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第4章 巫女の神殿 神の降臨

第4章も、いよいよ、クライマックスです。

扉が、ギギッ、ギギッと軋んでゆっくり開いていく。


僕はほとんどの力を使い果たしたような感じがして、扉の前に、膝をついて、荒い息をしていた。


「殿下、神殿が開きました。」

マース殿の声が驚きで、掠れている。


顔を上げると、金色に光り輝く神殿があった。


「殿下、立てますか?」


「大丈夫だ。ありがとう。マース殿。」


僕は立ち上がる前に、左手で右腕を押さえて、心の中で、海の父上に感謝の気持ちを送った。 


《海の父上、扉が開きました。感謝いたします。》

《感謝などよい。其方の力だ。自信を持て。》


立ち上がって、剣を鞘に収め、マース殿と共に神殿に足を踏み入れると、後ろで、金色の扉が勝手に閉まった。


「殿下、祭壇のところまで、お進みください。

巫女が待っております。」


前の祭壇を見ると、セレステに付き添われた、アリエッタが、祭壇に跪いていた。

2人とも、神話に出てくる女神が纏うような、純白の緩やかな巫女の装束だった。


セレステが、僕にアリエッタの横に跪くように、身分りで伝えてきた。


僕は、祭壇前に、巫女の剣を捧げ置き、アリエッタの隣に跪いた。


セレステが少し後ろに下がり、マースと並んで控える。


祭壇が、光り出した。金か白かわからない程、輝いている。すごい声が聞こえてきた。

心臓をわしづかみにするような声だ。


《マースと巫女セレステの娘、アリエッタよ。そなたは、巫女の宿命を受け入れ、愛に命を捧げると誓うか。》


「神様、誓います。」


《エドワードとアンジェラの息子、ポセイダルゴの海の庇護を受けるヴァシリスよ、そなたは、巫女を得たいか。》


「叶えられるならば、願います。」


《何故、得たい。》


「巫女の宿命を共に受け入れ、愛し、この国と、世界の海を守り、そこにある全ての命の幸を願い、大切にしたいのです。」


《その言葉に偽りはないか。》


「はっ。偽りはございません。」


《では、証明せよ。》


へっ?

証明って。どうするんだ。


「神様、お言葉ですが、どのように証をお見せすれば、良いのでしょうか。」


《そなたのパワーを、全て神に捧げ、一度、命を捧げよ。》


「神様、お待ちください。ヴァシリスさまは、私を大切にしてくださっています。これ以上、証が必要なのですか。」


アリエッタが口をだした。

まさか、アリエッタが僕を庇うとは思わなかった。


《巫女は口を出すでない。

このヴァシリスは、そなたと光の調和をした。

ヒーラーとしてだけではなく、巫女を得、更にそなたを妻としようとしているのだ。生半可な証では証にならぬ。》


僕が勝手にアリエッタをさらっていくような、何かちょっと悪意があるような気がした。


「神様、光の調和は、神様のご意思ではなかったのですか?」


《我が意思である。》


「神様、不躾ながら、申し上げます。アリエッタと海洋ヒーラーとして共に生き、婚姻し、王にもならない事は、ご神託で知りましたが、これは神様のご意思ではなかったのでしょうか。」


《我が意志である。》


「では何故ゆえに。」


《我が意志を、受け入れる勇気と巫女への愛を試したい。》


ぐっっ。そう言うことが。神様が決めたけど、最終試験があったわけだ。


その時だった。

《ゼウスよ、そなた、いい加減にしないか。そんな事、ヴァシリスのこの8年を見ておれば、証になるだろう。其方が勝手に神託を出して、それを疑っているのは、馬鹿だ。》


《ポセイドン、巫女の管轄は我だ。》


《なら、アリエッの事だけ守ればよいに。

ヴァシリスは、我ら海の管轄だ。我が息子ポセイダルゴが決めた事だ。父である私も、認めておる。ヴァシリスについては、口を出すな。》


《ポセイドン、息子可愛さに、人間のヴァシリスに、神の力を授けたではないか。》


《ゼウス、勝手な事を言うな。其方こそ、何百年も人間に巫女の力を与えているではないか。》



もしかして、ポセイダルゴ様の父上が、あの大海神・ポセイドン様?アリエッタの力は、天神・ゼウス様?

