第5章 王太子祝賀の儀
第5章が始まります。
ヴァシリス、アリエッタ、それぞれの世界が広がっていきます。
いよいよ、この日が来た。
ラングドン兄上が王太子に任じられ、三王子の婚約者が発表される。
僕とアリエッタは、昨夜、ポセイダルゴ様から教えてもらった解毒薬を飲み、死ぬような苦しみにのたうちまわり、そのまま眠ってしまった。
とにかくよく眠った。
打ち合わせも全て昨日までに終わっていたし、
今日は平然と装って、祝賀の儀に参加するだけだった。
僕の王子の正装は、母上が着付けてくださった。
騎士服に似ているが、王族の男子にしか着る事ができない純白の正装だ。
「さっ、ヴァシリス、今日は、本物の王子様になりましょうね。あなたの初めての正装。母は、どれだけ夢みたことか。」
上着の襟が高い。肩章は王子とわかるものだ。
大人になっていくみたいだ。
襟から前たての縁取りも金で、金ボタンにはシーシェル王室の紋章が精密に刻まれている。
ズボンには、金のモールラインが縫い付けられている。
母上が、最後に、ブルーのサシェを斜めにかけてくださった。
これは、王族位と貴族位の高さを分かりやすくするために、サシェに勲章がついていたり、ラインの数がそれぞれの立場で異なる。
僕は国の一番上から、4番目だそうだ。
「いい男だこと、ウフッ。」
母上が笑って、抱きしめてくれる。
「よくここまで、無事に育ってくれて、ありがとう。ヴァシリス。」
「母上っ、昨日も死にかけましたし、今日も死にかけますが、生きかえるので、ご安心を。」
「やあね、ヴァシリスったら。」
「母上、父上と共に、必ず、お守りします。
あの、これを、、、」
僕は小さな真珠を一粒、渡した。
「ポセイドンの加護があります。持っていてください。どうしても危なくなったら、これをドレスの上からでも構わないので、どうしたいかを願って、真珠を掴んでください。潜水艦を一艦、破壊するパワーはあります。母上には危害はありません。その、あの、父上への愛を守るときは、飲み込んでください。醜い男共から、身を守れます。
海神の庭で探した真珠に加護をかけました。」
「ヴァシリス、あなた。私のために。ありがとう。」
「母上は、絶対に失ってはならない方だから。 オランにも同じものを渡します。二人で時間差攻撃するのもできます。お二人が、海にさえ出てくだされば、必ず助けますから。。」
「ヴァシリス、ありがとう。あなたも死んではダメよ。」
「坊っちゃま、姫様の準備が出来ました。」
オランの声に、振り向いた。
少し、大人の少女になったアリエッタが、恥ずかしそうに、立っていた。
僕の瞳色の正装のドレスは、昼の正装、未婚女性のためのもの。肌の露出は一切なしで、首元までレースで覆われて、袖は手首までレース、そしてレースの手袋。
深い緑の髪は、編み込みをして、真珠の髪飾りをつけ、後ろに下ろしている。未婚の間は、髪はアップにはしない。
ウエストの高い位置で、金と白のリボンの帯が、後ろで可愛く結ばれている。
「綺麗だ、アリエッタ。」
僕は思わず、歩み寄って、アリエッタの頬を撫でてしまった。
「ヴァ、ヴァシリスさま、、、あの、、」
アリエッタが、珍しくふらついた。
「アリエッタ、大丈夫か。オラン、ドレスがきついのではないのか?」
母上とオランが笑いを堪えている。
「ヴァシリス、あなたがカッコよすぎて、アリエルちゃん、失神しそうよ。」
「まさかっ、なあ、アリエッタ、そんなことないよな。」
と、アリエッタの顔を覗き込んだら、顔が真っ赤で、下を向いてしまった。
「ヴァ、ヴァシリスさま。ダメ、です。私、しっしん、しそうです。物語の、お、王子さまみたいで、かっ、かっこよくて、りっ凛々しくて。」
アリエッタの肩も手も震えている。
「アリエッタ、僕の巫女、僕の婚約者、知らなかったのか、僕は、昔から王子だよ。第三王子だけど、、アリエッタは、王子と婚約して、15年後に、お妃様になるって、ずっと言ってきただろう。知らなかったのか?」
