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第4章 ポセイダルゴの薬海藻園

僕とアリエッタは、夜中の海に静かに入った。

クールとクーポが来ていた。


真っ直ぐにポセイダルゴ様の庭に向かった。

今日は、ものすごく近く感じたけれど、、


僕は、右腕の腕輪が光りだしたのを感じて、

腕輪に触って、心の中で呟いた、


《父上、シーシェルが、2日後に侵略の攻撃を受けます。命を守る方法を、みんなで考えていますが、犠牲者を出したくないです。

力を貸してください。》


アリエッタは、海藻園の中で、声をだしている。


「ポセイダルゴさま。ヴァシリス様が毒に倒れます。少しでも、早く解毒できる海藻を教えてください。お願いします。」


その時だった。海中の海藻が大きく揺れて、白い渦巻きが起きた。


ポセイダルゴ様が目の前にいた。


「父上。」


「ポセイダルゴさまっ」


「海の中で、爆撃するなど、まだ馬鹿な人間がおるようだな。

それに、ヴァシリスに毒を盛るなど、野蛮な卑怯者め。」


「全部知っているのですか?」


「そなたは会議に出ていたではないか。」


そういう事か。僕が見るものは、海神も見ている。


「ここまで来ずとも、腕輪で話せるから、次に急ぐ時は、腕輪に話せ。更に急ぎ会いたいときは、

部屋に海水を満たして、腕輪に話せ。そなたが満たした海水があれば、私は姿を現せる。」


「ち、父上、わかりました。」

そんなすごい腕輪だったんだ。


「うむ、それで、アリエッタは解毒法と解毒剤が、欲しいのだな。」


「チャンシアの即死毒は解毒剤がないそうです。」


「アリエッタ。そなたのグリーンヒーリングで、ある程度は中和できるが、全て吸い取ると、そなたの苦痛が尋常ではなくなる。」


「ヴァシリス様が救われるなら、私、頑張ります。」


「アリエッタは優しいのう。だが、わざわざ苦しまずともよい。薬海藻畑の中に、3種類の海藻がある。それを持って帰って、薬を作りなさい。

作り方は、これじゃ。そなたの心に書くぞ。」

ポセイダルゴ様が、アリエッタの首に少し触れた。


「あっ、頭の中に見えます。」


「海藻の種類もわかるな。」


「はい」


「では、それを、前日の夜、寝る前に、2人とも飲んでおきなさい。飲むと、死にそうに苦しくなるが、死なないから大丈夫じゃ。意識を失うかも知れぬが、大丈夫じゃから、安心して飲みなさい。」


「ありがとうございます。」


「それから、ヴァシリスは、どうしたい。

パニエールは、己れの欲しか考えない輩じゃ。

消しても構わぬ。」


「はい。

それから、チャンシア国の潜水艦と軍人の命を、奪ってよいのかどうか、迷っているのです。」


「話せばわかる相手なら、話し合いで良いだろうが、なぜアリエッタが拐われるか、理由を教えようか。王子に溺愛され、だれも摘み取らぬように育てた美少女だ。奪って、土産物として、向こうの皇帝に献上して、座敷牢に閉じ込め、皇帝の奴隷にするつもりだと、言ったら?

アリエッタの代わりに、アンジェラが囮になると聞いたが、アンジェラとて、同じ運命だ。

国王の愛妃を、土産にする、わかるな?