どうなっている。神話の世界の神様が、喧嘩している。


《ゼウス、だいたい其方が、1000年前に、シーシェルの姫に惚れたことから、父上が、騒動を収めるために、巫女ができたのだ。今更、ヴァシリスに海のパワーを与えて文句を言われる筋合いはない。》


《何とっ、ポセイドン、我はシーシェルの姫をお前から、守ったのだ。そんな過去が災いして、ポセイダルゴが、アンジェラを失ったのだぞ。》 


《ゼウス、話が逆だ。最初に其方が、我とシーシェルの姫との仲を裂いたのでないか。其方の責任だ。我への腹いせに、ポセイダルゴの恋まで潰したくせに。ポセイダルゴは、あれから、妻も娶らず、ヴァシリスを守っているのだ。何が悪い。》


なんかすごい話を聞いてしまっている。

神様の喧嘩って初めて見た。

止めないと、これは終わらないと思った。


「あの〜、神様。」


《《何じゃっ》》


「ゼウス様、証が必要なら、おっしゃる通りにいたします。アリエッタを守るためなら、命など。

ただ、明日、シーシェルが侵略されるので、それを守らねばなりません。そのあとではあれば、どのような事でも。」


《ヴァシリス、死はそんなに時間はかからぬ。

私の前で、一度死んで見せれば、命はすぐに返してやる。ただ、私が与える死は、地獄の苦しみだ。其方が永遠に苦痛を感じて気が狂ったとしても、一瞬じゃ。気にするな。》


何か、恐ろしいことを言われている。


《待て、ゼウス、ヴァシリスに手を出すな。苦しめる必要はないっ。》


《ポセイドン、残念だな。ヴァシリスはすでに、我の提案を受け入れたぞ。では、ヴァシリス、神の炎に焼かれて死ぬが良い。その前に、自らを守る力を、全て渡せ。》 


僕が返事をする前に、ヒーリングパワーが引き抜かれていった。一瞬だった。うつ伏せになったまま、立ち上がれなかった。


「ヴァシリスさま、パワーが、、」アリエッタが僕を助け起こそうとしたが、弾き飛ばされた。


《さあ、ヴァシリス、神々の炎に焼かれるが良い。》


僕は、一瞬で神の炎に包まれた。

神殿の中で、全身が炎に弄ばれていく。痛い、熱い、髪が一瞬で炎に消えた。肌が焼ける匂いがしている。息をすると、炎が肺に入ってくる。


アリエッタの叫び声が聞こえる。


「ヴァシリスさま、ヴァシリスさま。神様、やめてください。神様、やめて、お願いです。やめてください。」


アリエッタが、神様に懇願している。アリエッタ、泣くな。また真珠の涙がこぼれそうだ。

意識を失いたいのに、頭がはっきりして、苦痛だけが押し寄せる。


《ゼウス、わが孫同様のヴァシリスに、このような事して、ただで済むと思っているのか。》


《人間が受け入れたのだ。神の意志は、押し付けではない、人間が願い、神の意志を受け入れれば、叶えるだけのことではないか。何千年も前から、そうであったが。》


《ならば、言ってやろう、ゼウス、シーシェルの姫が巫女になったのは、お前が己の感情を押し付けたからではないのか。姫と我は恋仲であったのに、其方が姫を奪おうとして、姫に、私を捨てさせたのであろうが。》


《そうだ、陽を司る私より、ポセイドン、お前が良いと言った。お前を炎で消してやると言ったら、お前の命乞いをしたのだ。そして、あろう事か、この私を拒絶した。》


《お前が姫を連れ去ろうとした時、父クロノスが見かねて、姫を助けて下さった。父上は、姫が、誰の妻にもなれぬように巫女になさった。巫女になった姫を、お前は更に冥界まで追い詰めた。