「しっ、知っていましたが、でも、こんな素敵な姿、見たことないです。」
モジモジしてるのが、可愛い。
ちょっと意地悪したくなり、もう一度、頬をなでてみた。
また赤くなっていく。
もう一度、頬を撫でたら、気を失いそうだから、やめといた方が良さそうだ。
「アリエッタ、
今日は、ラングドン兄上の王太子の儀があり、ラングドン兄上とパトリック兄上と僕の婚約発表がある。そのあと、アリエッタとお披露目のダンスをして、ぼくは殺されるから、アリエッタが助けてくれないと、と言うのは、覚えてるかな?」
「あっ、そうでした。私たち、死にかけるんでした。失神は今日はダメでした。」
アリエッタの立ち直りは、早かった。
「頑張って、生き返ろうな。」
「はいっ!ヴァシリスさまっ。」
「アリエッタ、今日のお守りだ。婚約の印の首飾り。絶対に外してはいけないよ。つけるから、髪をあげて。」
僕は、コバルトブルーの石と真珠が交互に連なっている首飾りを、アリエッタの首につけて、首飾りごとドレスの中に入れた。
「アリエッタ、左手を出して。」
アリエッタの左手首にも、同じコバルトブルーの貴石と真珠のブレスレットをつけて、レースの手袋の中に隠した。
それから、オランにも、母上に渡したのと同じ真珠を渡した。
「ユリシーズが助けに行くまでに、危なくなったら、使ってほしい、オラン、必ず助けに行くから。母上と一緒に無事に帰ってきて。」
オランが僕を抱きしめてくれた。
「坊っちゃまも、必ずご無事で。姫さまをお願いします。」
父上から、母上が乗る馬車がまわされてきた。
国王専用馬車は、朱色で、金色の王家の紋章がついている。馬車には、父上と母上がのり、アランと親衛隊の警護がついて、王宮に出発した。
僕は、ユリシーズと第三騎士団の警護で、母上の真っ白の馬車に、アリエッタとオランを乗せ、僕はアレックスで、馬車に並走して、王宮に向かった。
王宮のエントランスには、たくさんの貴族の馬車が停められていた。すでに、ほとんどの貴族が集まっているようだ。
王家のエントランスは、別の場所にあり、緊急時にすぐに出せるように、工夫されている。
僕は、刺された後、控室に運ばれる事になっていて、その近くにアレックスと、ユリシーズの馬を隠してもらう事になっていた。
そして、万が一のために、キロンを自由に離してもらった。キロンはどこにいても、僕の口笛や声で駆けつけてくる。
アリエッタと王家のエントランスに入ると、ミカエラード公爵とセレステ夫人が、アリエッタを迎えにきてくれていた。
兄上たちも、ほぼ同時に到着していた。お相手は、それぞれご家族と一緒にいるらしい。
兄上と僕は、同じ純白の王子の正装だ。ブルーのサシェについている勲章の数が違うのは、王位継承権の順位が違うからだ。3人とも雰囲気や性格は違うけど、兄上たちは、とてもカッコいい。
ラングドン兄上は、物語に出てくるような、正統派だ。金髪に紺碧の瞳。上品な物腰だが、落ち着いていて聡明さがわかる顔立ち。剣の腕前も、アランに鍛えられきたので凄いらしい。背も高い。しなやかな身体付きだけど、結構な筋肉がついている。東宮の浴室で一緒になることがあるから、僕は知っている。
これでは、御令嬢が群がるのもわかる。
パトリック兄上は、山々を駆け巡っているので、筋肉質で、日焼けしている。濃いめの金髪に瞳がダークブラウンで、その強い雰囲気が、乙女心を惹きつけるのだろう。背はラングドン兄上より高い。熊や猪や鹿を相手にヒーリングしているんだから、腕っぷしが強くなるのは当たり前だ。
2、3歳年上の御令嬢に人気があるそうだ。
兄上たちも、今日の襲撃は知っている。
兄上は、この後すぐに、王太子の剣を賜るので、今は帯刀していないが、パトリック兄上も僕も真剣を帯刀している。
それぞれに役割があり、
僕が殺されるところを邪魔しないよう、
母上とオランが拐われるところも、邪魔しないよう、
僕が刺された後の、大広間の閉鎖と、貴族達の拘束と尋問を任されているらしい。
父上が、僕達の顔を見て頷いた。
