第4章 新しい天海の剣
高評価をつけて下さった方、ありがとうございます。励みになっております。
色々な愛や幸せ、平和を願って、苦しみを癒せるお話しになるように、書いてまいります。
どうか、読み続けていただければ、嬉しいです。
《これ、ヴァシリス、アリエッタ、目覚めよ。》
誰かに呼ばれて、目が覚めた。
僕は、剣を右手に、アリエッタを左手に抱えて、倒れていた。
「クロノス様」
《よく頑張った。そなたらは、我とポセイドンの全ての力を受け取ったぞ。剣を正しくつかい、国を守り、海を守ってくれ。ポセイダルゴから授かったものは、ポセイドンのパワーになり、引き継がれるので、失うものはない。》
「クロノス様、ありがたきお力を賜り、この身をもって、守っていきます。」
《話を聞いていたと思うが、浮名を流していたのはゼウスだ。
ポセイドンが1000年想い続けた想い人は、シーシェルの姫であった。今は冥界にいる。女神として天界に戻して、ポセイドンの妻になる。
シーシェルの巫女の始まりの女人だ。アリエッタと会える機会もあるだろう。アリエッタにも、伝えてやってほしい。
アリエッタは、しばらく目を覚まさぬであろうが、この剣を授けた事で、アリエッタは其方の巫女となった。互いの愛を信じて生きよ。》
「クロノス様、たくさん、ありがとうございました。」
《ヴァシリスよ、困った時は、祈れ。そなたらの祈りは必ず届く。我ら神は、人間から、願ってくれないと動けぬ。神殿でなくても、いつでも、どこでも、願って祈れ。さすれば、叶えてやれる。神殿ならば、こうやって姿も表せるがな。
ポセイダルゴに会う時に、海が必要なように、天界にいる神は、神殿が降りやすいのだ。》
「今日の日を大切に前に進みます。」
《では行け、ヴァシリス。天と海の息子よ》
クロノス様が天に帰られると、神殿の輝きが消えて、神殿は、真っ白になった。
神殿を見渡すと、マース殿とセレステが、壁に寄りかかっていた。
「マース殿、セレステ、大丈夫か。」
「ヴァシリス殿下、選ばれた王子よ。」
セレステが泣いていた。
マースとセレステが、僕に跪いた。
「とても大ごとになってしまったが、巫女を得た。神事はこれで良かったのだろうか。」
「はい、殿下。クロノス様の降臨で、殿下はこれまでの王を超えた、天海の庇護を授かりました。そして、シーシェルの巫女の始まりを知りました。アリエッタの全てを殿下に託します。どうか、お願いいたします。」
「生涯をかけて、大切にする。
マース殿、アリエッタはエネルギーを使い果たした。しばらく休ませたい。」
「では、神殿から出ましょう。アリエッタは私が。」
「マース殿、頼む。」
僕は、アリエッタをマース殿に渡し、剣を持ち、神殿を出た。
ひとまず、アラン達のいる場所に戻った。
アランに、どのくらい神殿に入っていたか、聞くと、30分もかかってないと、言われたが、僕的には、数時間いたくらい、色々とあった。
アリエッタが休んでいる間に、マース殿と、色々と話した。
「マース殿、アリエッタが生まれてから、ずっと私が独り占めをしてきて、申し訳ないと思っている。」
「殿下、生まれた時が、ご神託でしたから、こればかりは、、それにアリエッタは、殿下のお側が一番安全で、幸せなはず。セレステと結婚した時から、覚悟はしておりましたから、お気になさらずに。」
「大切にするゆえ、、」
「わかっております。殿下のご年齢では、ままならぬことばかりでしょう。
私がセレステを妻に決めた時は16の時。成人まであと2年でしたから、結婚が身近でした。
しかしながら、殿下と娘は、まだ先が長い。
この一週間でさえ、一日に起きる事が多すぎて、国政に関わる私たちでさえ、翻弄されているのですから、どうか、焦らずに、ゆっくりお進みください。及ばずながら、全力で、お支えいたします。」
「ありがとう、マース殿。私は自分の未熟さが悔しくて、ならない。」
「殿下、今でもご立派です。10年後、15年後には、更に勇敢で立派な、国を守るお方になられます。一歩ずつで、良いのです。
あのお転婆を、淑女にする方が、大変かもしれません。殿下が、騎士の称号を得られるまでに、セレステと私で、しっかり教育いたします。」
「マース殿。私は、アリエッタは、あのままでも、構わないと思っている。王妃になるわけではないし、海洋ヒーラーとして、海では前線に出ることになる。
アリエッタらしくあれば、、、まあ、せめて王宮内でのマナーさえできていれば良いので、よろしく頼む。」