奪われた女人は、逆らえば故郷を攻撃すると言われれば、自分が人身御供になる事を拒否できぬ。

侵略戦争とはそうものだ。」


僕は自分の拳を握り潰してしまいそうな程、怒りを感じた。アリエッタが、そんな想像することさえ、許されないような吐き気がするような話だ。

守らねば。何としても守らねば。


「ヴァシリスさま、体がオレンジ色です。

あの、、剣が、トライデントになってますけど。」


「答えは出たようじゃな。ヴァシリスが駆除せぬのであれば、私が、チャンシア国ごと、海のチリにするつもりであった。」


「父上、僕が甘く考えすぎていました。」


「ヴァシリス、我が息子よ。そなたはまだ若い。

人を信じる事は大切じゃ、だが、信じるに値しない輩もおるのだ。話し合いですまないならば、武器を取るしかない場合もある。

ただ、出来るだけ、命を粗末にするな。

人の命は短い。争いより、温かく生きる人が増えてほしい。そのために、我はお前に力を与えた。

迷ったら、話に来い、一人で悩むな。よいな。」


「父上、理解しました。」


「さっ帰りは送ってやる。」


「あの、ポセイダルゴさま。質問がありました、

私は、海の水を出せるのですか?」


「ヴァシリスの剣の鞘に、グリーンヒーリングをかけて、海水に包まれるイメージを持て。すぐに出てくる。」


「ありがとうございます。

あ、それから、これ、ありがとうございました。」


「父上、ペアのリング、ありがとうございました。

それに、離宮予定地の前の海底、、」


「そうじゃそうじゃ、トンネルを作っておいた。

そのリング、2人が同時に身につけておれば、

ヒーリングの光を、相手の光で出せるぞ。海も出せるかもしれぬ。試してみなさい。」


「えっ?」


アリエッタが、オレンジキラキラと口に出したら、アリエッタの貝殻リングから、オレンジの光がで始めた。


「うわっ。すごい。ヴァシリス様もやってみて。」


「グリーンヒーリングっ」と唱えると、グリーンの光が溢れ始めた。


「父上、これは、、、」 


「そなたらの愛の誓いが、そうなったのじゃ。私が勝手にしたわけではない。想い合う愛の形じゃ、大切にせよ。みなが待っておる。浜辺まで、送るぞ。」

ポセイダルゴ様が、トライデントを出している。


「あの母上のこと、、」


「アンジェラもオランも、私も守るゆえ、案ずるな。アンジェラに手を出したら、全て海に沈めてやる。行け、ヴァシリスっ。」


気がついたら、また浜辺にいた。

アリエッタと、秘密の通路を通って、月の宮に戻った。


オランが待っていてくれたので、簡単に説明して、アリエッタが薬を作ることを伝えたら、月の宮に残って、手伝ってくれることになった。

僕は一人で、陽の宮に急いで戻った。




「父上、戻りました。」


「解毒緩和薬の材料をもらってきました。

いま、アリエッタとオランが作っています。

前日に、僕とアリエッタが服用することで、かなり緩和できるそうです。


それから、アリエッタの誘拐の理由がわかりました。パニエールと皇帝の約束で、シーシェルの愛妃を、皇帝への土産として、、、、献上品に。」


父上の顔色が変わった。母上も唇を噛んでいる。

「土産だと、献上品、品だと。

パニエール、今から、この手で、引き裂いてやる。」


「陛下っ、お鎮まりをっ。」

剣を持った父上を、アランとユリシーズが、必死でおさえている。


「父上、父上、聞いてください。

ポセイダルゴ様が、アリエッタの代わりに母上が囮になることは知っていました。

母上の事は心配するなと。もし僕たちが、万が一、し損じるような事があれば、シーシェルの領海を出たところで、母上とオランを助けて、全て海に沈めチリにすると、約束してくださいましたっ。」


「ありがたいが、ヴァシリス、パニエールだけはポセイダルゴ様の手を借りずとも、この私の手で終わらせる。神に誓って、許さん。

みな、良く聞け。パニエールは私が消す。

手を出すな。」


「僕も同じです。それが母上でもオランでも、アリエッタでも、僕は、許さない。

大切な愛を守れと、言われました。」


「ザドキエル将軍。ヴァシリスに解毒緩和剤があれば、ヴァシリスは、前線に出せる。

先程、決めた計画で、進めるので、海洋軍の配備をお願いする。

アランとユリシーズ、ミカエラード公爵は、王宮内から、海岸線までの間をおさえてくれっ。」


「孫殿、海での移動は、どうされますかな?戦艦に乗りますか?」


「おじいさま。僕にはシャチがおり、アリエッタにはクジラがおります。潜行も小回りも自在ですし、トライデントの扱いは、海中の方が操りやすいので、それで良いでしょうか。

