わかるはずだ。
それに、アンジェラは自害、オランはユリシーズに委ねて共に自害、セレステもマースが手にかけたのを見たのだろう?最愛の女性を夫が手にかける事の意味が、薄々はわかるだろう。
アリエッタを守るお前が、一番最初に毒殺されたわけだから。
これだけ起きる事が、大きすぎると、セレステも見たはずだ。すぐにセレステが来るだろう。
アンジェラとセレステに任せよう。女性が身を守る意味は、女性にしか教えられない。」
「父上、僕達は、壊れてしまうのですか。」
「お前たちは、そんなに薄い絆なのか?」
「信じたいですが、、」
「ヴァシリス、とにかく部屋で休め。お前だって、平気じゃないはずだ。」
侍女頭が、走ってきた。
「セレステ様が、ミカエラード公爵様とエントランスに。」
「ナリス、二人はアリエッタの両親だ。ヴァシリスの義父母となる方だ。私が許可するゆえ、こちらの書斎に通せ。酒の用意をしてくれ。ヴァシリスには子供用を。」
ナリスが、また小走りにエントランスに向かった。
「ヴァシリス、マースと話すなら、一緒に書斎に来るか?」
「行きます。」
僕達は、書斎で会った。
セレステは、僕を見て言ってくれた。
「ヴァシリスさま。大変なこと、アリエッタに向き合ってくださり、ありがとうございました。
私も全て見ましたから、アンジェラと一緒に、アリエッタに話します。」
「母君。申し訳ありません。僕は、アリエッタを守れなくて。」
涙が出てきた。
「ヴァシリスさまは、娘をずっと守ってくださっています。母であり、巫女である私は、アリエッタの苦しみも理解していますが、ヴァシリス様の苦悩が、どれほどのものか、わかっているつもりです。ちゃんと話してきますから。」
「母君。お願いします。」
父上とマース殿と僕は、母上の書斎で、クロノスが見せた光景を話していた。
「私もセレステから内容を聞きましたが、今日、その光景が起きていても、おかしくなかった。
私はセレステとの婚姻の時、約束をしました。
陛下がお隠れになったら、または、他の国に巫女が奪われそうになった時は、夫である私の手でセレステの命を終わらせると言う、唯一の約束です。だから、婿殿が見た光景は、会っています。セレステの命は、私の剣でしか奪えないからです。」
「父君、特別な剣だったのですか?」
「ガブリエル家に伝わる巫女の命を奪う剣です。セレステの輿入れの荷物に、一緒にありました。」
「そのような剣があったのですね。」
「ヴァシリス、巫女の血筋は、様々な方法で守られている。ユリシーズとオランの死に方も、合っている。オランは、セレステの代わりの巫女として生まれている。今は、能力が眠っているが、いつ覚醒するかわからん。王が、つまり私が死ねば、オランの役目も終わる。他国にも渡せない。セレステやオランは、巫女を産む女性だ。だからその血筋は確実にシーシェルの中で守るか、守れないなら絶やすしかない。ガブリエル家に伝わる剣は一本だけだ。
ガブリエルの剣が手元になければ、巫女の夫になるものが、覚悟の上、共に死を選ぶ事で、巫女の命を終わらせる。だから、そのような死に様を。
それが、ユリシーズとオランの覚悟だ。」
「巫女を守るために、みんな、どれほどの覚悟を。」
「そうだ。それだけの覚悟があるから、神々からのご神託がある。
アンジェラも、私の死と共に自害したんだな。
王妃が、他国に奪われることは、あってはならない王家の決まりだ。」
僕は、どんどん暗くなっていく。
「ヴァシリス、お前は、覚悟ができているはずだ。心配するな。アリエッタはまだ幼い。その幼いアリエッタに、クロノスが、残酷な光景を見せたのだから。」
「覚悟は、できているつもりでしたが、、」
「婿殿、今日は、ご立派でしたよ。これから、戦争や侵略がない世界を作っていけばよいのです。今日は、これしかなかった。婿殿が、何の苦しみもなく、今日を過ごされたとは、思っていません。アリエッタは、女性たちに任せましょう。」
ミカエラード公爵家と婚約が整ったので、今日から、ミカエラード公爵を、父君と呼んでいい事になっている。僕は、婿殿、と呼ばれる。
「父上、父君、もし、アリエッタが他国に奪われそうな時は、僕が彼女の命を断つのですか。前に、父上に聞かれた時は、癒して共に生きたい、と言いましたが、奪われたら、生きられないのではなくて、奪われる前に断たねばならないのですね。」
何故か、父上と父君は、黙ってしまった。
「ヴァシリス、お前もまだ幼い。騎師団に入れば、10歳くらいになればわかる。状況によるから、判断が難しいのだ。」
「クロノス様の光景は、僕が見ても恐ろしかった。アリエッタの夜着を剥ぐなど。。僕の力では、アリエッタを押さえられないくらいの拒絶でした。」
「アリエッタは、お前だと思ってなかっただろう。女性の身を守る、と言うのは、生半可な事ではできないものだ。」
「だから、15年も、離れていられないと。」