「殿下、ありがたきお言葉。」
「ヴァシリスさまっ。」
アリエッタが、来た時のドレスに着替えて、走ってきた。
「アリエッタ、目覚めたのか?身体はどうだ。大丈夫か。」
「ヴァシリス様は、大丈夫なのですね。」
僕の体をあちこち触って、灰でない事を確かめているようだ。
また、目がウルウルしている。
「アリエッタ、泣くな。そなたの力添えで、完璧な剣を授かった。安心してよいのだ。」
アリエッタが、僕の前で、立ち尽くして、ウォンウォンと、泣き出してしまった。
こうなると、手がつけられない。けたたましい泣き方は、幼児の泣き方だ。
マース殿やセレステが宥めても手を振り払ってしまう。
アリエッタの父君の前で、困ったが仕方ない。
「マース殿、失礼する。」
マース殿が、気にするなと言う表情をしてくれた。
アリエッタの手を取り、引き寄せた。
アリエッタは、僕の膝の上に、ちょこんと座って、僕の胸に顔をうずめて、泣きじゃくっている。
「もう、灰に、、ならないで、、ください。先に消えないでください、」
アリエッタの背中を撫でながら言った。
「アリエッタ、そなたも私も生きているではないか。もう死なないから、大丈夫だ。クロノス様も約束してくださった。
そなたは僕の巫女だ。そしていずれ妻になる。
生涯、離れる事はない。
強くなると、誓ったであろう。」
アリエッタが、突然、泣き止んだ。
「そうですっ。強くならねばっ。ヴァシリスさま、帰りましょう。」
マース殿が、笑いを堪えて言った。
「殿下には、重荷を背負っていただいており、父親として、申し訳ない限りです。
アリエッタも落ち着きましたので、王宮に戻られますか。私とセレステは、陛下に、神殿での一部始終を報告しなくてはなりません。
明日も大変な一日になりそうなので。少し休まれた方が、よろしいかと。」
「では、マース殿、明日も、、、」
明日の襲撃は口にはできない。お互いに頷いて、ミカエラード家を出た。
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月の宮に戻ると、父上が母上の書斎にいた。
「ヴァシリス、早い帰りだな?もっとかかるかと。」
実際に、月の宮を出てから、戻ってくるまで、2時間もかかってないようだ
父上が、書斎に入れと、目で言っている。
アリエッタを、オランに渡して、書斎に入る。
元から人払いがされていたようで、父上と母上と僕だけになり、扉が閉められた。
「間違いなかったか。」
「はい。あとからマース殿とセレステが、報告に来るとの事ですが、クロノス様が、僕の巫女だと。」
「クロノス様?クロノスは、神話の最高位、ゼウスの父であったはず。ゼウスではないのか?
ヴァシリス、なぜ、そんなにげっそりしている。何があった。」
「僕は、ゼウスに殺されかけました。ポセイドンとゼウスが喧嘩になって、僕とアリエッタが、ゼウスを消しかけて、クロノスが、降臨して。」
「ポセイダルゴではなく、ポセイドンだと?ポセイドンはポセイダルゴの父だろう。」
僕は父上にかいつまんで話した後、父上は大きな大きなため息をついた。
「お前たち、1000年前のシーシェルの巫女の始まりの神話のとばっちりを受けたんだな。」
「たぶん、そうです。ゼウスは、1000年、謹慎になりました。」
「それで、巫女の剣のパワーは、クロノスとポセイドンから、授かったのか。」
「これが、巫女の剣です。」
「あまり変わらないように見えるが。」
「天神と、海神の剣ですから、、」と言って、鞘から抜くと、刀身が青い炎をまとい、パチパチっと金色の稲光りが走っている。
「うわっ、何だ、これ。」
僕は自分で驚いた。
「お前の剣だろう?ヴァシリス。使い方は、神々と相談するしかないぞ。」
「はい。。父上、あの、部屋に戻って、休みたいのですが。いいでしょうか。」
「ヴァシリス、疲れた顔をしているわ。大変だったのね。あとは、マースとセレステから詳しく聞くから、少し休みなさい。
ヴァシリス、抱きしめていい?」
僕は母上に、優しく抱きしめられて、頭を撫でてもらった。
「ヴァシリス、よく頑張ったわ。自分に誇りを持ちなさい、いいわね。頑張らなくていいのよ。あなたは最強なのだから。」
「母上、ありがとうございます。
では、父上、失礼します。」
部屋に戻ると、アリエッタが、クジラのぬいぐるみに抱きついて、爆睡していた。
「坊っちゃま、少し、湯浴みなさいますか?その方がよく眠れます。