お前はまだわからぬのか。愛し合っているものを引き裂くのは止めろっ。》


神殿の中で、火花が散り雷が鳴り響いている。

痛い、熱い、僕の身体は、どのくらい残っているのだろうか。

アリエッタ。手を伸ばそうとしたら、手が焼け落ちた。


「神様、あなたは、ゼウス様でしたねっ、いくら神様でも、許せません。私の大切なヴァシリス様を、こんな目に合わせて、、愛していると言っているではありませんか。」


《ヴァシリスが灰になれば返してやるから、しばし、待て。たかが人間の女のために、炎を望むとは、馬鹿な王子だ。もっと苦しめば良いのだ、》


「私は、ヴァシリスさまと約束しました。

ヴァシリス様が危険な時、私も危険でいたいと、あなたなど、神ではありません。絶対に許しません。」


《巫女よ、其方まで我に逆らうのか。そんなに死にたいなら、お前も炎で焼いてやろう。》


「あなたになど、焼かれるつもりはありません。私は、私の意志でヴァシリス様と共に。」


アリエッタは、僕が焼け落ちていく炎に飛び込んできた。


「ヴァシリス様、私も一緒に、、うっ、熱い、」


「アリエッタ、来てはいけない、アリエッタ。」


僕は、あまり残っていない腕で、アリエッタを抱きしめようとしたけれで、体が灰になっていく。足は溶け落ちていく。

アリエッタが、僕を抱きしめてくれた。


《シーシェルの巫女は、いつもいつも、何故、我に逆らうのだっ。》


ゼウスの怒りが頂点に達したようで、炎が更に強まった。


「私をおいていかないでください。ずっと一緒だと、ずっと、ずっと、、ヴァシリスさま。一緒だとお約束しました。ヴァシリスさまっ。」


アリエッタの体が炎に包まれて、炭になりかけている。

涙が、真珠の粒のようにポロポロと落ちる。

アリエッタ、僕はお前を守れないのか。


アリエッタの涙の一粒が、焼け落ちかけていた右腕のトライデントの紋章に落ちた。

その瞬間だった。僕とアリエッタの体がグリーンに光り輝いた。僕はかろうじて残っている唇から、アリエッタに言った。

「うみ、を」


アリエッタは、僕を抱きしめながら、泣き叫ぶ。

「海を海をください。ヴァシリス様を助けて。お願い、海を、海よ、出なさいっ!!!」


アリエッタの絶叫と同時に、神殿の中は海と化した。

金色に輝いていた神殿は、深いグリーンに包まれ、炎が散り散りになり、潮騒が聞こえ始めた。


祭壇の前に捧げた剣が、トライデントになり、クルクルと回っている。


僕とアリエッタの支えあったままの身体から、

グリーンの光が溢れ、身体が元の形になっていく。僕の顔形が戻ってきた。


「神様、あなたが何をしたいのかわからない。

僕は苦しくても構わない。でも、アリエッタだけはダメだ。アリエッタだけは、傷つけさせない。

泣かせない。僕は何度死んでも構わない。だけど、アリエッタだけは、アリエッタだけは傷つけるなっ!ダメだ。絶対にダメだ〜〜!!!」


僕の怒りに任せた叫びと同時に、僕のオレンジ光が溢れ、ゼウス様に飛びかかって、ゼウス様を包み拘束していく。


《何だ、人間の子供が、我の炎を消しただと?なんだ、この光は。》


アリエッタが口を開く。

「ヴァシリスさま。私はヴァシリス様と一緒なら、何回、炎に焼かれて構いません。

ヴァシリスさまが、守りたいと思ってくださるだけで、幸せです。でも、こんなに一人で苦しんではダメです。ずっと一緒だと、おっしゃったではありませんか。」


アリエッタから、更にグリーンの光が溢れ出し、僕のオレンジ光と混じり合い、コバルトブルーの光になって、ゼウス様を捕まえていく。

ゼウス様が苦しみの声を出し始めた。


《子供よ、離せっ、やめよっ》


僕のたちの光で、ゼウス様が苦しいみたいだ。

どうしよう。でも光を消したら、また、アリエッタが焼かれてしまう。

オロオロしていると、更に、どでかい神様?らしき方が、降臨された。

ゼウス様もポセイドン様も、僕らの2倍はある。

でも、この巨大な神様は、神殿の天井までの高さで、ポセイドン様たちの、更に2倍は大きかった。



《ゼウス、ポセイドン、また兄弟喧嘩か。》


《父上っ》


《そなたら、また人間を巻き込んだなっ。》


《父上、ゼウスが、人間に炎の中で証を見せよと。》


《ゼウスの炎に人間を入れたのか?》 


《はい、シーシェルの巫女への愛の証を見せよと。》


《この子供たちは、シーシェルの巫女と、巫女を得る王子だな。》


《はっ、我が息子、ポセイダルゴの庇護を得たシーシェルの第三王子ヴァシリスと、次代巫女のアリエッタです。》


《ヴァシリスとアリエッタ、我は、ポセイドンとゼウスの父、クロノスである。

息子たちが、迷惑をかけて済まなかった。

まず、ゼウスを拘束しているパワーを、我に貸してくれぬか。》


「クロノス様。神様に刃向かって申し訳ありません。ヒーリングパワーは、お渡しいたします。」


《うむ。いただくぞ。》


クロノス様は、あっと言う間に、僕達から、光のパワーを受け取り、ゼウス様を包んでいたパワーを固めてしまった。

ゼウス様は、コバルトブルーの氷の中に閉じ込められたように見える。


《ヴァシリスとアリエッタ、我は天界から見ていたが、今日は、巫女と巫女を得た王子が、誓い合う神事であったはず。ゼウスが無体な事を言い出して、詫びのしようがない。

シーシェルに巫女が存在するようになった理由は、あの二人の喧嘩で、バレてしまったな。

まだ幼い其方たちに、無理を強いてしまった。

其方らの願いをまず聞こう。どうしたい?》


《……… あの、クロノス様。本当は、アリエッタと幸せになれたら、それだけでいいのです。

でも、僕は、シーシェルの王子です。王にはなりませんが、父上や兄上を助けて、民や海の生き物が共存して幸せでいられる世界になるよう、力を尽くして生きるのが、僕の役目です。