僕達も、父上に頷いた。
王太子祝賀の儀は、始まった。
「国王陛下、王妃のおな〜り。」
父上が母上をエスコートして、大広間に入っていく。大きな拍手が起きている。
「続いて、ラングドン第一王子、パトリック第二王子、ヴァシリス第三王子のおな〜り。」
僕達が順番に、大広間に入っていくと、御令嬢たちから、恐ろしいほど、黄色い声が上がっている。これは、アイドルだ。
それぞれにファンがいるのだろう。兄上たちが、面倒くさいと言ってた意味がわかった。
僕も、パトリック兄様から、少し遅れて、足を進めていると、何か起きたのかと思うほど、黄色い声が上がった。
「ヴァシリス様よっ、なかなかお顔を出してくださらなかったけれど、あれがヴァシリスさまよ。」
「きゃーーっ、ヴァシリスさまだわ」
「銀髪にコバルトブルーの瞳、本当だったのね。」
「8歳って本当なの?ラングドン様と変わらないくらい背が高いわ。」
「胸板が厚くていらっしゃるわ、あぁっ、あの胸に抱きしめられたいわ。はあっ、すてき。」
「ヴァシリス様、全てが、素敵だわ。」と声が上がってくる。
先に父上は王座に腰掛けている。王妃座に座った母上が、チラッと僕を見て、片眉を上げて小さくニヤリとしている。
ああ、面倒だ。これから殺されるのに、きゃーきゃー言うな。
僕は、イラッときて、非常に冷たい視線をうるさい方向に投げた。
「あぁ、あの冷ややかな視線、見つめられたいわっ。」
「あの、コバルトブルーの瞳、なんて美しいのでしょう。」
「どのような女性に笑いかけてくださるのかしら。」
先に入場して座っている兄上たちが、ニヤニヤ笑いを堪えている。僕は、家庭教師任せで、プレップスクールにも、ほとんど行ってなかったから、この黄色い声の洗礼は、今日が初めてだった。兄上たちは、毎日、大変だったんだ。
僕が最後に椅子にかけると、お触れがでた。
「王太子の儀を執り行う。」
国王から、ラングドン兄上を王太子とし、王位継承の為の準備が始まる事、これから、少しずつ王の補佐をし、成人する18歳から、国務に就く事、同時に婚姻することが、発表された。
ラングドン兄上に、代々続く《王太子の剣》が、王から、下賜された。
兄上は、恭しく、剣を受け取り、腰の革の剣ホルダーに刺した。
大きな拍手と祝福があった。3人も王子がいると、色々、後々、ややこしくなる。早く時期王が決まるのは、貴族達も、先が見やすくなるのだろう。
次にパトリック兄上が、王宮教育部の試験に合格し、2年早く入学することが伝えられ、森林保護ヒーラーとして、陸の守りと発展を担当する事、18歳で婚姻することが、発表された。
結構、ざわめきが大きかった。兄上が早くアカデミーに入学すると、同時期に入学する御令嬢たちは、妃候補になりたいし、その親達は躍起になる。2年早くなるだけで、状況はかなり変わるのだ。
そして、最後に僕が、王立アカデミーの入学までに、海洋生物ヒーラーの力を活かすために、海洋軍に設立される海洋生物ヒーラー部隊に参加すること、同時に近衛騎士団に入団することが発表された。
かなりのどよめきがあり、王子が騎士団と軍に入ることが、これほど驚くべき事なのだと、改めて知った。特に軍閥関係者は、誰が軍のトップになるかで、未来が変わる。軍の指揮権が、ラングドン兄上やパトリック兄上でなく僕になることに気がついた貴族たちが、どう考えるかはそれぞれだけど。
お触れ係が「静粛に静粛に」と声を張り上げている。
そして、ここからが、父上の独壇場になる。
「皆のもの、本日は、王太子をはじめ、我が息子たちの未来のために、よくぞ集まってくれた。また、多くの祝福に感謝する。
そこで、もう一つ発表がある。
我が息子たちは、年齢が非常に近い。
先々、お妃候補者の選別で国の混乱を避けるため、シーシェルの未来を確固たるものにするために、王子たちの妃候補、つまり婚約者が王妃によって内定した。」
大広間は、蜂の巣を突いたように、大騒ぎになった。
ラングドン王子様の婚約者のことか?