僕は、テーブルを拳で叩いた。
「ヴァシリス、焦るな。お前たちの事は、婚姻の時に、決まる事もあるから。方法は考えるから。」
「今だって、僕がそばにいても、アリエッタは、自分の皮膚を自分で剥がそうってしたのですよ。」
「ヴァシリス、落ち着け。今回は、事情が特別だ。クロノスとポセイドンの加護の元に起きている巫女の問題だ。
ヴァシリス思い出せ。ポセイドンの愛を守るために、シーシェルの姫は、ゼウスを拒絶して冥界に身を沈めた。」
そうだった。
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「アリエルちゃん、落ち着いたかしら。」
「すこし、、、」
セレステが、アリエッタが、皮膚をかきむしった傷あとに、薬を塗っている。
「アンジェラおかあさまは自害なさり、お母様は、お父様に殺されて、オランもユリシーズと死を選び、私だけ、チャンシアの皇帝に献上されて、、あんな汚い手で、ここに触れられて、、あんな恥ずかしい夜着を、脱がされそうになって、、怖くて、、、私、、」
「アリエッタ、あなたがご神託を教えてくれなかったら、クロノス様が見せた光景が、今日、起きていたわ。どれだけ、恐ろしい事がおきたか、わかるでしょう?
そうならないように、みんな必死で準備をして、今日を迎えて、行動したの。
あれを見ても、まだチャンシアの人を助けたいと思った?」
「私が、浅はかでした。あんな事をする人間がいるなんて、思わなかったから。 」
「起きてからでは遅い、と言う事は、わかりましたか? 」
「はい、起きてからでは、全てが、何一つ、間に合わないと、わかりました。 」
「アリエッタ、あなたは、今日、誰に守られたの? 」
「、、、あっ、、ヴァシリスさま。 」
「そのヴァシリス様を、非難したようだけど、今はどう思っているの?イライザを助けた方がいいと思ってる?」
「ごめんなさい、アンジェラおかあさま、お母様、、わたし、、知らなかったの。こんな事が起きるなんて。」
「アリエッタ、もし、ご神託が降りてくる時に、全てが知りたかったら、そうしてもらう事も出来るのよ。
ただ、今日みたような光景を、私は毎日毎日、見たくはないわ。危ないところを、わかりやすく見せてもらったら、あとは陛下にお伝えすれば、陛下は理解してくださるわ。
今回も、あなたがヴァシリス様にお話ししたから、ヴァシリス様も、気がついてくださったでしょう。
未来をお伝えするために、どのように見るとわかりやすいかは、アリエッタがクロノス様にお願いすれば良いことだから。それは、わかるわね。」
「はい。」
「アリエルちゃん、あなたには年齢的に、まだ少し早いのだけど、これはお妃教育で教わる事だから、わかる部分だけ話すわね。」
アリエッタは頷いた。
「18歳の成人を迎えると、婚姻できるわ。
大切に思う人と、一緒になって、生活を共にして、いずれ赤ちゃんも産まれてくるわ。
それまでは、自分の心も身も、大切にしなくてはならないのよ。
アリエルちゃんは、ヴァシリスがいつも守っているでしょう。今は、ヴァシリスも、まだ幼いから、アリエルちゃんを抱きしめたり、髪を撫でてくれたり、、手を繋いだり、するくらいだけど、成人したら、体に触れたりすることもあるわ。
それは、嫌じゃないのかしら?クロノス様が見せたのは、敵の皇帝に触れられたところだった。」
「アンジェラおかあさま。あれは嫌です。絶対に嫌。でも、ヴァシリス様だったら、嫌じゃなくて、きっと安心します。」
「それは、よかったわ。じゃあ、今、ヴァシリスがアリエルちゃんに触れたりするのと、同じように、他の男子に、触られたりしたら、どうかしら。」
「いっ、嫌です。絶対にいやです。耐えられないです。気持ち悪いのです。」
「今日の最後の光景で、アリエルちゃんが、チャンシアの皇帝に献上されたのは、あの男のものになるため。嫌と言っても、無理矢理に触れてくるのよ。」
「いやっ、いやです。絶対にいや、汚らわしいです。」
「アリエルちゃんの気持ちは、よくわかるわ。だって、私や、セレステやオランも、アリエルちゃんと、同じ気持ちよ。だから、大人の私たちは、死を選んだの。
王妃は、他国に奪われる前に死を選ぶと、決まっているの。
その決まりがなくても、私は陛下以外には、触られたくないわ。服を剥ぎ取られるくらいなら、生きていたくない。」
「アンジェラおかあさま。」
「私もそうよ。アリエッタ。巫女も、他の国に奪われてはならないの。だから、マースは、私を手にかけてくれたのよ。あなたのお父様と婚姻した時から、陛下の身に死がおとずれるか、巫女がさらわれかけたら、助ける術がない時は、マースが巫女の命を終わらせる。それは決められた約束だった。
オランもそうなの。ガブリエル家の女性は、他国に奪われてはならない決まりなの。だから、最愛のユリシーズの手で、二人の人生を終わらせた。