疲労を回復する薬海藻を、ユリシーズから預かってきたので、それもお飲みください。姫さまにも、飲ませました。」
「ありがとう、オラン、湯浴みの後でいただく。今日は炎に焼かれて死にかけた。」
「坊っちゃま、明日は毒で、死にかけますよ。」
オラン、ナイスツッコミだ。
僕は、急に笑いが込み上げてきた。
そっか、明日は、本気で殺される予定だ。
「オラン、それで思い出した。今夜寝る前に、必ず解毒薬を飲まないと。もし眠っていたら、必ず起こしてもらいたい。」
「必ず起こします。では、湯浴みを。」
僕は、大きい方の浴室に行った。
湯が湧き出て、気持ち良かった。
アリエッタが僕の巫女になる話しより、神々の兄弟喧嘩や、シーシェルの巫女物語の当事者が、ポセイドン様だった事にも、驚き、という以上の驚愕の事実に、人生とは何だと、考えはじめていた。ゼウス様が、僕とアリエッタの絆に意地悪(あれは絶対に意地悪だ)したのも、結局は、恋や愛が絡んでいた。
だから、シーシェルの姫と海神の恋、それが、僕達に置き換えられているのに、気がついた。だから、僕達は結婚する運命になった。
神様は、人間を一瞬で灰にできる、それも知った。じゃあ、あの剣も、一瞬で、人を灰にできるのか。何も残らないように、、、父上の言葉が、ズンっと胸にきた。
僕やアリエッタのヒーリングパワーは、ヒーリングと名前がつくように、癒しの力だ。
でも、実際には、癒しもできるが、消しもできる。
両刃の剣、、なんだ。巫女の剣も同じだ。
神殿でのアリエッタのパワーは、僕を遥かに超えるようなパワーだった。
でも、特級ヒーラーと、超特級ヒーラーでは、絶対的なパワー差がある。一般的には、2倍差と言われている。
アリエッタは、何故、あそこまで、パワーが出せた。
クロノス様が《愛》と言ってた。
僕とアリエッタの思いは、とめどないと言う事なのだろうか。
でも、僕も灰になりつつ、アリエッタの一粒の涙で、ほとんど残っていない身体の一部分から、ヒーリングパワーを出して、元に戻った。
あの時のパワーに、神のパワーはなかったと、クロノス様が言ってた。
湧き出る湯が、波の音に聞こえる。
浴槽に浸かっている右腕に腕輪が現れ、コバルトブルーに光っている。少し色が濃くなり、腕輪の中で波が立っている。
ポセイダルゴ様が、父ポセイドン様から、パワーを引き継がれたように感じた。
だめだ、ここで眠っては、明日に差し支える。
必死で目をあけて、浴室から出て、部屋に戻った。
アリエッタを見ると、まだクジラのぬいぐるみにくっついて、すやすやと眠っている。
オランが、ユリシーズ特製の薬海藻の液体を渡してくれた。
「オラン、すごく美味しい。」
「では、ゆっくりおやすみなさいませ。」
僕は、横になる前から、眠りに落ちた。
深い深い海に身を委ねていた。
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「陛下、以上が、本日、神殿で起きた全容です。」
「ヴァシリスからも、かいつまんで聞いたが、
これは人知を超えているな。」
「クロノスが、殿下と巫女に、このまま天界で神にならぬか、と言われた時は、困りました。」
「ゼウスの炎に、神々の兄弟喧嘩、それにあの剣は、人のものではない。
1000年前のシーシェルの姫とポセイドンの恋は、アリエッタとヴァシリスの愛で、成就するのか。ヴァシリスが海神のパワーを授かった意味もわかった。」
「クロノスは、人の愛、と、あの二人を見て、言いました。あれだけ、強い絆をもつ者はいないと思います。見た目には幼さが残っていますし、巫女に関しては、まだ幼児と少女の間ですが、ヒーリングに関しては、大人を超えて、人間離れしています。その巫女をコントロールできるのはヴァシリス王子だけというのも、よくわかりました。」
「国や陸を守るには、海を守らねばならない。
海は世界中に繋がり、陸の水も海に繋がる。
神々の力を使わなくては、守れないのだろうな。
このような自然を守らねばならぬ時代に、チャンシアのように、侵略戦争を起こすような国もあるわけだ。
マース、明日は頼んだぞ。パニエールは必ず消す。力を貸してくれ。」
「陛下、久々に暴れましょう。」
「そうだな、マースと共に戦うのは、久々だ。」
「明日の夜は、皆で、平和を祝いたい。」
チャンシアの襲撃は、すぐそこまで来ていた。
どこまでも、愛が紡がれていきます。
読んでいただき、ありがとうございます。