いや、王子たちと聞こえた、ではパトリック様もか。では、決まってないのは、ヴァシリス様だけなのか?王家と姻戚を結べなくなるではないか、という声が、あちこちからする。こんなに、ヒソヒソ話って聞こえてくるものなのか。
僕たちは、広間の一番奥の一段高い場所にいる。見晴らしもいいし、声が反響して聞こえるのか?いや、反響するように、作られているのか。
大魔王・父上が、笑顔でみんなを見渡している。
父上、やる事が、やっぱりエグい。貴族全てが翻弄されている。落ち着いているのは、お妃内定している3貴族家だけだ。
「皆、驚かせてすまない。
王子達の年齢を考えると、3人が同時期に王立アカデミーに在籍することになり、同じ御令嬢に白羽の矢が立つのも問題である。将来のために、しっかりと学んでもらいたいので、先に妃内定者を決めた。
よって、王立アカデミーでは、勉学に励み、国政に関わる秀でた者を見つけ、王太子、王子を補佐する側近を選ぶ場としたい。子息、子女の皆も、学問に励んでほしい。」
要するに、王子を追っかけずに、勉強しろと言うことだ。
希望がなくなった訳じゃないからねー。
特に男子は、王子と女子を取り合いすることはなくなるし、優秀な者は国政に関わり、女子も側近になれる。
「では、アンジェラ王妃より、妃内定者を発表する。」
母上が、立ち上がった。
これから、誘拐されるなんて、微塵も思わせない、堂々とした美しさがあった。
「皆さま、後宮での、妃内定には、シーシェルの伝統により、選考会を行いました。
それぞれのご両親の王国へのご尽力、特級ヒーラーとしての能力、王家の一員となる覚悟、国の民への博愛、この全てに合格した御令嬢ばかりです。そして大切な事ですが、最終的には、王子たちの希望を踏まえて、決定いたしました。
婚姻まで、後宮にて、必要な妃教育を行い、王国の為に、励んでいただく事を期待いたします。
では、シーシェルに幸せをもたらす妃内定者を発表いたします。
王子は、お妃内定者をエスコートして、こちらにお連れくださいね。」
みんな息をのんでいる。派閥や、姻戚関係やら関わりがあるかどうかで、次の治世での立ち位置が変わる。
ラングドン兄上が椅子から立ち上がった。
「ラングドン王太子、妃内定者は、セレスティーナ・サン・ウリエル公爵令嬢」
すごいどよめきだ。がっくりくる親や御令嬢。
ウリエル公爵家の軍閥関係者の喜び様は、すごかった。
ラングドン兄上が、ひな壇を降りて、親衛隊隊長のアランに近づいて、挨拶をする。
ウリエル公爵家は、ミカエラード公爵家と並ぶ筆頭公爵家だ。
王家に近い場所に、席がある。
紺碧のドレスを着た御令嬢がいる。兄上の瞳色だ。
そして、セレスティーナに跪いた。
「愛しのセレスティーナ、このシーシェル王国の更なる繁栄に尽力し、民が幸せに生きられる国を守る王になりたい。未熟な私を支え、共に生きる伴侶となってほしい。」
「ラングドン王太子殿下。国と民に誠心誠意仕え、ラングドンさまがお健やかでいてくださるよう、心を込めて、お支えいたします。」
セレスティーナが兄上の手をとった。
すでに恋レースから脱落した御令嬢たちは、放心状態か、涙を流している。
なんか、これって、ちょっとキツイな。国中の女性から選ばれるのは、唯一、一人だけだ。
ラングドン兄上が、セレスティーナをエスコートして、王家の席に戻ってきた。
母上がパトリック兄上に頷いた。パトリック兄上が立ち上がる。
「パトリック第二王子、妃内定者は、ソニア・マウニー辺境伯爵令嬢」
更にざわめきが大きくなった。あんな田舎者、とか、第二王子に辺境伯か、と揶揄う声が聞こえる。侯爵や伯爵は、納得がいかないかもしれない。王家は誰も反対しなかったのに。