その人生に、アリエッタとの出会いがありました。神様のいたずらなのか、思いつきなのかは、僕には、よくわかりませんが、アリエッタと出会った事は、奇跡のように大切な事です。

僕の全てをかけて、アリエッタを守って、生きたいのです。アリエッタを失わなければ、どんな苦難も受け入れます。」


《うむ、アリエッタはどうだ。》


「クロノスさま、私はヴァシリス様と一緒に生きて、未来に繋がる命を、大切にしたいです。ヴァシリス様と一緒に、苦しい時は同じ苦しみを、覚悟して、生きたいです。」 



《そなたらの決意と覚悟は、よくわかっている。巫女のために、あのゼウスの炎に焼かれ尽くす地獄の苦しみに耐え、あの炎に自ら飛び込んで、なお、愛する者に手を伸ばした、、、。

ゼウスの炎は、全てを焼き尽くす神の炎。ゼウスか、父である私でしか消せぬ。それを其方らは、2人で消し去り、更に、ゼウスを捕まえた。》


「でも、それは、ポセイダルゴ様のお力をいただいていたので。」


《違うのだ、ヴァシリス、ゼウスは既に海神のパワーを吸い取って消していた。

ポセイダルゴの力を上回るポセイドンでさえ、手出しできぬ神の炎だ。そうでなければ、私がもっと早く介入せねばならなかったが、私より先に二人の愛が力となり、パワーを集め生み出して、ゼウスのパワーを抑えたのだ。

其方らの愛としか考えられぬ。神の力を超える愛を見せてもらった。》


ヒェッ、そんなヒーリングパワーをだしていたんだ。かなり、自分でも驚いた。


《ヴァシリス、アリエッタ、其方ら、天界に来て、神にならぬか?》


「えぇっ?かっ、かっ、神様に? 」


《今なら、このまま、天界に連れて行けるぞ。二人で永遠に愛し合って過ごせばよい。》


一瞬だけ、僕とアリエッタは顔を合わせ、見つめ合った。


「本当はそうしたいです、ですが、僕たちには、この世に生まれた使命があります。自分たちの世界で、精一杯生きます。」


「クロノス様、もし、頑張って生き抜いて、使命が終わったら、その後は、ヴァシリス様のお側にいられるように、わがままを言ってもいいですか。」


《うむ。あいわかった。では、今後は、シーシェルの巫女を、ゼウスの身勝手な思いつきに巻き込まぬように、巫女を使わす役目は、私が引き受けよう。

ゼウスは、1000年の謹慎とする。

我が孫、ポセイダルゴも寂しい思いを堪えて海を守っている。其方らの愛と成長は、ポセイダルゴの心を癒やしてくれている。その礼に其方らの庇護を、ポセイダルゴと、その父、大海神・ポセイドンにも任せよう。海を守ってくれるか。》


「クロノス様、お約束します。」


《ポセイドンよ、今、巫女の剣はどのくらいのパワーがあるのだ。》


《父上、天界の巫女の剣は、すでに1000年を経て、力が落ちています。トライデントは、ポセイダルゴと同じパワーです。》


《では、ポセイドン、そろそろ、そなたのパワーを全てポセイダルゴに渡してやれ。さすれば、ヴァシリスのパワーも、そなた並みになる。》


《父上、それは構いませぬが、私の役目がなくなります。》


《ポセイドン、この1000年、シーシェルの姫を思い続けたのだろう。この子供らを見て、其方とシーシェルの姫の恋を思い出した。

シェル姫は、アリエッタが炎に身を投じたように、そなたへの愛を守るために、自ら冥界へ去った。すでに冥界にいるシーシェルの姫を、我の権限で、女神として蘇らせるから、其方の妻にするが良い。ゼウスには手出しできぬようにしておくから安心せよ。》