だから、クロノス様が見せてくれた光景は、ご神託がなかったら、私たちに起きていた事で、間違いはないわ。
アリエッタ、大切に思う方だからこそ、抱きしめられて安心できるし、幸せなのよ。それはわかってね。」
「お母様、わかっています。よくわかりました。あの光景、、私は、ヴァシリス様から離れて、知らない人に付いて行ったから、さらわれたのですね。」
「そうよ、アリエッタ、あなたは、迂闊だったわ。これから、巫女教育で色々と教えていくから安心しなさい。
だから、今日は、ヴァシリス様が、あなたを離さずに、ダンスを2回踊ったでしょう?」
「あっ、」
「あなたは幼いから、まだ、自分で自分の始末をつけられない。まだ自分から死を選ぶ年齢ではないから、それでいいのよ。
だから、ヴァシリス様が、刺されてあなたを守ってくれた。そして、アンジェラとオランが、あなたの代わりに、、さらわれてくれたの。」
「わたし、何ということを、、」
「アリエルちゃん、私もオランも、敵の手に渡る時は、死を覚悟しているし、今日も覚悟はできていたわ。もし、救助が間に合わない時は、オランと差し違えて死ぬつもりだった。でも、それは最後の手段。
ヴァシリスがね、陛下やユリシーズが、万が一、間に合わない時のために、潜水艦から脱出できる小さな爆弾を作ってくれていた。最後の最後まで、生きることをあきらめないでって。あの子は、そう言う子なのよ。」
「今日は、みんなが身を投げ出して、アリエッタ、あなたを守ってくれたのよ。一番苦しい思いをしたのは、だれかしら。」
「 、、ヴァシリスさま、、です。」
「わかっていて、即死の毒を受けた。解毒緩和薬も、完全ではなく、緩和するだけとしか、わからなかった。アリエッタのヒーリングが確実に癒せるかも、わからなかったのよ。
でも、ヴァシリス様は、あなたのヒーリングを信じた。この国を守る王子が、あなたのために。
アリエッタ、そのヴァシリス様に、人を消しすぎた、と言ったのよね。私は、ご神託で見たのよ。」
「お母様、、ごめんなさい、わたし、何もわかってなくて、、ごめんなさい、、」
それから、二人の母達は、アリエッタに、女性が見ず知らずの男のものにされる、と言う意味を、理解できる内容で、次々と教えていった。
力のない女性の拒絶など、全く役に立たない事、どんなに嫌な事があっても、死ぬことさえできない世界がある事、それが生き地獄である意味も、まだ幼いアリエッタにとって、意味がわからない事も含めて、何歳になろうと、女性として、身を守る大切さが、叩き込まれた。
アリエッタは嫌悪感から、全身の震えが止まらなかった。
「アリエルちゃん、恐いお話しばかりだったけれど、大丈夫かしら?」
「だ、だいじょうぶじゃ、ない、です。アンジェラおかあさま。私、自分の身を守れるでしょうか。」
「アリエルちゃんなら、きっと出来るわ。だって、私もセレステもオランも、今まで生きてきたのだから、アリエルちゃんも、私たちの言いつけを、守っていれば、きっと大丈夫よ。」
「お母様は、私が、ヴァシリス様を責めたところを、見たのですよね?」
「ええ、ご神託でね。ヴァシリス様が、僕に触れられたくなかったら、離れろ、婚約も解消する、と、言ってたのも、見たわ。ヴァシリス様が辛そうだった。」
「わたし、ヴァシリス様に嫌われてしまったのですか?」
「アリエッタ、ヴァシリス様が、あなたの手を振り払った事、今まであったかしら?どちらかと言えば、アリエッタが、王宮でのマナーが悪かったり、ヴァシリス様に口ごたえしたり、その度に、ヴァシリス様は、堪えていたはずよ。さっきも、ヴァシリスさまは、あなたにわかってほしかったのよ。だから、あなたの頬に触れていたでしょう?顔を背けたのは、アリエッタの方よ。」
「………そう、でした。」
「アリエルちゃん、ヴァシリスは、王子だから、躾がとても厳しいなかで、育てられてるのよ。王子と言うのは、子供である前に、王家の者として、みんなのお手本になるように、なんでもできて当たり前、できなかったら許されないくらい、年齢以上のことを、小さな年齢から、叩き込まれているわ。我慢強く、、文句は言わず、与えられた役割は、必ず果たすわ。
近衛騎士団に入るのだって、普通は10歳以上だけど、8歳で入団。
騎士団の初陣は16歳から、優秀者で12歳。でもヴァシリスは、入団前の今日が初陣だった。
朝からずっと、平気な顔してるけど、不安で、苦しくて、たまらなかったと思うわよ。それでも、アリエルちゃんを守りたかったのよ。もちろん、アリエルちゃんも、5歳で、ヒーリングの初仕事だったから、あなたも、大変すぎた事は、みんながわかっているわ。2人とも、よく頑張ったのよ。」
「でも、わたし、ずっと守ってもらっていました。ヴァシリス様は、僕から手は離さないと、あんなに何回も、言われてたのに。わたし、わたし、、」
「アリエッタ。あなたは、どうしたいの?