パトリック兄上が、マウニー辺境伯爵の一族の席まで、脇目もふらず、大股でどんどん歩く。
彼女しか見えない、と言う気持ちの歩き方が、かっこいい。兄上、すごいな。
ダークブラウンを基調としたドレスを着た御令嬢がいる。あの女性がきっとソニアだ。
マウニー辺境伯爵に、一礼して、
ソニアの前に跪いた。
「僕の心を励ましてくれる大切なソニア、僕は、森や山の中ばかりにいるけれど、王国のために、陸の環境と生き物を守って、ともに生きて行きたい。いつも僕のそばにいてくれないか。」
「パトリックさま、命をかけて、お気持ちに添い、陸地とそこに生きるものを守るために、共に生きてまいります。どうか、お側にいさせてくださいませ。」
ソニアがパトリック兄上の手を取った。
辺境伯爵家は、国の端の守りを固める重要な一族だ。
王家が、辺境の地の大切さを理解している事に、一族のみなは、パトリック兄上に跪いていた。
他の辺境地帯を守る貴族からも、温かい拍手が起きていた。国は王都だけではない。全ての領地と領海が国なのだ。
兄上は、周りの揶揄いから、ソニアを守る様にエスコートして、王家の席まで戻ってきた。
次は僕。ちょっと緊張してきた。
でもみんなは、これで終わりだと思っているようだった。僕はまだ幼い。ラングドン兄上とは5歳違いだから、貴族達は、僕を除外していたのかもしれない。
大広間が、少し静かになったところで、母上が、僕を見た。
僕は立ち上がった。
パトリック兄上の時より、大きなどよめきが、みんなに広がっていく。なぜだ、まだヴァシリス第三王子は8歳だろう。しかし、近衛騎士団に入るとか、王家は何を考えているのだ。ヒソヒソ話しが聞こえてくる。
「ヴァシリス第三王子、妃内定者は、アリエッタ・アン・ミカエラード公爵令嬢。」
どうしてなんだっ、という声まで聞こえてきた。第三王子が、ミカエラード公爵家と繋がるのか。第二王子よりも、高位の公爵家、どうなっている。と、聞こえているぞ。君たち、丸聞こえだよ。
ミカエラード公爵家の姻戚や、神殿警護隊の一族、騎士団や海洋軍に属する貴族から、喜びの声が上がっている。
これで三王子全てが、国を守る一族を選んだ事がわかっただろう。
僕は、ウリエル公爵家の隣に席がある、ミカエラード公爵家一族の席に向かい、ミカエラード公爵に挨拶をした。ミカエラード公爵とセレステが、にっこり笑ってくれている。
僕は、コバルトブルーのドレスのアリエッタの前に跪いた。また黄色い声とため息が上がっている。
それに気づかぬふりをして、アリエッタの瞳を見つめ、手を差し出した。
「僕の全てであるアリエッタ。僕はまだ幼く未熟だ。でも必ず強くなる、アリエッタを生涯守り続けるために、必ず強くなる。だから、兄上たちが築かれるこの国のために、僕と共に生きて、共に全ての海を守ってほしい。生涯、離さないと誓う。」
アリエッタが、目をうるうるさせている。
そして、一歩踏み出した。
「大切な、大切なヴァシリスさま。ヴァシリスさまが、きけんに向かわれるなら、私も一緒にきけんに向かいます。私も幼く未熟です。海を守れるよう強くなれるように、努力いたします。生涯をヴァシリス様の瞳の中で生きられますように。」
アリエッタは、僕が差し出した手に、可愛い手を重ねた。その手の甲に、そっと唇をつけた。
アリエッタの大きな目から、真珠の涙が溢れる。
僕は、立ち上がって、その涙を指でぬぐった。
周りの御令嬢から、大広間全部から、ものすごいため息が漏れている。
ため息の中、アリエッタをエスコートして、王家の席まで戻った。
母上を見るとウインクしている。
父上は、片眉を上げて、笑っていた。
さあ、次はお披露目のダンスだ。
国も、みんなも、生き方も、変化していきます。
読んでいただき、ありがとうございます。