僕とアリエッタへの魚雷さえ避けていただければ。」


「孫殿、承知した。」


「夜もふけ、日付が変わったであろう。

祝賀の儀は2日後である。みな、よろしく頼む。

時間が足りないが、皆、とにかく一回、戻って休み、力を回復してほしい。では、下がってくれ。礼を言う。」


「はっ」みんなが退室していく。




「ユリシーズ、ヴァシリスは残れ。

アンジェラは、あとで私が送るから、私の寝室で休んでいなさい。」


母上が、書斎の奥の父上の寝室に入ったのを見て、父上が口を開いた。


「ユリシーズ、ヴァシリス、巻き込んで済まない。」


「父上、どうなさったのですか?」


「ユリシーズは知っているだろう。私とパニエール大公の確執を。」


「陛下、原因はそれだけではないはずです。」 


「父上?」


「パニエールは、アンジェラに横恋慕しおって、あの好色ジジイが。」

父上が怒りで、全身を震わせている。


「パニエールは、幼い娘が好みでな。

まだアカデミーに入って間もない時に、アンジェラとオランを誘拐しかけた事があって。」 


「ええっ、また誘拐話ですか?」


「表向きは誘拐ではなく、大公として、茶会に呼んだだけだと。でも、近衛隊と騎士団が隠密で踏み込んだ時には、軟禁状態で、鍵のかかった部屋に隠されていた。」


「父上、ポセイダルゴ様が言ってました。チャンシアの皇帝は、献上された女性を座敷牢に閉じ込めると。」


「そうだ、女性を品物扱いして、売り買いするのがチャンシアのやり方だ。人として、許されることではないのだ。」


「アンジェラもオランも危なかった。ユリシーズにまた同じような思いを、させてしまう。申し訳ない。」


「陛下、オランの性格は、貫く性格です。私が助けに行けば済む事なので。お気にやまれずに。」


「ユリシーズ、もし私が、パニエールをし損じたら、必ず止めを刺してくれ。私の命より、パニエールを消すことが優先だ。ヴァシリスもわかったか。刺し違えても奴は消す。」


「御意っ、陛下、それから、王妃様と、オランを誘拐する際、薬が使われる可能性があります。睡眠薬か幻覚薬か、チャンシアで使われている薬に効く解毒剤を準備するので、当日の朝、王妃様には、必ず服用していただきたく。

オランは、私が飲ませます。」


「ありがとう。ユリシーズ。」


「ヴァシリス、あとは、お前が気の済むように、蹴散らしてくれ。何一つ、証拠を残さずに消滅させろ。チャンシアが何を言ってきても、証拠がなければ、無かった事になる。

汚れ仕事になるが、これは戦争ではない。戦争にしたくない。できるか。」


「なかった事にします。必ず。」


「ユリシーズ、今日は帰って休め。オランと少しは一緒にいてやれ。オランは、ユリシーズの大切な宝だろう。」


「では、失礼しますっ。」ユリシーズが足早に退室した。



父上と2人だけになった。

父上の疲労が濃い。


「アンジェラと、今日、いや、もう日付が変わったから、昨日は、幸せな時を過ごした。

ヴァシリスに感謝したところだった。

ヴァシリス、男にとって、大切な女性は弱味になる。特に《愛妃》と言われる女性は、どんな男からみても、眩い存在だ。国の中でさえ何度も狙われてきた。権力欲にまみれた奴ほど、横取りしようとする。

私がアンジェラを後宮から出さなかった理由の一つだ。

アリエッタは、お前の《愛妃》だろう。片時も離したくない大切な宝のはずだ。」

 

「父上、僕は、昨日、父上と遠出して、あんなに幸せそうな母上をはじめてみました。

母上は、今が幸せなのです。僕はそう思います。これまでの15年より、今、父上と困難に立ち向かっている事が、母上の幸せだと感じています。もう閉じ込めてはいけません。」


「それは、わかっているのだが。」


「母上を閉じ込めたら、死んだも同じです。座敷牢と変わらない、それはダメです。守ると言う体の良い言い訳で、中身は監禁と変わらない。それは夫婦ではありません。」

 

「そうだなヴァシリス。お前と話していると、勇気が湧いてくる。

アンジェラは、後から送っていく。

アリエッタのところに、早く戻ってやれ。」


「父上、おやすみなさい。」

僕は月の宮まで、全力で走って戻った。


*・゜゜・*:.。..。.:*・''・*:.。. .。.:*・゜゜・*


「アンジェラ、入るぞ。」


「エドワード、大丈夫?」


「済まない、アンジェラ。パニエールは始末しておくべきだった。」


「エドワード、私は大丈夫よ。」


「そなたを囮にするなど、私は最低の男だ。」


「エドワード、妻を信頼するなら、囮にして。助け出せば良いだけでしょう?