ヴァシリス様は、明後日の朝、騎士団に入団される。あなたは、ミカエラード家に一回、連れて帰るから、ヴァシリス様と一緒にいられるのは、あと2日もないわよ。」
「お母様、ヴァシリスさまに、会いたい。」
「会いたいだけでは、会わせられないわ。いくら巫女とは言え、命がけで守って下さった、ヴァシリス王子殿下に、たてついたのよ。」
「セレステ、そこまで言わなくても。」
「アンジェラ、アリエッタは、ヴァシリス様に甘え過ぎだわ。」
「まあ、それはヴァシリスが甘やかしてたわけだし。ヴァシリスは、アリエルちゃんしか、みてないから。うふふ。」
「アンジェラまで。アリエッタを甘やかしてはダメよ。」
「わかったわ。これからは、厳しくするわ、ちょっとだけね。」
「アリエッタ。あなたは、よくわかってないかもしれないけれど、ヴァシリス様は、このシーシェルで、4番目に位が高い男性なのよ。
誰もが、いつでも気軽に声をかけておしゃべりできる方ではない、と言う事を肝に命じなさい。ヴァシリス様のご寵愛に甘んじて、自分磨きを怠るなど、母が許しませんよ。」
「お母様、ごちょうあいって、なんですか?」
「はあ、そこから説明が必要なのね。
誰よりも何よりも特別に大切に愛してもらえる、と言う意味よ。それに相応しい女性になりなさい。」
「お母様、わかりました。」
「わかりました、じゃなくて、承知いたしました、でしょう?」
「はい。」
「私もオランも、ガブリエル家で、厳しく育てられたから、あなただけが、お転婆なんて、恥ずかしいです。オランが甘やかしているとは思えないから、アリエッタ、あなたが、言う事を聞いてないのよね。
もう一度、言うわよ。
ヴァシリス様は、シーシェル王国の王子、ヴァシリス王子殿下。
万が一、そんな事はないけれど、ラングドン王太子殿下に何かあって、パトリック王子殿下に何かあれば、ヴァシリス様が、国王陛下になるくらいの方なの。
ヴァシリス様は、お妃候補には、全くもって、困らない。婚約解消されたら、あなたが、一生、ひとりぼっちで生きるだけの事よ。
わかっているの?」
「お母様、、ヴァシリス様に、それぞれが政略結婚になったら、地獄の苦しみになると、言われた事がありました。」
「ヴァシリス様は、ちゃんと説明してくださっているでしょう。
で、アリエッタ、どうしたいの?どうなりたいのかしら?」
「お母様、たくさん、ごめんなさい。
私、ヴァシリス様が大切です。ヴァシリス様以外の男性は、死んでも嫌です。一緒に生きていたいから、色々、努力して、ヴァシリス様に相応しい女性になりたいです。
自分の身を守る努力も、いたします。だから、ヴァシリス様に会わせてください。お願いします。」
「アリエッタ、では、ヴァシリス殿下のお母様でいらっしゃる、アンジェラ王妃様に、きちんとお願いしなさいっ。」
「アンジェラ王妃さま。一生懸命に努力いたします。どうかヴァシリス殿下に、会わせてくださいませ。」
「わかりました。アリエルちゃん。では、まず、お着替えをしましょう。セレステ、準備を。
もう寝る時間を過ぎてるから、寝着でいいわ。可愛くしてあげましょう。さっき着ていた寝着の色違いがあるから、それにしましょう。」
「あの、、ヴァシリス様色のが、着たいです。お願いします。」
侵略戦争の後遺症を抜け出せるのでしょうか。
読んでいただき、ありがとうございます。