《父上、ありがたき、御采配。》


《では、巫女の剣から、ゼウスのパワーを抜いて、私のパワーを授ける。ポセイドン、同時に、そなたのパワーをこの剣に授けよ。

ポセイダルゴには、後から、会いに行って、直接、パワーを授けてこい。良いな。》


《父上、仰せのままに。》


《さてヴァシリス、アリエッタ、巫女の剣を授ける。二人でこの剣を持て。

かなりのパワーだ。苦しいだろうが、できる限り、耐えぬいて踏ん張れ。途中で手を離したら、授かるパワーは少なくなる。どんな持ち方でも、構わぬ。二人が持ちやすいようにしなさい。》


僕とアリエッタは、さっきから、言葉にしなくても、心でわかっていた。

僕は祭壇の前に跪いた。

アリエッタは、黙って、僕の胸の前に膝をつき、僕の背中に両手を回して、しっかりとつかまった。


「私がヴァシリス様にパワーを送ります。グリーンもオレンジも、必要なだけ。だから、ヴァシリス様は、クロノス様とポセイドン様の全てのパワーを授かってください。これからの数十年、世界の海の汚染を浄化し、海を守り切るには力が必要です。」


今のアリエッタは、凛々としている。


「アリエッタ、僕たちの全てをかけるぞ」


「はいっ。」


僕も、アリエッタの背中に両手をまわしながら、巫女の剣を両手で持った。


「クロノス様、ポセイドン様、よろしくお願いします。」


《良いな、耐え抜けっ!》 


クロノス様の全身から、金色と赤の光が溢れ出し、矢のように僕達に向かってきた。

さっきの炎は生き地獄という感じだったが、これはこれで、圧倒されるパワーだった。跪いていても、後ろに流されていく。

皮膚がちぎれていくような重さと、心の中が全て塗り替えられていくような鋭いパワー。

気持ち悪くて吐きそうになるけれど、受け取っているものは、吐き出せない。

踏ん張っても踏ん張っても、後ろに飛ばされそうになる。もうダメかと思った瞬間に、後ろから、雷が鳴り響き、嵐が起こった。ポセイドン様の海のパワーだ。

ポセイダルゴ様から、授かっていたので、イメージはできていたが、比べ物にならないくらい、強く、重く、深い、高いエネルギーだった。

何度も雷に打たれた、石のような雨粒が体に降ってくる。

その中に、すぐにわかった。シェル姫の姿が浮かんだ。ポセイドン様と寄り添う幼い頃から、ゼウス様に引き裂かれるまでの姿がみえた。どれほど愛し合っていたのだろうか、1000年の二人の愛が僕達に流れ込んできた。


『アリエッタ、大丈夫か。』

『ヴァシリスさまと一緒だから。』


口に出さない気持ちが、通じていく。

アリエッタの身体から、グリーンの光が溢れ出し、僕を勇気付ける。僕の身体から、オレンジの光が溢れ、アリエッタの痛みを癒していく。

もうダメだ、でも諦めたくない、その時、僕達から溢れる光が、コバルトブルーに変わった。そして、更に銀白色の光が溢れ続ける。


銀白色のパワーが長く溢れたのは、初めてだ。

クロノス様の金と赤、ポセイドン様の全ての煌めく海色に、僕達の銀白色が混ざり、渦を巻いて天に向かって神殿を突き抜け、同時に、地中に向かって突き抜けた。

そして僕とアリエッタは、気を失った。


《我らの力を、全て受け取った。まさかとは思ったが。人間にしておくのは、惜しい。》


《父上、人間界で、神の力を受け取れる者は、数えるほど。それにこの者たちは、まだ幼い子供。》


《ゼウスの炎の中で、ヴァシリスは灰になりながら、アリエッタに手を伸ばし、愛を誓っていた。アリエッタも、共に灰になると、迷いもせずに、炎に飛び込んで行った。人とは、弱い生き物だ。だが、その弱さゆえ、強くもなる生き物だ。この子らは、愛を知っている。お前とシェル姫の愛のように。》


《父上がお出ましにならなければ、ゼウスは消滅していたかと。》


《それでも良かったのだが、我が作ったものだ。我が責任を取らねばならぬ。ポセイドンが、女神になったシーシェルの姫と幸せに暮らす姿を1000年見せれば、罰くらいにはなるだろう。》


《父上、この者たちを、庇護してまいります。》


《頼んだ。この者たちのような人間がいるならば、まだ海は救われるかも知れぬ。

さっ、ここは任せて、ポセイダルゴに会いに行ってやれ。》


巫女の歴史がわかりました。

アリエッタはヴァシリスの巫女。神の剣が新しくなりました。

読んでいただき、ありがとうございます。

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