息子の婚約者を囮にする方が、身勝手で非道、と言われるわよ。」


「どちらも、囮になんてできない。オランまで巻き込んだ。ユリシーズに申し訳がたたない。」


「あなたの役割は、後悔することではないわ。敵を倒し、愛妃を助け出すだけよ。

ヴァシリスとアリエッタは行動したわ。

私たちも、負けてられないわよ。 

さっさと寝て、しっかり睡眠を取って、目覚めたら、未来に向かって、走り出しましょう。

エドワード、しっかりしてよ。また平手打ちするわよっ。」


「わかった。部屋まで送る。」


「このままがいい、あなたと一緒にいる。あなたのいるところが、私の居場所よ。邪魔でなければ、そばにいさせて。いつも、なぜ、別々の場所にいるのか、疑問だったわ。私は苦しくても、一緒にいたいの。」


「そうしよう。ありがとう、アンジェラ。」


*・゜゜・*:.。..。.:*・''・*:.。. .。.:*・゜゜・*


月の宮に戻ると、アリエッタが、厨房で奮闘していた。


「どうだ、アリエッタ、できそうか?」


「ほとんど出来上がりです。

あとは、グリーンキラキラとオレンジキラキラを入れて、いつものピカッ、をすれば良いみたい。」


「よし、手伝うよ。」


鍋を火から下ろして、僕の部屋に持ち帰った。


「何か、見た目に不味そうだな。」


「ポセイダルゴ様が、意識を失うくらい苦いって。」


「死にそうに苦しいけど、死なないからと。」


僕たちは顔を見合わせて笑ってしまった。

死なないために、死にそうな薬を作って飲むんだから。


「じゃあいつも通りに、キラキラ、します。」


アリエッタがグリーンキラキラを鍋に振りまいている。そのあとに、僕がオレンジキラキラを振りまいた。

鍋の中で、キラキラがまとまり、銀白色に光って、消えた。

あれっ?中の液体が、コバルトブルーに輝いている。


「これを明日の夜、寝る前に飲めばいいんだな。

アリエッタ、今日も忙しくて、さすがに疲れた。僕は湯浴みは無理だ。早く眠りたい。」

薬を小瓶に詰めて、クローゼットの中の引き出しにしまった。


「ヴァシリスさま、私も眠いです。」

オランを呼ばなくては、と思いながら、寝台に腰かけるだけが、2人とも、眠りに落ちていた。


「坊っちゃま、姫さま。

あらあら、湯浴みなし、お着替えなし、行き倒れのように眠って、よほどおつかれなのですね。

アンジェラも、戻ってこないし。私もそろそろ休みましょう。今日も大変な一日でしたから、坊っちゃま、姫さま、おやすみなさいまし。」

オランは、二人に 毛布をかけて、そっと扉をしめた。


オランが王妃の私室の奥の部屋に戻ると、どこからか、囁くような、声が聞こえてきた


「オラン、オラン、いるか」


「えっ?ユリシーズ?」


オランが、寝台奥の隠し部屋の扉を開くと、ユリシーズが立っていた。

目が合った瞬間、ユリシーズに抱きしめられた。


「オラン、アンジェラ様は陽の宮に陛下とおられる。陛下のお許しが出て、迎えに来た。ウリエルの屋敷に一回戻ろう。

ここの警護は、兄上が引き受けてくれたから心配するな。」


オランが頷くと、手をとり、ユリシーズは、隠し部屋から、更に地下通路に出て、迷路のような通路を抜けて、ウリエルの屋敷の2人の寝室の隠し部屋まで戻った。

久しぶりの我が家の寝室であった。


「オラン、ずっと一人にしたままで済まない。

大丈夫か。」


「ユリシーズ、お役目ですから、私は大丈夫。」


「大丈夫でも、私は心配している。

アンジェラ様とお前が、誘拐される時に、薬を使われる可能性が高い。これからは体力勝負だ。

今から解毒剤を作るから、先に休め。終わり次第、戻ってくる。たまには、ゆっくり湯浴みしなさい。いいな。」

オランは黙って頷いた。頬に口づけて、ユリシーズは寝室をでた。


*・゜゜・*:.。..。.:*・''・*:.。. .。.:*・゜゜・*


侵略が近づいてきます。

読んでいただき、ありがとうございます。

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